とある斜陽王国における勘違い戦線   作:himeneko

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現地勢=シリアス
ユグドラシル勢=シリアル
エンジョイ勢=画面外で暗黒神(笑)を蹂躙中


別視点、激震する王女と激怒する魔王

Side ガゼフ・ストロノーフ

 

 

のちの世に語られる聖魔戦争。

 

それは唐突に始まった。

シグルド公子が帝国に巣くう暗黒神ロプトウス討伐に単身乗り出したのだ。

そのことをラナー殿下に聞かされた時の驚愕。

何故自分たちグリューンリッターを使ってくれないのかという憤慨。

主君の判断への信頼。

まさに一言では言い表せない感情だ。

ブレインやクインティア兄妹たちも同様だろう。

 

そんな中、ラナー殿下の激が飛ぶ。

 

「この未曽有の危機に際し参陣してくれた多くの将兵に、まずは感謝を」

 

黄金の美姫が優雅に誠実に俺たちを労ってくださる。

 

「ご存知の通りシグルド様は世界を滅ぼす邪悪へ一人立ち向かわれました。

今こそ私たちは祖国を、家族を、友を、恋人を、そして隣人の為に立ち上がらねばなりません。

バハルス帝国は王国の敵です。

しかし暗黒神の暴虐に晒されているのは、帝国に住む無辜の民なのです。

ならば私は剣を執りましょう。

続く世代に恥じぬ生き様を見せるため、王国は邪悪な存在を決して許さないと示すために!」

 

心が熱くなる。

そうだ、俺はシグルド公子の騎士だ。

弱きものを守ることこそ、我ら聖騎士団グリューンリッターの誉れ。

今戦わずしていつ戦うというのだ!

 

「聖騎士団グリューンリッター総員10000名、ラナー王女殿下に従います!」

 

「出撃準備は整っています!」

 

「殿下、御命令を!」

 

流石は黄金と称される姫君だ。

騎士団の精鋭たちの心を瞬時に掌握するとは。

兵権をバイロン卿から委託されているとはいえ、彼女の資質は本物だな。

 

「敵は転移魔法で越境し軍を展開してくるでしょう。

予想される転移先はトブの大森林付近の平野、そこで野戦を仕掛け撃滅します。

これは王国を、いいえ、これは世界を救う戦いです」

 

目の前に巨大な転移門が現れる。

 

「総員騎乗! グリューンリッター出撃せよ!!」

 

鬨の声を上げながら俺は転移門へ突入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

雲一つない蒼穹の空が広がる草原に騎士団を展開する。

指揮官から一兵卒に至るまで、すさまじい練度を誇る精鋭たち。

今回はフールーダ老率いる魔導騎士と魔法詠唱者まで動員されている。

白金の竜王をして「頭がおかしい」と評される大陸最強の騎士団だ。

俺自身、その自負がある。

 

しかし奴らは違った。

 

空間転移特有の現象から九人の騎士たちが現れる。

たった九人だ。

だが全員が法国最強の少女に匹敵する圧力を放っている。

以前カルネ村でシグルド公子が戦った魔法剣士の同類、おそらく十二魔将だろう。

九人とも俺の魔剣ミストルティンに類する神器を携えている。

こいつらは群を蹂躙できる個だ!

そう判断した瞬間

 

「全軍後退! あれらは危険な存在です。こちらも最高戦力をもって打倒します!」

 

ラナー殿下の采配が飛ぶ。

王国の最精鋭、即ち

剣聖ブレイン・アングラウス

大賢者フールーダ・パラダイン

絶死絶命 番外席次

そして俺、ガゼフ・ストロノーフ

 

シグルド公子の下に集った一騎当千の四人は前進する。

 

「クインティア兄妹は私の護衛をお願いします。敵はあれだけではありません。

全軍を後退させつつ魔法詠唱者はガゼフ副団長たちを援護。

ソシアルナイト隊は戦場を大きく迂回して敵後方へ回り込みなさい!」

 

矢継ぎ早に指示を出すラナー殿下。

フールーダ老が考案した対シグルド公子戦術の効果は絶大だ。

数百人に及ぶ魔法詠唱者たちが一斉に魔法を唱え、次々に俺たちへ強化魔法が重ね掛けされていく。

難度に換算すれば30近くの上乗せ。

騎士として思うところはあるが、負けられぬ一戦故に迷いはない!

 

「我が名はガゼフ! グリューンリッター副団長ガゼフ・ストロノーフである!

もはや問答無用、二度と帝国の土を踏めぬと心得るがいい!!」

 

敵は油断しているのか反応が薄い。

ならば精々危険な敵から始末させてもらおうか。

 

「魔剣ミストルティンよ! この一太刀に無双の加護を! 武技<六光連斬>!!」

 

魔剣の加護により鋭さが倍加した六つの斬撃が司祭風の男を切り裂いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

Side ブレイン・アングラウス

 

 

開戦の狼煙となったガゼフの武技が魔将の一人を容易く葬った。

一撃が致命打になりかねん魔法詠唱者から始末するつもりだな。

それなら俺も

 

「世話になるぞバルムンク」

 

大将から授かった神剣バルムンクを抜き放ち、その性能を十全に機能させる。

羽根のように軽くなった身体は、音さえ置き去りにする領域まで加速する。

技の冴えは神仏だろうが両断できる高みまで研ぎ澄まされる。

 

「呆けたままあの世へ逝け。武技<流星>」

 

不可避の斬撃が敵の魔法詠唱者の男と、魔法騎士の女へ殺到する。

獲った!

