ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
リセス編の始まりです。まだ序章ですが、鬱展開があるので心の準備を今のうちにお願いします。
第四章 1 説教・OF・デイーヴァ
そしてある日の冥界で、俺は子供向けヒーローショーを見学する事となった。
え? なんでだって?
いや、身内が出る奴ともなれば、たまには見る事もあるだろうよ。
「ふははははは!!! おっぱいドラゴン!! 出てこないのならスイッチ姫はこのままいただいていくぞ!!」
「た、たーすけてー、おっぱいどらごーん」
ものすごく迫真の演技のダークネスナイト・ファングこと木場と、完璧に棒読みのスイッチ姫ことリアスのお嬢。
そして、視界のお姉さんが観客席の子供たち(一部大人含む)に向かって大声を張り上げる。
「大変! スイッチ姫が捕まったわ!! さあみんな、おっぱいドラゴンに助けを求めてー!」
「その通り! さあ、大きな声で!!」
イリナさんや。司会のお姉さんの仕事を奪わない。
っていうかこれ、俺も叫ぶの?
くそが付くほど恥ずかしい! ど、どうすりゃいいんだ!?
「さん、はい!!」
『『『『『『『『『『おっぱいどらごーん!!』』』』』』』』』』
あ、出遅れた!!
しかも姐さんとペトも普通に一緒に大声出したし! ノリいいな、オイ!!
「いっやぁ、面白いっすねぇ」
おまえノリノリだな、ペト!!
んなこと言われても、恥ずかしいのは恥ずかしいし……。
そんなことを言っている間に、スポットライトとともに赤龍帝の鎧に身を包んだイッセーが登場する。
そう、もうわかってるたぁおもうが、これは乳龍帝おっぱいドラゴンのヒーローショーだ。
娯楽の少ない冥界を楽しませようと、こういった企画が起きて、イッセーたちが出てきたってわけだ。
……普通、こういうのってセリフだけとってやるのが基本じゃねえの?
俺はそんなことを思うが、冥界は多芸がノリなんだろう。そう言うことにしとくか。
そしてイッセーと木場の、子供たちがきちんと見ることのできる速度のバトルが繰り広げられる。
ワイヤーアクションやスモークを的確に使ってのこのバトル。なんだかんだでよくできてるな。
なんだかんだで大盛況。大人気だなおっぱいドラゴン。
でも、普通本人登場とかやらないよなぁ・・・・・・。
そんなこんなでヒーローショーも終わり、俺たちはだべりながら裏手でイッセーを待っていた。
「しっかし、大人気だなおっぱいドラゴン」
「面白いっすからねぇ。まあ、すごい勢いでおっぱいおっぱいっすけど」
「確かに、人間界だと子供には向いてないわね」
そうだべりながら、俺たちは夕暮れ時のショー会場を散策していた。
しかしこのおっぱいドラゴン、すごい人気だ。
イッセーの禁手が変身ヒーローに見えるってのもそうだが、それ以外にもここ最近の活躍も要因の一つらしい。
なんでも、イッセーたちの活躍がテレビのおっぱいドラゴンの活躍と混同して受け取られているとか。
つまり、乳龍帝おっぱいドラゴンの主人公イッセー・グレモリーと、そのモデルである現実の赤龍帝であるイッセーの奴が混ざってると。
まあ、子供ってのはそんなもんだろう。俺はガキの頃はあれだったからわからねえけど。
「しかしまあ、冥界の芸能界も甘く見た物ではないわね。なかなかやるじゃない」
と、姐さんは真剣に考えこみながらうんうんとうなづく。
時々、姐さんは芸能関係で一家言あるかのようなことを言ってくるな。ちょっと引くぐらい真剣に言ってくるのが印象に残ってる。
……姐さん、過去にいったい何があったんだ?
俺が知ってるのは、少なくとも五年前には賞金稼ぎなどをしていたこと。そして二年前にペトを助けた縁で神の子を見張る者に所属していたことだけだ。
まあ、そういうのを聞くのは野暮だってのはわかってるんだけどな。
それでも、気になるんだよなぁ。
ふとそんなことを思っていると、子供の泣き声が聞こえてきた。
視線を向けると、そこには困り顔の係員と、子どもを連れた母親の姿が。
「申し訳ありません。握手会の整理券はすでに配布が終了ていまして……」
「整理券……ですか? ……ごめんねリレンクス。もう無理なんですって」
「やだぁああああ!! おっぱいドラゴンに会うのぉおおおお!!!」
あっちゃぁ。整理券をとりっぱぐれたのか。
そもそも整理券って文化が冥界だと馴染みがないからなぁ。まったくよくわからなくて、ついスルーしてたって感じかねぇ?
