ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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とりあえず、これでウロボロス偏は終了です。








とりあえず覚醒したペトというアップから、オカルト研究部にとっては最大級のダウンが発生します。


第五章 9 赤龍帝の終焉

 

 

 

 

 

 

「うぉおおお!?」

 

「きゃあああ!?」

 

「ぎゃあああ!?」

 

 長可も姐さんも当然俺も、悲鳴をあげて余波で吹っ飛ばされる。

 

 っていうか全員とっさに直撃コースから離れたってのに、なんだこの被害は!?

 

 え? え? 今のペト!?

 

 何だよこの火力! おかしいだろ!!

 

「え……えぇ!?」

 

 撃ったペトがまず驚いてるし!! マジか、そんな火力か!!

 

 おいおいちょっと待て。ペトは昨日模擬戦した時はこんな火力ぶっ放してなかったぞ。精々上級堕天使程度の火力だったぞ!

 

 なんだこの火力は。どう考えても最上級クラスじゃねえか!

 

「ぺ、ペト? もしかして、これってテレビを斜め四十五度で叩くと調子が良くなる……あれ?」

 

「いや、死にかけると覚醒するスーパー〇イヤ人的なあれじゃね?」

 

「いや、ペト、本当に死ぬような怪我負ってないっすけど?」

 

 言われて俺達はペトが攻撃を喰らったと思われるところを確認する。

 

 胸部だったので赤いあれが見えるけど、今更そんなの気にして目をつむるような仲じゃねえしな。

 

 そして、確かに叩かれた事でちょっと打ち身になってるけど、戦闘員として気にするようなレベルの怪我は何処にもなかった。

 

 いや、ちょっと傷が小さすぎねえか?

 

 どう考えてもめちゃくちゃパワーアップしてるぞ。 速度も、威力も、頑丈さも。

 

 まるで、いきなり禁手クラスの神器でも移植したかのような、特撮とかでよくある変身アイテムを使用した怪人みたいな感じだ。

 

 俺達が三人揃って首を傾げてると、長可が走ってこっちに戻ってきながら、聖槍を突き付けた。

 

 チッ。無事だったか。

 

「……てめえ! どういうことだ!?」

 

 かなり警戒してるらしく、今までに比べると余裕がなくなってる。

 

 まあ、確実に致命傷を与えたと思っていた奴が超パワーアップして戻ってきたら誰だって警戒するわな。

 

「そのオーラの質、オーフィスの蛇じゃねえか! いつの間に貰いやがった!!」

 

 そうか、オーフィスの蛇か。そりゃ驚く。

 

 ………んん?

 

 オーフィスの蛇ぃ?

 

「………はい?」

 

 ペトが、きょとんとして首を傾げるのも当然だ。

 

 オーフィスの蛇はヴィクター経済連合の使うもんだ。俺達は持ってない。

 

 いや、作っているオーフィスは確かにちょっと前まで俺達と一緒にいたけど、それを貰ったりなんてしてねえはずだ。

 

 だけど、確かに納得できる。

 

 オーフィスの蛇はめちゃ強力なドーピングアイテムだ。確かにそれがあれば、ペトがいきなりめちゃくちゃ強くなってることも納得できる。

 

 だけど、そんなの自分から使うようなタイプだったか、ペトは?

 

 少なくとも、姐さんに言うぐらいのことはしてると思うんだけどよ?

 

「……知らないっすよ? 使っててもお姉さまにぐらいは伝えとくッス」

 

「そうよねぇ」

 

「だよなぁ」

 

「いや、俺が何回蛇使った連中と模擬戦したと思ってんだ。俺の感覚はごまかせねえぞ」

 

 俺らが三人同時に言ってるのに、長可は全く信じてくれやしねえ。

 

 いや、ホントにそんなの渡された覚えはねえんだが。

 

 そこまで考えて、俺はふと気づいた。

 

「……なあ、そういやペトって心当たりねえのにネックレス貰ってたよな?」

 

「……あ! すっかり忘れてたっす!」

 

 ペトがとっさにネックレスに手を触れる。

 

 俺達もまじまじと見つめると、すぐに全部種が分かった。

 

 そのネックレス、オーフィスのオーラを思いっきり放ってやがる。

 

 こ、これってつまり、ネックレス型のオーフィスの蛇なのか?

