ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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前回のあとがきの続きをさせていただきます。









 リセス・イドアルは自分が孤児という社会的弱者ということにコンプレックスを抱いていることは、前回の前書きで説明しました。

 そして、其れを克服しようと頑張っていたつもりが、性玩具というさらに下の存在になっていたことを、ニエの自殺で思い知らされました。

 さらに殺そうとした糞スポンサーが惨殺される様を見て衝動的に逃げ出したことで、リセスは自分のことを心身ともに最底辺の弱者として認識しました。そのうえで、大好きなニエを裏切って迄そんなものになったことを許せませんでした。

 その精神的極限状況で、リセスが逃げ込んだ先は、アイドルを目指したときと同じく「強者」になること。違うのは、それがアイドルという社会的強者ではなく、英雄という肉体的強者です。

 ヒロイが輝きと書いて英雄とルビを振るように、リセスは強者と書いて英雄とルビを振るものです。それは、リセスが弱い自分をどこまでも嫌っていて、英雄という強者になりたいことの裏返しです。ですわ口調と同じで、いくらかは作っているキャラです。

 英雄は強者であり、弱者じゃない。強いから、畜生に何てならない。成果ゆえに社会的地位もあるし、戦闘能力もあるし心も強いはず。たとえ心が弱くても社会的地位も戦闘能力も強大ならば、その弱さもどうとでもできる。

 社会的弱者であるコンプレックスから口調だけでもお嬢様(社会的強者)を貫き、アイドル(社会的強者)になろうとし、その結果心身の弱さまで突き付けられ、大事な存在を失った。リセスはその事実を受け入れられなかったし、そんな奴によって無意味にニエが死んだことを認められませんでした。

 だから英雄(強者)になりたいのです。地位も肉体も精神も強くなりたい、せめて精神の弱さをどうにでもできるぐらい強くなりたい。

 弱者のままで死にたくないから。ニエを無意味に死んだことにしたくないから。

 ニエ・シャガイヒという存在の死に価値と意味を作ることで贖罪とし、自分を発狂やショック死すら起こしかねないほど肥大化したコンプレックスから解放する。

 彼女が英雄を目指すのは、贖罪と逃避のため。どこまでも後ろ向きな理由で英雄を目指していて、その根幹にあるのは自分の弱さを認められない自己否定です。






 むろん、今まで散々書いた通り、ニエからしてみれば「見当違いの贖罪」でしかありません。むしろ自分を散々苦しめたうえ、「英雄を生み出す生贄」にしようとしているリセスに対する怒りは強大です。

 そして、このままリセスが死ねば、ニエは超えてはいけない一線を越えてしまいます。

 こんな言葉があります「日常で培った倫理観のブレーキは馬鹿にならない」。

 兵士や戦士というのは、そういうのを訓練で意図的に緩めることができるようになる人物と、この理屈で言えば言えます。イッセーたちは、必要に応じて天然でそれを緩めることができる、戦士としての才能がある人物でしょう。

 ですがニエは違います。ニエはリセスに対する恨みとリムヴァンのあおりでブレーキを踏むことを忘れているだけです。本質的に普通なのです。

 やるやらないとできるできないは別なのです。いきなり悪い奴を倒せる力をあたえられたとして、それができるのは天然ものの英雄とか勇者です。大量の人間をみなごろしにできる力がぽんと与えられて、それで本当に虐殺を実行するのは普通は無理です。

 日本では、死刑執行のさい三人の人間が同時にボタンを押して死刑を実行するそうですが、実際は一つのボタンが死刑執行のスイッチになっているそうです。これは、人を殺すという精神的苦痛を和らげるための方法だそうです。

 兵隊というものは本来一般人が数年かけて殺し合いができるように訓練を積んでなるものですが、それでも実戦を経験すると人が変わったりPTSDになります。いきなり実践に投入された善良な人間が、人に簡単に暴力を振るい家族を虐待するようになったという話を新聞で読んだことがあります。

 もし彼がこのまま衝動的にリセスを殺せば、一般人がいきなりたくさんの人の前でどんな理由であれ人を殺せば、彼は越えられない一線を越えてしまいます。

 騎士道や武士道は人を殺す職業である騎士や武士が守るべき規範としたものですが、実際乱世でそれを守れたものはごくわずかです。時代が発展して教育が発達した現代の兵隊でも近しいことがあるのは先程書いた通り。

