とある斜陽王国における勘違い戦線   作:himeneko

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更新が遅れてすみません。


ナザリックに依存していないモモンガ様

モモンガ様に依存しているNPCたち

沼にはまるアルベド


ここからのハッピーエンドなどモモンガ様にかかれば10秒でイナフ(白目


魔王、圧倒的魔力で敵を粉砕する

Side モモンガ

 

 

戦場からこんにちは、鈴木悟ことモモンガです。

 

戦場のド真ん中で美少女に変態行為を強請られるオーバーロード(白目

これは魔王ムーブじゃない!

ぺロロンチーノさん、早く娘さんを引き取りに来てくださいよ!?(切実

ああ、もう!

王国軍のみなさんもドン引きしてるじゃないですかやだー!

お姫さまなんて可哀想に、すっかり怯えて震えちゃってるよ。

あ、この人……シグルドさんの婚約者だ。

不味いぞ

 

 

『そんな変態だったなんて、見損ないましたよモモンガさん』

 

 

なんて事になったら軽く死ねる(絶望

あの人、キチガイだけど児童ポルノとか絶対に許さない高潔な人でもあるからなぁ。

違うんです、ぺロロンチーノってヤツが全部悪いんです。

シャルティアも俺も被害者にすぎないんです!

って、脳内で言い訳してる場合じゃないぞ。

すぐに誤解を解かないと!

魔王ムーブで華麗に乗り切るんだ!

 

「勇ましき王国の姫君よ、まずは部下の非礼を詫びよう」

 

「ふぇ!?」

 

「怯えずともよい。我が宿敵の掌中の珠に手出しはしない」

 

「!」

 

「我が名はモモンガ! ナザリック地下大墳墓を統べる者にして死を司る魔王である!」

 

「魔王……?」

 

「暗黒神などという紛い物を粛清するために地上へ罷り越した」

 

気分が高揚してきた。

ああ、魔王ムーブは最高だなぁ。

興が乗ってきたぞ。

一流の魔王は失態を犯した部下に、挽回のチャンスを与えるものだよな。

 

「シャルティアよ」

 

「は、はい!」

 

「お前に汚名を雪ぐ機会を与えよう」

 

「本当ですか!?」

 

「うむ。我が宿敵、聖騎士シグルドに代わって十二魔将を殲滅せよ」

 

「聖騎士シグルド!? それはあの100回殺しても飽き足らないド腐れ畜生のシグルドですか!?」

 

「へ……?」

 

「何度もモモンガ様の玉体を傷物にした、あの憎き聖騎士めええッ!!」

 

あー、しょっちゅうPvPを挑んでは返り討ちにされてたから、そのことを言ってるのか?

相当にPSも向上したし、何より最高に楽しい時間だったから感謝こそすれ恨むなんて筋違いなんだけど。

あの、シャルティアさん?

お顔が崩れてますよ。

というか大切な友人を罵倒するなんて普通に許せないんだが……。

 

「こいつらを皆殺しにしたあと愉快なオブジェに作り直してやる!」

 

「いや、王国軍に手を出しては…」

 

「それを見た腐れ聖騎士の表情はさぞや情けないものでありんしょう! ですよね、モモンガ様!」

 

「だから敵対は…」

 

「死ねぇ! 聖騎士の仲間は苦しみもがいて死ねえぇっ!!」

 

「やめんか馬鹿者!《グラスプ・ハート/心臓掌握》」

 

「あふん!?」

 

あ、あっぶねえ……。

このアホの子吸血鬼、危うく王国騎士たちを惨殺するところだったぞ。

人がせっかく物語終盤でパーティーインする誇り高くも義理堅い魔王ムーブでいってたのに。

ここで鮮やかに十二魔将(笑)を殲滅して圧倒的強者感を醸す流れが台無しだよ。

何より部下を制御出来ない魔王なんて、俺の魔王ムーブが許しはしない!

 

「シャルティアよ」

 

「ハァハァ……モモンガ様に心臓を鷲掴みにされる快感……癖になりそう」

 

「ん、んんッ!! ……シャルティアよ」

 

「はっ、モモンガ様!?」

 

「オーダーを復唱し実行するのだ」

 

「し、しかし……!」

 

「あまり私を失望させてくれるな。私は寛大だが我慢にも限界があるのだぞ?」

 

「しつ……ぼう……!? これより敵勢力の殲滅を実行します!!」

 

どうしたんだ?

