ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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希望の光を一瞬だけど見据えてリアスたち。

そして、それが本当にあるのかを探るため、向かう先は……


第五章 13

 

 俺達は、グレイフィアさんの協力の元、アジュカ様のもとに向かっていた。

 

 グレイフィアさんはルシファー眷属として超獣鬼の足止めに赴いているが、その前にサーゼクス様やアザゼル先生の指示に従って仕事をきちんとしていた。

 

 それが、アジュカ様が今いる場所の確認だ。

 

 なんと、駒王町から電車で一時間かそこら程度の場所にいた。なんでもそこが、アジュカ様が趣味で運営しているゲームの施設の一つらしい。

 

 ……なんで、そんなところに今いるんだろうか。

 

 いや、状況的に今積極的に動くのはファルビウム様だと思うぜ? 軍事関係はあの人の担当だし。各勢力との根回しもレヴィアたんの担当だ。あとサーゼクス様はなんか凄い事になっているらしく、アザゼル先生と一緒にどっか行ったそうだ。

 

 ……まあ、現四大魔王はフリーダムだからな。俺らには想定できない思考で動いてんだろ。

 

「さて、望み薄ではあるわね。普通に考えれば間違いなく死んでるし」

 

「何もしないよりはいいでしょう。どちらにしても後悔するなら、やった方がましとよく言いますし」

 

 姐さんの後ろ向きな発言に、木場も半ば同意しながら、然し前向きな言葉を返す。

 

 ま、なんにせよ全力を尽くすってのは悪い事ってわけじゃねえ。

 

 全力を出し切ったって思えるのなら、それが望んだ結果じゃなくても意外とスッキリする事はあるしな。

 

 変にくすぶっているぐらいなら、藁にもすがって最後の確認をする。それでイッセーがやっぱり駄目ならそれならそれだ。

 

「ま、最後まで頑張ったってだけでも、少しは救いになるかもしれねえしな」

 

「そうね。私みたいに迷走するぐらいなら、すっぱり希望を断ち切った方が吹っ切りやすいでしょうしね」

 

 俺の言葉に、姐さんは苦笑を返す。

 

 ああ、確かにそうだよなぁ。姐さん、ものすごく迷走してたもんなぁ。

 

 それで俺やペトは救われてきたけど、それでも迷走してた事に変わりはねえ。

 

 まっすぐ正しい道を進めるのなら、それに越した事はねえさ。そこまで否定なんて俺らはしねえ。

 

 ああ、そうだ。

 

 一回本気でとことんイッセーの生死を確かめりゃぁ、普通に死んでるとは思うけど気持ちはスッキリするかもしれねえ。

 

 無駄な行動だとは思うけどよ。それでも、それが必要な弱い奴ってのはたくさんいるもんだ。それが現実ってやつだ。

 

 人ってのは、そんな正しいからどんな時でもこうします……なんて、できねえもんだしな。

 

「……なんか俺、歳食った気分になっちまうんだけどよ」

 

「それは経験の差っスね」

 

 ペトにそう言われた。

 

「なんだかんだで部長はグレモリーの次期当主っスから、はぐれ悪魔討伐とかは安全性重視で「確実にできる」程度の相手しか命じられてないと思うッス。だから、こういう死別に慣れてないんすよ、きっと」

 

「だけどよ、朱乃さんは目の前で母親殺されてるだろ? むしろお嬢よりボロボロじゃねえか?」

 

 俺は小声でそう反論するが、それに答えたのは姐さんだった。

 

「それはそうでしょう。言ってはなんだけど、朱乃って依存するタイプだもの。柱に全体重を寄りかからせてるんだから、それがいきなりなくなれば顔面から地面に激突するだけよ」

 

 割とキッツい評価だけど、姐さんの表情はむしろ同情のそれだ。

 

 ……ああ。姐さんも似たようなもんか。

 

 ニエを自殺に追い込むほどに自分が弱かった事実から逃げ出す為に、姐さんは英雄という強者を目指した。

 

 それはつまり、強者になるという贖罪が柱なわけだ。それに寄りかかってたわけだ。だから、ニエにその事実を全否定されて、心が折れた。

 

 俺やペトの声が無けりゃぁ、その前のイッセーの説得が無けりゃぁ、姐さんは生き残ったとしても、心が死んでただろう。

 

