ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
エレベーターは止まるわ停電するわで大混乱なビルを、俺達は階段を駆け上がって移動する。
避難誘導の為に下に残ったシシーリアが言うには、アジュカ様は屋上にいるとのこと。
あと下手人はヴィクター経済連合だった。ご丁寧に避難誘導の為にコノート
諜報部隊の調べによると、コノート組合は傭兵やPMCの寄り合い所帯とのこと。小規模勢力が多くて色々と振り回される事が多いので、いっそのこと労働組合みたいな組織を作って派閥としてまとまったらしい。世知辛いな。
とにかく、今回旧魔王派は動いている連中も多い。
旧魔王派の公式発表ではシャルバの暴走と断じて、派閥全体では介入はせず後方支援に回るとのことだ。カテレアがそう声明を発表してるそうだ。
カテレア・レヴィアタンの奴、意外としっかりと活動してるな。レヴィアタンの末裔という権威を最大限に生かして、旧魔王派の立て直しを行っているらしい。
他にもベルゼブブやレヴィアタンの若手がサポートに回っているとか聞いているし、旧魔王派も結構頑張ってるな。
で、話を戻すが俺達はビルの屋上に到着した。
「無事っすか魔王様!!」
俺が聖槍を構えながら入った視界に、ボロボロの屋上庭園が映る。
そこには、服こそ汚れてるがかすり傷一つないアジュカ様がいた。
問題は、対峙している連中だ。
ドーインジャーは結構ゴロゴロしているが、問題はそれ以外。
いるのは四人。
一人は何とリムヴァン。こっちも服が少し傷ついてるけど、体には傷一つない。
問題は、残りの三人だ。
「リセス…‥っ」
「り、リセスちゃん……」
「あぁ……リセスぅ!!」
ニエ・シャガイヒ
プリス・イドアル
そして、ジークフリート。
よりにもよって、姐さんの関係者勢揃いかよ! なんだその対姐さんパーティは! 嫌がらせか!!
「……あ、意識遠のいてきた……」
「お姉様ぁああああ!!!」
姐さんも流石に精神的にきついらしい。ペトに支えられてる。
そりゃ、因縁ありまくりの奴が全員登場したら気も遠くなるわな。いくら吹っ切ったところがあるからって、この三連コンボはキッツいわ。
だが、三人とも少し驚いているようだ。
……俺らの行動を予期して、先回りしたってわけじゃなさそうだな。じゃあ、なんでだ?
「僕達は今回、アジュカ・ベルゼブブをこちら側に引き入れられないか試していたのさ」
そういうジークの表情は残念そうで、失敗したのは明らかだった。
「……現四大魔王の一角、アジュカ様が裏切ると本気で思ってたのかい?」
木場がそう聞くが、ジークはむしろ当然だという顔をする。
なんだ? それだけの根拠があったってのか?
「彼は、サーゼクス・ルシファーとは異なる思想と独自の権利を持っている。それに一流の研究者としては、一流の研究環境を整えれば少しは迷うと思わないかい?」
そうジークは言い放ち、しかし静かに首を振った。
「だけど、「自分が魔王をやっているのは、友であるサーゼクスが魔王をやっているからだけだ」と即答されてしまってね。友情というものはよく分からないね」
そうか。とりあえず寝返りする可能性がないって分かっただけ安心だな。
シシーリアの面倒を見てくれる人なんだ。いなくなってもらったらこっちが困る。シシーリアもショック受けるだろう。
二度もアスタロト家の連中に利用されてたなんて、再起不能になるかもしれねえからな。安心安心。
「だから言ったんだよん! やめとけって!!」
アジュカ様相手に、両手に炎を纏って攻撃を仕掛けながら、リムヴァンはそう言って呆れていた。
「この人、善悪には比較的無頓着な方だけど、友情には熱いからね! あと冥界の秩序と平穏も考慮するから僕らとは相容れないよ……っと!!」
「よく知っているな。それに、俺の
その言葉とともに、激突していた二人は弾き飛ぶように距離を取る。
見れば、アジュカ様の周りには何人もの滅茶苦茶強そうな悪魔がいた。
……彼らは軽傷を負っているが、だけどまだまだ余裕で戦える。そして俺や姐さんが挑んでも、一人倒すだけで限界だろう。
あれが、アジュカ・ベルゼブブの眷属悪魔ってことか。
つまり、今の今までリムヴァンはアジュカ様とその眷属を一人で相手していたって事になるな。ニエ達が傷一つ追ってないのがその証拠だ。
どういうつもりだ? なんでついてきた?