まるで人が変わったように悲壮感漂う決意をシャルティアが醸している。

おお、流石は守護者最強。

早速敵に突撃して行ったぞ。

よしよし、シャルティアも指示に従ってくれたし王国側へのフォローもしないとな。

敵対は絶対にNG、かといって媚びへつらうのも魔王ムーブ的にあり得ない。

そう、あくまで俺は魔王モモンガなんだ。

肉体はアンデッドになり果てた。

だけどかろうじて精神は人間寄りだと自覚している。

鈴木悟としての心が叫んでいるんだ。

 

俺もシグルドさんと同じ異世界エンジョイ勢になりたいと!!

 

 

 

 

ではエンジョイを始めるとしよう(病気

もう慎重だの自重だの知った事か。

俺は正しき心を持った暗黒の魔王。

さながら光と闇が合わさり最強に見える!

さあ世界に我が魔王ムーブを刻みつける時が来た。

 

手始めに王国との交渉だ。

シグルドさんと遊べるように持っていくんだ。

異世界に迷い込んだ魔王と聖騎士が元の世界に帰還するまで共闘する流れでひとつ!

絶対にリアルになんか戻らないけどな。

 

おや、さっきシャルティアに串刺しにされてた魔法詠唱者が逃げようとしてる。

これは教えてやらねばなるまい。

魔王からは逃げられないってね(微笑

 

「何処へ行こうというのだ?」

 

「おのれ……大望成就を目前にして、有象無象が邪魔をしおってぇぇ!!」

 

「大望? それは破滅の竜王の復活のことかね?」

 

「そうだ……! ロプトウス様復活の暁には、この世界の全ては闇と絶望で支配されるのだ!」

 

「フッ、フフフ、フハハハハハ!!!」

 

「貴様ぁ、なにがおかしい!」

 

「滑稽だとも。ロプトウスとやらは既に我が宿敵が討滅した後だと知らないのか?」

 

「……は?」

 

「お前の努力は徒労に終わったと告げたのだ」

 

「そんな馬鹿な! そんな……まさか、ロプトウス様の存在を感じられない……?」

 

「嘘など吐かないさ。私は正直で親切なのだよ」

 

「馬鹿な……」

 

おー、いい感じに心が折れたみたいだ。

どうだ、俺は心折だったろう?(邪悪

確かこいつ破滅の竜王の設定にあった配下の闇司祭だよな。

フレーバーテキストだけの存在まで実体化してるのか?

細かいことは要検証だな。

おっと、その前にこの闇司祭に止めを刺さないと。

 

「では死ぬがいい。《リアリティ・スラッシュ/現断》」

 

「ごはっ!」

 

「我が魔力は神をも屠る。《ペネトレートマジック/魔法抵抗難度強化》《インプロージョン/内部爆散》」

 

「!?」

 

ボンっと汚い花火が炸裂した。

うわ、グロっ!?

あ、お姫様に肉片が……。

 

 

「きゃああーー!? 何これナニコレ!?」

 

「ラナー様お気を確かに!」

 

「衛生兵! 衛生兵! ラナー殿下が肉片塗れになっておられるぞ!?」

 

「銀髪美少女にした仕打ちといい、王女殿下への嫌がらせといい酷すぎる!」

 

「魔王モモンガ……なんてえげつないヤツなんだ!」

 

 

待って!?

せめて無慈悲とかにしてよ!

えげつない魔王とか嫌すぎるんだけど!?

沈静化……

ふぅ、人を殺しても動揺とか一切ないんだなー(逃避

 

 

「あの御方は、もしやスルシャーナ様?」

 

「何者であろうとラナー様に仇成すなら斬り捨てるまで」

 

「待てクレマンティーヌ!?」

 

「私にとって神はシグルド様ただ御一人。魔王よ、我が武技の煌めき受けるがいい!」

 

 

うおっ、なんだ!?

刺突系スキル? そんなもの俺には通用しな…

ぐわあああーーーーー!?!?

ファニーボーンにクリティカルヒットしたーー!?

結構HP削られてる!?

