ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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因みに、今回に限っていえばイメージテーマがあります。

構想をまとめて書いている間は、ちょくちょくアニメ版カリギュラのパラダイムボックスを聴きまくっていました。レイナーレの復活を最後まで考慮入れていたので、リセスとイッセーのダブル主人公的なレベルで、OP映像のイメージまであったぐらいです。









そして、最近ぴったりだと思った曲が一つ。

IMAGINARY LIKE THE JUSTICEの、二番。

今回のリセスを象徴する一歩手前といっていいほど、かなりあっているので正直驚きました。ぜひ何らかの形で聞いていただきたいです。


第四章 17

 その光景を、リアスは目に焼き付けた。

 

 数十メートルはある巨大な魔獣。

 

 高速飛翔し、その質量で叩き潰す事に特化した運動エネルギー弾としての魔獣。

 

 神滅具の禁手の恐ろしさを思い知る。あれは紅の鎧に身を包んだイッセーでも苦戦を強いられるだろう。

 

 だが、それをリセスは一瞬で砕いて見せた。

 

 これが、この世で二番目に強いとされる神滅具の禁手。

 

 これが、あらゆる属性を支配するという神滅具の禁手。

 

 これが、リセス・イドアルという人間が持つ神滅具の禁手。

 

 その一撃が、龍王クラスにすら通用するだろう攻撃を容易く粉砕してのけたのだ。

 

 しかし、ニエ・シャガイヒは生きていた。

 

 かろうじて、本当にかろうじてだが回避に成功していたらしい。

 

 片手と片足が吹き飛び、全身を火傷と凍傷に包まれながらも、ニエはまだ生きていた。

 

 そのまま勢いよく地面に叩き付けられたニエは、然し動けない。

 

「さっすがにこれはまずいかな―」

 

「させると思うかしら?」

 

 助けに行こうとするリムヴァンに、遠慮なく消滅の魔力を叩き込んだ。

 

 即座に防がれるが、然しガードに全力を賭けているのか動きが止まる。

 

「うわ~ん! こんなことなら滅殺の敵対者(レジスタンス・オブ・バエル)を本体から借りればよかったー! ニエ君頑張ってー!!」

 

 どうやら、兄であるサーゼクスすら苦戦させた複合禁手を持ち込んでないらしい。

 

 分身では限度があるということか。これは都合がいい。

 

「リセス! リムヴァンは足止めしているから、それが出来ているうちに決着をつけなさい!!」

 

「ちっくしょう! リアスちゃん、君もう既に最上級悪魔クラスの火力持ってないかい!?」

 

 リムヴァンがぼやくが、それを気にする余裕はない。

 

 リセスも頷くと、聖魔のオーラを抜き手に纏って突撃する。

 

「くそう! こうなったらイグドラフォースは神滅具開放!! 急いでカバーを―」

 

 何やらとんでもない台詞が聞こえたが、しかしもう遅い。

 

 リセスは既に間合いに入り、そして致命の一撃を―

 

「だめぇえええええええええっ!!」

 

 その絶叫とともに、プリスが割って入った。

 

 涙を流しながら、死の恐怖に震えながら、しかしそれでも割って入った。

 

 その表情を見て、リセスは一瞬だが動きを止める。

 

 そもそも、リセスはニエに殺される事を「ヒロイとペトに胸が張れる時になったら」認めると肯定していた。

 

 自分が死なせたと言えるニエに対して、強い後悔を残しているのだ。

 

 ……そのリセスが、ニエを殺す事に抵抗がないわけがない。そして姉妹に近い関係であるプリスが割って入れば、想定していなければ躊躇するのは当然だった。

 

 そしてその瞬間、魔獣が横合いから体当たりを仕掛けてきた。

 

「自立駆動!? くそ、邪魔よ!!」

 

「いよっしゃでかしたぁ!!」

 

 その隙をついて、リムヴァンはリアスの攻撃を弾き飛ばす。

 

 そしてそのままニエとプリスをかっさらうと、更に援護射撃をイグドラフォースに行う。

 

 その攻撃に気がそれたイッセー達から、イグドラフォースは距離を取った。

 

「……藪をつついて蛇が出たね。いや、ミドガルズオルム……よりもアポプスかな?」

 

 苦笑するリムヴァンは、やれやれと肩をすくめると、イグドラフォースに視線を向ける。

 

「そろそろ撤収するよん」

 

「おいおい待てよ!」

 

 キュラスルがそれに真っ先に食いついた。

 

