ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

103 / 324
神器全部封印されたヒロイ。

さあ、どうする!!


第三章 38 拳と拳

 

 俺は、渾身の拳を叩き込んだ。

 

「グハァ!?」

 

 野郎はたたらを踏むが、すぐに立ち直る。

 

 そこを狙いすまして膝蹴りを叩き込む。

 

「グフォッ!?」

 

「……どうした? 苦しめて殺すんじゃなかったのかよ?」

 

 俺はステップを踏んで体勢を取りながら、野郎を睨み付ける。

 

 俺が、神器頼りだとでも思ったか?

 

 聖槍をできる限り使うなって言われてたから、これでも聖槍以外の戦闘技術だって習得している。拳銃なら片手撃ちでも結構命中率でかいんだよ。

 

 格闘技については当たり前だ。アザゼル先生から提案された魔剣創造の運用方法の都合上、殴り合いの技量は絶対いるからな。ちゃんと鍛えてる。

 

 ……そもそも数々の化け物相手に渡り合ってきた俺が、フィジカル弱いわけねえだろ。なめんな。

 

「クソ……がぁ!!」

 

 野郎はすぐに立ち直って殴りかかってくる。

 

 俺もそれに対応して殴り返す。

 

 連続して拳の応酬が繰り返され、俺達は割とボコボコになった。

 

「負けてたまるかぁ!! 我は、リムヴァン様と曹操の為に、命ぐらい賭けてやるって決めてんだよ!!」

 

「洗脳されたわけじゃねえみたいだな! だったらなんでヴィクターにつく!!」

 

 拳と拳がぶつかり合い、血がにじむ。

 

 そして組み付いて睨み合い、俺達は頭突きをぶつけ合った。

 

 この野郎、石頭してんじゃねえか。

 

「ああ!? 決まってんだろ!! 糞みてぇな人生にチャンスくれたからに決まってんだろうが!!」

 

 更に頭突きが叩き込まれて、俺の視界に火花が散った。

 

「我は手前と同じ浮浪児だよ!! そんなクソみたいな人生で、まともな飯をくれる奴がいるってんなら、そりゃ命ぐらい賭けんだろうが!!」

 

 そうかい。そう言うことか。

 

 確かに、現場で殺し合いする奴の動機なんてそんなもんか。

 

 学のねえ奴は食う為に殺し合いするしかねえもんな! 昔の傭兵とかそんなのだけらしいしよ!!

 

「この糞みたいな人生、漸く少しはまともになったんだ!! 手を伸ばしもしなかった連中がとやかく言ってんじゃねえぞ!!」

 

 ……なるほどな、正論だ。

 

 闇の中で光が見えれば、そこに縋りつくのが普通だ。

 

 闇の中で道も見えないのに、前に進めるほど人間は強くねえ。よしんばいても一握りだ。

 

 ……ごく当たり前の、どこにでもある話だ。

 

 それが、世界の現実だ。

 

 そして、野郎の敵意の視線は俺に向けられる。

 

「ついでにいえば、我は逆恨みだがお前が大嫌いだ!!」

 

 俺の拳を交わし、鳩尾に拳がめり込んだ。

 

 意地で何とか我慢するが、その隙にさらにワンツーパンチが叩き込まれる。

 

「我と違い何も持ってないにも関わらず、我よりも良い生活しやがって! 挙句の果てに神滅具込みとはいえ神器三つ移植だと!? ふざけんなこらぁ!」

 

 いやそれは流石に言いがかりだ!!

 

 俺だって苦労してんだぞ、この野郎!!

 

「流石に知るかボケぇええええ!!!」

 

 俺は渾身の拳を叩き込む。

 

 のけぞる野郎に更にボディーブローを叩き込んで駒の字に曲げる。

 

 そのまま後頭部に一撃叩き込もうとしたが、それより先に復帰した野郎が俺にアッパーカット。

 

「「クソッタレ!!」」

 

 そして体制を整えたやろうと、同じくリカバリーした俺は全力で右手を握り締め―

 

「「ぶちのめす」」

 

 全力で顔面に拳を叩き込んだ。

 

 ……そして衝撃が叩き込まれ―

 

「俺の、勝ちだ!!」

 

 ―俺は、野郎を叩きのめした。

 

 ……悪いな。こちとら実践と訓練を高水準で潜り抜けてんだ。神器一つしか持ってねえ格下に負けるわけにはいかねえんだよ。

 

