ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
そんなこんなで夜。
俺は、何回目か忘れたけど姐さんやペトと一夜の楽しみをしていた。
……なんか、俺は姐さんとペトに本気で気に入られたらしい。毎日求められてる。
おいおい、勘違いしそうな気がするぜ、俺は。
男なんて馬鹿な生き物なんだから、もうちょっとこう、落ち着いてくれよ、二人とも。
「勘違いしていいですか!!」
「「ダメ」」
撃墜!!
思わず横になってるけど崩れ落ちる俺に、姐さんとペトはぽんぽんと肩を叩く。
撃墜した人に慰められても嬉しくねえんですがねぇ!! そんな事するなら受け入れてくれよ!!
「駄目よ、ヒロイ。弟分と恋人は違うの」
「ヒロイ、ペトは自分の長い人生を共に過ごせるものとしか添い遂げないと決めてるッス」
くっそぅ! 俺も転生悪魔になるぐらいしねえといけねえってのか!!
っていうか姐さん。それってつまり、俺のことは恋愛対象として眼中にないってことですかい? そう言いたいんですかい?
だとするなら、マジでショック!!
「あのねえヒロイ。私達の関係は恋愛のそれとは違うでしょう?」
姐さんは、諭すようにそう告げる。
「私達は、光照らすもの同士よ。私がペトとあなたを照らして、二人が私を照らしてくれる。それは恋愛とは異なる関係だわ」
その関係を心から大事にするかのように、姐さんは微笑んだ。
それは、姐さんがアイドルになりかけたことを証明するような、宝石のような微笑だった。
……やべえ、惚れ直しそう。
でもまあ、言いたい事はなんとなく分かる。
なんつーか、こう。俺達の関係は恋愛とか友情とかとはまた別の何かだ。
尊敬しあってるというか、なんというか。とにかく信頼し合っている関係なんだけど、その方向性がおかしいっていうか。
これは、きっと当事者の俺たちですらよくわからねえ流れなんだろうな。
……うん。なんかこれはこれでいい気がしてきた。
「わぁったよ。で、姐さん?」
「―これから何ラウンド目になるんすか?」
俺たちはそう言って誘うが、姐さんは首を振ると立ち上がった。
「今日はここまで。明日も学校があるんだから、シャワーを浴びたらすぐ眠るわよ。私も仕事があるからね?」
「ハイっス!」
ペトが元気よく返事をして、そして服を身に着ける。
俺は結構疲れてるんだが、この二人は本当元気だ。
俺だって、人間レベルを超えているほどの体力があるはずなんだけどな。こういうのは戦闘とか運動とは別の意味で体力を消費するってわけか。
これが慣れかぁ……。
「だけど、竿が一つだけってのも少し飽きるわね。今度松田君と元浜君も久しぶりに誘いましょうか」
「いいっすねぇ。あ、どうせなら食べた子達を男女問わず集めて、大乱交会とかをここの地下で―」
「「間違いなく怒られるから」」
ペトが暴走したのでツッコミを入れながら、俺たちは地下の大浴場に入ろうと廊下を歩いて階段を下りる。
なんで階段かって? そんなもん、足腰が鍛えられるからに決まってんだろ。
今回は特例として札を用意したから、今度こそ大浴場に入る事が出来るぜ。「ヒロイ達入ってます」ってきちんと書いたからな!
ああ、あのでかい風呂は、風呂文化に慣れてねえ俺でもちょっと憧れる。すっげえ気分よく入れそうなんだよなぁ。銭湯を独り占めしたらあんな気分なんだろうか。
そんな事を考えながら、俺達は階段を下りて―
「……抱いて、ください」
俺達の鍛え上げられた聴覚が、そんな言葉を聞いた。
一瞬で固まると、即座に声の方向を把握。
あれはイッセーの部屋だ。そして、あの声は小猫ちゃんだ。
「……姐さん姐さん。まさか小猫ちゃんが一番乗りとは思わなかったぜ」
「そうね。私も最初はリアスが本命でアーシアが次点だと思ってたわ」
「つか、小猫ちゃんはお嬢に忠誠心あるから遠慮すると思ったんだがな」
「主に抜け駆けとか、朱乃がやりそうなことだと思ったんだけれど」
俺と姐さんは小声でひそひそ話だす。
ああ、この展開は想定外だった。
いや、これがゼノヴィアならまだ分かるんだがな? あいつは子作りがメインになってる節があるからさ?