 だから、朱乃さんの気持ちが分かるのか。

 

「もっとも、それはオカ研の大半に当てはまるけどね。イッセー、ことごとくそう言う事してたから当然といえば当然よね」

 

 姐さんは、そういうとため息をついた。

 

 木場もそれには同意見なのか、感銘を受けた風に頷いた。

 

「そうですね。僕も含めて、イッセー君はグレモリー眷属の問題を打破してくれましたから」

 

 そして、だからこそイッセーがやられると一気に倒れるってわけか。

 

 グレモリー眷属でそういうことされてないの、ロスヴァイセさんだけみたいだしな。そのロスヴァイセさんがいないんだから、事実上の全滅状態になるのも当然か。

 

「そう言う意味では、リセスさんも該当しますね。リセスさんは、大丈夫ですか?」

 

 そういや木場の言う通りだな。

 

 姐さんも、イッセーが頑張って引っ張り上げたところあるからな。そう言う意味じゃあ、姐さんもだいぶショック受けてるだろ。

 

 俺やペトや木場の視線が集まる中、姐さんは苦笑して首を横に振った。

 

「大丈夫よ。……私には、ヒロイやペトがいるもの」

 

 その言葉に、俺は照れた。

 

 ペトも顔を真っ赤にして、すっごく嬉しそうな表情を浮かべてる。

 

「イッセーには悪いけど、決定打は二人が私を英雄だと思ってくれている事だもの。そして、私の支えは二人の自慢(英雄)でいる事だもの。……だから、それが崩れない限り何があっても大丈夫よ」

 

 そう答え、そして姐さんはお嬢達の方を向く。

 

 お嬢達は、うつむいてそのまま黙ったままだ。

 

 サイラオーグさんの激や闘戦勝仏の冷静な考察があった事もあって、とりあえず一緒に外に出て来てはいた。

 

 だけど、それでもイッセーが死んだ可能性がでかい恐怖はきついはずだ。

 

 ……天界にいるゼノヴィアやイリナ、グリゴリにいるギャスパーは大丈夫だろうか。ロスヴァイセさんは冷静な対応をしてくれそうなんだけどよ。

 

 俺達は、不安に駆られながら電車に揺られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、俺達は目的地に辿り着いた。

 

 人の少ない町はずれにある、廃棄されたビル。

 

 ここが、アジュカ様の隠れ家的な場所の一つらしい。

 

 ……その割には人の気配が多くねえか?

 

 俺が先頭に立ってのぞき込むと、そこには何人もの男女が集まっていた。

 

 若い連中が多いな。いったいどういうこった?

 

 俺達が怪訝な表情を向けると、向こうの俺達に気が付いたのか、視線と一緒に携帯やらスマホやらを向けてくる。

 

 ……そして、どいつもこいつも警戒心やら畏怖の感情を顔に浮かべやがった。

 

 どういうこった? 携帯で、一体何が分かるってんだ?

 

「おい、あいつら大半が悪魔だぞ? しかもランクもレベルもシャレにならねえ……」

 

「あっちのピンク髪の子は堕天使ね。うわ、上級クラスじゃない」

 

「しかも人間の姉ちゃんもあの野郎もすげえぞ。あの中じゃ2トップじゃん」

 

 ……なんか、スマホなんかで俺らの能力が解析されてるみたいなんだけどよ。

 

 なに? ここ、どういう施設にビフォーアフターされてんの?

 

「そう言えば、アジュカ様は人間界でゲームをしているとイッセーくんに仰られてたそうだよ」

 

 木場が、イッセーからっぽい情報を言ってくる。

 

 ああ、そういえばそんなこと言われた気もするな。携帯電話がありゃ、誰でも参加できるゲームだとか言われたって言ってたな。

 

 ってことは、そのゲームの機能かなんかで俺らの能力が分かるってか?

 

 いったい何のゲームだよ。阿呆プレイヤーの所為で社会問題になった、ポケモ〇のARか何かか?

