ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
ヒーローズ編の最終決戦も、ついにクライマックスです。
Other Side
その瞬間、サイラオーグ・バアルは祝詞を唱える。
まさか、この力を自分が使えるとは思っていなかった。
半年とは言え絆を紡いできたヒロイ・カッシウスとリセス・イドアルだったからこそ至れた力だと思っていたし、自分はそういう才能はないと思っていたからだ。
なにせ非才という点においては胸を張れてしまう。大王バアルとして持っていなければならないと断言できる、魔力の素養が欠片もないのだ。
幸い頑丈な体はもらっているが、はっきり言って不器用な性分だ。寄って殴るしか能がないし、はっきり言って貴族の優雅さからは程遠い男だと駄目な自負がある。
ゆえに、この手の異能とは縁遠いものだとばかり思っていた。
だが、どうやらそういったものは関係ないようだ。
それほどまでに、兵藤一誠は自分に強い思いを向けているということだろう。
「我が英雄とは、同胞と共にある我自身なり」
あれほどの
そして、目の前の者達もまた立派な者達だ。
多くの罪を犯しながらも、然しそれでも愛する者達の誇りであろうとする、リセス・イドアル。
歴代白龍皇最強の名を頂くとされ、覇を凌駕する事でそれを証明して見せたヴァーリ・ルシファー。
そして、今この場で聖槍の禁手を聖槍を封じる為だけに使うという覚悟のいる決断を躊躇いなく下したヒロイ・カッシウス。
冥界の英雄である兵藤一誠に並び立つ者達として、相応しいだけの猛者達であると断言できる。
「魔の力持たず、劣等なる我なれど、しかし栄光をつかみ取らん」
ならば、自分も負けてられない。
もとより努力するということにおいて自分は彼らに負けていないと断言できる。
才能ならば最低だろう。寄って殴るしか能がない。
。
それでも、この力を受け取るに足る存在として後れを取るわけには一切いかない。
ゆえに、ここで自分が勝ちをもぎ取ろう。
「我、赤き龍に並び立つ獅子として、万難を打ち砕く拳を振るわん!!」
その瞬間、サイラオーグの獅子の鎧は赤い追加装甲を身に纏った。
「……まさか、ここで至るか!」
「ああ、ここで至ったぞ」
瞠目する曹操に、サイラオーグはそう首肯する。
今ここに、兵藤一誠の力を借りて、獅子王サイラオーグ・バアルは獅子龍王と化した。
戦車の力を譲渡した、赤龍帝の力を宿し黄金の獅子王。
「
「まったく、赤龍帝はご都合主義を連発するから困る!!」
そう吐き捨てる曹操に、サイラオーグは拳を叩き込んだ。
龍王の獅子の能力は単純明快。単純に攻撃力と防御力を大幅に強化するというシンプル極まりないもの。
恐ろしいほどの単純なものだ。しかし、サイラオーグにこれほどなく合っている能力でもある。
余計な能力など無用。ただ近づいて両の拳で殴り倒すのみ。
そして、その拳は曹操ですら回避困難な一撃だった。
ギリギリで避ける事はできたが、その衝撃波が曹操を容赦なく弾き飛ばす。
余波で一気に数十は粉砕されたビルの破片を喰らいながら吹っ飛ぶ曹操に、サイラオーグは一回の跳躍で追いつく。
当然だ。曹操は直撃を受けたのではなく、攻撃によって発生した衝撃波によって吹き飛ばされただけなのだから。その力をダイレクトに受けたサイラオーグの方が速いのは当たり前だ。
そして、弾き飛ばされた曹操はカウンターで聖槍を突き出す。
それを裏拳で逸らし、サイラオーグは曹操の頭を掴む。
「悪いが、ヒロイ・カッシウスの禁手の範囲外だと押し切られるのでな」
