ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
まだまだ敵のターンです
Other Side
「んじゃぁ、そこのパワフル野郎から相手してもらぜぇ!!」
イグドラスルトを纏うキュラスルがターゲットにしたのは、ガンドラ・バラム。
怪力を特性としてもつバラム家の出である、れっきとした上級悪魔を前に、キュラスルは仮面の下に獰猛な笑みを浮かべて攻撃を開始する。
「むぅん!!」
それを真正面から迎撃するべく、ガンドラは拳を叩き込む。
まともに喰らえば中級悪魔程度なら粉々に砕け散ってもおかしくない攻撃。それに対してキュラスルは真正面から受け止めることを選んだ。
轟音が鳴り響き、誰もが体格で劣るキュラスルが叩きのめされることを想像する。
だが、キュラスルは文字通り一歩も引かなかった。
「あんだぁ? こんなもん、禁手も
平然と受け止めたキュラスルは、遠慮なくその腕をつかむと、一瞬で握りつぶす。
「ぐぅぉおおお!?」
「しかも脆いじゃねえか。若手最強眷属ってのはこんなもんか、あぁ?」
「……そうかぃ、ならこいつはどうでぃ!」
嘆くキュラスルの後ろから、美候が如意棒をたたきつけようと―見せかけてケリを叩き込んだ。
美候は馬鹿ではあっても無能ではない。ガンドラの戦闘能力の高さを今の一撃でよく理解した。
単純な一撃の重さでは、それを平然と耐えるキュラスルは倒せない。
ゆえに仙術を叩き込む。気によって生命のバランスを乱せば、どうにかできると判断した。
そして、叩き込んだ瞬間に理解する。
……その程度の対策、リムヴァンは用意してないわけがないことを。
「流石に
その言葉とともに、初速の時点で音速を超過した裏拳が叩き込まれ、美候は一瞬で弾き飛ばされた。
そしてその眼前に、大量の雷光が放たれる。
「ならば、これならどうかしら!」
放つのは当然姫島朱乃。
最上級堕天使バラキエルと、日本最高峰の異能の家系、姫島家のハイブリットである朱乃の力は、この場においても上位に入る。
ことその雷光の火力は、ヴァーリチームでも油断すれば命取りになるだろう。
そしてそれが直撃し―
「こんなもんじゃなぁ!!」
それを平然と受け止めながら、キュラスルは突進する。
まったく意にも介していない突撃が、朱乃を一瞬で弾き飛ばした。
「じゃ、仕事の時間だ」
ジェームズが変身するイグドラヨルムの戦闘能力は、現段階のイグドラシステムの中でも最高峰だ。
イグドラシステムは、ユグドラシルの別称であるイグドラシルからとられている。
その素体となったのは、ロキから奪取した四体の強大な生体兵器。
すなわち、スコル、ハティ、スルト・サード、ヨルムンガルド。
そしてヨルムンガルドだけは、正真正銘龍王であるミドガルズオルムの後継種として生み出されたものだ。
ゆえにその戦闘能力は、間違いなく最高峰だった。
「遅いぜ、バアル」
「あの木場祐斗と渡り合ったものが、龍王クラスの力を手にするとこれほどまでか」
サイラオーグ・バアルに一瞬で間合いを詰められながらも、ジェームズはそれの攻撃を冷静にかわし続ける。
イグドラシステムによって反応速度まで強化されたジェームズは、その圧倒的な反応速度でサイラオーグの拳をかわし続ける。
そして、彼ではなくそれ以外に攻撃を開始する。
放つのは、ヨルムンガルドの力を借りたエネルギーミサイル。
オーラの塊を誘導弾として放つその力によって、まず真っ先に狙うのは兵藤一誠。
まず間違いなくこの場でも強敵の筆頭格を、不意打ちで叩き潰す。
まさか若手最強のサイラオーグ・バアルの猛攻をしのぎながら、それと並行作業で他の相手を狙うとは思わないだろう。そう言う発想がこの根幹にはある。
そして放たれたエネルギーミサイルにイッセーが気づくより早く―
「させません!!」
一斉に放たれた魔力砲撃が弾き飛ばす。
「チッ! 流石オーディンの元お付きだ。抜け目がないな」
舌打ちするジェームズは、その瞬間についに一撃をもらう。
「俺を無視して兵藤一誠を狙うとはな。そいつは俺の相手だぞ?」
「そうかい。そりゃ悪かったな」
怒りをにじませるサイラオーグにそっけなく答えながら、ジェームズは空中で態勢を整えると、即座に反撃を叩き込む。
神器、
使いこなせば最上級悪魔相手にも闘うことができる、小銃型の神器。しかも新種ゆえにまだ相手はデータを取り切れない。
それを宿すジェームズは、さらにイグドラシステムの力で強大な戦闘能力を発揮する。
いったん大きく距離を取ることに成功したジェームズは、それを利用してサイラオーグを間合いに近づけさせない。
相手より間合いを取って、遠距離から攻撃する。
その戦争の発展の基本形を、ジェームズは冷静沈着に遂行する。
