ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
ドアを開けたら、そこにはウロボロスがいました。
で、次の日。
俺達は念の為に戦闘準備を整える。そしてそのタイミングでインターホンが鳴った。
てっきり転移か何かで来るかと思ったんだがな。
そんなのんきな事を思いながら、イッセーが扉を開ける。
そこにいたのは、見覚えのある少女。黒く露出度の高いゴスロリ服を着た、小さなロリッ娘。
その少女は、イッセーを見て無表情に一言。
「ドライグ、久しい」
………あの、すいません。
この人、映像で見た事あるんですが。
こいつは、こいつは―
「オーフィス……っ!!」
飛び退って赤龍帝の籠手を展開するイッセーを責めれるものなど誰もいない。
俺も一瞬で聖槍を出してホンダブレードをその身にまとったし、姐さんも一瞬で禁手発動準備を終える。
ギャスパーに至っては気絶しそうなぐらい震えてるし、他のメンバーも全員警戒態勢だ。
そりゃそうだろう。
禍の団の首魁。世界最強。
ラスボスが来てるじゃねえか! 最終決戦の幕開けじゃねえか! ハルマゲドンだろうが!!
オイオイオイオイちょっと待て!
俺達は、あくまで若手だぞ。こんな最終決戦を任せていいわけがないだろうが!! 気合を入れて倒してくれよ大人達!!
っていうかラスボスが魔方陣じゃなくインターホンで来訪ってシュールだな、オイ。
あれ? 俺、結構余裕ある?
「待て待て!!」
と、アザゼル先生が慌てて割って入った。
「今日は戦いに来たわけじゃねえって言っただろ!! こいつも攻撃は仕掛けてこねえよ。てか、勝ち目ねえよ!!」
いや、確かにそうだけどね?
これは流石に想定できないっつーか、許容できる事じゃねえだろ!!
ほら見ろ、お嬢なんて、消滅のオーラが漏れ出てるぐらい激昂してるよ。
「アザゼル! そのドラゴンはヴィクターの盟主と言っても過言じゃないのよ!! 私達三大勢力とその同盟組織の仇敵を……怨敵を招き入れるなんてどういうつもり!?」
いつもの暴走に対するツッコミ何てレベルじゃねえ。
これはまさしく糾弾ってやつだ。
「っていうか待ちなさい。これだけの大物が来るというのに、他の者達が動いていないっておかしいわよ」
姐さんが、冷や汗を流しながらアザゼルを見据える。
た、確かにそうだ。
この駒王町は、三大勢力にとってはある種の聖地と言っても過言じゃねえ場所だ。
だから、悪魔にしろ堕天使にしろ天使・教会にしろ、相当のスタッフが働いている。
その重要拠点に敵のボスが来訪だってのに、なんで魔王様も天使長も出てこねえんだよ。
俺達若手が相手するレベルじゃねえ。どう考えてもおかしすぎる。
「……先生! まさか、魔王様やセラフにも黙っているのではないですか?」
木場が聖魔剣を構えながら、アザエル先生を問いただす。
そうだ。こんなところにこんな無警戒でオーフィスが入り込めたって事は、スタッフや結界をどうにかしないといけねえ。
……アザゼルの野郎、結界に細工とかしたんじゃねえだろうな!?
アザゼルは、黙ったまま頷いた。
マジかよ。この野郎、マジでやりやがった!!
「協定違反よアザゼル!! 堕天使全体が同盟組織全てを敵に回しかねないほどの裏切り行為だわ!!」
お嬢が激昂するのも当然だ。
いくらなんでも、これは裏切り行為と言われたっておかしくねえ。
だけど、お嬢は深呼吸をすると、ものすごい我慢する表情を浮かべながらも、戦闘意識を薄めた。
「……それだけの事をするだけの価値が、あるというの?」
そ、そうだよな。
アザゼル先生は、なんだかんだで和平に対して積極的だ。
色々問題児ではあるが、根本的には教師やってるし、俺達を何度も救ってくれたいい指導者だ。
問題ポイントを差し引いてもそれだけの事があるから、堕天使総督アザゼルは、堕天使の総督をやっている。
そのアザゼル先生が、今更和平を台無しにするような裏切り行為をするとも思えねえ。
「そ、そうっスよね! 総督は確かにダメ人間っすけど、世界を破滅に導いたりする人じゃないっす!!」
「おい配下。お前を破滅に導いてやろうか?」
先生、先生。
今この場で暴れないでくださいよ。俺らだって耐えてるんですから。
英雄目指す身としてはあれだけど、平和が一番! 無益な犠牲は避けるべきですからね!!
