ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
Other Side
リムヴァン・フェニックスは、ジークと一緒にお茶をしていた。
腕のいい配下の機嫌を取るのも、立派な宰相の仕事である。そのあたり、リムヴァンはマメであった。
特にジークは最近機嫌が悪い。
リセスにたいして、
彼は禍の団でも有数の使い手。それも、神器移植も蛇の投与もしていない人間にも関わらず強大な力を持っている。剣腕に関していえば、自分の直属になっているヒルトすら超えるだろう。しかも、ついに彼のお眼鏡にかなった強化方法があれば、全盛期の天龍にすら牙を突き立てるだろう。
間違いなく、世界最強格の剣士の1人。離れられるのは心から避けたい。
だから、こうしてご機嫌取りをしているのである。
「……長可は、本当に殺しそうで不安なんだけどね」
「まあまあ。三対一で殺されるようじゃあ、君が倒すには値しないでしょ。殺されたのなら、わざわざ君が出向くに値しなかったってことでいいじゃないか」
やんわりとなだめながら、リムヴァンはジークにお茶を差し出す。
それで気分を落ち着けたのか、ジークはため息をついた。
「とはいえ、ついに禁手にまで目覚めたみたいだね。さすがは僕のリセス。長可には悪いけど、返り討ちにできるだろうさ」
「まあ、僕としては「一人殺せたら帰っていいよ」とは言ってるよ。彼等は仲間思いだから、下手に怒らせると怖いしね」
もっとも、その怒りで生まれた隙を容赦なくつけるのが長可なのだが。
ジークには悪いが、リムヴァンは三人纏めて殺してもらうつもりで長可を動かしている。
曹操は紛い物のヒロイだけ死んで、ジークの獲物であるリセスや得難い難敵になるだろうペトには生き残ってもらいたいようだが、そうもいかない。
リムヴァンとしても、ぜひ三人とも死んでもらいたいところではある。
この手のゲームは歯ごたえのある敵がいてこそ面白いものだが、たくさんの者たちに「勝つ」ことを前提として協力してもらっている以上、勝算を高く維持する必要があるのだ。
いかにあの獣があるとはいえ、Lという伏札があるとはいえ、不確定要素は少なめにしておきたい。
そういう意味では、オーフィスを切るのは時期尚早かもしれない。
しかしこれも世の中のせちがらさだ。自分は事実上のトップとして行動しているが、下の者たちのご機嫌もある程度はとらねばならない。ある程度は合議制なのだ。
ゆえに、オーフィスを切ることを選んだ。
他とは次元違いの強さを持つ最強戦力を切るのはあれだし、彼女も契約者の一人なのとっと心苦しい。しかし、それが他の派閥の総意なら仕方がない。
もとよりヴィクター経済連合は、禍の団とは別物なのだ。
禍の団ができる前から、潜在的に異形の力を使ってより強い勝ち組になりたいという存在は多かった。
それを、真っ先に味方にすることに成功したLのアジテーション能力によって引き入れたのが、ヴィクター経済連合の前身。
その後、サタナエルの手引きで生まれた禍の団を取り込む形になったため、リムヴァンとしてもオーフィスをどうにかしたいという感情は持っていた。
そして、ヴィクター経済連合は元より、禍の団の派閥もオーフィスをどうにかするという方向で意見が一致した。
そうなれば、オーフィスには悪いがそうすることになる。
……渡りに船とばかりに、曹操がハーデスの協力を取り付けれたことは幸いだった。
神の悪意。神の毒。本来あり得ない、聖書の神の悪意・毒・呪いを一身に受けるもの。
それゆえに、その存在は龍に対する究極の天敵となりえる、龍を滅ぼす龍。
この存在をちらつかせてきたハーデスは、それを一時的にレンタルすることを請求した。
曹操はそれを認め、リムヴァンたちにも話を通している。そして首脳陣もそれを受け入れた。
しかし、よりにもよってそのタイミングでオーフィスが失踪。加えて懲りずにヴァーリチームが独断行動。
方々に手をまわして調べ上げた結果、グレモリー眷属と行動を共にしていることが発覚。そしてヴァーリチームが事実上の背信行為をしていることも確信。
結果として、曹操の発案でヴァーリチームの追放が決定。オーフィスの力を限界まで奪い、残滓をハーデスに譲るという契約が交わされた。
「まあ、あの骸骨爺さんは何かたくらんでるよ。たぶんだけど、第三勢力と繋がってたりするんじゃないかな?」
「いいのかい? そんな奴に残りかすとは言え、オーフィスを与えたりなんてしたらまずくないかい?」
ジークの懸念ももっともだろう。
そして、リムヴァンはそれをきちんと理解している。
「……ねえ、こういう時に一番うざいのが何かわかるかい?」
「なんだい?」
ジークが訪ねてきて、リムヴァンはニヤリと嗤った。
「どっちにもつかずに利益だけ取ろうとしている、うざい骨のことさ」
そう言うなり、リムヴァンはスマートフォンを取り出すと、電話とつなげる。
「デイアちゃーん。ハーデスとの会話のデータ、こっちに侵入してるスパイに渡しちゃってー」
そう言い放ち、リムヴァンはクックックと嗤った。
この二極化が進んでいる戦いで、一番うざいのは何か。
足を引っ張る味方? 強大な敵? それとも面倒な第三勢力?
