ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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第四章もついにラスト!



第四章 18 歌姫の再起

 

アザゼルSide

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘終了後のごたごたしてる中、俺はある男を探していた。

 

「……よぉ、帝釈天」

 

「あんだよ、アザ坊じゃねえか」

 

 そこにいるのは、アロハシャツを着た坊主頭の神。

 

 中国神話勢力、須弥山の長、帝釈天だ。

 

 インド神話のインドラって言った方が通りがいいかもな。

 

「正義の堕天使さんがどうしたんだよ。俺も流石にへとへとなんだぜ?」

 

「……単刀直入に聞くぜ。曹操のことだ」

 

 闘戦勝仏の爺さんが、曹操について何かしら知っている感じだった。それも、幼少期の曹操についてだ。

 

 あの爺さんは帝釈天の部下だ。目の前の野郎が知っている可能性は十分にある。

 

 俺はそれが気になって鎌を駆けに来たんだが―

 

「……ああ、そいつについちゃぁ悪かったな。こっちも想定外の事態になりやがった」

 

 ……認めやがった。それも謝っただと!?

 

 てっきりごまかすか、最悪でも開き直るかのどっちかだと思ったんだが、どういうことだ?

 

「ああ、他の神話体系を出し抜く為に情報を隠してたんだが、それが完璧に裏目に出たぜ。流石にちょっと反省してるぜ、これでも」

 

「はっ! 制御が効かなくなったってか? 自業自得なのはかまわねえが、こっちを巻き込まないでほしかったな」

 

「HAHAHA! そっちも白龍皇が好き勝手やってんだろうが」

 

 嫌味の応酬を返すが、しかしこれはまずいことになったな。

 

 そして、曹操の暴走についても原因は分かり切っている。

 

 ……リムヴァン・フェニックス。

 

 奴はこの騒ぎの中心にいる。アイツが大量の神器を構成員に移植しているからこそ、禍の団は―ヴィクター経済連合はあそこまでの脅威度を誇っているわけだ。

 

 そして、あいつの危険性はまだ底が見えない。

 

 俺も帝釈天も割と重傷だった。特に帝釈天は三回ぐらい聖槍で切り裂かれてる。

 

 こいつが神々の中でも最強クラスだったから今は平然としてるが、流石に肝が冷えたんじゃねえか?

 

「まあ、それ位は別に構わねえだろ。他の神々だって裏じゃ何してるか分からねえぜ?」

 

 そう、帝釈天は嫌味な笑みを浮かべる。

 

「オーディンやゼウスの甘ちゃんどもはともかく、大半の神々は他の神話体系が滅びた方が都合がいいって考えてるはずだぜ? 須弥山(俺ら側)はともかく、南北アメリカやアフリカの神話体系は裏でヴィクターを支援してる連中も多いだろうよ」

 

「だろうな。だが、その俺達のわがままで人間達まで滅ぼしていいわけがねえ」

 

 そうだ。この戦いで最も被害を受けるのは人間だ。

 

 百歩譲って俺ら堕天使が大きな責任を負わされるのは良い。半ば自業自得だ。

 

 だが、そのとばっちりを人間たちに負わせていいわけがねえ。

 

 そのためにも和平は必要だ。恨みつらみに関しても、対策は少しずつだが進めてる。

 

 そして、それを目の前の野郎は何処まで読み切ってやがる?

 

「ま、俺は当分協力してやるよ。曹操の件を突っつかれたら俺達が生贄になりそうだからな」

 

 そうかい。それ位のことは考えてるようで何よりだ。

 

 だが、それはいつまで続く……?

 

「それと、赤龍帝に伝えといてくれや。今回は面白かったが、世界の脅威になるようなら俺が魂ごと消滅させてやるってよ。……天を称するのは俺たちだけで十分だ」

 

「そうかい。ま、そう簡単に行くとは思えねえがな」

 

 俺の脳裏に、ふとヒロイとリセスの姿が映る。

 

 ……リセスの奴、今回の件で殻を破ったみたいだな。

 

 リムヴァンはリセスを精神的に追い込んで有利に立ち回る為に色々動いたみたいだが、逆にそれがショック療法になりやがった。

 

 前からちょっと危なっかしいところがあったかが、どうやら今回の件で一皮むけたみたいだな。

 

 ペトとヒロイがいたからこそだが、あいつはもう大丈夫だ。

 

「覚えとけ。リセス・イドアルって英雄はマジで神殺しの領域に足を踏み入れ始めてるぜ? イッセーを殺す気なら、あの女が黙っちゃいねえだろ」

 

「分かってるよ。それに、あの坊主に迂闊に手をだしゃぁ、白龍皇も動くだろうし、もう一本の聖槍も黙っちゃいねえだろ」

 

 分かったうえでこの挑発。

 

 この野郎、実際にそれができるだけの実力があるから困る。

 

 ったく、イッセー達も厄介な奴に目をつけられたもんだ。

 

 だが……。

 

