ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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人間界で頂上バトルをぶっ放す人たち。

そして、


第五章 15

 

 

 

 

祐斗Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前で、文字通り神話の戦いが繰り広げられている。

 

 アジュカ様が眷属とともに波状攻撃を仕掛ける。

 

 全員が最上級悪魔クラスの戦闘能力を持っていると言ってもいい、魔王眷属。全員集まっているわけではないといえ、その戦力は主神すら殺しうるだろう。

 

 それを、リムヴァンは一人でいなしている。

 

 魔聖剣の蹂躙旅団(ブリゲート・オブ・ビトレイヤー)の力をフルに使って数の差を圧倒し返しているとはいえ、これは凄まじい光景だ。

 

 これは、近くにいるだけで死ぬかもしれない……っ!

 

 そんな中、ジークフリートはグラムを引き抜くと、僕達に向かって一歩前を踏み出した。

 

 いや、違う。僕達に向けて歩いているんじゃない。彼の本命は一人だけだ。

 

「さあリセス。決着をつけよう」

 

 ジークフリートは精神の均衡を崩している。

 

 かつてペトさんが蹂躙された出来事。そこで起きた教会勢力との小競り合い。

 

 その戦いで、リセスさんはジークを撃破した。

 

 そして、自分が多重移植者であることを自覚しているがゆえに呟いた自戒の言葉を、ジークは自分に対して言われていると受け取った。

 

 その結果、彼の精神は崩壊した。

 

 ただグラムを引き出す事に重点を置き、禁手の特性もあって使いこなしていた四本の魔剣は手土産としてヴィクターに献上した。

 

 それゆえに、彼はリセスさんに執着している。

 

 これまでにも、リセスさんと出くわした時は暴走レベルで戦闘を仕掛けてきた。リセスさんも苦労していた。

 

 だから、ここでジークフリートがリセスさんに切りかかるのは、当然の流れだ。

 

 そして、一歩を踏み出したジークフリートの周囲を、突如現れたドーインジャーが取り囲んだ。

 

「悪いけど、君の逆恨みなんかでリセスを取られたくないね。……僕がやる」

 

 そして、ニエ・シャガイヒはリセスさんを恨んでいる。

 

 プリス・イドアルと共にアイドルになろうと頑張ってきたリセスさんを支えてきたのが、ニエだ。だから、リセスさん達がそんな彼の心を裏切った時、彼は耐え切れず自ら命を絶った。

 

 そしてリムヴァンによって蘇った彼は、強者(英雄)になることで贖罪を行おうとしているリセスさんの来歴を知った。

 

 高潔な人格者なら、リセスさんを心配するか、一定の評価をするだろう。そこに自分の弱さに対する逃げがあったとはいえ、犠牲を無駄にしない決意そのものは立派なのだから。

 

 だけど、彼は普通の人間だった。

 

 彼は、見知らぬ誰かを救う為の生贄扱いされた事を怒った。リセスさんを殺したくなるほど恨んだ。

 

 そして神滅具に適合したうえで禁手にまで至り、リセスさんと戦って……撃退された。

 

 イッセー君の尽力と、ヒロイ君とペトさんの言葉が彼女を立ち直らせ、そして逃げるのではなく立ち向かう事を選んだ事が切っ掛けとなって、禁手に目覚めた事で勝利を収めた。

 

 だけど、そこから得たリセスさんの決意は、ニエからすれば開き直りと受け取ってもおかしくないものだ。

 

 だから、ニエはリセスさんを今でも殺したいはずだ。

 

 そういう意味だと、ニエとジークフリートの相性は最悪に近い。

 

 過去のトラウマからリセスさん打倒を目指すジークフリート。

 

 過去の絶望からリセスさんに報復をしようとするニエ・シャガイヒ。

 

 目的が見事にぶつかっている。二人とも自分で倒したいだろうし、これは激突必死か。

 

「しまった! 組ませる相手を間違えた!! プリスちゃん説得よろしく!! 僕は忙しい!!」

 

「無茶振りです!?」

 

 そして、プリス・イドアルは完全なとばっちりだ。

 

 冷静に考えると、この子が一番不幸じゃないだろうか。

 

 悪辣な大人によって人生を踏み外し、更に悪魔に売られた。あてがわれた主は凶児ゼファードルで、しかもそのままヴィクターに連れていかれる。そしてニエとの最悪の再開をして、リセスさんに対する戦力として運用されている。

