ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
駒王学園には、急ピッチで結界が張られていた。
とはいえこの強度。最上級堕天使であるコカビエルがその気になれば突破できるだろう。
なにせ、奴は堕天使の中ではトップクラスの猛者なんだ。
エクスカリバーなんてなくても、自分一人でこの駒王町を灰燼に帰すことなんて余裕でできるだろう。
「……で? 俺は上に増援を要請したぜ? そっちは?」
背に腹は代えられんので、俺はすでにバチカンに増援要請をした。
コカビエルの目的をきちんと語った上で、マジでヤバいから今すぐ増援をすぐに送り込めといっておいた。
増援が間に会わないなら悪魔と共闘するともハッキリ言っておいた。
「……好きにしろ」とのお達しはもらった。
ああ、何の問題もない。
「いえ、それはやったらやったで処罰を下すということではないでしょうか?」
と、結界を張っているソーナ・シトリーが告げるが、それはもう仕方がない。
「ふっ。英雄足るもの、無辜の民を守るためならばこれ位何ともない。……処刑されそうだったら亡命させてください」
「し、しまらねぇ……」
なぜか尻を時々さすっている匙がうるさいがとりあえずスルー。
だって俺、まだ英雄になってないもん。できれば生き残りたいです。
コホン。それはともかく。
「で、上に増援は? いくら72柱の末裔とはいえ、18の女の子にさせるような事態じゃねえだろ?」
「……誠に遺憾だけど、朱乃が魔王様に増援を要請したわ」
すごく納得いってない顔で、リアス・グレモリーは告げた。
「ライザーとの一件で迷惑をかけたばかりだっていうのに、コカビエルぅ……っ」
「よくわかんねえけど、足引っ張んねぇのも立派な貢献だと思うぞ? できないことはできないんだからそこは割り切っとかねぇと」
実際できないことしようとして、町一つ吹っ飛んだらそれこそことだからなぁ。
そんなことになったら戦争を起こしたい奴らが勢いづいて動くだろうしな。そんなことを起こす方が大問題だろう。
「まあ、魔王ルシファーが戦争起こしたがってるっていうなら、適当に戦って逃げかえるっていうのも一つの手だけどな」
「ふざけないで頂戴。お兄様は悪魔の平穏を第一に考える人よ。戦争再発何て望むはずがないわ」
「だったらなおさら力を借りなって」
そう言い合いながら、俺は駒王学園の門を見据える。
「んじゃ、この激戦に参加したい奴はついてきな!!」
俺はそういうなり、突撃した。
対光力の魔剣を生み出し、俺は一気に突入をしかける。
「コカビエルぅううううう!!!」
「ほぅ? 貴様が報告にあった魔剣使いか」
黒髪を長く伸ばした、明らかにやばそうな顔つきの堕天使が俺に視線を向ける。
間違いない、奴がコカビエルだ。
……ここで討ち取って戦争再発を阻止すれば俺は英雄として教会の歴史に名を残すだろう。
最も―
「だが雑魚に用はないんだ」
―この槍の嵐を潜り抜けられ無きゃ何の意味もないんだがな!!
「うぉおおおおお!! 燃えろ、俺の中の英雄魂ぃいいいいい!!!」
文字通り死ぬ気で放たれる攻撃を切り捨てる。
もちろん俺の両手だけでは限度があるので動き回って狙いをつけさせないようにしながら、回避も全力で行いつつ行っている。
だけど多い!! 数が多い!!
やっぱり奥の手抜きではこれが限界か! だけど使うと後がうるさいし―
「雷よ!!」
「滅びなさい!!」
後ろから放たれた雷と消滅の魔力が、光の槍を吹きとばした。
「先走りすぎよ!! そんなに殉教したいのかしら?」
「悪い!! ちょっとテンション上がりすぎた!!」
リアス・グレモリーに謝りながら、俺はいったんバックステップで距離を取る。
そこに、三つ首の巨大な犬が左右から襲い掛かってきた。
これは地獄の番犬ケルベロス!! こんなもん人間界に持ち込むな!!