 案外、何とかしちまうかもしれねえな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで激戦が終わり、俺達は学園祭を楽しんだ。

 

 オカルト研究部はいろんなものに手を出したから忙しかったけど、こういうのも良かったな。

 

 今学園祭は大詰めを迎えており、カラオケ大会が始まってる。

 

 今頃イッセー達は何をしてんのかねぇ。ちょっと気になるな。

 

 だが、たぶんお嬢かイッセーのどちらかがどっちかに告白してんだろうな。

 

 あの二人は一皮むけた。だから何となくこのそれっぽい展開に動くだろう。

 

 お邪魔蟲にはならねえようにしねえとな。

 

 と、そんな感じでカラオケ大会は大詰めを迎えている。

 

 現在最高得点を取ったのは演劇部。

 

 どうやら学園祭ではミュージカルをやっていたらしく、その勢いで参加したらしい。

 

 生徒だけじゃなく保護者や教師の参加もOKになってるけど、さて、どうしたもんか。

 

 俺もノリで参加するべきかねぇ?

 

『さぁ! 95点という超高得点を取った優勝候補を超えてみようという猛者はいませんか? 出来れば後一人ぐらい来てほしいんですが……』

 

 うん、これはプレッシャーがキツイ。

 

 誰もが二の足を踏んで躊躇して―

 

「じゃあ、私がやろうかしら?」

 

 そこに、手を上げる者がいた。

 

 ……姐さん?

 

『おぉ! この駒王学園の用務員にして、生徒達を食い散らかすサキュバスなリセスさんではないですか? 今回は男あさりはしないんですか?』

 

 おい司会! 確かに事実だがここで言うか!!

 

 姐さんはそれに苦笑すると、静かに首を振った。

 

「実は、二度と人前で歌わないと決めていた時期があるのよ」

 

 ………っ

 

 姐さん。ニエのことそんなに気にしてたのか。

 

『そうなんですか? なのになんで?』

 

 司会の意見ももっともだろう。

 

 それが、こんな人前で堂々と歌おうとかどういう心境の変化なのか。

 

 そんな視線を一身に浴びながら、姐さんは苦笑を深める。

 

「……結局それは、見当違いの逃げに過ぎないって教えられたからね」

 

 ……姐さんにとって、ニエとの戦いは大きな転機だったんだろうな。

 

 今までの贖罪を全否定された。

 

 死を選ばず生きて償う事を選んだ時点で、幸せになる可能性を捨て切れなかった。

 

 確かに一理ある。

 

 だけど、だからこそ姐さんは前に進む事を選んだ。

 

 ……姐さんはこう言った。

 

 後悔からの逃避で死を選ばない。選ぶとするなら、俺やペトに胸を張れる時だと。

 

 もしそうなったら、姐さんは本当に死を選ぶんだろう。

 

 だけど……。

 

「だけど、そんな弱い私を受け入れてくれる人がいる。だから、私も前に進んでみようと思うの」

 

 姐さんは、そう言うと視線を旧校舎に向けた。

 

 そこではきっとイッセー達がいるだろう。今頃お嬢とイチャイチャしてるんだろうなぁ。

 

 それを姐さんも分かってるのか、姐さんはまた苦笑を深める。

 

 そして、マイクを手に取った。

 

「だから、私は一歩前に踏み出すの。人前で歌うのは、その第一歩ね」

 

 そうか。姐さん、前に進むんだな。

 

 その結果、崖から一歩踏み出して死ぬことになるのかもしれない。

 

 それすら出来ずに、歩き続けるだけなのかもしれない。

 

 だけど、それでも―

 

「だから、この一曲を支えてくれる人達に捧げます!」

 

 ―姐さんは、やっぱり俺の英雄だ。

 

「お姉様ぁああああ!」

 

 ハイテンションになったペトの大声が聞こえる。

 

 ああ、ペトも大声で応援する。

 

 あ、負けてたまるか!

 

「姐さぁああああん! 頑張れぇええええ!!」

 

 俺とペトの声が聞こえたのか、姐さんは笑みの形を変えた。

 

 それは、満面の笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして姐さんは、文句なしの百点満点を叩き出して優勝した。

 

 流石元プロ。あれ? これって大人げなくね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、俺は部屋でゲームをしていた。

 

 たまにはこういうのも面白いな。特に日本のゲームは良いのがいっぱいだ。

 

 ただアクションゲーム系統は無理だ。俺の反射速度と身体能力に、ゲームのプログラムが追い付いてこない。全然上手く動かせねえ。

 

 え? ただ下手なだけ? んなこたぁねえよ。

 

 つってももう夜中だ。そろそろ眠くなってきたな。

 

 と、いうわけでそろそろ寝ようと思ってゲームを消したその時、ノックの音が響いた。

 

「ハイどうぞー」

 

 俺がそう答えると、ドアが開いてペトが顔を出す。

 

「ヒロイヒロイー。ちょっとお願いがあるッスけどいいっすかー?」

 

「内容次第なー。ツボとか買ったりはしないからなー」

 

 そんな軽口を叩くと、ペトはそのまま部屋に入って、ちょいちょいと手で誰かを招く。

 

 誰だ?

