ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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戦闘は視点を変えてジャンヌに収束します。

ヘラクレス並みに強化されているジャンヌ。果たして彼女はどんなパワーアップを遂げたのか……。


第五章 26

 そして同じ頃、ジャンヌもまた本気を少し出す事を決定する。

 

 聖剣のドラゴンによる猛攻は確かに有効だが、しかしこの三人を相手にするには流石に限界があった。

 

 なるほど、これは手強い。

 

 ジークフリートが倒されたのも頷ける。あの男は自分達とは違い、神器の多重移植を行っていないから、押し切られたとしてもおかしくないだろう。

 

 量産型とは言え聖魔剣。エクスカリバーとデュランダルの融合。さらに堕天使の血を活性化させる腕輪。

 

 玩具頼りはお互い様。素直に称賛するしかない。

 

「うんうん。やっぱり強くなるなら武器も使わないとね。お姉さんその辺は理解できるわ」

 

「あなたと一緒にされたくないわね!」

 

 イリナの反論と共に振るわれた聖魔剣を聖剣で受け流しながら、ジャンヌはどこまで本気を出すか考える。

 

 まだヘラクレスも全てを出してない。その状況下でこちらが全部を出すのはなんとなく不本意だ。

 

 それに、リムヴァンから警告されていた首相もある。ここで余裕を残せないようでは、勝ち目がないだろう。

 

「じゃあ、これぐらいにしておきましょうか」

 

 そして、禁手の本質を一段階引き上げた。

 

 その瞬間、状況は大きく動いた。

 

 これまでは受け流しに集中する必要があった剣撃を、力押しで強引に押し切れるようになり、更に一方的に押されていたドラゴンも、反撃を叩き込めるようになる。

 

 一瞬で、三人がかりの新たなアプローチを乗り越えた。

 

 そして、その本質にあっさりと三人は勘付いた。

 

 もとより、その混ざり合った本来あり得ないオーラはよく見知っている。

 

「……聖魔剣か!!」

 

「どっちかというと、リムヴァンの魔聖剣が近いわね」

 

 ゼノヴィアのデュランダルの砲撃をかわしながら、ジャンヌはそう告げる。

 

 そう、聖魔剣の力は圧倒的だ。エクスカリバーといえど、合一の数が足りなければまともに対抗する事はできないほどに。

 

 その聖魔剣が更に大量に集まって龍と化せば、その戦闘能力はどうなるか。

 

 その答えは、圧倒的な蹂躙だった。

 

 放たれる雷光を、聖魔剣を対雷撃にする事なく強引に突破し、そして対悪魔に特化した聖魔剣の力でブレスを放つ。

 

 とっさに朱乃とゼノヴィアは防御に徹するが、その出力は強大で負傷を負う。

 

 その隙を逃さずジャンヌは迫るが、そこにイリナが追いすがった。

 

「させないんだから!!」

 

「天使ちゃんじゃ無理ね!」

 

 振るわれた聖魔剣を、魔聖剣はあっさりと両断した。

 

「デッドコピーでオリジナルを倒せると思った? それに、これは聖剣創造と魔剣創造の複合禁手なのよ?」

 

 単純に、使用されている神器の数は倍以上。そう言う意味では地力では木場祐斗の聖魔剣すら凌駕する。

 

 単純な数の暴力により、ジャンヌは三人がかりでなお圧倒していた。

 

「これなら、業魔人(カオス・ドライブ)はもちろん本気を出さなくても倒せそう―」

 

「朱乃!!」

 

 とっさに対魔力に特化した魔聖剣を複数創造。それを盾にしてジャンヌは飛びのいた。

 

 そして、超高出力の消滅の魔力が、魔聖剣を一瞬の拮抗ののちに吹き飛ばした。

 

「抜き打ちとは言えコレを消すだなんて。やるわね次期グレモリー!」

 

「やってくれたわね、ジャンヌ・ダルク!」

 

 リアスの放つ消滅の魔力に対して、ジャンヌも即座に本腰で対応する。

 

 両手に対消滅の魔力用の魔聖剣を生み出し、それを両断。即座に対悪魔用の聖魔剣に切り開けて投擲し、リアスを狙う。

 

 だが、それもロスヴァイセが展開する魔法結界によって防がれた。

 

「させると思いますか!」

 

「……させない」

 