 そして、リムヴァン・フェニックスはそんな精神的な訓練などニエには積ませていません。

 リセスを殺せば、ニエの心は超えてはいけな一線を越えてしまいます。









 リセスもプリスもニエ自身も、そして戦える英雄たちであるイッセーたちも気づいてませんが、ニエがリセスを殺せば、ニエ・シャガイヒは二度目の死を迎えます。









 こんな言葉があります。「たとえ私が超人的な力を持っていても、家でワインを飲むだけだろう」

 リセスは、ここで死ぬことを選んではいけません。それは、ニエ・シャガイヒにとどめを刺すことと同義だから。

 リセスは、今のままでは英雄とは言えません。それは、心は弱くてもいいからと思っているから。

 なぜなら、彼女は今までずっと弱さから逃げてきただけだから。

 何より克服するべき弱さから全力で目を背けて逃げている逃亡者を、リセス自身が内心で英雄とは思えないから。









 英雄とは、どんな形であれ困難を乗り越えた者だと理解し、だからこそヒロイやイッセーに羨望しているリセスは、ニエにきちんと向き合う覚悟を決めなければ英雄にはなれないですし、贖罪すらできないのです。




第四章 12

 

 その幻影が終わり、そしてニエは薄ら笑いを浮かべていた。

 

「……こうして加害者の視点から見ると、腹立たしいにもほどがあるね」

 

 そう告げ、ニエは踏みつけていた足を下すと、そのまま姐さんを蹴り飛ばす。

 

 そのまま姐さんは何度も転がり、そして止まる。

 

 そして、ふらふらになりながらも立ち上がった。

 

 その目は、ニエだけを映していて、そして何も映していない。

 

「ニエ……。私は……」

 

「なんだい? 言い訳ぐらいは聞いてあげるよ。許すかどうかはまた別の話だけどね」

 

 姐さんは、その言葉にすがるように手を伸ばす。

 

「私は、強くなったのよ。……いっぱい、救ったのよ」

 

 今にも崩れそうな状態で、それでも姐さんは手を伸ばす。

 

 一生届かない筈だったものに、今なら手をのばせるという希望を胸に。

 

「……あなたを死なせてしまったから。せめて、それ以上の人を救いたいって。そうでもしないと、許されないから」

 

「馬鹿だね、リセス」

 

 その言葉にニエは苦笑を浮かべ、手をのばし―

 

「―だったら真っ先に死んでくれ」

 

 遠慮なく光力の矢を叩き込んだ。

 

 神器によって超人になっている姐さんはそれでは死なない。だけど、明確にダメージが入ったことだけは事実だ。

 

 それがきっかけとなって、姐さんは崩れ落ちる。

 

 そんな姐さんに冷たい視線を向けながら、ニエは一歩近づいた。

 

「生きて償うなんて発想が出ること自体が逃げてる証拠だ。……どんな幸せだって、生きていなければつかめない。死んでしまえばあらゆるマイナスだけじゃなくプラスの可能性も消え失せる。死刑以上の償い何て、今の時代に存在しない」

 

 侮蔑の表情を込めて、ニエは姐さんを見据える。

 

「……生きて償うなんて欺瞞だよ。幸せになる可能性をいっぺんでも残して、それで償おうなんて、よくもまあ当事者()の前で言える。正気を疑う」

 

 そして、容赦なく顔面にケリを叩き込んだ。

 

「ぐぅ!」

 

「死にたくないから償わないとでもいうのなら考えたけど、そんな欺瞞を欺瞞とも思わず実行するのなら、遠慮はいらない。……君は殺すよ。邪魔するやつも全員ね」

 

 なんども、なんども、なんどもなんどもなんども。

 

 わざと小さな威力でケリを入れて、一撃で殺さないようにいたぶっている。

 

 このクソ野郎が……ぁ!!

 

「てめえ、マジで放せ!!」

 

「だめ! 放さない!!」

 

 氷を砕いてでも助けに行こうとすんだけど、プリスがそれを妨害してくる。

 

 くそ、氷を強化してるせいで脱出できねえ!!