いな、今迷惑なのは、陣営を一応三大勢力側にしておきながら、三大勢力に対する嫌がらせに集中しているといってもいいハーデスが。
これはもう、どこにとっても敵でうざいだけだ。
なので……。
「人を動かすコツを知ってるかい?」
「願っていることを叶える方法を用意することかな?」
「おしい。それともう一つを組み合わせる必要があるんだよ」
そう告げると、リムヴァンはニヤリと嗤った。
「逃げ道を断つことさ。……ハーデスには嫌でもヴィクター経済連合に所属してもらう」
リムヴァン・フェニックスは悪魔である。
悪魔は契約は守る。だが、同時に相手を破滅させる者でもあった。
ハーデスの最大の失態は、リムヴァンを舐めてかかっていたことだ。
彼は、交渉の一部始終を録音する程度の行動は平然と行えるものだった。
Side Out
俺と姐さんは、長可に翻弄されている。
俺も姐さんも、禁手を使っている。そのうえで長可に翻弄されている。
すでに姐さんは時間切れになっている位、長可に苦戦させられている。
そして、俺たちは結構ボロボロなのに、長可には傷一つない。
こいつ、マジで強い……っ!
「おいおい、まさかと思うがこの程度か?」
長可は息が少し乱れてるが、しかし疲れを見せない表情で槍を構えている。
「これが……鬼武蔵……っ」
姐さんもガス欠になりながらも、それでも立ち上がって雷を叩き落す。
そして、それを長可は見もせずに聖槍で弾き飛ばした。
こいつ、マジでシャレにならねえが……!
「もらったぜ!!」
「……行きなさい、ヒロイ!!」
その雷を媒介に、俺は紫に輝く双腕の電磁王を展開。槍王の型を構える。
狙うは薙ぎ払いの箒星か回転打撃の崩星の二択。
どっちを反応しようと、その逆をぶちかませばいいだけの話。もう奴は逃げられねえ!!
終わりだ、長可!!
サッサとペトを助けに行かねえといけねえんだよ!!
