ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
……鬱すぎるから投稿に長い時間を駆けたくないんですよねぇ
イグドラシステムによる猛攻は、若手悪魔最強格を圧倒している。
熾烈な激戦を潜り抜けてきた、リアス・グレモリー眷属。若手最強とまで称される、サイラオーグ・バアル眷属。そして、禍の団特殊部隊、ヴァーリ・ルシファーチーム。
若手の領域においては規格外の化け物たちを相手に、それをたった四人で相手にして優勢に立ち回る化け物たち。
間違いなく断言してやろう。こいつら化物だ。
残りのメンバーとともに俺たちも助けに行きたいが、しかしそれを許さない者たちがいる。
「させないよ、リセスちゃん!!」
「なんでなのよ、プリス!」
放たれる炎と氷の攻撃を、俺たちは一生懸命回避する。
『くっ! これではサイラオーグ様に近づけない!』
「狙撃も無視されてるッス! 泣きたいっす!!」
巨大な獅子と化したバアルの
プリスとか言ったゼファードルの僧侶、むちゃくちゃ腕を上げてやがる。
とうかこっちの攻撃が欠片も当たらねえ。狙ったところにぶっ放しているのに、なぜかかすりもしない。
なんだ? 幻覚魔法でも習得したのか!?
「プリス! ゼファードル・グラシャラボラスはもう倒れたのよ!!」
反対の属性でプリスの攻撃を相殺しながら、姐さんは苦しそうな声を出す。
なんで自分たちが戦っているのか、もうそれ自体がいやな気分になっていたのがよくわかった。
「……あなたが、そこまでするほどの価値がこいつにあるの!?」
「違うよ、プリスちゃん」
姐さんの本心からの言葉に、プリスは静かに首を振った。
なんだ? 何が違うってんだ?
プリスの奴がゼファードル・グラシャラボラスの僧侶だってのはとっくの昔に知っている。姐さんも知っている。
それに間違いがあるわけが―
「私はもう、ゼファードル様に売られたから」
………なんだと?
んの野郎、自分の眷属を売ったってのか?
いや、上級悪魔の中にはそういう連中もいるっちゃいるって聞いたことはある。
むしろ、自分の眷属の強化でトレードは基本って話だ。努力をないがしろにする貴族らしい考え方だなとは思ったぜ。
つまり、寝返った上級悪魔の中で、トレードが行われたってわけか?
そう思った俺たちだが、それは一つの足音とともに否定された。
「しゃべりすぎだよ、プリス」
「……っ!?」
フードをかぶった最後の1人が声を出し、プリスが肩を震わせる。
なんだ? 特に武術を習得している動きじゃねえけどな。
この状況下でまだ動いてないってことは、出し惜しみするような戦力だってことだ。下手すら相当の実力者だって可能性もある。
リムヴァンの野郎が用意した、神滅具の保有者か何かか?
そう思った俺は、その瞬間ぎょっとした。
「…………………嘘、でしょ?」
目を見開いて、球粒のような汗をいくつも流しながら、姐さんが顔を真っ青にさせる。
息は荒く、瞳孔はひらき、そして体中が震えている。
なんだ!? どうしたんだ、姐さん!?
「姐さん!? 姐さんしっかりしろ!?」
俺はとっさに割って入ろうとするけど、それより先にフードの男から声がかかる。
「邪魔しないでくれないかな? せっかくのあり得ない再会なんだから……さ」
その言葉共に、フードの男はフードを取った。
そこにいたのは、割とイケメンだが特徴の薄い男の顔。
歳は俺と同じぐらいか? 十七か十八ってとこだよな?
いったい誰だ? 姐さんの知り合いっぽいのは間違いねえが……。
「初めまして。僕はニエ・シャガイヒっていうんだよ。よろしくね」
そういって微笑を浮かべたニエは、姐さんに視線を向けた。
「やあリセス。久しぶりだね」
「………嘘よ。貴方が、貴方が生きているわけがない!!」
姐さんはそう断言すると、憎悪の表情を浮かべてリムヴァンの分身をにらむ。
「悪趣味にもほどがあるわよ! ニエを模した魔獣を作るなんて―」
「いやいや、彼は正真正銘ニエ君だよ」
姐さんの言葉をさえぎって、リムヴァンはそう言い切った。
絶句する姐さんを面白そうに見ながら、リムヴァンはしっかりとはっきりとまっすぐな視線を向け、にやりと笑う。
「魂のサルベージさえできれば、死者の蘇生すら可能とする。それが、神滅具が一角である
「ああ。僕は正真証明ニエだよ。そこに誓って嘘はない」
「‥‥‥‥だったら、なんで!?」
心から悲しそうな顔をしながら、姐さんは叫んだ。
そこに、いつもの強さを魅せてくれる姐さんの姿はない。
そこにいるのは、絶望に暮れる女の子の姿だった。
そして、それを見たニエの表情がはっきり変わる。
そこに映っていたのは、嫌悪感だ。
「リセス。僕が死んでからの君の行動は彼から聞いたよ」
ニエの言う彼ってのは、リムヴァンのことなんだろうな。
「神滅具を含めた神器を移植し、特訓を積み、傭兵として活動。そしてその報酬は相場より安めで、そして多くをイドアル孤児院などに寄付。……すごいね、まるで英雄だ」
そういうニエの表情は、どんどん苦虫をかみつぶした感じになっていく。
なんだよ? コイツ、何がそんなにむかつくんだ?