 明らかに、興が乗ってる時に無粋な邪魔が入ったもののそれだ。よほど楽しく殴り合いをしていたらしい。

 

「漸くいい感じになってきたってのによぉ! ドキドキが止まらねえんだぜ、こっちは!」

 

「確かにそうですね。神滅具を使えば勝ち目は十分にあるのでは?」

 

 追随するジェームズの言葉に、リアス達は寒気を感じる。

 

 ……やはり、この四人は神滅具迄保有しているというのか。

 

 つまり、それは今まで手を抜いていたということに他ならない。こちらは神滅具を、それも大半が禁手を使い、しかも一人に至っては昇華させたものを使用していたのにも関わらずに。

 

 ヴィクター経済連合の底は未だ見えない。そして、それを見れば大半が死ぬかもしれない。

 

 その恐怖を感じるが、然しリムヴァンは首を振った。

 

「いや、こっちがもう限界」

 

 その言葉に疑問符を浮かべるより早く、彼らは来た。

 

「……しまったぁああああ!! ベリアル家の無価値を忘れてたよぉおおおお!!!」

 

「無価値にするのにこれほど時間がかかるとは。これが、第四の超越者……っ」

 

 絶叫する本体のリムヴァンと、疲弊の色を隠せないディハウザー・ベリアル。

 

 そして、殆どが血塗れになっている神々を見て全員が息をのんだ。

 

 リムヴァン・フェニックスは疲弊こそしているが大したダメージを負ってない。しかしサーゼクス達はその全員がかなりダメージを負って疲弊している。

 

 これほどまでの化け物が、オーフィスとグレートレッド以外に存在していた事に驚きを隠せなかった。

 

「……どうするかね、リムヴァン・フェニックス」

 

 額から流れる血を拭きながら、サーゼクスはリムヴァンに問いを投げかけた。

 

蒼き無神論の箱庭(イノベート・クリア・エイシズム)をすぐに再発動することはできまい。これ以上続ければ、こちらが勝てるが―」

 

「―だけど、そっちも半分ぐらいは道連れにできるね」

 

 そう続け、リムヴァンは苦笑を浮かべた。

 

「まあ、この試合を台無しにできたしイグドラフォースも神滅具の禁手相手に戦えてるし、目的は大体達成できたからね。……今日のところはもう逃げさせてもらうよ」

 

 その言葉とともに霧が生み出され、リムヴァン達を包む。

 

 このまま逃がしていいのかと思う者もいるが、神々の疲弊も負傷も酷いのが現状だ。

 

 このままいけば、リムヴァンの言う通り半分以上が道連れにされる。そして、彼の戦闘能力なら余波の一部だけでも会場の悪魔達の大半に犠牲者が出るだろう。

 

 このまま逃がす他ない。それが神々の共通認識だった。

 

 そして、霧とともにリムヴァン達が消えると、ヴァーリは肩をすくめた。

 

 即座にアーシアが回復のオーラを放ち、その場にいる全員の負傷を治療する。

 

 そしてよろよろと立ち上がる仲間達を見て、ヴァーリも肩をすくめた。

 

「俺達も帰らせてもらう。アーサー、悪いが次元を切り裂いてくれ」

 

「人使いが荒いですね。まあ、これ以上ここにいると私達が危険ですからね」

 

 そして次元が切り裂かれ、よろよろとしながらもヴァーリチームはその中に入っていく。

 

 そしてヴァーリもその中に入ろうとし、ふと振り返った。

 

「……捕まえないのかい? まあ、その時は抵抗するが」

 

「理由がどうあれ、援護してもらった借りはあるもの。今回は見逃すわ」

 

 リアスはため息をつくと、そのままへたり込む。

 

 負傷こそもう回復しているが、体力の消耗はあまりにも大きい。

 

 これ以上、負担を増やす気はリアス達にもなかった。

 

「兵藤一誠。紅の鎧は見事だった。俺と戦う時はより洗練させてくれ」

 

「わーったよ。お前も、あんまり組織内で勝手な行動するんじゃねえぞ? おかげで俺たちがいい迷惑じゃねえか」

 

「さて、俺は組織行動が苦手でね。どうしたものか」

 

 イッセーの言葉に頭が痛くなるようなことを返しながら、ヴァーリもまた切り裂かれた空間に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふう。何とかしのげたぜ。

 

 しっかしイグドラフォースだっけ? あいつらマジでヤベえな。

 

 結局まだ奥の手は抜いてないみてぇだし、英雄派の幹部連中にも匹敵する化け物だ。

 