 さらに回り込んだ小猫の攻撃をぎりぎりでかわし、ジャンヌは舌打ちする。

 

 ……流石はグレモリー眷属、と強気を魅せたいがこれは大変だ。

 

 なにせこのグレモリー眷属。それぞれが上級悪魔クラスかそれ以上のレベルであるうえに、それぞれ出来る事が見事に分かれている。

 

 いかに様々な魔聖剣を生み出す自分といえど、全部すべてに対応する魔聖剣を生み出すなど不可能だ。

 

「ちょっとゲオルク! 少しぐらい助けてくれない!?」

 

 流石にこの人数は偏りすぎと、特に何もしていないゲオルクに文句を言う。

 

 ヘラクレスは事実上三体がかりで済んでるのに、こちらはその倍だ。どう考えても不公平だろう。

 

 それに対して、ゲオルクは息を吐くと静かに視線を祐斗とギャスパーに向けた。

 

「無茶を言うな。グラムを手にした聖魔剣使いと、更にリムヴァンから念押しされたハーフヴァンパイア。こいつらに睨みを利かせるのもただではないんだぞ?」

 

 痛いところを突かれた。

 

 なにせグラムは自分にとっても相性が悪い。もしまた振るわれると、流石に本当に全力を出す他ない。

 

 それはそれでヘラクレス達に笑われそうだ。実に不愉快だ。

 

 そして、ギャスパー・ヴラディに関しては確かに要警戒だろう。

 

 それほどまでに脅威だといわれており、そしてその理由も聞かされている。

 

 特にゲオルクとは相性が悪い。彼が警戒するのも当然だろう。

 

 なにせ、対抗する結界装置を作ったとしても、それが発動するまでのタイムラグで無効化されてしまうのだ。やるとするならばこちらも伏札を切るほかなく、できればそれは避けたいということだろう。

 

 こんなことなら構成員を用意しておくべきだった。少し反省するほかない。

 

 そうため息をついたその時だった。

 

「………うっ」

 

 なぜか、ギャスパー・ヴラディがうめき声を上げた。

 

 そして、涙すらこぼして崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヘラクレス達と猛攻を繰り広げていたリセスは、その泣き声に警戒心を消さずに視界にギャスパーが移る立ち回りにかえる。

 

「どうしたの、ギャスパー?」

 

 戦闘の余波でダメージでも負ったのか。否、根性を習得している今のギャスパーが、このタイミングでそんな理由で泣き言を言うとは思えない。

 

 なら、一体―

 

「……できなかったんです」

 

 その言葉に、リセスは状況を把握しようと思考を回転させる。

 

「……グリゴリの方にも、今の自分達だとこれ以上は強くできないって……言われてしまったんです!」

 

 そういいながら、ギャスパーは泣き崩れた。

 

「僕はダメダメです……役立たずです……っ」

 

 その泣き崩れる様に何かを言いたいが何を言えばいいのかわからないグレモリー眷属。それも激戦中ではそれに思考を割くわけにもいかない。

 

 反面、手が空いているゲオルクは憐憫の表情すら浮かべていた。

 

「……自身の本質を知らなければその程度か。グリゴリも流石に気づけないと見える」

 

 その発言に、リセスは違和感を覚える。

 

 まるで、この場にいる中で最も危険と認識していたとでも言いたげな発言だ。先ほどの発言といい、ギャスパーを明らかに警戒しすぎている。

 

 どういうことかわからないが、もしかすると希望の光はギャスパーが持っているのかもしれない。

 

 だが、それをどうやってつつけばいいのかが分からず、どうしたものかと考え―

 

「―それでは、滅んだ赤龍帝も報われないな」

 

 ―ゲオルクが、わざわざ自分から地雷を踏んでくれた。

 

「……………え?」

 

 ギャスパーが、目を見開いて涙すら止めてぽかんとなる。

 

 やはりヴィクター経済連合では兵藤一誠が死んだということになっているようだ。まあ、普通に考えれば確実に死んでいる状況だろう。

 

 イッセーが生きているのなら、この状況下で行動していないわけがないのだから。しかもシャルバがサマエルの毒を持っていることも考えれば、それは確かに死んだと考えるのが普通だろう。

 

「イッセー先輩が……死んだ?」

 

「ああ。シャルバが持ち込んだサマエルの毒を喰らい、滅んだはずだ。あの状況下ではそれ以外に考えられない」

 