そう確信した瞬間

 

「スキル<大盾>」

 

「なっ、弾かれた……!」

 

割り込んできた槍騎士が展開した光の大盾に俺の武技は完全に防がれた。

そう上手くはいかないか。

ちっ、魔法詠唱者が動き出しやがった!

 

「ロプトウス様に逆らうものに死を。《フォルセティ/風神の審判》」

 

「ふむ、神代の魔法とは興味深い。《トリプレットマジック/魔法三重化》《ボルガノン/大火炎噴流》」

 

敵が放った緑の竜の咢をフールーダの爺さんが相殺する。

助かった!

俺は返す刀で割り込んできた槍騎士を吹き飛ばす。

 

「お前の魔法防御は鼻紙にも劣るのだから注意せぬか」

 

「助かったぜ、爺さん」

 

「しかし味方ごと葬るつもりか。数の不利もある。ここは出し惜しみ出来ぬな」

 

「そうだな、あっちでガゼフと法国最強の嬢ちゃんが大立ち回りしてやがる」

 

「ブレインよ、お前はあの槍騎士の相手をせよ。それが済み次第、副団長の助太刀に入れ」

 

そう言ってフールーダは風の魔法詠唱者と、未だ動きを見せない魔法騎士の女に向かい合う。

 

「了解だ。魔法戦なら爺さんの右に出るヤツなんざいないからな」

 

「何を戯けたことを。目の前の二人は優に私の魔力を上回っておる」

 

「はあ!?」

 

嘘だろ!?

この爺さんの魔法は大将すら認める領域なんだぞ!?

人類最高の魔法詠唱者。

第十位階を操る到達者。

その魔導は万の大軍すら容易に屠るまさに怪物。

 

「魔力の多寡など些細な事だ。こやつらは傀儡、すでに死人よ」

 

「どういうことだ?」

 

「十二聖戦士の成れの果てといったところか。死して暗黒神とやらの傀儡にされたのだろう」

 

胸糞の悪い話だ。

大将の先祖の同僚ってことだろ。

俺だって剣士の端くれだ。

戦場で死ぬことに恐怖はない。

けど死後を弄ばれるなんざ認められねえ!

武人としての誇りを汚すような真似を許しちゃいけないんだ。

 

そうか、アンタたちは操られながらも抵抗してるんだな……。

俺たちがまともに戦えているのは、そういうことなんだろ?

魔将となり果て人類の敵になるならいっそ、ってことかよ。

いいぜ。

その覚悟に応えずして何が剣聖だ!

目の前の槍騎士を睨みつけ吠える。

 

「俺はブレイン・アングラウス。聖戦士バルドの直系、シグルド公子の剣だ!」

 

「……十二魔将ツヴァイ。地槍ゲイボルグの担い手なり」

 

「尋常に勝負っ!!」

 

速さの剣と力の槍が激突する。

 

 

 

 

 

Side ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ

 

 

ヤバちっくですの(白目

 

戦場で指揮を執っているラナーです。

なんでお姫様が?と思われる方も多いでしょう。

でもわたしの指揮能力を超える人材がシグルド様以外にいらっしゃらないから仕方ありませんの。

無駄に高性能な脳みそが恨めしい。

 

まあ十二魔将とやらは問題ないわ。

ガゼフたちなら十分拮抗する状況に持ち込めるもの。

問題は十二魔将を操っている存在とナザリックよ。

皆勘違いしているけれど、暗黒神が操り主ではないわ。

暗黒神を目覚めさせようと画策した誰か、これが十二魔将の操り主ね。

そしてそいつがこの戦場を俯瞰していると仮定するならば……

 

 

「ラナー王女殿下とお見受けするが、相違ありませんかな?」

 

 

ほーらわたしを殺しに来た。

ステイ、ステイ、クレマンティーヌ。

前に出て庇ってくれるのは心強いし有難いわ。

でも聞くべきことがあるのよ。

ていうか何この薄気味悪いお爺さん。

強者特有の雰囲気はあるけど、なんか陰気臭い。

フールーダが大賢者なら、このお爺さんは暗黒魔導士って感じかしら。

 

「ええ、その通りですわ。あなたはどなた様でしょうか?」

 

「これは失礼を。私は暗黒神ロプトウス様にお仕えする暗黒司祭マンフロイでございます」

 

「暗黒神の……」

 

「クックック、そう怯えずともよいのです」

 

「怯えてなどいません。同じ人間なのに何故暗黒神などに傾倒するのか疑問に思っただけです」

 

「同じ人間?……クハハハハ、これは傑作ですな!」

 

「何がおかしいのです?」

 

「おかしいに決まっている! 貴様ら如き劣等種と私が同じだと勘違いしているのだからな!」

 

「それが本性ですか」

 

「根本的に違うのだよ。ユグドラシルの人間からするとこの世界のなんと脆弱なことか!」

 

「ユグドラシル?」

 

「貴様らも知る六大神やバルドの出身世界よ。もっともあのような凡骨とロプトウス様では格が違うがな」

 

はい、確定。

やっぱユグドラシル産だったかぁ……。

てことはシグルド様は神人になるのかな。

まあ出自なんて関係なしに神ですけどね!