さらにエネルギーミサイルもばらまくように放ち、その場にいる者たちに攻撃を叩き込む。
味方が巻き込まれることは意に介さない。そんなことにならない実力者だからこそ、イグドラシステムの使用者に選ばれたのだから。
ゆえに、敵の最強戦力も恐れはしても恐怖には陥らない。
放たれたヴァーリの魔法攻撃を、遠慮なくジェームズは弾き飛ばした。
「……思った以上に高性能だな」
「その様だな。俺としては面白そうで楽しめそうだ」
ヴァーリのその答えにあきれながら、ジェームズはしかし冷静に戦闘を続行する。
そして、グレモリー眷属の屋台骨に関しては意にも介さない。
なぜなら、彼女はこの戦いでは確実に無力化されるのだから。
「それでは、貴方たちの相手は私が勤めます」
イグドラハティを装着したデイア・コルキスは、静かに自分の担当を相手にする。
そのターゲットはアーシア・アルジェント。ある意味でこの戦いで最も重要な存在だ。
なにせ彼女の
その回復力はまさに圧倒的。致命傷すらタイミング次第では瞬時に治療することができる圧倒的な即効性を保有する。
さらにそれを遠隔発動できるというのが反則に近い。これで当人の戦闘能力も高かったのなら、もうどうしようもないのが普通だ。
だが、デイアはイグドラシステムがなくても普通ではなかった。
「そ、そんな……」
アーシアは、絶望に近い表情を浮かべて呆然となる。
そこには、自分をカバーするために傷つき倒れる仲間たちの姿があった。
それを癒そうとするのは、アーシアの本能といってもいい。そしてそれができる力を持っていることは間違いなく幸運だった。
だからこそ、ショックが大きいのだ。
治そうとしても、治すことができない。
イグドラシステムの身体能力を回避に収束し、デイアは魔法攻撃で着実に仲間たちを負傷させた。
いかに破壊力の権化であるゼノヴィアとエクスデュランダルであろうと、当たらなければ意味がない。
視界に映ったものに捕縛同様の重圧を与えるリーバン・クロセルであろうとも、視界にとらえることができなければどうしようもない。
仙術による探知をおこなえる小猫と黒歌も、それに反応することができなければ意味がないのだ。
木場祐斗に匹敵する高速戦闘をおこなえるベルーガ・フールカスがいなければ、すでに一人ぐらい殺されていただろう。
そして全員が重傷を負っているこの状況下で、一刻も早く治療戦とアーシアは全力を出していた。
しかし、回復のオーラがその力を発揮しない。
敵であるデイアすら回復させかねないことを覚悟のうえで広範囲フィールドを展開するが、然しそれでも誰一人として癒さない。
「無駄ですよ。いかに貴女が優れた聖母の微笑の使い手でも、今はどうしようもありません」
それを見て、デイアは少し苦笑を浮かべながら、両手をかざす。
そこに現れた指輪を見て、ベルーガは目を見開く。
「それは、アーシア殿と同じ……!」
「ええ。私も聖母の微笑の使い手です」
そう。聖母の微笑は神滅具ではない。
ゆえに、複数存在してもおかしくない神器だ。実際駒価値一つで住んでいるような代物でもある。
そして、かの嬢は超一流の魔法使いだった。
かのコルキスの女王メディア。その傍流に属する彼女は、ギリシャ式の魔法に関しては最高峰だ。
それが、神器と組み合わさったことで圧倒的な力を発揮する。
「……あなたと私の聖母の微笑を、リンクさせていただきました」
超高速でのヒット&アウェイを交わしながら、デイアはそう冷徹な事実を告げる。
同種とは言え神器同士をリンクさせる。もしアザゼルが聞けば、その事実に驚愕することだろう。それほどまでの高等技能だ。
デイア・コルキスはコルキスの女王、メディアの末裔である。
その血筋に由来する魔法の技術は最上級悪魔と対抗することすら可能。それこそ、トップランカーや魔王血族が相手でもまともに戦うことが可能だろう。
それによってなされる妙技。それこそが、同種の神器同士のリンクだった。
そして、それが意味することはどうなるか。
「私はあなたほどの即効性はありませんが、然し敵味方の判別はできる。これがどういうことかわかりますね?」
その言葉に、アーシアはアザゼルの指導を思い出す。
聖母の微笑は、敵味方の識別を行うことができる。しかし、それをなすことはアーシアには優しさゆえにできないだろうとも。
しかし、デイア・コルキスはそれ位の冷徹な判断を行うことができる。
そして、制御が共有されている状態で、そんなことがされればどうなるか。
「……一応味方ですし、治しておくとしましょう」
その言葉とともに、回復のオーラがさらに広範囲になって倒れ伏す襲撃者たちの傷がいえていく。
意識を絶たれているがゆえにそのまま立ち上がることはないが、しかし負傷は完全に治療された。
その事実にアーシアは様々な理由で愕然となる。