だけど、これは流石に想定外っていうか、なんというか……。
ん? そういえば乗っかりそうなやつが出てきてないぞ?
「あら、ペトがいないわね」
「……アイツ、この流れで混ざりに行くほど馬鹿じゃないと思うんだが―」
俺達が首を傾げたその時―
「イッセーストップッス!!」
ドバンと、ペトがイッセーの部屋のドアを蹴り開けた。
「「ペト!?」」
想定外の展開に、俺達は急いで走り寄った。
大きな音が出た事でドタバタと誰かが起き始める気配がするが、そんなことはどうでもいい。
おいおい、お前結構気を使えるタイプだとばかり思ってたんだがよ。割と常識わきまえてるじゃねえか。
恋人同士の逢瀬を邪魔するとか、流石に空気が読めてないぜ?
そう思いながらイッセーの部屋を覗くと、何やら奇妙な光景が広がっていた。
「小猫! しっかりするッス!!」
ぺちぺちと頬を叩きながら、小猫にマジで心配した表情を浮かべているペト。
そして、イッセーは顔を真っ赤にしながらも状況が分かってない表情だった。
「あ、リセスさんにヒロイも……どうすりゃいいんだ?」
「いや、俺達も何が何だか……」
俺とイッセーは顔を見合わせて戸惑う仲、姐さんはペトの肩に手を置いた。
「ペト、どうしたのよ?いきなり」
そういう姐さんだが、異常性は分かってるようだ。
小猫の様子は明らかにおかしい。
イッセーにさっきまで迫ってたのは分かるが、しかしこの展開でボケっとつっ立ってるのがおかしいだろう。
なんか、顔を真っ赤にしてぼんやりしている。
「ふにゃぁ…」
何処までも視線をイッセーに向けて、とろんとした目を向けている。
なんつーか、エロい。姐さんやペトのサラリとしたエロさとは違う、ねっとりべったりとしたエロさだ。
開放的なビッチ(つまり姐さんとペト)のエロスとは違う、なんというかサキュバス的な……。
「イッセー。部長に連絡して知り合いの魔物使いを呼んでほしいっす」
ペトが、かなりマジな顔でイッセーに振り向いた。
「後小猫を抱かない事。今抱いたら、小猫が死にかねないっすよ」
その言葉に俺達の肝が冷えるのと、お嬢達が何事かと駆けつけてきたのは同じタイミングだった。
「単刀直入に言えば、発情期っす」
そしてアザゼル先生達が駆けつけてきた中で、ペトは開口一番にそう言った。
発情期って、犬とか猫とかが起きる、性欲が活発化するっていうあれか?
確かに小猫ちゃんは猫又だけど、猫又にも発情期があるのか。
実際、呼ばれて来てくれた三年生の阿倍先輩もそう結論付けたそうだ。押さえる為の薬も調合してくれた。
後でお礼を言っとかねえとな。こんな夜遅くに態々来てくれたんだからよ。
「ようは、「子孫残したい」って本能が暴走してると考えればいいっす」
そういうペトは、さらさらと俺達に分かり易く説明してくれた。
「なるほどな。確かにあいつは猫又だし、そういう時期もありえたか……」
アザゼル先生も納得して、ため息をついた。
なんでも、京都暮らしが長かったので妖怪とかの生態はある程度分かってるとのこと。意外なところで特技があったな、ペト。
「よく分かったわね、ペト。よしよし」
「わーい、褒められたっすー! ……じゃなくて!!」
姐さんに褒めらえて一瞬舞い上がるが、すぐにペトは我に返った。
姐さんに褒められることより優先することがあるとは。これはかなり真剣なレベルだな。
「ぶっちゃけ、今の小猫は体の成長が足りてないからまずいっす。ガチ命が危険っす!」
ペトはそう言って、イッセーに指を突き付ける。
「……ああ、確かに小猫ちゃん、小柄だもんな」
「そう言う意味じゃないと思うんだけど……」
しんみりするイッセーに、木場からツッコミが入った。
額に手を当てながら、ペトはイッセーの肩に手を置く。
「猫又の女は、子供を宿せる体になってしばらくすると、発情期のサイクルが始まるッス。つまり子供を作りたくなるっす。そして、ターゲットは気に入ってる異種族の男がメイン。……この意味、今なら分かるッスよね?」
「あ、ああ。……俺、小猫ちゃんにそこまで好かれてるってことでいいんだよな?」
ちょっと不安げにイッセーは聞くが、その可能性を言えるようになっただけマシか。
ペトもそれは同感なのか、苦笑交じりに頷いた。
そして、すぐに真剣な表情になる。
「だけど、小猫の体は性的に未成熟っす。男で言うならあれっす、精通が始まってないようなもんっす」
「凄く分かり易い!!」
イッセー、大声出すな。
しっかし、それってまずくねえか?