ナチュラルボーン王子さま! 理想の騎士様! わたしのフィアンセ!

嗚呼、今日も脳内領域に永久保存してるシグルド様の輝く微笑みが尊い……(恍惚

 

「力を取り戻すまで長い時間を費やした。ロプトウス様の依り代を成熟させるのにも苦労した」

 

「…………」

 

「クク、聡明な皇子が絶望に屈する様は見ものであったぞ」

 

「…………」

 

「バルドの小倅への対抗心を敵愾心に変えてやるだけで、簡単に墜ちてしまうのだからな」

 

「…………」

 

「しかしバルドの小倅は目障りだ。十二聖戦士を率いてロプトウス様を封印した者と同じ忌名を持つあの小倅はな!」

 

「…………」

 

「姿まで瓜二つとは忌々しい。だが今ごろロプトウス様が直々に葬っておられるだろう」

 

「…………」

 

「どうした? 恐怖のあまり声も出ぬか」

 

いけないわ。

シグルド様のご尊顔をリフレインしていたら軽く意識が飛んでたなんて……。

あら、クレマンティーヌが激おこプンプン丸じゃない。

シグルド様は絶対に負けない?

ええ、ええ、そうなのだわ。

じめじめした暗黒神なんて旧世代の遺物なんか瞬殺するに決まってるもの!

 

「だが容赦はせぬ。武の要たるバルドの小倅と知の要たる貴様を殺せば、あとは有象無象に過ぎぬからな」

 

「ラナー殿下お下がりを。この不心得者は私が斬り伏せますので」

 

「ええ、お願いねクレマンティーヌ」

 

「はっ!」

 

よし、やっておしまいクレマンティーヌ。

もうこのお爺さんは用済みよ。

長話をしている間に、フールーダ謹製の魔法阻害結界を展開させてもらったからね。

これで魔法詠唱者は満足に戦えないわ。

協力ありがとう、フールーダのお弟子さんたち。

 

「ラナー殿下大変です!」

 

「クアイエッセ、どうしましたか?」

 

「何者かが敵後方へ回り込ませていたソシアルナイト部隊を蹴散らしながらこちらへ向かって来ます!」

 

「十二魔将のうちの一騎でしょうか」

 

「いいえ、十二魔将は副団長たちと交戦中です。ッ、もうそこまで接近して……!」

 

 

瞬間、クレマンティーヌと戦っていたマンフロイのお腹から巨大な円錐が生えてきた。

 

 

「があああああああッ!?!?」

 

「なんてまあ品のない悲鳴でありんしょう」

 

「き、きさっ、貴様はぁ……!」

 

突然の事態に襲撃者とマンフロイ以外は硬直してしまう。

円錐の正体は無骨な槍だった。

紅玉の瞳に銀糸の御髪。

紅のドレスのような鎧に身を包んだ絶世の美少女。

 

「わらわはシャルティア・ブラッドフォールン。この戦場を地獄に変える、可憐で冷酷な化け物でありんす」

 

 

 

あぁ

 

アイエエエ!?

シャルティア!? シャルティアナンデ!?

慎重なアインズ様ならこの戦争には不介入だと確信していたのに!?

なんでこのタイミングなの!?

あばばっあばばばばば

ばぶーばぶー(退行

 

「さあ、豚のような悲鳴を上げてくれなんし」

 

「ごふあっ!?」

 

「まずは一匹。次は誰がわたしの相手をしてくれ…」

 

 

「《グラスプ・ハート/心臓掌握》!!」

 

 

「あはんッ!?」

 

へあっ!?

しゃるてぃあ・ぶらっどふぉーるんがたおれた?

え、どうして?

 

 

「この馬鹿者がああああ!!!」

 

「あいたぁ!? ももも、モモンガ様ぁ!?」

 

「このお馬鹿! 単細胞! 誰の許可を得て勝手に出撃しているんだ!」

 

「え、ええっと、デミウルゴス?」

 

「貴様もかデミウルゴス!」

 

「ぴぃ!?」

 

「全てのプランが台無しだ! 俺の理想が! こんな仕打ち、神でも許されるものか!!」

 

「も、モモンガ様……」

 

「……ああ、すまない。少し言い過ぎたな」

 

「いいえ、もっと罵ってほしいでありんす! あぁん、下着が大変なことに……」

 

「ええー……」

 

 

 

 

拝啓シグルド様、恐れていた最悪の事態が発生してしまいました。

 

 

 

ほ ね が き た (白目

 

 




ラナー王女(転)の受難はここから始まる(白目
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