 流石は、リムヴァンが選び抜いた精鋭ってことか。少なく見積もっても魔王クラスの化け物って感じで考えるべきだな。

 

 俺はそんなことを思いながら、ペトと視線を合わせる。

 

 ……以心伝心ってのは、このことかねぇ。

 

 俺達は頷き合うと、姐さんに近づいた。

 

「お姉様、大丈夫っすか?」

 

「……全然、大丈夫じゃないわよ」

 

 苦笑と一緒に、そんな答えが返ってきた。

 

「人生最大の恥部にして汚点をこの人数に見せつけられたのよ。しかも、それで決めた決意をニエに全否定だもの」

 

 だよなぁ。

 

 いろんな意味でキッツいだろ、コレ。トラウマもんだな。

 

 だけど、だけどさ、姐さん。

 

「姐さん。俺も、ペトも、姐さんが助けたんだ」

 

 俺の言葉に、姐さんは苦笑じゃなくて微笑を返した。

 

「お姉様は、優しい人ッス。誰よりにもなによりも自分を助けたいのに、人に手を差し伸べれる立派な人ッス」

 

「ペトのアフターフォローやったり、俺をイドアル孤児院迄連れて行ってくれたりする必要はねえもんな。他の連中に任せりゃそれでいいしよ」

 

 ああ、そうなんだ。

 

 他の勢力と共闘してたんだから、そういうアフターフォローはそいつらに任せればいい。

 

 そんなことに時間を駆けずに、他の困っている人を助けに行けばいい。

 

 だけど、姐さんはそうしなかった。

 

 それは、姐さんが心から優しい人だからだ。

 

 堕ちていた頃の姉さんならそんなことはしなかっただろう。見えもしなかっただろう。

 

 だから、これだけは断言できる。

 

「姐さんは強い。強くなった」

 

「そして、すっごく優しいッス」

 

 俺とペトは心から微笑むと、両手を広げた。

 

「「リセス・イドアルは、立派な英雄だって断言できる」」

 

「………っ!」

 

 その瞬間、姐さんは俺とペトに飛び掛かるように抱きしめにかかった。

 

 勢い余って地面に倒れるが、しかしそんなことを気にする必要はねえ。

 

「うぅ………ぐすっ! うわぁああああああん!!」

 

 なんか感極まったのか、大声で泣きだす姐さんを、俺とペトは抱きしめる。

 

 なんつーかこう、しゃれた言い回しをするのなら、こんな感じなのかねぇ。

 

―英雄リセス・イドアルは、今日この日に、真の意味で誕生したんだ。

 

「よしよし。よーく頑張ってるスね、お姉様。ペトは見てるッスよ」

 

 そういって姐さんの頭をなでるペトに倣い、俺は姐さんをぎゅっと抱きしめる。

 

「大丈夫。俺達はこの程度で姐さんを見捨てたりしないからさ。だから、胸張って英雄目指せばいいんだよ」

 

 ああ、姐さんなら大丈夫だ。

 

 なんたって、俺の輝き(英雄)なんだからな!!

 




 今回のリムヴァンの最大の失態は、ディハウザーまで巻き込んで蒼き無神論の箱庭を使ってしまったこと。

 それがなければ、下手したら首脳陣を全滅させることも不可能ではなかったです。今回の大苦戦で神クラスも、神じゃない護衛を大量に動員して動くでしょうし、ある意味最大のチャンスをなくしたといっても過言ではないです。








因みにイグドラシリーズ四人組こと、イグドラフォースの隠し玉は神滅具です。

……全員別種です。どいつもこいつも第四章ではボス格を担うとだけ言っておきます。……とりあえずギャスパーが危機ですね。








そして、リセスも結果的に大きな成長をしました。

逃げ続けるのをやめて、大事な人たちに胸を張るために立ち向かうという、なんだかんだで難しいことを続けることを決意。人間的に大きく成長を遂げました。

ニエを倒し損ねたことは失態ですが、それ以上に過去が数千人以上の悪魔たちに知られたことも大きなダメージです。かん口令を敷いてもばれるでしょうし、異形業界でリセスが英雄となることは、この話が知られれば困難になるでしょう。

でも、リセスはヒロイとペトの英雄でい続けることはできます。

たくさんの人の英雄になることはできなくても、それが逃げ続けてきた結果でも、何人かにとっての紛れもない英雄になることはできる。それが、リセスをまっすぐ歩かせてくれます。

リセス・イドアルは、たくさんの人に否定されたとしても、まごうことなく英雄です。
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