ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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はい、そういうわけでこの話からヒーローズ編に突入します!









兵藤一誠のかけたオカルト研究部。それは、自然消滅の危機。


第五章 10 魔獣騒動

 

 シャルバ・ベルゼブブは、権威を完全に失墜していた。

 

 独断で勝手な行動をして派閥の勢力を半減させた挙句、他の種族を滅ぼすつもりだったという事が知らされ、挙句の果てに瀕死の重傷を負った。

 

 もとから自分が盟主のようにふるまう糞偉そうな性格が問題だったらしく、シシーリアによって改修された、ディオドラとの会議が知られたことでもう敵の俺が笑いにくいぐらい失墜したらしい。

 

 だが旧魔王派全体がやけになって暴れたりしたら面倒だということで、極刑とかは免れたそうだ。

 

 で、それでストレスが限界に達したようだ。

 

 プッツンしたシャルバが完全に独断で暴走。英雄派のメンバーを数人殺害。そしてレオナルドを誘拐し、神滅具を暴走させやがった。

 

 そして生まれた超巨大魔獣。こちら側の呼称はバンダースナッチとジャバウォック。

 

 百メートルを超えるでかいその魔獣は、冥界の各地に転送されて、大暴れしてる。

 

 最上級悪魔を中心とする迎撃部隊が仕掛けているけど、どいつもこいつもめちゃくちゃ頑丈な挙句、回復速度も高いと来てる。

 

 更に、全身から何体もの魔獣を生み出している所為で、そっちの対応も急がなけりゃならねえ。

 

 しかも最強格のジャバウォックに至っては、皇帝(エンペラー)ディハウザー・ベリアルをもってしても足止めすらろくにできてない状況。

 

 止めにリムヴァン達がこれを利用しようと動いているらしく、冥界の各地で主に反旗を翻す禁手に至った悪魔がいる。

 

 そして英雄派の曹操と森長可に、宰相であるリムヴァンが保有する、計十三本の聖槍が邪魔で、同盟を結んだ神クラスは迎撃に出にくい状況。

 

 ……旧魔王派を抑えきれなかったこと。転生悪魔の扱いが悪かったこと。そして、今だヴィクター経済連合を倒すことができなかったこと。

 

 冥界現政府の解決困難な問題が、全部まとめて噴き出したかのような激戦だった。

 

 そして、俺達は―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハイ次ぃいいいい!!!」

 

 コイルガンで射出された魔剣の群れが、魔獣達に突き刺さる。

 

 そして動きが止まったところを、悪魔達が一斉に襲い掛かって撃破していく。

 

 だが、中にはもっと頑丈な奴がいたらしく魔剣の群れを吹っ飛ばしながら突っ込んでいく。

 

 最悪なことに、その方向には避難している民間の悪魔達がいる。

 

 だが、俺は慌てない。慌てる必要はない。

 

「ペト、一匹そっち行った」

 

『はいはいっす』

 

 その軽い返答と同じタイミングで、その魔獣の胴体に風穴が空く。

 

 そしていまだに動いている数多くの魔獣達に、光力の雨あられが叩き込まれた。

 

 ……オーフィスが、黒歌とルフェイの協力のもと作った、専用調整型の蛇。コードネーム『魔弾の蛇(ウロボロス・ザミエル)』。

 

 これを使用しているペトの戦闘能力は、神の子を見張る者の主要幹部に次ぐレベルだ。単純カタログスペックならほぼ同格。専門分野の狙撃なら、もはや最高神の領域に到達してる。

 

 今の弾幕がその証拠だ。威力を押さえた連発とは言え、本来五発分のチャージを代償とする堕天の祝福受けし魔弾(スナイパー・ザミエル)で弾幕を張るなんて不可能だからな。

 

 マジでシャレにならねえ。オーフィスマジありがとう。

 

 姐さんのペトは、マジで頼りになる存在に化けてくれたぜ!!