 

「……直接飲み込むんじゃなくて、装備として運用するタイプのオーフィスの蛇。そんなものが完成していたのね」

 

「んなわけねえだろ。作る必要性がねえ」

 

 姐さんが驚く中、長可が速攻で否定する。

 

 んじゃどういうことだよ。

 

 戦闘するような空気じゃなくなり、俺達四人が同時に首を傾げ、頭をひねる。

 

 とりあえず、これはオーフィスが作ったのだけは間違いねえ。オーフィスの蛇を作れるのはオーフィスだけだからな。アイツが一枚かんでるのだけは間違いねえ。

 

 だが理由がわからねえ。

 

 オーフィスは一応ヴィクターのトップだ。そして三大勢力はグレートレッドが倒される事も、その後釜にオーフィスが据わる事もよく思ってねえ。そんでもって俺達はヴィクターと敵対している三大勢力の戦力だ。

 

 そしてペトは狙撃に置いちゃぁ化物レベルだ。その技量は想定外だったとはいえ、あのアーサーと黒歌を一瞬で無力化し、ルフェイがいなけりゃヴァーリチームが全員捕縛もしくは死亡という結末になりかねなかったほどだ。

 

 そしてペトの欠点は、良くも悪くも狙撃に才能が割り振りきられてることだ。光力の出力とか肉体性能は一応上級クラスだが、それを動かすセンスがあまりに悪い。何年もかけた通常戦闘の特訓の成果が、ほんのわずかに訓練しただけの狙撃の成果に追い抜かれたというレベルの一点特化型。

 

 だから、ペトを倒すには狙撃に持ち込まれない事が必要不可欠。そして今の俺達の戦闘は、ペトの火力でも牽制レベルなエースを投入するレベルになっている。

 

 だけど、この新型の蛇はそれを覆す。

 

 センスは無くても戦い方は知っているから、最上級クラスにまで出力が跳ね上がれば上級クラスの敵とだって戦えるだろう。実際、長可の一撃を耐えたのもそのおかげだ。

 

 言っちゃなんだが、オーフィスは敵に塩を送りすぎじゃねえか?

 

「何考えてんだオーフィスの奴」

 

 長可が、一応槍を構えながらそうぼやいた時だ。

 

「―長可、撤退だ!!」

 

 霧とともに、ゲオルクが姿を現す。

 

 ……んの野郎。このタイミングで出てくるたぁいい度胸じゃねえか。

 

「おい、オーフィスはどうした? ちょっと聞きたい事ができたんだけどよぉ」

 

「それどころじゃない。……ハーデスにしてやられた」

 

 長可にそう言い放つゲオルクの言葉に、俺は頭が痛くなってきた。

 

 ハーデスっていやぁ、確かオリュンポスの和平反対派じゃねえか。

 

 んの野郎、よりにもよってヴィクターに手を貸してたのかよ!!

 

「……俺達だけじゃなく、シャルバに色々吹き込んだようだ。レオナルドを無理やり禁手にさせて、冥界に攻撃を仕掛け始めている! オーフィスも確保するつもりだろう。」

 

「……あの野郎、やっぱこっそり始末しといた方がよかったんじゃねえか?」

 

 ゲオルクの説明を聞いて、長可がため息をついた。

 

 シャルバの奴、また独断行動かよ、それも話を纏めると英雄派のレオナルドが被害に遭ってるみてえだな。

 

 つくづく勝手な事しかしねえ奴だ。ヴィクターも暗殺するなり追放するなりしとけよ。

 

「とりあえず、サマエルによってオーフィスの力の半分は奪い取れたが、レオナルドの治療には時間がかかる。……グレモリー眷属もそろそろ脱出するだろう、撤退だ」

 

「仕方がねえ。合流されたら俺らだけじゃあきついしな」

 

 残念そうにしながら、長可はゲオルクのところに素早く身を寄せる。

 

 そして、即座に霧が二人を包み込んだ。

 

「あ、コラ待て!!」

 

 俺はとっさにコイルガンをぶっ放すが、んなもん流石に効くわけがねえ。

 

 直ぐに霧が消え去り、そして完全に逃げられた。

 

 ……くそが! 散々好き勝手しといてそのまま逃げやがったのかよ!!

