とある斜陽王国における勘違い戦線   作:himeneko

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ナザリックにおける温度差問題
どうしてこうなるまで放置したんだ(白目

今回は杞憂悪魔さん視点です


別視点、とある悪魔の苦渋の決断

一人去り、二人去り、三人去った。

 

大丈夫、いつか必ずお戻りになられると信じていた。

 

四人去り、五人去り、十人去った。

 

大丈夫、至高の御方が16人も残ってくださっているのだから。

 

十五人去り、モモンガ様御一人になった。

 

大丈夫、まだモモンガ様に忠義を尽くせるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side デミウルゴス

 

 

ナザリックは今、未曽有の危機に瀕している。

 

異世界転移

これは取るに足らない問題だ。

モモンガ様の深淵なる英知がある限り、このナザリックに危機など訪れない。

 

聖騎士シグルド

これも取るに足らない問題だ。

究極の個ともいえる戦闘力だが、ナザリックの物量で圧し潰せる範疇だ。

最悪の場合、ナザリックに誘引して撃破してしまえばよい。

 

モモンガ様の失望

これこそが大問題だ。

最後まで残ってくださった慈悲深き至高の御方。

その深海よりなお深き慈悲が尽き果てようとしている。

他ならぬ我ら僕共の不甲斐なさゆえに。

 

モモンガ様のご不満が日々増大していると理解しているのに、何も出来ない不甲斐なさ。

あまつさえ口になさるのは、あの憎き聖騎士の話題ばかり。

私の中の焦りは筆舌に尽くしがたい。

このままでは我らは……モモンガ様に捨てられるのではないか?

 

手を打たねばならない、可及的速やかに。

例えこの身が滅び、至高の御方より侮蔑を賜ろうとも成さねばならない。

ナザリックの有用性を示し、今一度モモンガ様の御心を満たせる場所にならねばならない。

だというのに……

 

 

「アルベド! 一体どういうつもりなのですか!!」

 

「あらデミウルゴス。貴方こそ第七階層の守護を放棄して何をしているのかしら?」

 

「惚けないで頂きたい! 何故モモンガ様をお一人で行かせたのかと聞いている!」

 

「モモンガ様が、そう望まれたからよ」

 

「馬鹿な……。それではシャルティアを単騎特攻させた意味がない……」

 

「最大効率で王国の戦力を削ぎつつ、あの子なら王国との関係を決定的に拗らせてくれたでしょうね」

 

「そこまで理解していながら……!」

 

「だからこそよ。モモンガ様はナザリックより聖騎士シグルド様に執着されているのだもの」

 

「なっ!?」

 

頭をかち割られたかのような衝撃。

アルベドが何を言っているのか理解するのに数瞬を要した。

彼の聖騎士に対し、モモンガ様が一定の敬意を払っていたのは知っている。

だがそれはあくまで彼の戦闘技術と精神性に対してだと理解していた。

だからこそ先手を打ったのだ。

 

「乱心したのですか!? そんな事、あるはずがない!」

 

「くふー、敬愛する主を怨敵に盗られる激情! これは冒涜的なトライアングルが形成されちゃうかも!?」

 

「ふざけているのですか!」

 

「むしろお戯れになられているのはモモンガ様よ?」

 

「不敬な! 何故貴女のようなものが守護者統括なのか理解できない!」

 

「そう在れと望まれたのは至高の御方よ。それを認められないあなたの方が不敬じゃない?」

 

「くっ、……確かに今のは失言でした」

 

「ええ、失言ね。分かったのなら己が職責を全うしなさい」

 

そう言い放つアルベドの目は優しかった。

何故だ、貴女ほど聡明な女性なら理解しているはずなのに。

だが既に賽は投げられた。

モモンガ様が居られないのも考えようによっては好都合だ。

電撃戦をもって王都を攻略する。

憎き聖騎士、その最大の弱点は忠義を捧げる対象……即ち国王だ。

 