さてさて、ちょっとかわいそうな気もするが……。
「あ、どうしました?」
と、そこにイッセーが姿を現した。
………鎧姿で。
あの野郎、聞いたうえで出てきやがったな。
「まったくもう。ああいうのは芸能人がやっちゃいけないことだってのに」
はぁ、と姐さんはため息をついた。
だけど、即座に張り倒しに行くことだけはしない。
「いいか、リレンクス。男の子は簡単に泣いたりしたら駄目だ。お母さんを守れるぐらい強くならなきゃだめだぞ?」
と、いいことを言っているので邪魔しづらいんだろうな。
そして、リレンクスを見送って、スタッフがはあとため息をついた。
「兵藤さん、こういったのは困ります。一度特例を作りますと、それ全て適用しろという声が必ず出てくるんですから」
「……その通りよ、イッセー」
と、姐さんがため息をつきながら苦笑を浮かべて近づいてくる。
「あ、リセスさん」
「貴方の性格ならほっとけないのは分かるけど、あれは芸能人としてかなり駄目な行為よ。……あなたはあの子の夢を守ったつもりかもしれないけど、逆にきちんと整理券を受け取った子達の夢を傷つけたんだから」
と、姐さんは首を振る。
「確かに、自分の事を好いていてくれるファンが泣いているところを見たらああ思う事も仕方がないわ。だけど、それをされたら一生懸命苦労して整理券を手に入れた子達が報われないわ」
「はい、すいません」
「反省してても次もやりそうだから言ってるのよ」
頭を下げたイッセーに対しても、姐さんはしかし辛らつだ。
「芸能界にはね、ファンにはファンの守るべきマナーがあるの。それをきちんと守れなかった子が得をするのはいけない事だわ。特にこういうイベントの時は尚更よ。……これをあの子が自慢したら、きっと周りの子は「僕たちちゃんとしたのに、リレンクスだけずるい!!」ってなっちゃうのよ」
みょ、妙にリアリティのある話になってきたな。
説教が具体例にまで及んでるってのが中々凄い。スタッフの方もまだそういう業界関係に慣れてない事もあるし、ぽかんとしてるぞ。
いや、ホント姐さんは芸能関係について一家言ありすぎじゃねえか?
「ああいう時は、サインと握手はきちんと断って、単純な会話とかにするべきね。あくまで偶然出会ったからちょっとしたファンサービスをした程度にするべきよ。あと、これからはたまたまファンに気づかれたら似たようなファンサービスをきちんとする事。それがやってしまったあなたがこれからするべき事よ」
「は、はい……」
イッセーが反省するより気圧されてるって気づいてるかな、姐さん。
しっかし、姐さんホントに芸能関係に対して一家言あるなぁ。
まさか、芸能業界に携わっていた事があったりするのか?
いや、高校中退でそっちの業界に入ってから更に異形社会の戦闘職ってどんな来歴だよ。
流石にそれは……ねぇ?
「そういう意味ではあなたは芸能人になってしまったという意識が足りないわね。まあ、ちゃんとした芸能人としての教育すら受けてないんだから仕方ないといえば仕方ないんだけど。その辺りは異形社会のノリゆえに発生する問題かしら。とにかくこういうのはきちんと整理券を受け取っている人を優先した考えで行動しなきゃダメ。今回はサインと握手のイベントで整理券まで用意してるんだから、それでサインと握手をしちゃうのはプロ意識に欠けているわ。そうしないと無理だっていうのなら、いっそのことおっぱいドラゴンはあくまであなたがモチーフということだけにして、ショーとかイベントに関しては普段のおっぱいドラゴンをやっている芸能人の方に任せるというのも一つの手で……」
「お姉様、区切って、区切って」
ペトが止めに入るぐらいマシンガントークをぶちかましてきやがった姐さん!!
ホントに芸能界に関してうるさいところがあるなぁ。
この時の俺は、まだ姐さんについて何も知らなかった。
知っていたら、これを微笑ましい光景として見るのは無理だっただろう。
ちなみに、これまでにもやってきた伏線を今回もはっています。