 

 そして、姐さんが汗をだらだら流しながら戻ってきた。

 

「……足は破壊したわ。奴の再生速度でも、流石に数時間はかかるはずよ」

 

『助かったぞ。これで進行方向の街の避難は間に合うはずだ』

 

 今回の足止め作戦を指揮していたタンニーンさんが、汗だくの姐さんの報告にうなづいた。

 

 姐さんの禁手である煌天下の矛盾《ゼニス・テンペスト・コントラディクション》は相反する属性を融合する。

 

 矛盾許容の特性ゆえに、その攻撃力は絶大。意図的に展開した時限定だが、防御においても桁違い。そして、単純物理防御相手なら神滅具の覇に匹敵するとか言われてる。

 

 その理由たる、超高熱と極低温を融合させたディストピアアンドユートピアは、条件付きだけど必殺技と名乗るにふさわしい威力を発揮してる。

 

 今回、俺達は進行方向の避難が遅れている所のサポートに来た形だ。

 

 特にこのバンダースナッチ、対悪魔の攻撃に対する防御を重視してるとかで、とにかく他種族の助けが必須だったとか。悪魔に対する防御力なら、ジャバウォックと同格かそれ以上。そう言う意味じゃあ俺たちが一番有利だわな。

 

 なにせ三大勢力は、同時タイミングで内部の裏切り者の粛正に忙しい。そのせいで堕天使側も天使側も増援をすぐには送れてねえ。っていうか教会とかは立て直しがようやくできそうになってるところだしな。

 

 そういうわけで俺達が出張って、こうして足止めできるようにしたってわけだ。

 

 処理が遅れていた魔獣の群れは俺とペトが減らし、バンダースナッチそのものは姐さんが両足を中心に吹っ飛ばして動きを止めた。

 

 いっそのこと、俺達もこいつの討伐作戦に参加するべきかとか思ったんだが―

 

『後はこちらで何とかする。お前達は……リアス嬢達を頼む』

 

 その言葉に、俺達は誰一人として反論できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戻ったわ。……シャワーと、簡単に食べられるものを用意して頂戴」

 

「かしこまりました。いっそ湯あみをなされてはいかがでしょうか?」

 

「流石にそんな時間はねえっすから」

 

 姐さんとペトがメイドさんと会話している間、俺は辺りを見渡していた。

 

「……おじょ……リアス姫達は、まだ?」

 

 俺の質問に、メイドさんは表情を暗くさせ、首を横に振った。

 

 やっぱり、重傷だな。

 

 転生に使われた悪魔の駒が、転送で戻ってくるケースは一つしかないそうだ。

 

 ……その転生悪魔が、死んだ時だそうだ。

 

 それ自体非常にまれなケースで、忠誠心の強い下僕の想いが起こす奇跡とか言われてる。

 

 そして、イッセーのものだった悪魔の駒には、サマエルの反応があった。

 

 サマエルは、オーフィスの力をごっそりと奪い、さらにはヴァーリを一瞬で戦闘不能にさせる力を持った代物だ。

 

 それに対してイッセーは、ただの人間ベースの転生悪魔だ。素体の耐久力という意味では、魔王末裔のヴァーリとは段違いに低い。比べるのも致命傷だ。歴代最弱とまで言われた才能のなさは伊達じゃねえ。

 

 生存は、絶望的だ。

 

 グレモリー眷属のショックは絶大で、レイヴェル含めて人事不肖の状態だった。ここまで連れてくるのがまず大変だった。

 

 そして、お嬢と朱乃さんは引き籠っている。

 

 アーシアも自殺未遂を引き起こしかけたし、レイヴェルは数日たった今でも泣きっぱなし。比較的ましな木場も、明らかにいつも通りの状態じゃねえ。

 

 この調子だと、まだ事情を知らされてないゼノヴィア達はどうなることか。ロスヴァイセさんはともかく、イッセーに好意を寄せているゼノヴィアとイリナが不安だ。ギャスパーも、根性を持つ切っ掛けとなったイッセーを失ったらどうなることか。

 

 そういう意味じゃあ、俺達三人は比較的マシだった。

 