 

 イッセーはお嬢に告白したらしい。そして結果はもちろんOKだ。むしろ、OK以外の答えが返ってくる方がおかしい。

 

 そして俺たち以外のグレモリー眷属は全員こっそりのぞいていたらしい。木場すら出歯亀するとは何考えてんだ。

 

 その所為で色々と騒がしい事になってるんだが、いったい誰が……。

 

 そう思った俺の視界に、顔をほんのり赤く染めた姐さんが入ってきた。

 

 て、テレ顔の姉さん、プライスレス!!

 

 ペトと視線が合うと、自然と俺達は親指を立て合った。

 

 そして姐さんはそれに気づかず、ペトに引っ張られて俺の目の前に来た。

 

 な、なんか緊張して俺は立ち上がる。

 

 な、なんだなんだ?

 

 そう思った瞬間―

 

「―ん」

 

 姐さんの唇が、俺に触れた。

 

 な、ななななんだぁあああああ!?

 

 何が起こった! いやっほう! これは一体何の幻術だ! 我が世の春が来たぁああああ!!!

 

 大混乱する俺から姐さんが唇を放すと、今度はペトが俺の頬に両手を当てる。

 

「ん~」

 

 そして再びずきゅぅうううううん!!

 

 うっひょぉおおおおおおおお!!! 

 

 な、なんなんだこれは! 俺は死ぬのか!?

 

 そして俺は気が付くと、ベッドに押し倒されていた。

 

「ど、どういうこと!?」

 

「簡単っス。……そろそろ食べてあげようかと思ったッス」

 

 ペトがはっきりと何するか言ってくれた。

 

 え、え、えええええ!?

 

「ヒロイ。貴方には感謝するほかないわ」

 

 姐さんが、俺を抱きしめながらそうささやいた。

 

 その声は、今までにないぐらい繊細な声だった。

 

「貴方を救えたから、ペトを救えたから、私は生きて立ち向かえた。ニエに、逃避ではなく贖罪として向き合う事が出来るようになるかもしれない」

 

 姐さん。

 

「姐さん。死ぬ気か?」

 

「それしか、彼が償いを求めないのなら」

 

 はっきりと、姐さんはそう言った。

 

「ニエの言う事は極論だけど正論だわ。そして、私はニエが望む通りの償いをしたいと思っている」

 

 それは肯定だった。

 

 ニエ・シャガイヒは姐さんの死を望んでいる。姐さんの命という対価をもって、自身の絶望の清算をしようとしている。

 

 そして、姐さんはそれに応えようとしている。

 

「でも、それはちゃんと向き合えるようになってから。恐怖による逃避じゃなくて、贖罪による対峙でなければ駄目だと思えるの」

 

 姐さんは、そういうとほほ笑んだ。

 

「貴方が、一生懸命声を届けてくれたからよ。本当にありがとう。私の輝き(英雄)、ヒロイ・カッシウス」

 

 そして、姐さんは服を脱ぎ始める。

 

 だけど、俺はそれが目に入らない。

 

 それ以上に、さっきの言葉が心に残った。

 

 リセス・イドアル()輝き(英雄)

 

 ……ああ、俺はそうなろう。

 

 俺の英雄を照らす輝きをまず目指そう。

 

 姐さんが、俺を照らしてくれるように。

 

 そんなことを考えてふと我に返れば、姐さんは生まれたままの姿になっていた。

 

「だから、貴方を私の弟分にしてあげる」

 

「つまりペトはヒロイの姉弟っす! ペトが先だから姉御と呼んでほしいっすね!」

 

 ペトまで脱いできた。

 

 俺はこれを、止めるべきなんだろう。

 

 だけど無理だ。もう我慢ができない。

 

「姐さん。俺は聖人君子じゃねえから断れねえぜ?」

 

「それは良かったわ。断られたらどうしようかと思ったもの」

 

 そう言いながら、産まれたままの姿になった姐さんはクスリとほほ笑む。

 

 それは、こんな展開では考えられないぐらい純粋な天使のような笑みだった。

 

「ヒロイ。大好きよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日この夜、俺は死んでもいいと心から思った。

 

 ああ、マジですぜ諸君!!

 




リセスの過去と再起を描く、第四章も終わりました。

これで主要三人の過去は全部必要なことは書き切りましたね。そして、ここからが本格的にヒロイとリセスが「英雄」になる道でもあります。







帝釈天のコントロールをすでに超えている曹操。リムヴァンに殺されかけていることもあり、マジで警戒しています。







この作品のオリジナル要素の殆どを担うリムヴァン。この男がイレギュラーであることはすでに明白です。







そして第五章。ウロボロス偏とヒーローズ編を書きます。

テーマとしてはオーフィスを中心とした原作通りですが、この作品での曹操の化け物っぷりが発揮される章でもありますね。
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