 

「どけよ! このままだとそのニエってのに姐さんが、リセス・イドアルが殺されんだぞ!!」

 

「だからだよ」

 

 静かに、狂気すら感じさせる声色でプリスは言い切った。

 

「私もリセスちゃんもニエ君を裏切った。それをニエ君自身が晴らそうとしてるんだよ? 止める権利が、貴方にあるの?」

 

「それは……っ!」

 

 確かにそうなのかもしれねえ。

 

 恨みを直接晴らしたいのは当然だよな。

 

 しかも、自分は死んでんのに殺した奴はのうのうと生きている。殺された奴からしたら、それこそ恨み骨髄ってやつなのかもしれねえ。

 

 ……だけど、俺は姐さんに死んでほしくねえ。

 

 わがまま言ってんのはわかってる。っていうか、こんな職業選んでおいて死ぬなってのもあれな話だ。

 

 だけど、それでも、俺は!!

 

 姐さんが、あんなぼろ雑巾みたいな姿で死んでほしくねえ。

 

 姐さんが、英雄で、輝きだ。せめて倒れるなら、前のめりに倒れてほしい。

 

 くそ! くそくそくそくそ!!

 

「あきらめんなよ姐さん! 頼むから、戦ってくれ!!」

 

 せめて、俺は声を張り上げる。

 

 それも届いてねえんだろうけど、それでも俺は声を張り上げる。

 

「罪滅ぼしでも! 逃げ出しただけでも! 弱いのがいやだったからでも!! それでも姐さんは輝いてただろうが!!」

 

 そうだ。それだけははっきり言える。

 

 姐さんがなんで英雄になろうとしたのかは、この際どうでもいい。

 

 少なくとも、姐さんはそれによっていっぱいたくさんの人たちを救ってきた。悪い奴らを何人も倒してきた。

 

 自慢していい。誇っていい。どんな理由だろうと、私はこれだけのことをしてきたんだと誇っていい。

 

 だって、だって、だってさぁ!

 

「俺を、英雄を助けたんだぜ、姐さんは!!」

 

 俺は、隠そうと思ってたことをついに言い放つ。

 

「五年前、地方都市のスラムで吸血鬼が暴れた事件!! 俺はあんたに助けられた!!」

 

 ああ、今でもはっきりと覚えている。

 

 恐怖の記憶じゃない。憧れの記憶だ。

 

「輝いてた! 眩しかった! あんたの姿に俺は照らされた!!」

 

「………それは、まやかしよ」

 

 姐さんは、力なくそうつぶやく。

 

「弱いのがいやだから頑張って、その強さを証明したかっただけ。自分を助けるために、だから人を助けただけなのよ」

 

「それがどうした!!」

 

 姐さんの、弱い本音を俺はぶった切る!!

 

「歴史上の英雄が、どいつもこいつも世界の未来とか考えてたわけじゃねえだろ!! ただ死にたくないから殺すしかないって割り切って奴もいただろうし、生活のために軍隊に入っただけの連中だっていただろうし、名誉を求めた連中だって、当人に聞いて回れば一人や二人はいるだろう!!」

 

 英雄だから。

 

 すごいことをしたから。

 

 だから、その動機もきっと常人では抱けない立派な志なんだ。

 

 そんなのは、勝手に伝記を見たやつの妄想だ。

 

 英雄ってものそのものが、そんな綺麗なもんじゃねえってことは、目指すためによく見ている俺たちがよくわかってるだろう!?

 

「いいじゃねえか、弱い自分を克服するために頑張ったって。少なくとも、俺はそんなことで手のひらを反したりしねえよ!!」

 

 ああ、そうだ。

 

 俺は姐さんの動機にひかれて英雄を目指したんじゃない。

 

 あの時姐さんは輝いていた。その事実にこそ俺は照らされたんだ。

 

 それに、第一……。

 

「それにいるだろ!? 全部知ってて、それでもアンタを慕ってくれる奴が!!」

 

 俺のその声とともに、ニエに光力の弾丸が当たる。

 

「……クソッ! なんなんっすかあの頑丈さは!!」

 

 歯ぎしりするペトが、人体急所を正確に狙撃する。

 

 だけどニエには効いてない。上級堕天使クラスの光力を、意にも介していない。

 

 赤龍帝の鎧並の頑丈差で、ニエは魔獣達を生み出している。

 

 それでも、ペトはあきらめない。

 

 姐さんをあきらめきれない。大好きな姐さんを死なせたくないと心から思って、全力を尽くしている。

 

 俺もそうだ。

 

 聖槍の力を最大限に利用し、オーラで強引に拘束を突破しようとする。

 