姐さんのやってきたことは、決して悪く言われるもんじゃねえだろう。もし売名目的だとしても、やってきたことそのものは褒められたっていいはずだ。
それなのになんでー
「―それで、僕が許すとでも思ったのかい?」
「………え?」
姐さんが、凍り付いた。
それを薄ら笑いを捨て去り、侮蔑の表情で見ながら、ニエはため息をつく。
「英雄になれば、正義の味方になれば、多くの人を救えば、誰かのためになる人間になれば……僕が許すと思ったのかい?」
つらつらとニエは語り、そして姐さんはそのたびに肩が震える。
そんな中、ニエの顔面に光の弾丸が襲い掛かる。
「それ以上、その口を開くなッス!!」
こっちはこっちでマジギレで今までにない表情になっているペトが、渾身の一撃を叩き込んだ。
そして、それが結界で防がれた。
それを張ったのはニエじゃない。いつの間にかニエの周りに待機していた、ドーインジャーだ。
まさか、こいつは!
「―
「ああ、リムヴァンさんからもらったんだよ。君を殺すのなら神滅具は必要だってね」
震える姐さんにそう答え、そしてニエはまっすぐにリセスを見る。
その目は、嫌悪感もあるがそれ以上に疑問の色があった。
「教えてくれないか、リセス。なんで君はそんなことで僕が君を許すと思ったんだい?」
「そんなの……決まってるじゃない」
絞り出すように、姐さんは答える。
「貴方は死んだのよ? 私が殺したようなものよ? 私が弱かったせいで、貴方は死ぬことになったよ!?」
弱弱しく頭を振りながら、姐さんはそう叫ぶ。
「だから強くなりたかった。だから
髪を掻きむしりながら、姐さんはニエに縋りつくように視線を向ける。
そこには、今までの英雄という輝きを見せつけてきた姐さんはいなかった。
そこにいるのは、自分の罪におびえる一人の道を踏み外した少女だ。
「そうでもしないと、私はずっと弱いままだったから! そんなのは嫌だったから!! もう、二度と心も体も弱くなんてありたくなかったから!!」
ふらつきながらも、途中で精神的ストレスから吐きながらも、しかし姐さんはそれでも、ニエから視線をそらさない。
どうか自分を見てほしいと、そんな懇願が感じられる。
「なのになんで、なんでなの!? 私は一生懸命頑張ったわ! 多くの人を助けて、助けることで得た金も、イドアル孤児院を中心に大半を注ぎ込んで!! せめて堕天使の勢力圏内では私やプリスみたいな子が生まれないように、アザゼルに頭だって下げたのに―」
そして、姐さんは心の底から―
「―貴方は、私を許して、くれないの……?」
……それが、姐さんの
「辛くて、痛くて、悲しくて、それでも、貴方に償いたいから耐えられた。だからここまで頑張ってこれた」
それは、罪滅ぼし。
震える手を、ニエに伸ばす。
「……ねえ、私、頑張ったわよ? とっても、とっても、強くなったのよ?」
「そうだね。確かに君は強くなったし、頑張ったのは認めるよ」
ニエはそう答える。
それに救いを得たのか、姐さんは一歩前に踏み出す。
誰も何も言えない。戦闘すら中断されて、俺たちはその光景を見ることしかできなかった。
「全部、全部強くなるため。貴方を殺した
ひきつったうつろな表情で、姐さんはニエに手をのばし―
「―いつか、貴方は私を許してくれるんじゃないかって……」
「そんなご都合主義な考えを持っていることがまずイライラするね」
言葉でも、体でも。ニエは姐さんを一蹴した。
骨にひびが入る音が響き、姐さんが宙を舞う。
そしてその瞬間、ニエの足元から闇が噴出し、大量の魔獣が発生する。
まるで魚のようなその魔獣は、一瞬で百に届く数生まれると、そのまま姐さんに連続でぶつかり、爆発する。
その勢いでさらに宙を飛ぶ姐さんの真上に、巨大なドーインジャーが出現する。
キョジンキラーより一回りほど小さいその巨体の拳が、姐さんを地面にたたきつけた。
「がふっ!!」
地面にたたきつけられた姐さんを、ニエは容赦なく踏みつけた。
その瞬間、俺は目の前が真っ赤になって突撃を開始する。
展開されていたドーインジャーを吹きとばし、俺はニエに聖槍を叩き込んだ。
「―てめぇ!!」
「邪魔だよ」
そんなニエの声とともに、横からプリスが現れる。
―魔獣によって勢いよく投げつけられたプリスが。
魔獣を操作して、ニエがプリスを投げつけた。
それがわかったからこそ、そんなわけのわからない展開に俺は一瞬だけ隙を作って、プリスをもろに喰らう。
そしてもんどりうって地面に倒れた俺たちに、魔獣がのしかかった。
んの野郎っ! う、動けねえ……っ!