「俺のペットだ。さあ、楽しませて見せるがいい!!」
この巨体相手に魔剣で切るのは愚策か。……なら―
俺は魔剣を消して両手をそれぞれ左右のケルベロスに向けると、想いを強くする。
その直後、俺の両手から紫電がほとばしった。
「吹っ飛ばせ、
放たれる雷撃は致命傷こそ与えられなかったが、ケルベロスの全身を焼いて動きを封じる。
そして、その隙をついてイッセーが全力で一体を殴り飛ばす。
「うおりゃぁ!! ……あれ? 部長たち、なんでポカンとしてるんですか?」
イッセーが首をかしげるが、しかしそれはそうなのである。
「……ほぅ。神器を二つ保有するとは、珍しいな」
コカビエルが興味深そうにこちらを見る。
まあ、気持ちはわかる。
「
物珍しいのは自覚しているから、その珍獣を見る目はスルーしてやる。
と、新たなケルベロスがポンポン出てきたうえで、さらにさっきのケルベロスも襲い掛かる。
なるほど、これでは無理か。
なら!!
「魔剣創造&紫電の双手!! ダブルサンダーブレード!!」
雷の魔剣を生み出しつつ、さらに紫電の双手で雷撃を放つ。
二つの雷撃が一つに合わさり、超高出力になった雷の剣が、こんどこそケルベロスを消し炭にした。
よし! まずはこんなものか!!
俺はすぐに振り返ると、こんどこそコカビエルに向き合った。
なぜか、奴はポカンとしていた。
「スキありゃああああああ!!!」
渾身の一撃をもう一度たたきつけようとするが、コカビエルはそれを受け止める。
翼で受け止めやがった!?
ちっきしょうが!! これが最上級堕天使の力ってやつかよ!!
いや、英雄となるにはこいつらと真正面から渡り合えるぐらいなくてはいけない。
この程度じゃへこたれないもん!!
「貴様……何者だ?」
コカビエルは、なぜか変なものを見つけたかのように視線を向けた。
「あんだよ。ただの神器多重保有者ですがそれが何か?」
「大ありだ。いかに興味がないとはいえ、アザゼルのせいで俺も神器には詳しい」
俺の攻撃を軽々とかわしながら、しかしコカビエルは妙なものを見る目つきを変化させない。
「二つの神器の同時使用はアザゼル曰く消耗するものが大きすぎる。神滅具の使い手ですら最後の手段にしていた方法だ」
え? そうなの?
「いや、おれは全然平気なんだけど。やりづらいけど普通に使うのと消耗は変わんねえけど?」
何言ってんだこいつ。
こんなもん、やるのが面倒くさいだけだろうに。
慣れれば単純作業位なら苦労しないぜ?
そんな風に思ってたけど、コカビエルは異質なものを見る目つきになってきた。
「……どうやら、お前は思ったより危険なようだ。ここで始末した方が―」
そう告げようとしたその時だった。
強大な光が、放たれる。
そして同時に聖歌が聞こえる。
視線を向ければ、そこでは木場祐斗が涙を流しながら聖歌を口すさんでいた。
悪魔が聖歌を口ずさむ。その異質な光景は、だけどどこか美しかった。
「ほぅ? どうやら正当な方の異常が形になって表れたようだな」
コカビエルが感心するなか、俺もまた驚くべき事態を目にすることになった。
……あれは、禁手だ。
こりゃすごい。まさか禁手はもちろん、そこに至る過程を観れるなんてマジで俺は得したかもな。
「く、くくく。さすがに禁手とは珍しい。これはすこしは楽しめそうだな」
コカビエルも感心し、攻撃の手を止める。
……確かに、ここは見届けるときか。
「……ほぅ。どうやら見せ場はもらえたようだな」
と、声が聞こえて俺は振り返る。
そこには、いくつか負傷はしたがいまだ健在のゼノヴィアが立っていた。
「……とはいえ、エクスカリバーの不始末を悪魔にくれてやる気はない。私も一枚噛ませてもらうか」
「空気読めよ、お前」
「まったくだ。たかだかエクスカリバーの一振りごときで、バルパーが復活させた合一化したエクスカリバーに勝てるものか」
俺とコカビエルの間で意見が一致するが、しかし少し食い違っているところもある。
なにせ、どうにかできる切り札持ってるからな、こいつ。
「……さて、それでは切り裂いてくる」
「へいへい。行ってこい切り姫」
さて、それじゃあそろそろ大詰めだ。
俺も、切り札切らないとダメかねぇ。