な、なんだこの女騎士は!

 

沈静化……

 

流石は王女の護衛を任される騎士という事か。

レベルはそれなりっぽいけど戦い方が上手い。

<上位物理無効化Ⅲ>自体は発動したのに無効化というか純粋な技術で突破された感じだな。

おまけに防御力無視の効果付きか。

そうそう、こういうレベル差を技術で覆すってのがいいんだよなぁ。

 

「やるではないか、女騎士よ」

 

「…………」

 

「この私に僅かとはいえダメージを与えたのだ。称賛に値するぞ」

 

「戯言を……。一度で倒れぬならもう一度叩き込むまでだ」

 

「そう何度も許すと思うのか? 出でよ我が下僕<中位アンデッド創造>デスナイトよ!」

 

騎士には騎士をぶつける、これも一流の魔王ムーブ!

さあ、どんどん行くぞ。

たくさん生み出してみると、まさに魔王の騎士団!

計12体のデスナイト。

雑魚モンスターでもこうして並べれば壮観だなぁ。

 

「そのような木偶を揃えたところで! 騎士たちよ、総員抜刀!!」

 

「「「「「応っ!!」」」」」

 

「今こそ我らの忠義を示す時! 邪悪を滅するグリューンリッターの本懐を遂げよ!」

 

あの女騎士……クレマンティーヌだっけ?が激を飛ばすと同時に騎士たちがデスナイトにかかってくる。

おお、デスナイトの巨体を恐れもせずよくやる。

クレマンティーヌには数段劣るけど、こういう勇猛な騎士団ってカッコイイなぁ。

これ全員シグルドさんの部下というか仲間なんでしょ?

やっぱりシグルドさんはズルい(嫉妬

 

俺なんてネグレクトされたNPCの世話で疲れ切っていたというのに!

あいつら放っておくとすぐ低俗な邪悪行為に及ぶから困るんだよな。

俺の理想とする魔王ムーブとは相いれないよ。

邪悪を行うには崇高な動機が必要なんだ。

世界を良い方向へと導くためとか、譲れない信念を貫くためとかさ。

断じてナザリックの維持や我欲の為に行うものであってはいけないんだ。

 

そうでなければシグルドさんと同じステージに立てない。

絶対悪の魔王なんてウルベルトさんも認めちゃいない。

悪には悪の花道がある。

弱き者には寛大に、強き者には不遜に、邪悪な存在には圧倒的暴力で相対する。

そうだ、我が暴は蹂躙するものを選ぶのだ(厨二

聖騎士の義、魔王の暴。

 

いいぞ最高だ!

 

今のをまとめてナザリックのNPCたちを教育するとしよう(手遅れ

圧倒的支配者としてナザリックに君臨してやろうじゃないか。

もう居ないギルメンたちもそう望んでるに違いない(勘違い

 

ん? 肉片塗れにしてしまったお姫さまが出てきたぞ。

 

 

 

 

 

 

Side ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ

 

 

とても不味いことになった。

 

吸血鬼が来て、骨が来て、わたしは肉片塗れにされました(発狂

 

いえ、汚れた衣服や身体は生活魔法でキレイになったのだけれど。

問題はアインズ……モモンガ様よ。

今クレマンティーヌたちが必死に応戦してるけど、絶対にモモンガ様は本気じゃない。

得意の死霊系魔術も絶望のオーラも使っていないもの。

それでもデスナイトを量産して後方から指揮する様は威風堂々たる魔王にしか見えない。

慎重で冷徹で姑息で、もっと遊びのない性格だと思っていたから意外な展開ね。

 

でも最悪な現状に変わりはないわ。

即時撤退が望ましいのにそれは不可能だもの。

絶対周囲に伏兵を配置してるに違いない。

モモンガ様ならそうするし、わたしだってそうする。

散開して撤退したら各個撃破されてナザリック送り確定ね。

まとまって撤退しても超位魔法で一撃死。

頼みの綱のフールーダの転移魔法は、彼自身が交戦中で使用不可だし軽く詰んでるわ。

 