「つまり、孕んでもガキを産めないって事か?」
「ヒロイ、もう少し表現を柔らかくして頂戴」
お嬢にため息をつかれたけど、間違った事は言ってねえよな?
ペトもそれに頷くと、深刻な表情を浮かべる。
「性的に未成熟な肉体での出産は、母子ともどもに死ぬ可能性すらあるッス。実際ソウメンにやられた女の中には、耐え切れずに死んだ奴もいたッス」
………目の前で見た実体験に基づく意見だったのか。
重くてどう反応していいか分からねえ。とりあえずソウメンは地獄で苦しめ。
「でも、発情期は心身ともに成熟してから発生するはずなんスけどねぇ……」
ペトはそう言って首を傾げる。
その辺は阿倍の先輩も首を傾げてたな。
知識のある二人が同じように首を傾げてる。ってことは確かに小猫ちゃんは発情期になるには少し早いって訳なはずなんだが……。
「まあ、その辺は環境が原因だろうな」
と、アザゼル先生が目を細めて言った。
俺達全員の視線が集まる中、アザゼル先生は肩をすくめる。
「イッセーにトラウマ克服の兆しが見えてから、リアスを中心に関係が急速に発展してる節があるからな。それで焦ったんだろうよ、「自分も」ってさ」
な、なるほど。
肉体的にはともかく、精神的にはエロい事をしたくなってしまったのか。それで、体が引っ張られて発情期に入ったと。
思い込みって結構やばいからな。プラシーボ効果とかノーシーボ効果とかあるし。神器も、遺志の力で駆動するから精神の影響を受けやすいしな。
しっかし、そんなもんどうすりゃいいってんだ?
「薬を使い続けると、今度は発情期が中々来なくなる事もあるッス。あまり使用するのは避けるべきっすね」
「で、でも、俺が小猫ちゃんといたしちゃったらやばいわけで……」
ペトのガチ発言に、イッセーが顔を真っ赤にしながらおろおろとする。
確かに。これは危険だな。
イッセーはおっぱい魔人とは言え、ロリがダメなわけじゃない汎用性の高いスケベ野郎だ。尻もうなじも行けるだろう。というより、トラウマを克服し始めてるから性欲により忠実になるかもしれねえ。
そんな状態で発情した可愛い子から迫られるとか、普通きついだろ。
「あ、悪魔が子供出来にくい体質だからって、それにかまけるわけにもいかねえしなぁ」
「そうだな。そう言う時に限って一発目で当たるらしいしな」
俺とゼノヴィアがどうしたもんかと首を捻ってると、姐さんが立ち上がった。
「……仕方がないわね。ここは私の出番のようね」
おお、姐さん!
流石姐さんだ。この状況下で何かできるのか!!