そして長可は崩星の対策を選択した。
なら、箒星で薙ぎ払う。
終わりだ、森長可。
今の槍王の型は、一味違うぜ。
「槍王の型―」
「なあ―」
そして槍王の型を薙ぎ払い―
「―足元がお留守だぜ?」
―その一撃は、盛大に空振った。
気づけば、俺は踏み込みが前に出すぎていた。
俺が踏み込もうとした場所には、長可の聖槍の石月が置かれている。
それを、俺は無意識に避けた。それだけの動きができるほど、俺は高水準に鍛えられている。それが敗因だった。
気づいた時にはもう遅い。その踏み込みのずれが動きをそらし、長可はその動きのずれから生まれる安全地帯にもぐりこんでいた。
「んじゃ、次は二人目だな」
そして、一瞬で、聖槍が振るわれて―
「―そうはいかないっス!」
その言葉とともに、俺の顔ど真ん中を貫くはずだった聖槍はそれた。
頬をかすめた聖槍にひやりとするより、俺はその声の持ち主が平然としていたことに驚いた。
あり得ないといってもいい。いくら単純な種族的頑丈差で俺や姐さんを上回っているとしても、それでもあれはまずい。
なにせ、俺の聖槍からの加護や姐さんの神器ほどの強化をもたらされてないんだ。長可も致命傷を与えたと確信していたし、俺たちも戦闘ができるとは思っていなかった。
だが、今俺たちの視界には、狙撃特化の人工神器を構えた、ペトの姿が映っていた。
「チッ! フェニックスの涙は準備済みってか!」
「いえ、持ってない筈なんだけど……」
長可にそう素直に答えてしまうぐらいには動揺しながらも、姐さんは本能的な動きで火炎弾を放つ。
同時に俺も魔剣を足元に大量に出すが、長可はさっきで危険を察知したのか、即座に攻撃をかわす。
そして即座にペトに狙いを定めなおして、攻撃を叩き込もうと踏み込み―
「うわっとぉッス……うわぁ!?」
その瞬間、それに反応したペトははるか上空に飛び上がっていた。
「なんだ? ……前に比べて速すぎる!?」
「ペト!? あなた、いつからそんなに速くなったの?」
長可と姐さんが同時に困惑するが、何より困惑してんのはペトだ。
なんでこんな高く飛びあがってんだって、顔に書いてある。
おいおい、コレ、ペトの奴なんか覚醒してねえか!?
「おいペト! お前、そもそもなんで無事なんだ?」
「へ? いや、すっごく勢いよくくらって死んだと思ったっすけど、気が付いたら別に骨にひびも入ってない感じっす」
マジか。結構もろに喰らってたと思うんだけどよ。
「嘘だろ……? いくら堕天使に特攻じゃねえつっても、上級クラスなら治療しなけりゃ死ぬぐらいの勢いでたたきつけたぞ?」
「よくわからないけど、さすがはヒロイに並ぶ私の
戸惑う長可に攻撃をすべてかわされながらも、姐さんはペトの無事に表情が緩む。
そして、こっちも懸念事項がなくなったんで気が楽になった。
場の流れはこっちに傾いてるぜ。この調子で一気に叩き潰す!!
「行くぜ、姐さん、ペト!!」
「ええ、奴が混乱している隙に、叩き潰す!!」
「よくわからないけど、ペトもぶっ倒れてたぶん全力でぶっ放すッス!!」
そして真っ先にペトが狙撃をぶちかまし―
その瞬間、どでかいクレーターが生み出された。
実はジークだけは後天的強化を英雄派で受けてなかったり。
リセスに「おもちゃ集めただけwww(主観)」で心が壊れてだけあり、あまり強化改造を行うことは好んでません。やるなら、あくまでグラムの性能を引き上げるドーピングですね。リセスも後天的強化だらけだと知っているので、後天的移植そのものを否定はしていません。
因みに、リムヴァンはなんだかんだで契約は守る主義です。
ヴィクター経済連合の重鎮たちに「勝てる」「儲かる」を約束しているので、自分が楽しめる範囲内で勝ち目を提供することには律儀です。ニエに関しても「復讐の力になる」ことを約束して引き入れているので、それに反する行動はとりたがりません。今回に関しては「この程度の窮地も脱せないなら復讐するだけの価値もないからね」という感じで丸め込みました。失敗してたらニエも送り込んでましたwww
そのためオーフィスの同盟も結んでいたので個人的には切るのは好みませんでしたが、他のスポンサーや幹部の意見を無視することもできなかったので、「ごめんね♪」的な感じですね。
因みにLに関してはもうわかっていると思います。ぶっちゃけ、奴を速攻で味方につけたことがリムヴァンがここまで暗躍できた要因でもあります。アジテーション能力の高い奴は味方にするにはうってつけですね。……そのあとの人脈作りが楽に済みます。
そして、リムヴァン自身の何気に策謀か。ハーデスの隙にはさせませんです。具体的には選択肢を二つに狭めて、獅子身中の虫をつぶしにかかります。