だけどこの身は黄金と称されし第三王女。

この程度の逆境、切り抜けられないなんて嘘だ。

戦力差は絶望的でもつけ入る隙はある。

モモンガ様はシグルド様のことを宿敵と呼んだ。

それがシグルド様本人なのか、はたまた同名の別人であるシグルド氏なのかはわからない。

でもそれは些細な事だわ。

 

重要なのは、あのモモンガ様がギルメンの子供と認識しているシャルティアを容赦なくしばき倒した点。

NPCに対し叱責はしても暴力は振るわないモモンガ様が、だ。

これは異常事態よ。

もしかしたら他に優先度の高い存在がいるのかもしれない。

例えば……他のギルメンも一緒に転移しているとかね(白目

 

ま、まあそれはそれとしてシャルティアを強引に叩いてまで、わたしたち王国との殺し合いを避けた。

あそこで止めなかったら、間違いなくシャルティアは騎士たちを虐殺し、否応なしに決戦になったでしょう。

でも実際はモモンガ様が手心を加えているから小競り合いレベルで済んでいるのよ。

……壊滅させられたソシアルナイト部隊に戦死者がいないのも幸いしたけれど。

 

つまり最低でも、シグルド氏との破滅的な対立≧ナザリックNPC、この式が現時点では成立していると仮定できる。

そこにつけ入る隙がある。

なんとしても戦力を維持したまま、世界vsナザリックの構図に持っていく、持っていって見せる!

 

さあ、交渉を始めましょう。

 

 

 

 

 

 

Side モモンガ

 

 

「第三王女ラナーの名において命じます。勇敢なる騎士たちよ、剣を引きなさい!」

 

 

えぇ~、今一番いいところなのに引いちゃうの?

デスナイト三体を連携させたデス・トライアングルアタックを試そうと思っていたのにさ(不満

まだやれるだろ?

なんでここで引いちゃうんだよ!

 

「戦うべき敵を見誤ってはいけません。確かに彼の魔王は驚異的な力を持っているでしょう。

しかし彼は仰いました。暗黒神を名乗る紛い物を討伐するのが目的であると」

 

まあ方便なんですけどねー。

暴走したクソガキの失態を分厚いオブラートで梱包して誤魔化しただけなんだよね。

勘違いしてくれるなら有難いけどさ。

 

「魔王モモンガに問います。貴方は王国に仇成す存在ですか?」

 

成さない成さない。

俺は平時に乱を望むような三流魔王じゃないんだ。

ただ友人と異世界をエンジョイしたいだけなんです。

ちょっとお宅の婚約者と世界の果てまで冒険したいだけだから。

あ、でも所帯持ちになったら、たっちさんみたいに引退するのか……?(絶望

いやいや、あのシグルドさんが家庭を顧みるような殊勝な人間なわけがないよな(確信

どうせ愛想を尽かされるかNTRれてお終いでしょ。

 

「よかった……。敵対の意思がないというならここは引いていただけませんか?」

 

うんうん、いいですよ。

イイ感じに魔王ムーブを堪能できたし、王国側にも見せつけることが出来たし満足だよ。

やっぱ我慢は体に良くないと骨身に染みた。

骨だけに。

 

「ありがとうございます。お互い不幸な行き違いがありましたが、今後は良き関係を築いていきたいですね」

 

ほんとそれ。

俺の魔王ムーブとシグルドさんの聖騎士ムーブは競合しないんだ。

絶対に良好な関係を築けると確信してるとも。

いやー、物分かりのいい王女様で助かったなぁ。

 

「では私たち聖騎士団は残存の十二魔将の討伐に専念します」

 

俺も手伝いますよ。

まあ既に片が付いてるかもしれないけど……うん? アルベドからメッセージか。

 

 

『モモンガ様にご報告が』

 

 

なにかな?

今はとても気分がいい。

遠慮せずストレートかつ簡潔に報告してくれ。

 

 

『デミウルゴスが独断で配下の悪魔たちと王都へ侵攻しました』

 

 

ほう、王都に侵攻か。

 

…………

 

…………

 

…………

 

はああああああああ!?!? 何考えてるんだデミウルゴスは!?

 

 




次回予告

デミえもん「今です、戦力が出払っている敵本丸を落とすのです!」

モモンガ様「ちょ、おま」

??「陛下の危機だ。急ぎ馳せ参じねば!」


その日、王都に血の雨が降る(何色?

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