 

 携帯電話にシステム組み込んで、隠れてる異形を探し出すゲームとかか? 詳しく知られたら、他の異形政府が何か言ってきそうなんだけどよ。教会は知ってんのかねぇ。

 

 俺らが怪訝な表情を浮かべ、そして相手側の奴らもなんか警戒心を見せてくる。

 

 そんな中、ドタバタと慌てて走る音が聞こえてきた。

 

「ま、ままままってください! この雌犬の話を聞いてくださーい!!」

 

 聞き覚えのある声が聞こえてきて、そして、見覚えのある姿が俺の視界に映る。

 

 ……ああ。そうか。

 

 お前、元気でやってんだな。

 

「……久しぶり、シシーリア」

 

「はい。この愚図のことを覚えていてくれて嬉しいです、ヒロイさん!」

 

 何やら感極まった表情を浮かべたシシーリアは、すぐにはっとなると慌てて振り返った。

 

「すいません! 彼らはGMの知人です。こちらの彼女がGMの御親友さんの妹さんで、他の方はその護衛というかなんというか……」

 

 微妙に説明に困っているようだったが、すぐに両手をわたわたと動かすと、とにかく大声を上げる。

 

「とにかく善良な人達なので、あまり騒がずそのままゲームを楽しんでくださいっ! 駄目女の言うことだと信じられないかもしれませんが、本当に大丈夫ですので!!」

 

 と、あわあわしながらシシーリアが声を荒げるなか、逆に周りの奴らはほっとしながらゲームに戻っていく。

 

「シシーリアたん。自虐萌え~」

 

「しっしーが言うなら、大丈夫なのかな?」

 

「ま、俺らじゃ勝ち目ないし、それならそれでいいか」

 

 と、皆安心の表情を浮かべながら、和やかに談笑に戻っていく。

 

 流石、元聖女。シシーリアってばいつの間にかここのアイドルと化してねえか?

 

 俺が何となく和んでると、シシーリアが慌てて振り返った。

 

「あ、愚鈍ですいません。ここは、アジュカさまのゲームのロビーというか、ギルドというか、ターミナルというか……とにかく、ちょっとしたゲーム用の寄り合い所帯みたいなものなんです。そのせいで他よりも悪魔とかに興味がありまして、すいません!」

 

 と、自分が悪いわけでもねえのに頭を下げる。

 

 流石に、自分を卑下する癖は治ってねえか。

 

 でも、シシーリアは結構待遇がいいみたいだな。ディオドラの時よりは間違いなくいい感じだろ。

 

 だって、そのゲームのプレイヤーはシシーリアのことを結構評価してたしな。シシーリアが言うなら俺らも安心な奴だと信じたみたいだし。

 

 やっぱ、シシーリアは聖女に祭り上げられるだけの素質があるぜ。俺が照らすに値するいい女だな。

 

「ま、元気にやってるみてぇで安心したぜ」

 

「はい! アジュカさまはこんな駄馬にも親切にしてくださって、ゲームを楽しむ人達も良い人が多くて、後色々鍛えてくれる人も紹介していただきました」

 

 そうにこやかに答えるシシーリアは、やっぱりいい表情だ。

 

「良かったです。シシーリアさん」

 

 アーシアも、境遇が似てるからか自分のことのように喜んでいる。

 

 まあ、ディオドラに目をつけられて酷い目に遭ったって意味じゃあ同じだもんな。そりゃ親近感もわくってもんだ。

 

「……それで、アジュカ様は貴女のことに親切なのね」

 

「はい。私が協力的な事もありますが、おかげでだいぶ良い生活が遅れています。……私の願いにも、色々とご配慮してくださいましたし」

 

 姐さんにそう答えるシシーリアは、どこか遠くに視線を向ける。

 

 そこには、昔のような影と、昔とは違う光があった。

 

「いつか、あの人達も立ち直って前に進めるように、私がその土台を作れりたい。……アジュカ様は無償でそこまでしてくれませんけど、私がそれができるような人物になれる道は示してくれました」

 

 シシーリア……っ

 

 シシーリアが言いたい事はよく分かる。

 

 ディオドラ・アスタロトの眷属は、その殆どが敬虔な信者だった。

 

 ディオドラはそう言った少女達を堕落させるのを性的嗜好としている。しかも、それを実際に実行する行動力がある外道だ。アーシアもその所為で追放されたもんだ。

 

 シシーリアもそうだ。俺が照らしきれなかった事もあって、ディオドラの誘惑に惑わされて悪魔になった。

 

 そして、その悪意に気づいてずっと絶望して生きていた。

 

