ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
まずは、数で圧倒的な差がある時の正攻法を取ってきました。
霧が包み込み、そして水が流れるように消えていく。
さっきの霧、間違いなく
ってことは、ここは異空間なのか?
慌てて周りを見渡すが、特に変な事は起きていない。
レストランの客も従業員も、俺達の視界の範囲内では全員いた。突然の霧に戸惑って、きょろきょろとしている。
どういうことだ? 民間人まで積極的に巻き込む必要はねえだろう?
ヴィクターは、大義名分があるから世界に堂々と戦争を仕掛ける事が出来ている。それが崩れたら一気に崩壊してもおかしくない。そして、今や民間人を積極的に巻き込んだ戦争は、国家やそういった組織でやれば一気に世論が傾くレベルだ。
そんなことするほど、ヴィクターは切羽詰まってねえだろう。
ガールヴィランの時だって、ヴィクター首脳陣は抑え込んでいたから奴らは離反して行動したんだ。少なくとも、首脳陣は大義名分をなくすほどの戦闘を好んでない。
なのに、一体なんで……?
「……ヒロイ、ペト。ここ、さっきと同じよ」
姐さんが、周囲を警戒しながらそう告げた。
へ? 同じって?
「転移してない。さっきのは、私達を狙ったものじゃないわ!」
「「はぃい!?」」
俺とペトは驚いた。
え? どういうことだよ?
もしかしてドッキリ? 魔王様が、オーフィスを内密に駒王町に連れ込んだアザゼルに腹を立てて、ドッキリでも仕掛けたのか?
いやいや。流石にそこまでするとは思えねえんだが。
だけど、ただの悪戯で絶霧を使うやつらはいないだろうし……。
「あれ? お客さま? お客様ぁ!?」
そして、ウェイトレスのその声に、俺達は振り返った。
……あ。この位置だと、イッセー達の場所は確認できねえ。
「まさか、部長!?」
顔を青ざめさせたペトの声で、俺達は弾かれるようにイッセー達を確認する。
……いねえ。料理とかを置いて、イッセー達もオーフィス達もいねえ!!
「まさか、そういうことなの……っ!」
そういうことってどういうことだよ姐さん。
オーフィスが来たのは罠じゃねえってことは、流石に分かる。
そんな必要がねえぐらい圧倒的な戦力差なわけだし、そもそもヴァーリはそういうのを好まないはずだ。
それにヴィクターだってこんな真似はしねえだろう。
ヴァーリチームが好き勝手やってるのはいつもの事だけどよ? だからって、このタイミングで襲撃しかける必要なくね? 下手したらオーフィスの機嫌が損ねるんじゃね?
そんなことになったら、不都合なのはヴィクター経済連合の方だと思うんだがな。
で、姐さん。答えはいかに。
「……敵の狙いは、オーフィスの可能性があるわ!」
「「えぇええええ!?」」
俺とペトは同じく大声で叫んだ。
え、え、どういうこと?
「あ、すいません。消えたのは連れですので、代金は払います。……あ、領収書を切ってください、グリゴリで」
姐さん。領収書をもらっている場合じゃねえだろ。
っていうか、この状況下で律儀に支払うんだな。しかも黒歌たちの分まで払うとか、姐さんも人がいいな。
「お、お姉様! それよりオーフィスが狙いってどういうことっすか!?」
「冷静に考えなさい、ペト。そもそもおかしかったのよ」
慌てて狙撃銃すら取り出すペトに、姐さんは肩に手を置いて止めながらそういう。
そもそもおかしい? いったい何が?
「ヴァーリチームの信用は、ヴィクターの内部では底値に近いはず。それなのにオーフィスの直衛がヴァーリチームだなんて、ちょっとおかしいわ」
あ、それもそうだな。
ヴァーリチームは勝手な行動がたたって、ヴィクター内部でも煙たがられてるのは俺たちも知ってる。
なにせ、ヴァーリチームに対する嫌がらせを目的の一つとして、イッセーたちのレーティングゲームは妨害されたわけだしな。
……お嬢達、まともにレーティングゲームができてねえような気がする。いや、それはどうでもいいか。
「で、姐さん。それがどうしたんだよ」
「冷静に考えなさい、ヒロイ。……そもそも世界の覇権を狙うヴィクターにとって、グレートレッドの消滅はメリットが薄いわ」
あ、確かに。
前に聞いたが、次元の間にいるのがグレートレッドだから、俺たちの世界は大丈夫だとか言う説があったな。
変質しているとかいう今のオーフィスを次元の間に据えたら、何が起こるか分らないとか言ってたな。
「オーフィスの蛇は確かに強力だけれど、それを差し引いてもオーフィスの願いが叶う事はデメリットが大きい。……ヴィクターの連中は考えてたはずよ、いずれオーフィスをどうにかしたい、と」
ってことは、つまり―!