「プリス? できれば邪魔をさせないでくれないかな? 今はリセスと話してるんだよ」
「ごめんなさい。もう、させないから……っ!」
プリスはニエの絶対零度の声に従って、自分ごと俺を氷で拘束する。
魔獣すら巻き込んで創り出す氷の枷が、俺の動きを大きく封じた。
「あんたなぁ! そんな扱いされてまで、どうしてあんな奴に従ってんだ!!」
訳が分からねえ。
どう考えてもひどい扱いじゃねえか。道具みたいに扱われてる……いや、ひどい扱いを積極的にしてるじゃねえか!
なのに、なんであんな野郎の味方をしてるんだ、この女は!!
「当たり前だよ。それが当然だよ!!」
無理やり引きはがそうとする俺を抑え込みながら、プリスははっきりと言い切った。
「全部悪いのは私とリセスちゃん。だから、これは当然なんだから!!」
なんだ? なんなんだ!?
いったい姐さんは何をしでかしたんだ!?
「んじゃぁ、そろそろ種晴らしでもしようかな?」
面白そうに姐さんがズタボロになっていくのを見ながら、リムヴァンはニエに視線を向ける。
何かをしてもいいのかといわんばかりのその言葉に、ニエは静かにうなづいた。
「ああ。この女がどんなことを僕にしたのか。それを思い知らせてやってくれ」
「あいあいさー」
そう答えると、リムヴァンは会場全体を包み込むほどの大きなフィールドを展開する。
「それではお客様。今から僕が放つのは複合禁手である
名前からしてろくなもんじゃねえのがよくわかるな、オイ!!
「能力はシンプル! 相手の
「ふ、ふっざけるなぁあああああああああああああああ!!!」
その楽しそうな言い回しに、ペトは切れた。
そしてそれをガンスルーして、リムヴァンはにやりと笑った。
「さあ、回想タイムのスタートさ!!」
ようやく本格登場したニエ・シャガイヒ。これでリセスの過去をようやく出せます。
……ぶっちゃけ、かなり鬱ですからご覚悟ください。
因みにニエ・シャガイヒの名前の由来は贄となった被害者です。
リセスという英雄を生み出す贄となった、正真正銘の被害者。それが巡り巡って加害者となるのだから、書いてる自分が言うのもなんだけど運命というのは残酷です。
リセスの過去を描くのに、ニエの存在は切っても切り離せません。そして、リセスにとってニエとは精神的な意味で天敵以外の何物でもない。
彼の恨みは正当といえます。彼の怒りも、彼の立場に立ってみれば、多くのものが納得できるでしょう。それを理解すらできないのは、おそらく聖人君子の類だと思います。
……前に、作品のネタ探して色んな作品の情報をしらべているなか、こんなのを見かけました。
要約すると「殺した者の命を無駄にせず背負うのはりっぱだが、殺されたものからすればそれがどうした」。
あともう一つありますね。アニメ化された漫画で「自分が家畜の立場なら、おいしく食べられるのもまずく食べらえるのも嫌だ」
ニエ・シャガイヒは善良です。ニエ・シャガイヒは基本褒められる人格です。普通の形でイッセーと出会っていたのなら、その覗き癖は不快に思いながらも、本質的な善良さには好感を抱き、イッセーたちも彼のことを言い人だと思っていたでしょう。
ですが、彼は決して高潔な英雄でも聖人君子でもない、探せばどこにでもいる程度の人物でしかない。
だから、彼はリセスを恨んでいます。プリスを恨んでいます。リセスの行動が癪に触って神経を逆なでされているのです。