 俺は、そもそも悪魔祓いとしての活動の中で死別を経験している。中には、俺に対して比較的好意を向けている者や、信仰心が薄い俺のことを評価してくれる奴もいた。いわゆる恩師と言ってもいい、いい先輩だっていた。

 

 だから、そういう経験が豊富だからこそ耐えらえる。……それが良い事かは置いといてな。

 

 ペトは、そもそも両親を目の前で殺されている。

 

 そういう意味じゃあ俺よりも今のお嬢達に近い経験をしている。だから、ある程度は耐えられる。

 

 ショックは受けてるが、二度目となりゃ耐えれる可能性はでかいだろう。ショックはあるけどな。

 

 そして、姐さんは一度目を伏せるとすぐに迎撃作戦に積極的に参加していた。

 

 こう言っちゃあ何だが、姐さんが一番こういった経験に慣れている。

 

 ニエを自分の情けなさで死に追いやった。しかも、まさにその死に様を目の前で見せつけられたのが姐さんだ。

 

 言っちゃなんだが、イッセーよりニエの方が姐さんの中では好感度がでかい。それぐらい、ニエの存在は姐さんにとってデカかった。お嬢達にとってのイッセーに匹敵するレベルでだ。

 

 その姐さんが、イッセーの死にショックを受けこそすれ耐えられないわけがねえ。

 

「……一応言っておくけど、私だってショックではあるのよ?」

 

「ペトだって、結構きついっすよ?」

 

 俺の考えてた事を見透かしたのか、姐さんとペトがジト目を向けてくる。

 

 だけど、その視線の強さはそんなに強くなかった。

 

「あの子、良い子だったもの。……覗きの常習犯だったけど」

 

「話してて気持ちが良かったっす。……覗き魔だったッスけど」

 

 そこに関しては二人ともあれな評価なんだな。事実だけどよ。

 

 ま、俺も似たような感じではあるけどな。

 

「親友……っつーのは言い過ぎかもしれねえけど、俺にとってもいいダチだったぜ。それが、阿保共の因縁に巻き込まれてあれじゃあ……な」

 

 正直いたたまれねえ。

 

 だってそうだろ? 生まれてから二十年もたっちゃいねえイッセーからしてみりゃ、旧魔王やら新魔王の因縁や、かつての聖書の教えの行動なんて無関係に近いはずだ。

 

 それが、その因縁絡みのトラブルに巻き込まれて死んだなんて、酷い話もあったもんだぜ。

 

「ハーデスはサーゼクス様とアザエル総督が抑えるそうっス」

 

「ついでに腕の一本ぐらい切り落としてくれないかしら」

 

「っていうか俺らがやろうぜ? それ位の迷惑はかけられてんだろ」

 

 まったくだ。恨みがあるなら、その時の連中にやりゃいいだろうが。俺らをターゲットにする理由が分からねえ。

 

 あのジジイ。サイラオーグさんとのレーティングゲームの時から悪意向けてたみたいだけどよ、イッセー達を態々標的にするこたぁねえだろうが。

 

 決めた。チャンスがあったら堂々とボコる。槍王の型を股間に叩き込んでやる。

 

 俺はそう決意するけど、やっぱりちょっとやる気が出ねえ。

 

 ……やっぱ、俺らも結構ショック受けてんだな。

 

 そりゃそうだ。イッセーは確かに覗きの常習犯で、そこに関しちゃどうしようもねえろくでなしだ。

 

 だけど、どこまでも良い奴だった。

 

 夢に向かって一生懸命頑張っている、努力家だった。仲間の為なら、自分の身も顧みねえ献身的な奴だった。そして、お嬢達の心の突っかかりを解き放った、英雄と言ってもいい奴だった。

 

 おっぱいドラゴンが冥界で大人気なのも、少しは分かる。それぐらい、イッセーって奴は英雄的な奴だった。

 

 だからこそ、俺はあいつを意識していた。俺の目指す英雄とは違うけど、あいつは間違いなく英雄だったから。既に、あいつは冥界の英雄と言っていいだけの存在になってたから。

 

 今はその死は公表されてねえし、政治的な駆け引きをしてる余裕はねえと言う事で一部しか知らされてねえけど、これが公表されたら子供達、泣くよなぁ。

 

 ……この馬鹿野郎。オーフィスにはペトを助けてくれた恩があるけど、ヴィクターの内輪もめに介入して死ぬとかねえだろうが……っ!