「オーフィスを、どうにかする手段を手に入れたってことか?」
「対龍特化型の複合禁手をリムヴァンが編み出した……当たりかしらね」
「それってつまり、イッセーとヴァーリもついでに殺そうとしてるってことっすか!?」
おいおい、どうすんだよそんなもん。
っていうか絶霧の恐ろしさが嫌というほど分かる。
神出鬼没にもほどがある。しかも、罠を仕掛け放題の空間に無理やり取り込めるとか反則だ。上位神滅具は伊達じゃなさすぎだろ!!
「でも、だったらなんでペト達は連れ込まれてないんっすか!?」
「
そ、その欠点は俺達も十分理解してたけどここで来るか!!
ん? ちょっと待てよ?
分断作戦で倒しに来たってことは……。
「俺達、ヤバイ?」
「とにかく、人気のない方向に行くわよ。急いで走って!!」
う、うぉおおおおお!!!
イッセー! 無事でいろよぉおおおお!!!
俺達は都市を高速で飛行しながら、サーゼクス様に連絡を取っていた。
このスピードでの高速飛行は住民に迷惑がかかる。だけど、このままこんな人ごみの中にいたら、逆に被害がでかくなる。そう言う面倒な塩梅だ。
『……アザゼルが懸念していた通りの状況ということか……っ!』
事情を聴いたサーゼクス様は、そういうとテーブルを叩き割った。
どうやら、アザゼル先生はある程度状況を分かっていたらしい。流石にあの人は頭がいいな、流石研究が本領なだけある。
でも、できれば俺らにも言ってほしかったですぜ先生。子供に余計なことを考えさせないのは立派っすけど、それも時と場合がありやしてね?
とにもかくにも、どうやらヴァーリは身内がオーフィスに手を出すことを想定していたみてぇだ。それでオーフィスをいったん預けるってのも目的の一つだったらしい。
ってことはつまり、姐さんの想定通りにオーフィスをどうにかする方法を見つけたって事だ。おそらくは、対龍に特化した複合禁手ってところだろうな。それも、たぶん神滅具の特化型禁手クラス。
「とにかくそういうわけだから、イッセー達をすぐにでも探して! あと、私達が向かってる先を立ち入り禁止区域にしてほしいのだけれど!!」
『了解した。ちょうどその方向に、危険な魔獣が出没することから一般人の立ち入り禁止区域がある。そこに増援を派遣する』
手際がいいぜ! さっすが魔王様!!
とりあえずそこなら、堅気の連中の被害は出さなくて済みそうだな。
『だが、事態が急すぎて時間がかかる。それまでは―』
「了解っス! 何とか自力で頑張るッス!!」
ペトが元気よく答える。
ああ、神滅具二つに狙撃の鬼才が揃ってんだ。そう簡単にはくたばらねえよ。
むしろ危険なのは、狙い撃ちされたイッセー達の方だ。
まず間違いなく、もろとも殺すつもりで仕掛けてくるはず。俺や姐さんが曹操ならそうするし、おそらく長可はそう勧めるはずだ。
……イッセー、お嬢、ゼノヴィア、イリナ、皆……っ!
俺が歯を食いしばっている間に、俺たちは立ち入り禁止区画の奥深くにまで入り込んだ。
そして、その瞬間真後ろから聖なるオーラを纏った攻撃が襲い掛かる。
俺達が身をひねって回避し、そしてその一撃は森をごっそりと削り取った。
くそが! このオーラは間違いなく
出てきたのは、森長可か!!
俺達が着地すると同時に、聖槍を構えた長可が、森の中から姿を現す。
「よぉ。悪いが、お前らの相手は俺がするぜ」
「……一人とは、相当自信があるようね」
姐さんが皮肉を飛ばすが、長可は肩をすくめるとため息をついた。
「どうも、あいつ等は遊びが過ぎていけねえ。若い頃を思い出して、ちょっと恥ずかしい気分になるぜ」
なるほど、それならイッセー達が生き残る可能性はありそうだな。
若気の至りに感謝しねえと。あいつらの弱点は若さってやつだな。
いや、姐さんはともかく俺とペトも同じぐらいの年なんだけどよ? いや、俺は正確にはわからねえけどよ?
