こんにちは、前回大変見苦しい姿をお見せした私です。
謹んでお詫び申し上げますって、え?
随分落ち着いているじゃないかって? ハハハ、聞いてくださいよ。
どうやら私は脳梗塞でも心筋梗塞でもなく普通に死んじゃったみたいなんです(白目
そして間髪入れずに来世へとシフトチェンジしたようなんですよ。
いやぁ、びっくりですね。
もう滅びを待つしかない終末的世界に生きていた自覚はあったのですが、輪廻転生は想定外でした。
真っ白な視界が開けた瞬間に見えたオバサン、失礼、ご婦人は産婆さんのようです。
古めかしい出産ですよね、産婆さんなんて歴史の資料でしか見たことありませんし。
まあともかく生まれ変わった直後みたいです。
おぎゃあ、としか喋れないから焦りましたよ。ホントどうなっているのやら……
でもママンは超絶美人なのでお食事の時間が楽しみで困りません(ゲス顔
えっ、悲壮感が足りない?
そりゃ悲しさはもちろん感じていますよ。
碌に親孝行も出来ずに先立つ不孝というのは、ね。
仕事も途中で放り出す形になって同僚や取引先にも申し訳なさでいっぱいです。
ギルメンだって同じです。
しかし死んでしまった(仮定)ものは仕方ありません。
もう赤ちゃんに再就職してしまった以上、私は新天地で精いっぱい生き抜くのみです。
どうやら貴族の嫡子として産まれたようなので、勉学や剣術、馬術や魔術を極めて最強の聖騎士を目指す所存です。
聖騎士とか頭大丈夫かですって?
心配ご無用、私は至って正常です。
これはいわゆるアレです、神様なる存在にはお会いしませんでしたが100年ほど前から流行っているアレを体験しているのです。
フフフ、そうです。
ここは現代ディストピアではないのですよ!
剣と魔法の異世界(仮)なのです!
つまり異世界転生です!
さっきお産を終えたママンに魔術師っぽい人が回復魔術をかけていたのを、この目で見ました!
私のいる部屋の壁に、立派な騎士剣が飾ってありますし!
これはもう確定じゃないですか!?
騎士階級といえば貴族ですよ! 前世はギリギリ富裕層でしたが今世は本物の尊き血筋とか胸熱です。
あっ、お髭がダンディなおじさんが入室しました。
ふむふむ、どうやら彼は私の父であるようです。
バイロン卿と呼ばれていますね。私が産まれたおかげでシアルフィ公爵家も安泰だそうです。
ファッ、公爵家!?
貴族の最高位じゃありませんそれ!?(白目
その嫡男って……あっ胃がキリキリする……。
って、ちょ、危なっ!?
なんか立派な剣がバイロン卿からすっ飛んできたんですけど!?
ちょっと頼みますよ父上。我が子に剣を投げつけるとは何事ですか!
えっ、なんで父上泣いてますん? あれ、ママンと周りの人たちみんな泣いてはる!?
ちょ、怖いんですけど……
あ、バイロン卿抱っこしてくれるん?
痛っ、髭がチクチクするから頬ずりするのはやめてぇぇーー!
ママン助けて! えっ、ダメ?
その後、バイロン卿ことパパンにいっぱい構い倒されました(遠い目
ああ~、ママンのおっぱい美味しいんじゃあ~
先ほどは現実逃避してしまって申し訳ないです。
お前いっつも現実逃避してるだろって? すみません、以後気を付けますのでお許しください。
そんなこんなで命名の儀です。
貴族というのは家名のほかに三つの名を授けられます。ちなみに王族の方は家名込みで五つだそうです。
まあファーストネームとファミリーネームさえ分かれば問題ないでしょう(慢心
パパンみたいなカッコイイ名前を付けて欲しいものです。
『トンヌラ』とか『もょもと』みたいなファンタジー勇者っぽいのが理想です。
私はママンと同じベッドで寝かされて待機中です。
そういえば乳母に預けられたりはしないんですかねぇ。
おっ、いよいよパパンが発表するみたいです。
バッチこい!
命名、シグルド。
う、うおおおーーー!! 超カッコイイ名前キタコレ!!
竜殺しの英雄の名前じゃないですか!
しかもユグドラシルでのプレイヤーネームと同じですよ! なんという偶然!
いやー、私にとっての聖騎士の理想といえばシグルドなのですよ。
大昔のゲームの主人公で、理想と正義を掲げて戦った勇敢で優しい騎士の中の騎士。
大勢の仲間と共に世界の危機へと立ち向かい、最期は非業の死を遂げる聖騎士シグルド。
ですがその意志は次代へと受け継がれ、見事シグルドの息子が世界の危機を打ち払うという戦記物です。
その生き様と強さ、カッコよさに憧れてシグルドというPCで聖騎士ムーブを10年近く続けてきた私が今世でもシグルド!
ありがとうパパン! 名に負けぬ立派な聖騎士になってみせるからね!
テンション上がってきた!
というかシアルフィ公爵家で嫡男でシグルド公子とかまんまじゃん!
しかも父親の名前もバイロンだし、これは天の配剤!
まさにあの憧れの騎士の世界へ転生したかの……よう……だ……って、あれ?
死亡確定キャラに憑依転生とかいうパターンなんです?(白目
お久しぶりです、シアルフィ公爵家が嫡子シグルドです。
あの死亡フラグ建立イベから早くも三年が経ちました。
え、早すぎるにもほどがある? ははっ、赤ちゃんがひたすら絶望してる様子なんてお見せ出来ませんよ。
この名を頂いた以上、醜態は晒せませんしね。
死亡フラグなどへし折ればいいだけのことと悟りました。
原作シグルドが非業の死を遂げたのは、政治的な駆け引きに疎かったからなんですよ。
だったら政治的センスを磨けばいい。
なので只今パパンの蔵書室に侵入して読書中です。
すでに家庭教師との勉強により読み書きは完璧だったりします。
さて、まずはグランベル王国における貴族名鑑を頭に叩き込まねば……うん?
あれ? おかしいですね、知らない家名ばかりです。
盟友のユングヴィ家も宿敵たるヴェルトマー、ドズル家も載っていません……。
ボウロロープ候? レエブン候? ブルムラシュー候?
知らない子ですねぇ……(震え声
一夜明けて衝撃の事実が明らかとなりました。
ここグランベル王国じゃありません。当然寝取りワカメのアルヴィス卿も存在しません(重要
リ・エスティーゼ王国のシアルフィ公爵領、それが私の暮らしている場所の様です。
まったく知らない地名です(白目
えっと、つまりこの世界は聖戦の系譜っぽいだけで私に死亡フラグは立っていない?
そっかー、なら安心して最強の聖騎士を目指せますね!(油断
そうと分かれば今日はパパンが屋敷にいますし、剣術の手ほどきをお願いしてみましょう。