 

「……ん? お前らが、リアスとつるんでるとかいう神滅具使いか?」

 

 と、俺たちに声をかける男がいた。

 

 金髪の、どっかのホストみてえな奴だった。

 

 ん? 誰だ?

 

「初めまして。私がリセス・イドアル。後ろの2人はペト・レスィーヴとヒロイ・カッシウスよ」

 

「……ああ。そういやリアスと次期大王のレーティングゲームで見たな。俺はライザー・フェニックスだ」

 

 ああ、こいつは―

 

「イッセーにボコられてドラゴン恐怖症になったツー奴か」

 

「しかも、イッセー並みのスケベ根性で恐怖症克服してイッセーと殴り合った奴っすか」

 

「おい、この状況下で貴族に喧嘩売るとはいい度胸だな、オイ」

 

 俺とペトのいいように、当然の反論が返ってくる。

 

 だが、そのセリフには力がなかった。

 

 ライザー・フェニックスも、イッセーの死には思うところがあるってことか。

 

「リアスの奴、部屋に閉じ籠って何も食ってねえんだとよ」

 

「マジっすか? いっそのこと、酒浸りになった方がまだスッキリしそうっすけど……」

 

 お嬢、思った以上に重傷だな。

 

 ペトも流石に暗い表情を浮かべている。姐さんや俺も、正直言って胸が痛ぇ。

 

 ライザーも元婚約者ってだけあって思うところがあんのか、お嬢の部屋の方向に顔を向けると、眉をしかめた。

 

「俺のドラゴン恐怖症より酷いんじゃねえか? リアスの奴、立ち直れんのかねぇ」

 

「……正直、この事態が解決するまでに立ち直れるとは思えないわ」

 

 ライザーの言葉に、姐さんは目を伏せた。

 

「だって、想いが通じ合った直後だもの。……ニエの時、私が迷走した時よりショックが大きくても、不思議じゃないわ」

 

 確かに、それは納得できるってもんだ。

 

 姐さんは、ニエに恋愛感情を持っていた。それは、リムヴァンによってばらまかれた。

 

 あの時、姐さんは心が砕けそうになるのを、ニエの死に意味を持たせる為に英雄になろうと決意する事で抑え込んだ。

 

 だけど、それが迷走だった事を知っているお嬢がそんな暴走をするとは思えねえ。できるとは思えねえ。

 

 ……お嬢、立ち直れるんだろうか。

 

 俺は、そう思うとやるせなくなった。

 




 ヒロイたちはダメージありとは言え行動可能ですが、しかしリアスたちは再起不能一歩手前。

 正直ヒロイたちも結構効いてます。タンニーンもそれに気が付いているから必要不可欠な状況以外では下げる判断です。









 現実問題。イッセー達が今まで一人も書けてないことは驚異的です。原作でもこの生存率はアザゼルが評価してきました。誰か一人ぐらい死んでも、おかしくない激戦です。

 ですが、その最初の1人(と誤認)がイッセーなのが大問題。寄りにもよって主柱が死んだことで、大打撃です。

 ヒロイは英雄を目指す過程でそういうこともあると思ってましたし、ペトもリセスも大切なものが死んだショックを受けて、そのうえでさらに発生した精神的試練すら乗り越えたこともあります。イッセーに対して信頼こそあれ依存してなかったこともあります。

 ですが、グレモリー眷属はそうはいかない。これまで積み重なってきた問題を打開してきたイッセーは、どんな問題もアイツがいれば何とかなると思わせてしまうぐらいに活躍しすぎていました。

 それが死んだという事実は、リアスたちにとってすさまじく強大なショックとなるのです。
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