「……彼らを動かさないのかい? 動かせば、俺を殺す事も容易にできるだろうに」
「言ったでしょ? 僕はできればあなたと戦いたくないんだ。死ぬところも目にしたくないし」
リムヴァンはそう言うと、苦笑を浮かべて肩をすくめる。
「今回は、旧魔王派の実力者を失わない為に出張ってきたのがメインだよ。ニエくんを連れてきたのは、戦場を学んでもらう為さ」
「どういうつもり?」
姐さんがリムヴァンを睨み付けるが、リムヴァンはそれに対して表情を一切変えず、アジュカ様から視線をそらさない。
それほどまでに油断できない相手が、アジュカさまってわけか。サーゼクス様とアザゼル先生を含めた、各勢力の最高幹部クラス以上を相手に圧倒した奴とは思えねえな。
裏切らないと断言していたし、どんだけアジュカ様のことかってんだよ。
そして、ジークはそんなリセスに熱っぽい視線を向けながら、代わりといわんばかりに口を開いた。
「前回リセスにやられたのは、経験不足が大きな理由って判断をリムヴァンはしていてね。リセスより格上の者達の戦いを見せて、勉強させようってつもりなんだよ」
……なるほど。確かにそうだな。
今の今まで文字通りくたばってたニエ。しかもブランクがあるどころか、元民間人だから戦闘経験なんてあるわけがねえ。よしんば喧嘩慣れしていても、異形達とのインフレバトルにはあまり意味がねぇわな。
だから、リムヴァンはアジュカ様と戦う事を想定してここに連れてきたってわけか。
ジークはどうやら、交渉をする担当って事なんだろうな。プリスはニエのお付きみたいな立場ってわけか。
「……しかし、俺の覇軍の方程式が全部失敗するとはね」
「ああ、僕も攻略法を見つける事が出来て嬉しいよ」
感嘆の声を上げるアジュカに、リムヴァンも嬉しそうに答える。
「覇軍の方程式は、あらゆる現象を数式で解析し、それを魔力でいじくる事で操るあなたの固有技能。……技術なのか能力なのかも分からなければ、一体どこまでできるのか底が知れないのが厄介だ」
なんだそのチート技。
魔法も確かに数式や計算で行うけど、この世の現象の数式って、俺には訳が分からねえよ。
「ぶっちゃけ、超越者の中で一番危険なんだよ。サーゼクスくんは単一属性を極めた特化型だからメタ張りやすいし、残り一人は処理限界を突破できる僕からすれば比較的いなしやすいけど、あなたはメタ張れないもん」
リムヴァン、そこ迄アジュカ様のことを警戒していたのか。
確かに、サーゼクス様は消滅の魔力を使いこなす事に才能と努力をつぎ込んだ、典型的な一芸型だからな。その芸さえどうにかできる手段があるなら、難易度は大幅に下がる。実際リムヴァンは紅の鎧のイッセーにカウンターをもらう程度の性能で足止めができたしな。
っていうかもう一人? そういや、超越者は三人いるって聞いた事あるな。……誰だ?
「だから、あなたに対抗するには威力でも範囲でもなく、制御権に全力を割り振った魔力攻撃が効果的だ。ここ以外を重視すると、コントロールされちゃうからね」
「そうだ。しかし、それでもある程度の制御はできる。……なるほど、君がリムヴァンと名乗る理由がよく分かった」
アジュカ様は得心すると、今までの落ち着いた表情を捨てて、鋭い視線を向ける。
……なんか、ガチ本気モードになってねえか?
おいおい。リムヴァンの奴、どんなメタ神器持ってきたんだよ。
「……
「……そうだよ。
その言葉の意味は、分からねえ。
だけど、これだけは分かる。
こいつ、生まれつき神滅具持ちだったのか。そのうえで、神器を大量に移植したり取り外したりつけたりできるのか。止めに、神器を悪魔合体させて神滅具級の複合禁手を作り出しやがる。
これが、第四の超越者なのかよ!!
「さて、できればもうちょっと「何ができるか」を試したいもんだけどねぇ」
「俺としてもそうしてほしい。
そう静かに嗤い合い、そして―
「「―もう少し付き合ってもらおうか」」
その瞬間、凄まじい激突が勃発した。
特に狙ったわけでもない集中攻撃がリセスを襲う!!
そしてまあ、ジークとの決戦が幕を開けます。
頑張れリセス! ストーカーを撃退するチャンスがやってきたぞ!! 仲間たち大半がガッタガタだけどね!!