 

 ……とても不幸だ。確かに彼女には加害者の側面があるが、それにしたってこれは流石に酷いだろう。

 

 明確に格上である二人の喧嘩を止めるとか無理だ。しかも、心情的にニエを止めるのは無理だろう。

 

「……投降は受付っぞー? 姐さんの妹分なら俺達の姉貴分だし、弁護士代と保釈金は払ってやるぞー」

 

 ヒロイ君がここぞとばかりに寝返り工作を行っている。意外と抜け目ないね。

 

「ううん。私は、ニエ君について行くって決めたから」

 

 そして断られた。

 

 彼女も彼女で、ニエを自殺に追い込むほど絶望させた事に思うところはあるようだ。足止めの為に投げつけられるほど扱いが悪くても、それでもついて行くと決めている辺り、決心も硬いだろう。

 

「……と、とりあえずリセスちゃんは後回しにして、他の人達をどれだけ倒せたかで順番を決めるとか、どうかな?」

 

「待ってくれ。それだと物量作戦ができるニエが圧倒的有利じゃないか」

 

「いや、そりゃニエ君の方が大事だもん」

 

 そして意外といい性格だ。反論したジークフリートは少し頬がひきつっている。

 

 しかし、この状況はまずい。

 

 数の暴力を体現する魔獣創造を保有するニエ・シャガイヒ。

 

 神滅具の禁手にすら匹敵する魔帝剣グラムを保有する、英雄派のジークフリート。

 

 お互いにリセスさん狙いだから奪い合いになってチームワークが乱れる可能性が高いけど、もし連携を取られたらかなり不利だ。

 

 なにより……。

 

「……こんな、時に……」

 

 リアス部長は愕然としている。そこに戦意はあるけど、それを形にする事が出来てない。

 

 朱乃さん達にしてもそうだ。いつもなら既に臨戦態勢になっているはずなのに、どう見てもついていけてない。

 

 ヒロイ君たちは即座に戦闘態勢に入っているけど、リアス部長達は出来てない。

 

 これが、イッセー君が欠けた事による影響か。実戦に巻き込まれて、改めてその甚大な被害がよく分かるよ。

 

 下手をすれば、このまま蹂躙される事だって十分に―

 

「……分かったよ。だったらこうしよう」

 

 と、ニエがぽつりと呟いた。

 

 その言葉に、プリス・イドアルもジークフリートもいぶかしげな表情を浮かべる。

 

「とりあえず三十分だけサポートに徹するよ。それで駄目だったら僕に代わってくれ。ドーインジャーは出してあげるから、それでいいだろう?」

 

「……ふふ、前回こっぴどくやられて、怖気づいたのかい?」

 

 ジークフリートはそう挑発するけど、ニエは肩を小さくすくめると、そのままドーインジャーを生み出しながら、欄干にもたれてこっちに視線すら向けない。

 

 プリス・イドアルはそれを気遣わしげな視線で見たけど、やがてこちらに視線を向けて、両手を構える。

 

 そこから、丸鋸のように魔力が形成される。

 

 サイラオーグ・バアルとのレーティングゲームで見せたあの攻撃だ。かなりの強度を持っていたであろうバアル眷属の武器を切り裂いたその攻撃力は、危険視する他ない。

 

「……言っとくけど、ニエ君には近づけさせないから」

 

 その目には決意がある。これは、一筋縄ではいかなそうだ。

 

 そして、ある意味で好都合だ。

 

 僕は、激情をこれ以上押さえられず、一歩前に出た。

 

「リセスさん。前衛は僕がします」

 

「祐斗……」

 

 リセスさんはそれを拒まない。ヒロイくんとペトさんもだ。

 

 ああ、分かってくれているんだろう。

 

 イッセー君が死ねば、グレモリー眷属がこうなる事は想像出来ていた。

 

 だから、リアス・グレモリー眷属の騎士である僕だけは冷静でいようと決めて、頑張っていた。

 

 ヒロイ君達に寄りかからないようにしようと、一生懸命だった。

 

 だけど、そろそろ限界だ。

 

「英雄派幹部、ジーク。君はここで退場してもらう」

 

「退場するのは君だよ。たかだか聖魔剣如きが、煌天雷獄と魔帝剣の戦いに割って入る気かい?」

 