 英雄の道はとても険しいんだ。そう簡単にはやられられねえ。

 

 だが……。

 

「いい拳だった。心に響いたぜ、この野郎」

 

 これだけの拳を喰らったのは、初めてかもしれねえな。

 

 そういえばイッセーが言ってたな。

 

 龍王タンニーンさん曰く、どんなものにしろ、籠った一撃は真に響くって。確かにその通りだぜ。

 

 いい拳だったぜ。だが、負けてやるわけにはいかねえ。

 

 さて、それじゃあさっさと合流するか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして電話で連絡を取って、俺達は門の前で合流した。

 

「うぉぇええええええ……!」

 

 そしていきなりげろってるロスヴァイセさんを目撃した。

 

「あの、大丈夫っすか?」

 

 匙が背中をさすってるが、なんだこの光景は。

 

「つか、イッセー達は大丈夫だったか?」

 

「ああ。何とか返り討ちにしたぜ!!」

 

 そういうイッセーだったが、何気にボロボロでアーシアに治してもらている。

 

「一番ボロボロじゃねえか」

 

「……物理攻撃が効かない相手だったから、大変だった」

 

 なるほど。そんな禁手もあるのか。

 

 神滅具の禁手だからって、何でもかんでも圧倒できるわけじゃない。相手も禁手なら相性で覆せる場合もあるってことか。

 

 深いな、神器の世界も。

 

 そんなことを思っていたら、二条城の門が音を立てて開いた。

 

「熱烈歓迎ってことか」

 

「まったくだね。……なめてくれる」

 

 イッセーと木場がため息をつく中、姐さんは静かに目を細める。

 

「英雄の闘う舞台としては良い感じね。……ペト、貴女はビル街に移動して狙撃準備をお願い」

 

「了解っス!! ロスヴァイセ先生には護衛をお願いするッス」

 

「え、……わかりまし……うっぷっ」

 

 確かに、ペトの本気を考慮すれば、間違いなくそっちの方がいいな。

 

 あとロスヴァイセさんは前線には出せねえ。ぶっちゃけ足手まとい一歩手前だ。どんだけ飲んだんだよ。

 

 ……そして、俺達の仕事は必然的に前衛と言う事か。

 

 さて、待ってやがれよ、曹操。

 

 漸くだ。漸く奴にリベンジが出来る。

 

 魔剣創造を鍛え上げ、そして紫電の双手は禁手へと至った。今の俺はあの時の俺より遥かに強い。

 

 むろん、曹操の奴も鍛えているだろう。ついでにいやぁ、そもそも奴はあの時本気を出してねえ。

 

 だが、それでも勝ち目はきちんとある。

 

 覚悟しやがれ、曹操……っ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのころ、京都サーゼクスホテルでは戦闘が勃発していた。

 

 総理大臣と長の娘が避難しているホテルともなれば、制圧して殺害もしくは確保すれば大きな手柄となる。

 

 そう目論んだ妖怪達が、大挙として押し寄せている。

 

 そして、自衛隊の警護体制も甚大だ。

 

 更に九重の無事を知った妖怪達も、戦力をそちらに集中させていた。

 

 これにより、この京との戦闘の中でも、最大級の激戦が繰り広げられる事となる。

 

 既にビルが何棟か倒壊するほどの激戦だが、それでもお互いに加減……もしくは防護策を取っているからこそのこの程度だ。

 

 本来なら、京都市そのものが更地になっていてもおかしくないほどの火力が行きかっている。

 

 そして、その戦場で遂に敵は業を煮やした。

 

「おい! なんだあれ!?」

 

 窓からその光景を見ていた生徒が、恐怖に震える。

 

 そこにいるのは、全長十数メートルを超える巨大な狐。

 

 まるで怪獣映画のような光景が、正真正銘現実に起きている。その事実に、それを見た者達が全員怯え始めた。

 

「くそ! 九尾の狐がお出ましかよ!!」

 

「怖気づくな、一斉射撃!!」

 

 即座に攻撃が集中するが、然し九尾の狐たる七夜は意にも介さない。

 

「ふん。呪術も使えぬ猿風情が。私をそんな玩具で倒せると思ったか」

 

 舌打ちをしながら、七夜は静かにホテルを見る。

 

 そして、その獲物の豪華さに舌なめずりをする。

 