 俺も、ペトも、姐さんのことが大好きだ。

 

 だけど、ニエはもう一度姐さんの眼前に立つと、手を上にあげる。

 

 同時に巨大なドーインジャーが現れ、そして手を上げた。

 

「外野がうるさいけどこれで終わりだ。大丈夫だよリセス。プリスを殺してから、僕も殺されてやるから」

 

 そして勢いよく手を振り下ろす。

 

 それを合図に、巨大なドーインジャーの足が踏み落とされた。

 

「姐さ―」

 

「お姉さー」

 

 俺たちが叫ぶより早く、巨大な脚は姐さんを踏みつぶ―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―ふざけんなこの野郎!!」

 

 ボロボロの鎧を身にまとったイッセーが、それを受け止める。

 

「ぬぅううううううりゃぁあああああ!!!」

 

 そして強引に弾き飛ばすと、ドラゴンショットの一撃で頭部を吹きとばした。

 

 それにニエは一瞬だが隙を見せる。

 

 その顔面に、イッセーの全力の拳が叩き込まれた。

 

「ブッ!?」

 

 一気に百メートルぐらいは吹っ飛んで、ニエはそのまま地面を二百メートルぐらいは転がっていく。

 

 それを睨み付けながら、イッセーはふらつきながらも構えを取った。

 

「すまん、サイラオーグ・バアルとヴァーリ・ルシファーは思った以上に強敵だった」

 

 ジェームズの猛攻を突破してきたのか。マジかあの野郎正気か。

 

 だが、良く周りを見てみると、もう動ける戦力はほぼいない。

 

 イッセーを除けば、ペト、お嬢、サイラオーグ、ヴァーリ、レグルス、フェンリル、アーシアぐらいだ。

 

 アーシアが無事なのは、聖母の微笑を乗っ取られているからだろう。生かしておいた方が当分は都合がいいと思っているんだな、こいつぁ。

 

 くそ、全滅間近じゃねえか。

 

 しかも、ペトの狙撃が何の役にも立ってねえ。イグドラシステムの装甲強度は化物……使ってるけどシャレにならねえだろ!!

 

 だけど、それでもイッセーは歯を食いしばりながら立ち上がっていた。

 

 そして、ニエから姐さんをかばうと、拳を構える。

 

「リセスさんには、手を出させねえぜ」

 

「……部外者は引っ込んでくれないかい? 僕はリセスを苦しませて殺せればそれでいいし、邪魔しないなら部外者にまで手を出す気はないよ」

 

 ニエの目は本気の目だ。

 

 少なくとも、自分から俺たちの邪魔をする気はないんだろう。俺を取り押さえたのは、あくまで俺が姐さんを殺させないように動くからだ。

 

 だから、姐さんさえ見捨てれば俺たちはイグドラシステム四人に集中できる。

 

「ふっざけんな、この馬鹿!」

 

 ま、イッセーがそんなことを受け入れるわけがねえんだけどな。

 

「リセスさんは俺たちの大切な仲間だ。ここでそう簡単にやらせるかよ」

 

 心からそう言い切ったイッセーに、ニエは哀れみを込めた目を向ける。

 

「僕に対する罪滅ぼしだとかいう妄言や、自分の弱さに対する恐怖で戦ってるような奴が、本当に仲間といえるのかい?」

 

 それは、イッセーに対する挑発じゃなく質問だった。

 

 その女は、絆とか情とかじゃなく、自分が強いと思いたいからそういうことをしていたんだ。そう言外に言っている。

 

 姐さんも思うところがあるのか、その言葉に視線を逸らす。

 

 イッセーはそれを感じ取って―

 

「はぁ。あんたもリセスさんも馬鹿じゃねえの?」

 

 ―あきれ果ててため息をついた。

 

 うん、だよなぁ。

 

「「え?」」

 

 ニエはもちろん、姐さんですら首を傾げた。

 

 なんかこれ以上イッセーに言わせるのも癪なので、今度は俺が引き継いだ。

 

「ばっかじゃねえの姐さん。ただそれだけの奴が、なんで自分の恥部を知らされかねないのに芸能関係の助言なんてするんだよ」

 

 ああ、おっぱいドラゴンがらみで姐さんは助言していた。

 

 あれは姐さんが芸能人だったからできる、失敗した先達の視点での助言だったんだろう。

 

 そんなもの、「強くかっこいい英雄」には無用だ。そこから来歴がばれたら台無しだからな。

 

 でも、姐さんはリアスやイッセーにそう言った方面での一言言ってきた。

 

 それにだ。

 

「姐さん、ペトの前にソウメンスクナを出されたとき、心からマジギレしてたしペトのこと心配してたじゃねえか」

 

 ああ、あの時のことはインパクトが強かったからよく覚えている。

 

 姐さんは、あの時本気で怒ってた。

 

 いや、もちろんキレたのは自分の時と重ね合わせたのもあるんだろうぜ?