自分では決して出せない広範囲回復フィールドが形成され、そして自分の即効性で怪我が治療される。
それをなされることは、すなわち―
「私は広範囲フィールドの展開が得意なんです。その分即効性は薄いのですが、そこは貴女の力を利用させてもらいました」
そう言い放ち、デイアは魔方陣を展開する。
「貴女を倒すのは後に取っておきましょう。とりあえず、先ずは他の敵を始末しませんとね」
その瞬間、大量の魔法砲撃が戦場を包み込んだ。
イグドラスコルことヒルト・ヘジンは、余裕を持って対応していた。
おそらくもっとも脅威であろうヴァーリ・ルシファーと兵藤一誠、そしてサイラオーグ・バアルをジェームズが抑え込んでくれている以上、こちら側の難易度は大幅に低下しているといってもいい。
ゆえに、こちらは余裕を持って対応できる。
そして、その余裕分を使って何もない空間から突き出されたコールブランドの切っ先をディルヴィングで弾き飛ばした。
「貴方も剣士なら、そういう奇策に頼るのはやめたら?」
「耳が痛いですね。しかしいい剣筋です。ジークにも匹敵するでしょう」
カウンターの斬撃を軽くいなしながら、アーサーは感心してうんうんとうなづく。
しかし、その表情は微妙に険しくなっていた。
当然だ。すでにアーサーの体にはいくつもの切り傷が刻まれている。
そして、イグドラスコルの想甲には傷一つない。それどころかこちらの攻撃を一発ももらっていない。
そしてそれは圧倒的有利な状況だった。
なぜならば、こちらにはそれ以外にも強者が山ほど襲い掛かっているのだから。
「これは! 何て速さだ!!」
大量の聖剣の竜騎士を、一瞬で薙ぎ払う。
「お兄さま! 下がってください!!」
放たれる高位の魔法攻撃を、一息で切り刻む。
「おのれ! これほどまでとは!!」
龍に変化した悪魔のブレスを、凍結させて無効化する。
「なぜだ……! なぜ、封印できない……っ!」
強固な封印攻撃も、英雄派の協力で切ることができるようになった。
人間最強クラスであろうアーサーを、他の上級悪魔クラス以上の実力者を相手にしながら対応する。それほどまでの絶技をヒルトはなしていた。
むろん、自分がそのままではできなかっただろう。
これほどまでの奇跡といってもいい能力を手にできたのは、ひとえにリムヴァンに見込まれたからだ。
彼に見込まれたから、伝説の魔剣を二振りも手にすることができる。
彼に見込まれたから、神滅具級の力を手にすることができる。
彼に見込まれたから、イグドラシステムの装着者に選ばれた。
たとえ利用されているとしても、それはお互い様だ。彼に利用されるだけの価値があったことを幸運に思うできだろう。
少なくとも、彼の表向きの行動と自分の願望は一致している。
だから遠慮せずに利用されてやろう。その分自分もしっかりと利用してやる。
その覚悟と共に、ヒルトはアーサーのコールブランドと撃ち合った。
余裕を持つということはいいことだ。いざという時に余力があるということは、それだけで安心感をうんで焦りをなくしてくれる。
余裕を持ちすぎてぼけてしまえば失態だが、それはもはや余裕ではなく油断の領域だ。戦士として極力さけている。
余裕がなくなればミスを併発しやすくなる。それがないということはいいことだ。
実際、コールブランドによる攻撃を避けることができるのそのおかげだ。この余裕があるからこそ、自分は戦うことができる。
そして
二刀流ならこちらがもっと慣れている。この程度で倒されると思っているのなら、片腹痛い。
遠慮なく、ヒルトは剣劇を続行する。
Side Out
イグドラシステムは素体となる魔獣が魔獣なので、アザゼルの堕天龍の鎧に匹敵する性能を発揮します。加えてヴィクター側の技術力により、安定性では上という後発ゆえに利点もあるので、かなり有利。
さらにアーシアの回復という生命線が封じられたため、現状一方的な展開となっております。
お忘れかもしれませんが、第二章で黒歌とアーサーを治療したのがデイアです。名前もきちんと出しているはずなので、お忘れの方は読み返すといいかも。
彼女は範囲は広いがアーシアに比べると即効性で劣るタイプ。ですが、その卓越したまほうによって神器同士を共有させて制御を乗っ取るというものすごい真似をしております。精鋭は伊達ではありません。そしてアーシアの即効性を奪い取ったうえで、制御を完全にのっとったことで圧倒的優位になっております。
ちなみにイグドラシステムは、イグドライバーとカートリッジのセットです。コアとなる魔獣があれば量産できるのが最大の利点。今回は単純戦闘能力とカートリッジとの相性と隠し玉の適合率の三つのバランスを考えた運用でしたが、展開次第で新たな変身者が現れるかもしれませんね。