とにかく、イッセー達に助かる可能性が出てきたなら、こっちに集中できるってもんだぜ。
「……ヴィクター経済連合は、オーフィスを切り捨てる気?」
「敵に教える馬鹿はいねえが、まあ、すぐにわかるからいいか。ただし―」
その瞬間、いつの間にか長可は間合いを詰めていた。
スピードが尋常じゃないぐらい速いわけじゃない。ただたんに、走るタイミングが掴めなかった。
歩法ってやつか? くそ、武術大国ニッポンめ!
突き出された聖槍を、俺は聖槍で防ぐが弾き飛ばされる。
そして、その衝撃を上手く活かして長可は聖槍をで薙ぎ払った。
その攻撃速度は速いが、しかしそれ以上に読みづらい。
攻撃速度は曹操と同格。だが、気づいたら攻撃が既に始まっていて、反応がまじでムズイ。
入るまでの予備動作が少なすぎんだよ。その所為で初動が解り難くて、反応が遅れる。
……奴の主である織田信長は、戦国時代の在り方を一変させた風雲児と言われている。
そのうちの一つが、武士の完全な戦闘職業化だ。
それまでは平時では農業をして、有事の際に戦う事が多かった当時の武士達や足軽を、平時の際でも戦闘訓練を行う戦闘職としてきっかり分けたらしい。
そして、そのうちの一人が目の前の聖槍使い、森長可。
文字通り戦場で生きて戦場で死んだ男。卓越した鍛錬と、潜り抜けた実戦が作り上げた人間という名の戦闘兵器。
……英雄派やイッセー達とは、その基礎骨格が比べ物にならねえ!!
「はぅあ!?」
「ペト!?」
姐さんはギリギリでガードが間に合ったが、ペトは反応できなかった。
いきなりの攻撃で、狙撃に以降できなかったのが致命的だ。ペトのセンスじゃ反応できるわけがねえ。
そのまま森の中に吹っ飛んで消えていくペトをカバーしたいが、一瞬でもそうしようとした次の瞬間、目の前には聖槍の穂先があった。
槍王の型の応用で無理やり反応して体を動かす。そしてそれでもかわし切れず、結構頬が深く切れた。
……ヤバイ、こいつ、マジで強い。
「ヒロイ、そっちは任せ―」
「おっと」
姐さんが駆け出そうとしたその瞬間、突き出した聖槍を戻す勢いで、石突が姐さんを狙う。
両手を交差してオーラを放って受け止めた姐さんだけど、威力を殺しきれず弾き飛ばされた。
「させるわきゃねえだろ。ま、芯に響くぐらいいい感じに当たったから、内臓がつぶれて致命傷じゃねえか、ありゃ」
んの野郎!
人を殺しなれてるだろうこいつが言うと、冗談に聞こえねえ!!
そして長可はいつの間にか、俺達よりもペトに近いところに移動していた。
くそ、動きが自然すぎて殺気がねえと反応しきれねえ!!
「んじゃぁまあ。そろそろあんた等面倒だから、上からは殺しとけって言われてんだよ。曹操は「もうちょっと強くさせたい」とか言ってたが、敵を強くするのもあれだしな」
静かに、僅かに頬を吊り上げながら、それでいて目は全く笑っていない。
「一人殺せたら撤退とか言われてたけどよ、やれるなら全員殺した方がいいよなぁ?」
……間違いない。こいつは、ある意味で俺達が戦ってきた中で一番強い。
一番、兵士をやっている。
「首、おいてってもらうぜ?」
くそ、このままだと、マジで死ぬぞ!?
Q:敵の数が多すぎますし、敵のホームに集まっています。どうすればいいですか?
A:分断して一部をこっちのホームにおびき出しましょう。
流石に真女王イッセー及び、勇者ヒロイや賢者リセスの三人を相手にしながらゲオルクをカバーするのは困難と判断して、長可に任せることにしました。英雄とは、勝てる方法を見つけ出して勝つべくして勝つからこそ英雄なのです。
そして、長可は聖槍使いとしてはヒロイや曹操ほどぶっ飛んではいません。信仰心が薄いくせして聖書の神から加護受けまくりのヒロイみたいな異常ではありませんし、ただいまぜっさい無双タイム柱の曹操みたいなトンデモ禁手にも目覚めていません。
ただし、戦士としての長可の技量は、曹操とは別ベクトルで完成しています。だからこそリムヴァンもあえて他の保有者ではなく長可を復活させて、聖槍をあたえたのです。
こと少数精鋭相手の戦闘能力なら、長可は曹操みたいな策に頼らなくても同等の成果を発揮します。……言い方はあれですが「単純な槍使い」としての戦闘能力なら、ヒロイも曹操も長可には絶対勝てません。
なんというか、強いというよりも巧いという感じですね。きわめて完成された動きな挙句、しかも見切りづらいという最高水準。曹操とは別の意味でテクニックタイプの極みです。