 確かにそれが普通の判断である。

 

 ……まさか、魂は無事な可能性があり、絶賛捜索中などとはだれも考えつかないだろう。

 

 そしてゲオルクは視線を向けると、得心したかのようにうなづいた。

 

「そう言えば偽物の聖槍使いも堕天使の狙撃手もいないな。……ジークフリートは戦果を挙げたようだ」

 

 しかも勝手にヒロイとペトがジークフリートに殺されたと勘違いまでしてくれている。

 

 まあ、あの二人がグレモリー眷属と行動を共にしていないという事もあり、その発想は当たり前だろう。ことペトの狙撃がいまだに一発も飛んでこない時点で、そういう判断が起きる可能性は十分あり得た。

 

「対狙撃とギャスパー・ヴラディ用の結界装置を周囲に展開し終えていたのだがな、どうやら無用か……」

 

 そう安心すらしているゲオルクに、リセスは「イッセー生きてるみたい」と言ってやりたくなった。

 

 きっと度肝を抜かれる事だろう。ちょっと押され気味なところもあるので、少しスカッとするはずだ。

 

 そういうわけで口にしようとして……。

 

「………殺してやる」

 

 ―その、怨念にまみれた声が響き渡った。

 

 その声の主は、ギャスパーだ。

 

 今まで聞いたことがないほどの、どす黒い口調。

 

 相当切れている事がよく分かる。

 

 そして、視線を向け―

 

「コロシテヤル。コロシテヤルゾ、オマエタチ」

 

 それが、明らかに常軌を逸した事態である事に気づき、リセスは本気で警戒した。

 

「おーおーおーおー。これが例のあれか?」

 

「やっぱり禁手(バランス・ブレイカー)級ね。出力がデータとは大違い」

 

「……まずいな、俺とは相性が悪いのだが」

 

 英雄派は慌ててこそいないが、ゲオルクが警戒心を強めている。

 

 その視線の中、ギャスパーから闇が生まれて、獣の姿となるほどに変貌する。

 

 それどころか、闇は周囲を侵食し、周囲を包み込もうとする。

 

「これは流石に看過できんな……っ!」

 

 ゲオルクは瞬時に結界装置を生み出しながら、霧でギャスパーを包み込む。

 

 強制転移を試みつつ、結界装置により封印を狙ったところだろう。

 

 だが、それはあっさりと破られる。

 

 闇は一瞬で霧を侵食するとそのまま飲み込み、同時に結界装置は周囲を包み込む闇から瞳が生まれると、その機能を停止させる。

 

「あらゆるものを侵食する闇と、あらゆるものを停止させる目。……軽量たる我が霧と、タイムラグのある結界装置では相性が悪いにもほどがあるな」

 

 ゲオルクはそう冷や汗を流しながら戦慄するが、然し口調は冷静だった。

 

 しかし、実際に相性は最悪だ。

 

 霧を容易に侵食して溶かす闇の前には通常の能力は無力に近い。また、凶悪な結界装置も生まれながら結界をうむわけではない。作り出してから結界を発生させるまでのラグが、停止の力を仕掛ける隙となる。

 

 一対一でこの事態に持ち込まれた時点で敗北は確定。そう言っても過言ではないほどに、ゲオルクは追い詰められ―

 

「だが言っただろう。……吸血鬼用の結界は用意していると」

 

 その言葉と共に、ゲオルクは眼鏡を指で押し上げる。

 

 その瞬間、闇に浸食が一気に減衰した。

 

「トマル!? ヤミガトマル!? アリエナイ!?」

 

「あり得るとも。我が絶霧(ディメンション・ロスト)は上位神滅具。貴様の時空を支配する邪眼王(アイオーン・バロール)とは相性が悪いが、事前に準備さえ済んでいればいくらでも対抗できる」

 

 聞き慣れない神器の名を告げながら、ゲオルクは視線をもだえ苦しむギャスパーに向ける。

 

 そこには、油断もなければ畏怖もなかった。

 

 ただ単に、既に攻略が完了した相手としか見ていない。

 

 そしてもだえ苦しむギャスパーの抵抗は続くが、ゲオルクは瞬時に結界装置を多重展開してさらに動きを封じる。

 