 

 俺は心底イラつくが、姐さんはふぅと息をついた。

 

「神滅具使い2人をこの人数で相手にするのも危険だから、引いてくれたのはこっちにとっても好都合ね」

 

「それはそうっスけど、色々やられてろくにお返ししてないってのは残念ッス」

 

 残念そうにするペトの頭をなでながら、姐さんは苦笑した。

 

「全員無事で生き残れただけでも、良しとしましょう。……それよりも―」

 

 姐さんは、さっきまでいたホテルの方を見て、表情を険しくする。

 

 ……ああ、そういやそうだったな。

 

 ゲオルクの言った言葉の中に、イッセー達の情報は全くなかった。

 

 今の段階だと、無事を確認する術がねえ。

 

「とにかく、一旦通信を繋ぎましょう。向こうが何か把握しているかもしれないわ」

 

 ああ、それに期待するしか、ねえみたいだな。

 

 そう思って俺達が通信を繋げようとしたその時―

 

『―無事かね?』

 

 それより先に、サーゼクス様が通信を繋いできた。

 

「どうしたんですかい、サーゼクス様」

 

『先程、紫藤イリナくんとゼノヴィアくんの無事を確保した。……リセスくんの言う通り、ヴィクターの今回の狙いはオーフィスだ』

 

 マジか。マジでオーフィスをターゲットにしたってのか。

 

 ヴィクターの連中も思い切った事をしやがる。蛇以外の強化のあてができたって事で良いのか?

 

「こちらも英雄派の長可と一戦交えてしのいだわ。……長可の迎えに来たゲオルクの話だと、どうもハーデスがシャルバ・ベルゼブブを利用して英雄派すら手玉に取ったようだけれど」

 

『イリナくんの話では、ハーデスは英雄派にサマエルというドラゴンを貸与して、オーフィスの力を四分の三ほど奪い取ったと言っている。サマエルが龍と蛇に対する特攻性を持っている可能性は論議されていたが、まさかオーフィスすら圧倒するほどの相性差を持っているとは思わなかった』

 

 サーゼクス様が歯を食いしばりながら告げる言葉に、姐さんはいぶかしげな表情を浮かべる。

 

 っていうかサマエルっていやぁ、確かアダムとイブに知恵の実を食わせた天使だったな。蛇でもあるとか。

 

「……ゲオルクは半分ほど奪ったと言っていたわね。何かトラブルでも起きたのかしら?」

 

 だな、七割強と五割って、だいぶ違うしな。

 

 何かしらトラブルが起きたのか、それともアザゼル先生かイッセーが何かしたのか、もしくはオーフィスが意地を見せたのか。

 

 まあとにかく、大体姐さんの予想通りってわけか。ヴィクター経済連合は、オーフィスを切る気になったってわけだな。

 

『どうやら彼らは、奪い取ったオーフィスの力を利用して、新たなウロボロスを生み出そうとしているらしい。ハーデス神も残ったオーフィスを使って何かを目論んでいるようだ。……緊急事態だ。君達にも動いてもらう事になるだろう』

 

「うっす! 契約金分の仕事は約束しますぜ?」

 

 ああ。こういう時の為に、俺は金貰ってるからな。

 

 敵はヴィクターか、それともハーデスか。まあ、どっちにしろ構わねえ。

 

 やってやろうじゃねえか、神殺し。ロキに決定打を与えた俺を舐めるなよ?

 

 とにかく、必要とあれば俺は本気で神だろうと叩き潰す。……ろくでもない連中であるヴィクターに力を貸して漁夫の利を得ようってなら、ただじゃ済まさねえ。

 

 何より……。

 

「俺のダチに喧嘩売ったんだ。俺にも売ったと判断していいだろうしな」

 

 ……だから無事でいろよ、イッセー!!

 

「あ、あの! それでオーフィスはどうなったッスか? メインターゲットなら最優先で逃がすべきだと思うッスけど!」

 

 ペトが、ちょっと気になったのか口早にそう尋ねる。

 

 あ、そういやそうだ。

 

 オーフィスがハーデスの手に渡ったらまずくねえか?

 

 そもそもサマエルはハーデスが横流ししたわけなんだから使えるだろうし。つまりハーデスはオーフィスをどうとでもできるって事だ。捕まえられたら終わる。

 

 オーフィスの力を悪用できるのなら、ハーデスは勢力図を単独で塗り替えることだってできるわけだ。

 

 俺達三大勢力とその協力者。リムヴァン率いるヴィクター経済連合。現在はこの二勢力の戦いになってる。

 

 以前のネガキャン合戦で、どっちにも組みたくない中立派はいるにはいるが、これは別に全勢力が結託してるわけじゃねえから、浮動票だ。

 

 そこに、オーフィスの力を半分も手にしたハーデスが参入すれば、この戦いは三つ巴になる。

 

 どんどんグダグダで泥沼じゃねえか! 勘弁してくれ!!