「ふん。ヴィクターと組んだ方が我らが大手を振って歩けるというのに、それを分かっておらん八坂の娘が。そして我らを差し置いてこの国を我が物顔する猿の長」

 

 殺せば確実に大きな影響が出る。

 

 そして、其れは自分達にとって得となる。

 

 それだけの影響は、ヴィクターにとっては好影響だ。すなわち自分達の手柄となる。

 

 それを足場に、この日の本を自分達が手中に収める。そして妖怪達が堂々と人間の上に立つ国として作り変える。

 

 その理想郷を夢見て、七夜は息を吸った。

 

 まずはうっとおしい連中をまとめて吹き飛ばす。この九尾の狐の狐火なら、ホテルごと吹き飛ばす事など造作もない。

 

 堕天使の総督などの不確定要素はあるが、しかしこれなら確実に九重は殺せる。

 

「あの猿に甘い八坂の娘が。……奴の娘として生まれてきた事を後悔するがいい!!」

 

 そして、瞬時に放った。

 

 その劫火は結界などでは防ぎようがなく、間違いなく龍王クラスの一撃だった。

 

 そしてその火炎は一気にホテルを―

 

「おぉっとさせねえぜ?」

 

 ―前に、雷撃で吹き飛ばされる。

 

 そして雷撃は炎をかき消しただけではなく、七夜の前にいる妖怪達すら吹き飛ばした。

 

 更に七夜もその余波を喰らう。そして一気に百メートルは後退する。

 

「んぅうううう!? なんだ、この雷撃は!?」

 

「……北欧の神の一撃の模造品だよ。効いただろう?」

 

 その言葉と共に、降り立つは一人の男。

 

 赤いボディアーマーをその身に纏い、そして豪奢な鉄槌を構えた一人の男。

 

 その男は、七夜に鉄槌を突き付けながら声を張り上げる。

 

「俺の名は、謎のマスク総理大臣!! 仮面の下は開帳厳禁だ!!」

 

「……ふざけるなよ貴様ぁあああ!!!」

 

 大尽の阿呆な発言に、心から七夜はぶちぎれた。

 

 往年の特撮番組のパロディをぶちかます余裕の発言に、殺意が燃え広がる。

 

 この古都京都はおろか、日の本との真の支配者になろうとする自分の道を、猿風情が阻むな。

 

 その殺意をもって、七夜は再び炎を放つ。

 

 そして、其れを大尽は真正面から打ち砕いた。

 

「……どうしたぁ? この国支配しようとする、その手前の一撃はそんなもんか?」

 

 平然と()で砕き、大尽はため息をついた。

 

 ああ、情けない。九尾の狐というのはこの程度か。

 

 龍王にすら比肩する其の力。まさか下位の龍種の力であっさりと砕けるとは思わなかった。

 

 しょせんは俗物以下の外道の一人。この程度の力量しかないくせに、力でこの国を支配しようなど笑わせる。

 

 ……否、一周回って怒りすら燃え広がる。

 

「……この民主主義国家を拳で支配しようって時点で気に入らねえ。しかもこの程度の力で引き入ろうってのが尚更むかつくな」

 

 静かに、まるで青い炎のように怒りに燃え、大尽は鉄槌を構える。

 

 その瞬間、その鉄槌は巨大化した。

 

 そこから生まれる稲光を見て、七夜は警戒心をより強める。

 

「貴様、その槌はまさか―」

 

 それ以上言わせるまでもない。

 

 速攻でカタをつけるべく、大尽は一歩前に踏み出す。

 

「そ、そそそ総理!? 危ないですから下がって―」

 

「安心しろぃ。すぐに終わるぜ」

 

 押しとどめようとする自衛官を手で制して、大尽は一歩踏み込んだ。

 

「アースガルズから和議の証として貰った、俺専用のミョルニルレプリカ。……嵐砕丸。……最初の獲物がてめえ如き三下なのは残念だが、てめえにしちゃぁ身に余る光栄だろ!!」

 

 その瞬間、このクーデターの根本が決着した。




何気に素手でも充分強かったヒロイ。腐っても戦闘職ではないのです。

そして京都の方では総理が大活躍。しかも超強力武装を引っ提げて登場。

因みに嵐砕丸、とある方から「味方側のミョルニルはストームブレイカーって名付けたら?」とか言われたのでひねりました。漁船みたいとかいうツッコミは受け付けません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。