 ジークは殺意すら込めて睨み付けてくるが、僕は同じぐらいの殺意を込めてそれを睨み返す。

 

 ああ、いい加減僕達もうんざりだ。

 

 何度も何度も僕達の前に現れて、リセスさんに集中していたとはいえ僕達を苦しめて……。

 

 そして、イッセー君は彼らの作戦に巻き込まれる形で命を落とした。

 

「僕の親友は、あなた達のくだらない目的の所為で死んだ。……死ぬ理由としては十分だ」

 

「……いい目をしているね。いいだろう、リセスのついでに君も斬るとしようか」

 

 興味深い表情を浮かべながら、ジークフリートはグラムを構える。

 

 そして、一瞬で禁手に至ると即座に切りかかってきた。

 

 それを飛び退って交わすと、僕は聖魔剣ではなく聖剣を生み出す。

 

 同時に聖覇の龍騎士団を生み出して、龍殺しの聖剣でオーラを放った。

 

 剣での勝負では苦戦は必須。異空間での戦いでは油断させて一撃を与えたけど、特に堪えた様子はなかった。

 

 だから、全力でオーラによる集中攻撃を与えて見せる!!

 

 その影響が出たのか、ジークの肌からうっすらと煙が上る。

 

 ……だけど、ジークフリートの表情は何処か悦びの色があった。

 

「いい。いいよ、木場祐斗。いい龍殺しの波動だ」

 

 そう言うと、ジークフリートは身を震わせる。

 

 それは、明らかに喜びの行動だった。

 

 彼は激痛に苦しんでいるのではない。快楽にあえいでいる!

 

「龍殺しのオーラを浴びるのは、龍にとって祝福だ! そう、だから僕はグラムを全力で振るうことを躊躇しない!!」

 

 その言葉と共に、ジークフリートはグラムを一閃する。

 

 その瞬間、竜騎士は一瞬で両断された。

 

 それどころか、空間すらその一薙ぎで大きく切り裂かれる。避けた空間から次元の間が見え、そしてその無のオーラが周囲に満ち溢れた。

 

 流石は最強の魔剣。そしてその適合者といったところか。

 

 だけど!!

 

「リセスさん、援護をお願いします!!」

 

「え、ええ!!」

 

 若干戸惑いを見せながらも、リセスさんは龍殺しのオーラを放つ。

 

 アスカロンを使うイッセー君との模擬戦。グラムの担い手であるジークフリートの戦い。そしてあらゆる属性を支配する煌天雷獄(ゼニス・テンペスト)の特性。

 

 その経験が、リセスさんに龍殺しのオーラを操るという絶技を可能とした。

 

 神殺しの聖槍、黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)の担い手であるヒロイ君と一緒にいる事もある以上、いずれは神殺しのオーラを操る事すら可能だろう。それほどまでに、属性支配という一点に関してリセスさんは飛びぬけている。

 

 ゆえに、龍殺しの聖剣のオーラを操り増幅する程度の事ならできる。

 

 どうせなら、彼もリセスさんに倒されたいだろうからね!!

 

「いいね! リセスも本気を出してくれるのか!!」

 

 それをジークフリートは、グラムを盾にして防ぎ切った。

 

 同時に背中の巨大な腕が動き、近くの破片を掴んで僕に投擲する。

 

 防御力が圧倒的に低い僕相手ならそれで倒せると踏んだんだろうけど、甘いよ。

 

「聖魔剣よ!!」

 

 瞬時に禁手を聖魔剣に切り替え、僕はそれを一刀両断した。

 

 やはりそう簡単にはいかないか。だけど。

 

 ……イッセー君を死に追いやった君達を、ただで帰す気は欠片もないんだよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Side Out




プリス、完全なとばっちりwww

リムヴァンの人選ミスのせいで、余計な仕事を背負う羽目になりました。ですがニエがあっさり妥協したことで苦労はそこ迄せずに済みました。


そして初登場の時と比べると冷静なニエ。

この変化についてはまあ、後々まで引っ張ると思います。



そしてヤンデレ街道まっしぐらなジークフリート。

最早彼にとって龍殺しのオーラは祝福です。グラムに呪われることがうれしくてうれしくてたまりません。

まさかリセスも自戒の言葉が原因でこんなモンスターを生み出すとは思わなかったでしょう。
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