 

『……残念だが、英雄派のゲオルクが展開した結界は対オーフィス用だ。今のオーフィスでは転移は不可能で、離脱できたイリナ君達も取捨選択の末に何とか離脱できたようなものだそうだ』

 

 マジですかサーゼクス様!

 

 ええい、英雄派も面倒な事しやがる。

 

 こうなりゃ、俺達が助けに行くしかねえな。脱出できたのなら、その空間の場所を探す事も不可能じゃねえだろ。京都の時は闘戦勝仏の爺さん達が助けに来てくれたしな。

 

 ああ、とにもかくにも急がねえと―

 

「待って。ゲオルクは、ハーデスにそそのかされたシャルバがレオナルドを暴走させて冥界に魔獣を送り込んだと言ってたわ。……まずはそちらの迎撃準備を整えないとまずいわよ?」

 

 俺が行きこんでいるまさにそのタイミングで、姐さんが周囲を警戒しながらサーゼクス様にそう告げる。

 

 あ、そうだった。そっちも要警戒じゃねえか。

 

 くそ、どうする? どこから対処する!?

 

 俺が悩んでいると、俺達の携帯が一斉に鳴り出した。

 

 ……なんだ? なんだなんだ?

 

 とっさに携帯を取り出すと、そこには木場の文字が。

 

「……リアスと電話が繋がったわ!!」

 

「こっちはアーシアっす!!」

 

 姐さんとペトもか!

 

 ってことは、イッセー達は脱出できたのか!?

 

 俺達はとっさに携帯に出て、そして歓喜の声を上げる。

 

「無事だったか!!」

 

『―ヒロイくん、すぐに戻ってきてくれ!! ……イッセー君がまだ残っているんだ!!』

 

 ………はぁ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 急いでホテルにまで戻ると、そこにはイッセー及びオーフィス、先に離脱していたイリナとゼノヴィアを覗いたメンバーが戻ってきていた。

 

「アザゼル! どうやら無事……でもないわね」

 

 全員疲労の色が濃い。特にヴァーリは顔が蒼く、死ぬんじゃねえかと勘違いするぐらいだ。

 

 こいつをここまで追い込むたぁ。サマエルでも使われたか?

 

「ったく。曹操の奴の所為でこっちは本気でやばかったぜ。しかもハーデスのジジイ、最上級死神のプルートまで送り込んで、こっちを殺そうとしてきやがった」

 

 こっちも結構ボロボロのアザゼル先生が、舌打ちしながらそう告げる。

 

 どうやら本気で殺す気だったらしいな。死人に口なしを地で行く気だったのかねぇ。

 

 だけど、生きてんなら追及可能だ。これで何とか黙らせられればいいんだけどよ。

 

「っていうか、イッセーは何処っすか? あとオーフィスにもお礼を言いたいんすけど!!」

 

 ペトがあたりを見渡しながら、そう聞き始める。

 

 そうだった。イッセーの奴がまだ残ってるとか言ってなかったか、さっき。

 

 それにオーフィスの姿も見えねえ。ゲオルクがハーデスがうんたらかんたら言ってたけど、それが関わってるのか?

 

 俺達三人が視線を彷徨わせる中、木場が目を伏せて口を開いた。

 

「……今、イッセー君はシャルバと戦っているよ。オーフィスを助ける為にね」

 

 は、はい?

 

「シャルバがハーデスにオーフィスを献上しようとオーフィスを捕まえたんだ。イッセー君はシャルバをそのままにすることもできないから、残ると言って聞かなかったんだ」

 

 ……ああもう! アイツ何考えてんだか!!

 

 いや、オーフィスにはペトが結果的に助けられたわけだから、俺らとしても少しはナイス判断とか言いたいけどよぉ?

 

 だからって、敵の内輪もめに介入するか、オイ。

 

「……どうやら、それ、発動したみたいね」

 

 と、これまたボロボロ具合の酷い黒歌がペトの胸元を見てそう呟いた。

 

 ん? 黒歌はペトのネックレスについて知ってんのか?