 殆どの連中は、ディオドラに縋ってディオドラに従っていた。姐さん風に言うなら、畜生になっていた。

 

 きっとつらかっただろう。自分とは違い、ディオドラの雌でいる事を喜んでる彼女たちの中で、シシーリアは疎外感を抱いていただろう。

 

 俺と再会し、それをきっかけに、アーシアを助ける為に、ディオドラを裏切ったのは、シシーリアが凄いというべきだ。

 

 それだけの芯を、シシーリアは残していた。それだけの勇気をシシーリアは持っていた。それだけの優しさが、シシーリアにはあった。

 

 そして、彼女達にはそれがなかった。

 

 ディオドラの判断に従い、異を唱える事もない。ディオドラが人間を家畜とみなしている旧魔王派に寝返る時もそのままついてきた。そして、アーシアを助けようとする俺達を妨害してぶちのめされて、そのまま捕縛された。

 

 そんな奴らが罪を償って出所した時、その基盤をシシーリアは作ろうとしている。

 

「……もうディオドラはいません。ヒロイさんが倒しました。だから、彼女達には居場所がありません」

 

 そう寂しげに言うシシーリアは、だけど決意を秘めていた。

 

「だから、彼女達がいつか前に進む為にも、誰かが罰を受け終えた後の居場所を作るべきなんです。……彼女達が、自分の人生を立って歩けるように」

 

 シシーリア。お前、やっぱり聖女だよ。

 

 そんな子の心を照らせた自分が誇らしくて、シシーリアを最初に照らせた事が光栄だ。

 

 俺は、シシーリアの手を取ると、その手を握った。

 

「……契約金から少しぐらいは出資してやる。お前の想い、届くといいな」

 

「………はいっ!」

 

 シシーリアは、涙迄浮かべて満面の笑みを浮かべた。

 

 なぜか、顔が赤い。

 

 ん? なんでだ? 異性に手を握られてるからか? セクハラだったか?

 

「……ヒロイ、イッセーのこと悪く言えないっす」

 

「いや、ペトさんやリセスさんの所為でもあると思うよ? 嵌ってるからそれ以外に目が向いてないだけだよ」

 

「流石は私の弟分ね。この調子であと七人は関係を迫りなさい」

 

 外野がなんか言ってるんだけど、俺はシシーリアが心配で、俺自身が不安で聞こえてねえ。

 

 シシーリア、過労か? 聖女なんてものに選ばれるだけあって結構献身的だからな。そして暗い表情を内心で見せるぐらいには脆いからな。結構きついのかもしれねえな。

 

 アジュカ様に一言モノ申すべきだろうか。だけどシシーリアが自主的にやってる可能性もあるし、アジュカ様からしてみれば弟の不始末の面倒を見ているわけだしなぁ。

 

 そんなことを思っていると、アーシアが痛々しい笑顔を浮かべて、シシーリアの手を握った。

 

「シシーリアさん。私も、機会があったら手伝わせてください」

 

「アーシアさん。……いいんですか? 言っては何ですけど、あの人達はまだディオドラに依存してるので、あだで返されてもおかしくないですよ?」

 

 シシーリアがそう言うが、アーシアは首をふった。

 

「それは仕方がありません。ディオドラさんをいい人だと思ったのは、私もそうですから」

 

 そういうアーシアは、だけど目が少し虚ろだった。

 

 そして、その目は涙で潤んでいた。

 

「それに、何かしていないとイッセーさんのところに行きたくなってしまって……」

 

 その言葉に、俺は現状を思い出した。

 

 しまった。今はシシーリアと再会の喜びに浸ってる暇なかったわ。

 

 望み薄だけど、最後の希望を試しに行ってるんだったよ。

 

 シシーリアも我に返ったのか、わたわたと両手を動かしながら、すぐに頭を下げる。

 

「気が利かない愚鈍ですいません! そうですね、事情は私もアジュカさまから聞いています! そろそろ来る頃だとおっしゃっていました!!」

 

 ……サーゼクス様やアザゼル先生から何か言われてたのか?

 

 いや、意外と頭がキレるから自力で想定したのかもな。悪魔の駒関係で、あの人の右に出る奴はこの世界にいやしねえし……。

 

 俺がそう思ったその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ビルが、大きな音とともに大きく震えた。

 

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