国王さえ押さえれば、シグルドは木偶人形に成り下がるだろう。

あの男は絶対に国王を見捨てられない。

無双の騎士も戦えなければ脆弱な人間にすぎない。

ヤツさえ葬り去れば、モモンガ様も我ら僕をお認め下さるに違いない。

私自身は独断専行で裁かれようとも、私にはこの道しかないのだ。

猶予はもう僅かしかないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王都侵攻は容易に進んだ。

大量のシャドウデーモンを放っただけで王都は混乱の渦にのみ込まれた。

王都に残った僅かな騎士たちは対応に追われ、有能な冒険者も同様だった。

王城の前で蹴散らした最高位冒険者パーティーも脅威足り得なかった。

そして聖戦士の系譜とやらも

 

 

「悪魔め、陛下の下へは行かせぬ」

 

「これはこれは、王国にその人ありと謳われたシアルフィ公爵直々にお出ましとは」

 

「老いたりとはいえ、かつては聖騎士団を率いた身。易々と抜けると思わぬことだ」

 

「御忠告痛み入ります。ですが……」

 

 

『自害したまえ』

 

繰り出したのは支配の呪言。

Lv40以下の者を強制的に支配下に置く悪魔的スキル。

精神耐性など各種耐性も脆弱な現地人に防ぐ術はないはずだが

 

「舐められたものだな。こちらから往くぞ! 武技<竜穿>!」

 

「ほう、私の支配の呪言を跳ね除けるとは。流石は元聖騎士団団長といったところですか」

 

「効いて、いない……だと?」

 

「その程度の装備とスキルでは、私を傷つけることなど叶いませんよ」

 

「ならば、武技<月光>!」

 

「防御貫通スキルですか。しかし当たらなければ無意味です」

 

「ぬおおおーーッ!!」

 

「遊びはお終いです。悪魔の諸相:豪魔の巨腕」

 

「武技<不落要塞>!」

 

「むっ、弾かれ…」

 

「逃さぬ! <即応反射><月光>!!」

 

「悪魔の諸相:八肢の迅速」

 

一進一退の攻防。

レベル差は歴然なはずなのに攻めきれない。

純粋な戦闘職ではないとはいえ、まさか守護者である自分を技術面で抑えるとは。

意外な伏兵がいたものだ。

 

「しかし兵を伏せていたのはこちらも同じ」

 

「なんだと?」

 

「ご苦労だったね強欲の魔将。無事国王を確保できたようだね」

 

 

「バイロン……すまぬ……」

 

 

「へ、陛下!?」

 

「さあ抵抗はここまでです。君も武器を捨て我々に従ってもらおう」

 

ここまでは作戦通り。

城門からここまで派手に暴れた甲斐はあった。

部下の魔将が容易に国王を確保できたからね。

本当ならもっと人的資源と物資に損害を与えておきたいところだが自重しよう。

最優先目標たる国王は手中に収めた。

あとはナザリックに連行…

 

 

「があッ!?」

 

 

……ッ、何者かに強欲の魔将がやられた!?

このタイミングで、こんなふざけた真似をするのは――――

 

 

「お怪我はございませんか、国王陛下」

 

「そ、そなたは一体……?」

 

「私は至高の御方にお仕えする執事、セバスと申します。お見知りおきを」

 

 

知らず奥歯を噛みしめうめき声が漏れる。

ナザリックの命運を背負う私の邪魔をするとは何事だ!

おそらくアルベドの差し金だろう。

だが私は負けない!

負けてしまえばナザリックは、我々僕の未来はどうなる!

 

「セバス、そこをどきなさい!!」

 

「お断りします」

 

「貴様も分かっているはずだ! このままではモモ…」

 

「黙りなさい。私は悪魔と話す舌など持っていないのです」

 

「なっ」

 

「これよりオペレーション『クライ・レッド・オーガ』を遂行します……!」

 

 

普段のセバスらしからぬ物言いに怯む。

その一瞬

戦鬼の如く気炎を吐くセバスの拳が、正確に私の顔面に突き刺さった。

 

 




デミえもん「聖騎士さえ殺せばモモンガ様は我々僕を見てくださる!」

セバス「妙な命令ですがアルベド様には深い考えがあるのでしょう」

アルベド(腐)「セバス×デミウルゴスhshs」


大体こんな感じ(震え声

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