「すごいですリセスさん! どうするんですか?」
アーシアの感激をにじませた質問に、姐さんはふっと不敵な笑みを浮かべた。
「ようは性欲を発散させればいいのでしょう? 大丈夫、私は女の子相手も得意よ!!」
「却下ですわ」
速攻で朱乃さんがハリセンを叩き付けた。
姐さんは本気でナイスアイディアだと思っていたらしい。
「なんでよ! 発情してるのなら発散すればいいだけじゃない!! 悪魔なんだからエッチな事してもいいでしょう!?」
「た、確かにそうなのだけれど、イッセーの代わりにリセスをあてがうというのは、色んな意味で避けてほしい事ね」
お嬢、正論ありがとうございます。
つっても最終手段としてはそれもありかもしれねえ。
なにせ性欲をコントロール出来てねえって事なんだからよ。京都での痴漢騒ぎじみた事件が駒王学園で起きたら大惨事だ。
「安心してくれ、お嬢」
「ヒロイ。貴方、最近染まったと思ったけど……」
「俺は混ざらねぇから」
「そう言う意味じゃないのよ」
だろうね!!
「……まあいい。これに関しちゃイッセーが我慢すればいいだけだろう。小猫の為だ、頑張れ」
「は、はい! 頑張ります!!」
イッセーが敬礼までして気合を入れる。
頑張れよイッセー。最悪の場合、お前の性欲を姐さんとペトが吸い取り尽くして勃たなくすればいいだけだからな。
……あれ? そっちの方がイッセーには役得じゃね?
などと思っている間に、話がなんか別の方向に進もうとしていた。
「それはともかく。……明日、俺の一存でお前らに会わせたい奴がいる」
なんだ? なんかすごい緊張感が隠れた声なんだけどよ。
「貴方がそんな声色をするだなんて。何か大事みたいね」
姐さんもそれに気づいて、声色を少し変える。
どうにもこうにも、こっちの方が重要っぽいな。
アザゼル先生は真剣な表情を向け、俺達を順に見据えた。
「最初に言っておく。奴がここに来ることをお前達は認められないだろう。だが、それでも揉め事だけは起こさないでくれ。駒王町を灰燼に帰すことに繋がるしな」
も、揉め事!? 駒王町が灰燼に帰す!?
いったいどんな奴を連れてくるんだよ。戦闘能力的にも人格的にもデンジャー名の出てきそうだな、オイ。
そんなレベルで不満をいだく相手ぇ?
「……まさかと思いますが、ヴァーリチームですか?」
「半分正解だ」
木場の質問に、アザゼル先生は素直に答えた。
マジか。あいつら本当に自由だな。
だが、なんだかんだで共闘もしてる相手だ。いきなり殺し合いと化するほどの事にはならねえと思うんだけどよ。
つまり、もう半分が問題ってわけか。
「ヴィクターの重鎮が亡命でもするのか? 女性の重鎮ならここを亡命先にするのは賢明ではあるけどね」
「なるほど! イッセーくんの
ゼノヴィアとイリナが相談してるけど、その辺が正解か?
ヴィクターの重鎮なら、俺達が敵意を抱いて揉めたとしてもおかしくねえ。
そして、女性の亡命先としてここはかなり有効だからな。
なにせイッセーの乳語翻訳があるからな。嘘を言ってねえ事だけはすぐに分かるはずだ。
……だが、アザゼルは首を振った。
「微妙に正解だが、亡命ってわけじゃねえ。ただ、そいつはイッセーと話をしたいみたいなんだよ。それでヴァーリが俺にコンタクトを取ってきたんだ」
話……ねぇ?
「は、ははは話だけしたら帰るんですかぁ?」
「少なくとも敵意はねえはずだ。そして、上手くいけば情勢をひっくり返す事だってできる」
ギャスパーにそう答えるアザゼルには、何かの期待があった。
こりゃ、大手派閥の司令官クラスが直接接触を図ってくるってことかねぇ。
一国家クラスの規模の派閥が寝返ってくれれば、確かに情勢をひっくり返すのも簡単ではあるけどよ。
「だからこそ、頼む。どうか話を聞いてやってくれ」
アザゼルが、神妙な態度で頭を下げた。
それに俺達は納得して、その対談を受け入れる事にする。
有力派閥の幹部なら、説得で味方に引き入れる事ができるなら、まあ効果はあるか。
だけど、女の敵と言ってもいいイッセーに態々ヴィクターの女幹部が接触ねぇ。
いったい、どんなやつなんだろうな。
後日、俺はそんなのんきな事を考えた事を死ぬほど後悔した。
ペト、意外と頭が回るの巻。
まあ、ペトは京都とも縁が深いので、妖怪関係に関してはそこそこの知識があるのです。