ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
ヒーローズ編も決戦が近いですぜ、旦那!!
曹操は、苦笑を浮かべながらイッセーに視線を向ける。
「シャルバはサマエルを持っていたと聞いたけど、生き残っていたとはね。……正直、出待ちをする性質ではないと思ったんだけどね」
「悪かったな。体が消滅してたから、グレートレッドとオーフィスの力を借りて新しく作ってたんだよ」
イッセーが嫌味を言うが、その言葉に曹操は目元を引くつかせる。
ああ、流石にこれは気持ちが分かるぜ。
だって無茶苦茶なこと言ってるからよ。もうドっから突っ込んでいいか分からねえよ。色々おかしいだろ、色々。
「……グレートレッドと出会うという時点で天文学的な確率だ。ましてや、グレートレッドとオーフィスの共同作業を引き出すだと? 君は、自分がどれだけ異常な事をしているか分かってないだろう」
「?」
あ、分かってねえな、コレ。
「単刀直入に言おう。最早二天龍などというレベルで語れる次元に君はいない。神器以外は特別な来歴も特性も何一つ持ってない君が、だ。……一体、君は何なんだ?」
心底化け物を見る目で曹操はそう問い質す。
……曹操。悪いんだけど、イッセーそういうこと深く考えてないと思うぜ?
「……じゃあ、おっぱいドラゴンでどうよ?」
ほらぁ! こんなこと言ってるしぃ!!
「馬鹿だろ、お前」
「ひでえ!」
思わず俺はそう言っちゃったよ。言わずにはいられねえよ。
お前さ、ホント自分を客観的に見ろって。どんだけおかしな事してるか自覚ねえだろ。
「もうちょっと自分の異常性認識しろよ。なんか理由ねえか考えろよ」
「いや、確かにちょっと自分でも呆れるけどさぁ」
その程度ですますんじゃねえ。
あれ? これ、俺と曹操がおかしいのか? おかしいのは俺と曹操の考え方なのか?
物事に理由をつけたいのはそんなに悪い事か? いや、こんな異常現象に理由がないとかそっちの方が怖いだろうが。
俺はなんとなく同意を求めて視線を周りに向けると、生暖かい視線がいくらか返ってきた。
ただ、もうイッセーはこれでいいだろ? 的な視線も帰ってきた。勘弁してくれ。
「……君とは相容れそうにないな。腹立たしいが怨敵と認めよう」
曹操も、ため息を共にそう言った。
そして、憧憬と嫌悪が混じった眼でイッセーをまっすぐに見据える。
「おそらく、君は冥界の英雄になろうとした事はないのだろう。ただ目的の為に生きて、その結果として英雄と呼ばれている。……天然ものだよ、恨めしい」
あ、この辺も俺と同じ考えか。
やっべえよ。意見が合っちまってるよ。同意見になってるよ。
俺としては不倶戴天の怨敵なんだけどな。なんか同類的な意識が生まれちまってるよ。
だってイッセーが天然ものなのは俺も分かってるしな。ぶっちゃけ、少し羨ましいし妬ましいって思ってる。
そこで同意見になっちまったらいかんだろ。仲良くなっちまいそうじゃねえか。
「……だが、俺達は英雄になる事を諦めたりはしない。してたまるか」
あ、そこも同意見かよ。
なんか、俺泣きたい。
「長可から、戦国時代の英傑達の話を聞いた。色々な者がいたよ」
森長可か。
正真正銘戦国時代に名を遺した武人。人は彼を英雄と呼ぶだろう。
その影響が、俺との共通認識なのか?