 

 だけど、そのあとペトのことを心から心配していた。それは誰が見ても明らかなぐらいだった。

 

 ただ強くなることを、過去の罪を清算することを考えているだけの奴にはできねえよ。

 

「姐さん。姐さんは、姐さんが思ってるよりずっと優しい人だぜ?」

 

「そうっス! そうっスよ!!」

 

 出てくる魔獣を片っ端から狙撃するペトが、涙を流しながらもそう大声を張り上げる。

 

「お姉様にお姉様がどんなことしたか教えられてからも、ペトはお姉様のことが大好きッス!! だって、だって……」

 

 珍しく狙撃を外すというミスをしながらも、次弾で即座にリカバリーし、ペトは姐さんの心に声を届かせる。

 

「お姉様は、ペトのことを、本当に親身になって救ってくれたッス!!」

 

「………それは」

 

「自分を救いたかったのは知ってるッス」

 

 姐さんが言いかけるより早く、ペトはそう遮った。

 

「何より自分を救いたくてたまらない。……それなのに、ペトのことを心から心配して救おうとしてくれたお姉さまが、ペトは世界で一番大好きッス!! だから、だから……」

 

「だから、こんなところで全部投げ出しちゃいけませんよ、リセスさん!!」

 

 ドラゴンショットで魔獣たちを吹きとばし、接近しようとするニエを妨害しながら、イッセーは叫んだ。

 

「リセスさんは二人も慕ってくれる奴がいるじゃねえか! それは、リセスさんが本当にいいやつだから慕ってくれてるんだ!!」

 

 イッセーの言葉が、姐さんを揺らす。

 

「昔、リセスさんが取り返しのつかない失敗をしたとしても! そのあとリセスさんが築き上げてきたものは本物だ! 俺たちがリセスさんを仲間だと思ってきたのは、リセスさんが本当にいい人だからです! なあ、ヒロイ!!」

 

 ああ、お前やっぱりいいやつだな、イッセー。

 

 トリを俺に譲ってくれるんだからよ!!

 

「……姐さん、俺は―」

 

 俺は、今まで秘してきたことを言おうと決意する。

 

 ……もう、そうすることでしか事態を打開できない。

 

 俺の想いを、俺の憧れを、俺の―

 

「―あらあら、させないわよ、イッセー君♪」

 

 その言葉とともに、イッセーにしなだれかかる女がいた。

 

 黒髪を長く伸ばし、お嬢にも匹敵するスタイル。

 

 そして、かわいらしいし服を着た少女だった。

 

 そして、その声にイッセーは肩を震わせー

 

「う、うぁあああああああ!?」

 

 絶望すら感じさせる恐怖の声とともに、しりもちをつきながら彼女から離れる。

 

 その瞬間少女の姿は消え―

 

「悪いんだけど、これ以上は僕も許容範囲外でねっと!!」

 

 その背中を、リムヴァンが容赦なく切り裂いた。

 




ヒロイ・カッシウスは英雄という輝きを目指している。

そして、シシーリア・ディアラクを照らす英雄となっている。







兵藤一誠は、頑張っていたら英雄と呼ばれていた。

多くの人たちを、がむしゃらに頑張っていたら救っていたから。








2人は間違いなく、英雄といえる側面がある。

リセス・イドアルはそんな二人の英雄を間近で見てきた。

そして、二人は英雄ではあるがそれぞれ別の英雄であることも見ている。

彼らは強者であるから英雄なのではない。それは彼らの要素の一つに過ぎない。








英雄とは輝きと定義し、そうであろうと心に誓ったヒロイ・カッシウス

がむしゃらに生きた結果、英雄と呼ばれるようになった兵藤一誠。


この二人に共通するのは、立ちはだかる困難を乗り越えて前に進んでいること。








だから、リセス・イドアルは―
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