先生は、咳払いとともに俺達に視線を向ける。
「俺はこいつをここに招き入れる為に、現在進行形でいろんな門をだましてる。無駄な血を流さない為に、それだけの事をする必要があると判断したからだ。……話だけでも聞いてやってくれ」
そう言って、先生は頭を下げた。
……まあ、悪ふざけでこんなことするほど馬鹿じゃねえよな、うん。
「……まあ、何かあったら全部アザゼルに責任をかぶせればいいでしょうしね」
姐さんが冗談交じりにそんなことを言い、全員の空気が弛緩した。
まあ、とりあえず話だけでも聞いてやるか。
で? まさかこいつだけってことはねえだろ。
いくら最強の存在だからって、立場ってもんがある。護衛とか補佐官とかついてねえとおかしいわな。
そう思ったそのとき、玄関のドアから見慣れた三角帽子がぴょこんと出てきた。
「お久しぶりです。ルフェイ・ペンドラゴンです。あと、フェンリルちゃんを連れてきました」
と、どっかで見たことあるけどサイズが明らかに縮んでる狼とともに、ルフェイが入ってきた。
……フェンリル
こ、この子度胸があんのかセンスがずれてんのか。
あとフェンリルよ、お前はそれでいいのか。あ、ちょっと微妙そうな顔した。
そしてペトとルフェイの視線が合い―
「「………っ」」
に、にらみ合いが勃発した!!
「む~」
「ぬ~」
ああ、この2人は冥界でのパーティで激戦をぶちかましていたからな。因縁があった。
とはいえ、この子はヴァーリチームの中では問題児度が低いところがあるからな。人選としては間違ってねえか。
フェンリルも護衛としては優秀なんてもんじゃねえだろうしな。十分すぎるような―
「やっほー! 赤龍帝ちん!」
そういいながら、イッセーに抱きついてくる影があった。
っていうか、黒猫だ。黒歌だ。
……ちなみにサラリとペトと自分を挟む形でイッセーに抱き着いている。
すさまじくトラウマになってるな。どんな撃たれ方したらこんなにトラウマになるんだ。
そして胸出けえな。ま、姐さんやペトも負けてねえけどな。
「……あら、そっちの聖槍使いは童貞捨てたみたいね。態度でわかるにゃん」
「ふっ。俺の成長したオーラが漏れ出てるか。仕方ねえな」
はっはっは。わかっちまうか。そうかそうか。
そうだよな。俺ってば、童貞卒業したんだもんな。
成長してるってことだ。ふっはっはっは。
「……そして気持ち悪くなったわね」
「そうなんだよ」
黒歌のボヤキにイッセーがマジ返しする。
この野郎。黒歌の胸の感触でグヘヘ状態だったのが冷めてやがる。
そんなに今の俺は気持ち悪ぃのかよ。松田と元浜よりはましだって自負があるんだけどよ。
そして、そんな俺たちをよそに、オーフィスはイッセーにまじまじと視線を向けていた。
「我、話、したい」
……話って言われてもな。
俺たちが戸惑う仲、アザゼル先生は頭をぼりぼりと書きながら、ため息をついた。
「とりあえず、話を聞いてやれ。いや、マジで頼む。こっちはこの話し合いに命かけてんだよ」
ま、まあ確かに命がけだろうな。
……まぁ、頑張れ、イッセー。
そんなこんなでリビングで、俺たちはオーフィスと向き合っていた。
つっても、会話すんのはあくまでイッセーなんだがな。
……さっきから、オーフィスはぼりぼりと菓子を食いながらイッセーを見つめてるだけだ。
「えっと、それで……話って何ですか?」
イッセーが、少し戸惑いながら話を促す。
それに対してオーフィスは沈黙していたが、やがて小首をかしげた。
あ、かわいい。
……ほほえましい気分になってる場合じゃねえ!!