「……名誉を求めた者がいた。欲を叶えようとした者がいた。ただ戦が好きな者がいた。太平の世を作ろうとした者がいた。……そして、そのいくらかが今の世にも英雄として名を残している」
ああ、そうだ。
英雄が、全員高潔な人物だったなんてことはねえ。
どす黒い、後ろ暗い、そんな逸話を輝かしい栄光の裏に持っている英雄何て、腐るほどいる。
曹操も、それをきちんと理解しているのか。
やっべえ。俺、曹操のこと気に入りそう。
「そして、同じように強い意志を持った、名も無き英雄は数多くいる」
静かに、曹操は槍を突き付ける。
「英雄とは、人より前に進んだ者」
それは、兵藤一誠に対する、宣戦布告だった。
それは、リセス・イドアルに対する、宣戦布告だった。
そしてそれは、この俺ヒロイ・カッシウスに対する、宣戦布告だった。
俺は、輝きという名の英雄になりたい。人の心を照らしたい。
姐さんは、自慢という名の英雄を目指している。俺とペトの英雄でい続けようとしている。
イッセーは、英雄になろうなんてせずに英雄になった。ただがむしゃらに生きた結果、自然と英雄になっていた。
そして、曹操もまた英雄を目指す。だけど、それは決して俺達と同じものではない。
「例え歴史に名を残せなくとも、人より前に進んだ事はその者の心に残る。俺達は、もっと向こうへと足を進める」
そう、曹操が目指す英雄の形が分かった。
奴が目指すのは、先を往く者だ。
例え誰に知られなくても。例え歴史に残らなくても。
もっと前に。もっと高く。もっと遠く。もっと向こうへ。
限界に挑戦し、そしてそれを超えようとする曹操にとっての英雄とは、限界に挑戦する者達だ。
……共感を覚えても、俺たちは決して相いれない。
そして、イッセーはそこに共感を覚えない。
「分からねえよ。なんでそこまでそんなことに拘るんだ?」
その言葉が、少なくとも今のイッセーの在り方だった。
「ならば俺はこう返そう。……なんで君は、女子に嫌われると分かっていて、ハーレムを作りたいのに女子の着替えを覗こうとするんだい?」
……ここでそんなこと言う?
「……なるほど、ロマンってのはそういうことか」
そして分かるんじゃねえ。殴っていいか?
曹操は、その返答に満足げに頷いた。
いや、頷かないでくれないか? マジで一緒にされたくねえんだよ。ものすごーく大きな視野で見ると一緒なんだろうけどな?
「そう言う事だ。部下達には怒られるかもしれないが、ロマンの追求とは、それに価値を感じない者達には理解されないものさ」
そう答えると、曹操は禁手を発動させる。
たしか、七つの球体がそれぞれ並の神器の禁手に匹敵する能力を発動するんだったな。しかも鈍器として使用する事もできるっていうシャレにならねえ仕様だったな。
何て静かに禁手を発動させやがる。イッセーやサイラオーグさんとは比べ物にならないぐらいスマートに禁手に至ってるじゃねえか。
これが、オリジナルの聖槍使いの本領ってやつか。壁はまだ高いな、オイ。
だが……。
「負ける気はねえぜ、曹操」
俺は気合を入れると、槍を前に突き出す。
「勝てるわけがないだろう、まがい物」
そうかい。まだ紛い物が基本かよ。
……だが、いつか必ず超える。
そうでなければ、
俺はその決意と共に一歩を踏み出し―
「悪い、ここは俺にやらせてくれ」
イッセーが、俺の肩に手を置いていた。
「……俺が、曹操を意識してんのは知ってんだろ?」
「それでもだよ。……皆の借りは、俺が返したい」
まっすぐに、嘘偽りも汚れもなくそう答えられた。
………はぁ。
「ここでごねてたら、曹操に後ろから刺されそうだな」
「いやいや、他の奴らが邪魔すると思うけどね」
いや、お前上手く不意打ちしてきそうじゃねえか。
「……勝算、あるんだよな」
「ああ、負ける気はねえし、勝ち方も考えたよ」
しゃあねえ。じゃ、任せてやるか。
「負けたら承知しねえぞ、冥界の
「分かってるよ。リセスさんの
俺達は片手をぶつけ合うと、そして俺はイッセーを見送る。
ホントなら、俺だって曹操とガチ勝負したかったんだからな? マジで因縁あるっつーか、色んな意味で倒したかったんだからな?
これで負けたら、ただじゃ済まさねえぞおっぱいドラゴン。
「さあ、決着をつけようか、曹操!!」
「良いね、それじゃあ紅の鎧を味合わせてくれ!!」
その言葉と共に、激戦の火ぶたは切って落とされた。
曹操達英雄派の最大の魔改造は、長可と会って語らったことによるこの精神の変化にこそあるでしょう。
ただ万全とすごい奴程度の認識で「英雄」を名乗っていたころと違い、曹操達は明確に「自分たちにとっての英雄とは何なのか」の答えが出ています。それが、成長に大きな影響を与えています。
だから強い。だから前に進める。だからこそ、より強大な存在へと変貌しました。
前にも書いたと思いますが、もう一度書きます。
この英雄派は、敵として再設計しています。ヒロイたちとは相いれない、ヴィクターにとっての英雄。
どちらかが血を見るどころか、どちらかが死ぬまで戦いは終わらないです。