 

 事情を全く知らない木場達が首を傾げる中、ルフェイが指を立てた。

 

「ああ、それ、オーフィスさんに頼まれて私と黒歌さんも作成に協力したんです。黒歌さんが「絶対素直に受け取らないにゃん」とかおっしゃったので、こっそりつけさせていただきました」

 

 ああ、なんでネックレスなのかと思ったらそういうことかよ。

 

 あと軽いホラー展開は黒歌の悪戯か何かかよ。割と本気でビビったんだぞこの駄猫が。

 

「め、めちゃくちゃ助かったッスけど、なんで?」

 

「色々教えてくれたからと言ってましたよ? あと、貴女が伸び悩んでいる事も気にしていたようなので、蛇をあげたいと言ってました」

 

 ………ああ、あれか。

 

 そういやペトはオーフィスの面倒見てた時、オーフィスの食生活とかについて色々言ってたな。

 

 いつの間にか、それがペト自身の最近の愚痴を聞く感じになってた。確かに狙撃技能しか取り柄がないから、威力不足とか他の技量のなさとか悩んでるって言ってたな。

 

 だからって、蛇を用意するか、普通?

 

「専用調整された蛇を作るプロジェクトは、スポンサー関係で持ち上がっていたそうです。彼らの護身用として、通常の蛇よりも特別なものを用意したいという意向でしたけど、今は全体の底上げの方が重要ということで白紙に戻ったものです」

 

「で、私とルフェイがそれを参考に作ったのがそれにゃん。こっそりあんたの髪の毛取って、そのデータから徹底的にアンタ用に作ったやつだから、普通の蛇より三割増しぐらい行けるはずだにゃん」

 

 な、なんつー特別仕様。

 

 いや、ペトそこまでしてもらうことしたか? そんな本腰入れてアドバイスしてたと思えねえけどよ? っていうか愚痴に付き合ってもらっただけでトントンだろ?

 

 お、オーフィスの奴、もしかして実はいい子?

 

 そ、それならイッセーが助けに行くのも納得だ。アイツそういうやつは見捨てられねえだろうしな。

 

「いや、んなことはどうでもいいだろうが! 今はペトの強化よりイッセー達を連れ戻す方が先決だ!!」

 

 俺達が思わずぽかんとしてると、アザゼルが大声で怒鳴った。

 

 あ、そうだった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、俺達はグレモリー城の地下に行くと、タンニーンさんと合流して、急いで龍門(ドラゴンゲート)ってのを展開する。

 

 タンニーンさんを連れてきたのは、より確実にイッセーを連れ戻す為。とにかくすぐに来てくれてめちゃ強い龍ということで選ばれたわけだ。

 

 対となるアルビオンもいるし、ついでに影響を強く受けている俺と姐さんもゲート構成の魔方陣の要に陣取ってる。

 

 これで召喚はできるとは思うんだけどよ……。

 

 俺たちが固唾をのむ中、輝きが魔方陣を照らしていき―

 

「―そん、な………っ」

 

 その結果を見て、茫然としてお嬢は崩れ落ちる。

 

 そこにあったのは、八個の悪魔の駒(イーヴィル・ピース)。そして駒の種類は兵士(ポーン)

 

 ………俺は、悪魔の駒関係の詳しいことはわからねえ。

 

 だけど、それについて詳しいだろう木場やタンニーンさん達の様子から、最悪の事態を想定した。

 

 ………イッセー。

 

 お前………死んだのか?

 




実は純粋でいい子なオーフィス。受けた恩は返します。

ペトは天然でグレートレッドを倒すために必要なことを適格に教えてくれたので、オーフィスにとっては大恩人です。ヴィクターも禍の団もオーフィスにグレートレッドを退治されると困るのでそういうことは教えてませんし、ある意味一番真摯に対グレートレッドを考えてくれた大恩人ですね。……何かが間違ってる。

そう言うわけでオーフィスはきちんと借りを返すべく、ペトの悩みを解決することに全力を出しました。その結果、持っているだけで他を凌駕する強化率を発揮する蛇を与えるという大盤振る舞い。ペトはグリゴリ幹部クラスに匹敵するカタログスペックを手に入れました。








しかし、それを台無しにするほどの精神的衝撃。

いや、この状況でイッセーの死を想像しない方があれですからね。

ヒロイとしても自分とは異なる英雄で、ある意味対抗心が強いわけです。リセスにしても、ヒロイやペトほどではないけど、自分の心を立て直してくれた恩人です。ペトにとってもエロ話で盛り上がれる大事な友達でした。

……割と精神面において痛烈なダメージなのです。

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