 結界装置は目によって停止されていくものもあるが、弱体化した状態ゆえに大量に生成される結界装置すべてを止められない。そして結界装置が一つでも起動すれば、その保護下に置かれた結界装置もまた駆動して鼠算式にギャスパーは弱体化していく。

 

 そして、そこにあるのは闇の魔獣ではなく、ただ単に闇色に染まったギャスパー・ヴラディだけだった。

 

「詰みだ。その邪眼王、我らの手に頂かせてもらう。……神器摘出用の結界装置は開発済みだ」

 

 その言葉に、全員が寒気を感じた。

 

 全く状況の展開についていけてない。そして何故か英雄派はこの状況に心当たりがある。

 

 だが、少なくとも分かる事がある。

 

 このままではギャスパーが危険だ。

 

「皆! ギャスパーを守って!!」

 

 リアスが命じるまでもなく全員が動こうとするが、しかしそれより相手が速い。

 

 気づけば、ヘラクレスはグレモリー眷属とギャスパーを分断する形で回り込んでいた。

 

「させるわけねえだろうが! 少しは手柄を立てさせな!!」

 

「同感ね。逃がすわけがないじゃない」

 

 更にジャンヌが指を鳴らすと、魔聖剣のドラゴンが音と立てて崩れ堕ち、ヘラクレスのとなりに再出現する。

 

 ならばまずはジャンヌの本体を狙おうとするが、そのとたんにジャンヌは二振りの魔聖剣を生み出すと、その姿をかき消した。

 

 一瞬でも相手の姿を見失った事で、全員がまず自分の周囲を警戒する。

 

 そしてその隙をついて、ジャンヌはヘラクレスの隣にまで追いつき、姿を現した。

 

透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)の能力を持つ魔聖剣……っ!」

 

「正解。短時間しかできないようにする代わりに、とにかく出力を大幅に向上させてみたわ。使い捨て出来るって最高だと思わない?」

 

 不敵な表情を浮かべるジャンヌの後ろで、ギャスパーの全身から火花が散る。

 

 すでに結界装置は神器の摘出に取り掛かっているということだ。

 

 そして、それを止めようにもヘラクレスとジャンヌの2人を同時にどうにかするほかない。

 

 まず間違いなく、時間が足りなかった。

 

「ギャスパー!! くそ、そこをどけ!!」

 

 ゼノヴィアが全力でデュランダルを叩き込むが、しかしそれをゲオルクの結界が防ぐ。

 

 その火力に霧の結界が押し込まれるが、然しその内側から魔聖剣のドラゴンが体当たりを行い、強引に弾き飛ばした。

 

「くっ! ゼノヴィア、同時攻撃で―」

 

「いや、もう遅い。あと五秒で―」

 

 祐斗が体の負担を無視してグラムを構えるが、ゲオルクがそれをあざ笑う。

 

 そして、そのままギャスパーから何かが飛び出そうになり―

 

「―クリムゾンブラスター!!」

 

「―槍王の型、流星(ながれぼし)

 

 その二つの閃光が、結界装置を破壊して食い止める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その光景を、リセスもリアスも目に焼き付ける。

 

 蒼く輝く切っ先を突き出す、輝き(英雄)

 

 真紅の輝きを放った、ヒーロー(英雄)

 

 そう、そこに現れたのは二人のヒーロー。

 

 オカルト研究部の2人のエース格。

 

 そして、一人は死んだとすら思っていた、自分達の主柱。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無事かギャスパー! 助けに来たぜ!!」

 

「おいおい。出待ちと思っちまうぐらいいいタイミングだな、こりゃ」

 

 鎧越しでも冷や汗を流すぐらい焦っているのが丸わかりの兵藤一誠。

 

 タイミングの良さに苦笑を浮かべる、ヒロイ・カッシウス。

 

 2人の英雄が、まさにこのタイミングで参戦した。

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 




ジャンヌはリムヴァンやディオドラのように複合禁手にしているタイプです。因みにこっちも手加減しています。


そしてもう気づかれている方も多いでしょうが、ヴィクター経済連合は……というかリムヴァンは、ギャスパーの神器に対して現状で一番詳しいです。

ゲオルクにもグレモリー眷属と戦う可能性を考慮して、きちんとアドバイスをしています。其のため遠隔地に対邪眼用の結界装置を用意して、勘付かれる前に起動という方法をとってギャスパーの弱体化させて力押しに成功しました。

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