「ドライグ、天龍をやめる?」
…………はい?
いや、天龍ってやめれるもんじゃねえだろ。
ぶっちゃけ、意味が分からねえ。
「あの、どういう意味?」
「今代のドライグ、今までと違う」
イッセーの質問を半分ぐらい無視して、オーフィスは尋ねた。
「今までのドライグと違う成長をしてる。我、とても不思議」
イッセーの成長……か。
そういや、前にイッセーがこんなこと言ってたな。
『この前さ、ドライグが、「お前は俺のことを一個の存在として扱ってくれてる」とか訳の分からないことを言ったんだよ。ドライグって一個の存在だよな?』
それを聞いた時、俺はちょっと苦笑した。
そういうのが分からねえところが、馬鹿なんだよな。
だけど、気持ちのいいバカだ。良いやつだってことが良く分かる馬鹿っぷりだ。
多分だけど、今までの赤龍帝は、ドライグを対等な関係とは思ってなかったんだろうな。それどころか、赤龍帝の籠手という武器として見ていたんだろうよ。
だから、会話は自分が必要だと思った時だけ。世間話なんて欠片もしない。相棒じゃなくて、あくまで愛用。そんな感じだ。
だけど、イッセーはそんな風には見なくて、友達のように接している。いや、本当に相棒だと思ってんだろう。
だからこそ、イッセーは才能が一番低いのに、ある意味で一番成長しているんだろうな。
「ドライグ、リムヴァン達と戦った時に紅になった。赤じゃなくて紅になったの、初めて」
あ、やっぱり
ま、宰相自ら出てきた戦いで変身したんだから、当然か。
しかも大絶賛生中継。そりゃ知名度抜群だろうよ。
「だから聞きたい。ドライグ、一体何になる?」
オーフィスさん。たぶんそいつそんな深い考え持ってないですぜ?
イッセーはハーレム作って平和な毎日送りたいってだけで頑張ってるからな。天龍以外の何かになるって意識はねえだろ。
つか、自分が天龍だっつー意識すらねえんじゃねえか? そんなこと、深く考えたりするタイプじゃねえだろうしな。
しっかしこの流れでそれを言うのは度胸がいる。ぶっちゃけ、俺も流石にビビってる。
とは言え、恐怖に耐えて輝くからこその英雄。それ位出来なきゃだめに決まってるだろうな。
と、いうわけで!
気合入れて俺が出るとするか―
『わからんよ、こいつが何になりたいかなんてな』
ってドライグ!? こいつ出てきやがったよ!!
む~。ドライグは比較的付き合いがあるみたいだし、こりゃ任せた方がいいのかねぇ?
さてそれじゃあ俺達はどうしたもんかと思いながら見守っていたが―
「ドライグ、乳龍帝になる? 乳をつつくと、天龍超えられる?」
などと言い放ったどこぞの無限のせいで、ドライグが過呼吸を起して会話が中断された。
っていうか、魂だけなのに呼吸が苦しいって現象が起きる事に驚きだっつの。聖書の神もどんな粋な計らいをしてるんだよ。
因みに、オーフィス達はこのまま何日間かい続ける事になった。
……連続して試験があるってのに、よくやるぜ。
このころのオーフィスって、実は一般常識が絶無なだけだったんですよね。
この会話の独特なテンポも「質問に質問で返すのは、基本的に失礼」「相手のことを考えて発現する」という二つを知識として知っていたら、こんな風にはならなかったと思います。そして一瞬でオーフィスの説得も成功していたでしょう。
多分ですが、一般常識を叩き込まれていたら、禍の団のトップになることもなかったと思います。