そしてそのまま投げつけ、自身もビルの破片を足場にして舞い戻る。
その攻撃に対して、しかし曹操もまた冷静さを取り戻していた。
圧倒的な攻撃力を発揮するのはまさしく脅威。ましてや結果的に身体能力まで増しており、極覇龍に匹敵するレベルで危険だ。
だが、既にヒロイ・カッシウスは死にかけだ。彼さえ殺せば決着はつく。
そして、態々サイラオーグの方からヒロイに近づけてくれたのは僥倖だ。
その戦術ミスにほくそ笑み、曹操はあえてサイラオーグに背を向け、切っ先をヒロイへと向け。
「こういう勝ち方はあれだが、状況が状況だからね、死んでくれ」
そのまま、切っ先を突き出―
「―させないっすよ?」
―す前に、光力の弾丸がその切っ先を横にそらした。
聖槍の一撃はギリギリのところでヒロイからそれ、地面に突き立つ。
千載一遇の好機。それが無為に終わった。
そして、それをなしたものはヒロイ・カッシウスではない。
リセス・イドアルでもない。
兵藤一誠でもない。
ヴァーリ・ルシファーでもない。
では、誰か。
この圧倒的に離れている距離から、聖槍の切っ先に正確に当てて攻撃を逸らすなどという超精密狙撃を行ったものは誰か。
言うまでもない。そんな事が出来るのは、ただ一人。
「ペト……レスィーヴぅううううううう!!!」
憎悪すら込めて曹操は睨み付けるが、しかし時既に遅し。
そして、その行動は致命的な隙だった。
「捉えたぞ、曹操」
その声に、曹操は自分がサイラオーグの間合いに入った事に漸く気が付いた。
そして、気づけば眼前にサイラオーグ・バアルの鋭い視線が突き刺さる。
この状況下で、あえて真正面に回り込んでからのこの体勢。
そこに呆れすら感じて曹操は苦笑し―
「これで、終わりだ!!」
―その拳を顔面に叩き込まれ、曹操は地面に叩き付けられた。
Side Out
うぉわぁああああ!?
打撃が原因で発生したソニックブームで、俺達が吹っ飛んだぁああああ!
っていうかガードが間に合ったからいいようなもんだ。余波でビルが数十棟は吹っ飛んでる。
おい、この修理費用はグレモリーとバアルで払ってくれよ!? 俺に払えとか言って来たらもれなく槍王の型だからな!? 払えねえよ俺だって!!
と、とにかく頑張って空中で態勢を整えたいが、俺ももう体が動かねえ。
あ、これ死んだな。
そう思った瞬間、吹っ飛んでる俺の体を柔らかい感触が包んだ。
「この駄娘が間に合うほどなのですから、大丈夫ですよね? ヒロイさん」
「シシーリア?」
あ、そういえばペトが狙撃をぶちかましてたな。
もしかして、急いでこっちに駆けつけてきてくれたのか?
「お姉様ぁああああ! ご無事……とは言い難いっすけど生きててなによりっすぅうううう!!!」
「あはは……。ちょっとカッコ悪いところを見せちゃったかしら?」
ペトも半泣きで姐さんを抱えている。ちょっと安心したぜ。
見れば、吹っ飛ばされているイッセーもお嬢が抱えていた。ヴァーリも美候達がフォローしてる。
ってことは、向こうも決着がついたのか?
俺はそんな事を期待するが、お嬢の表情には険しいものがあった。
「……ごめんなさい。ここまで押し切られてしまったわ」
その言葉に視線をサイラオーグさんの方に向ければ、その足元に曹操の姿はない。そして、サイラオーグさんも膝をつきながら前を睨み付けている。
そこには、曹操をカバーしている英雄派のメンバーがいた。
「まじかよ。
「まあ、神滅具五人がかりでそこ迄っていうならそれはそれでいいんじゃない? その程度が限界って事でしょ?」
「恐るべしはヒロイ・カッシウスの禁手か。思い切りの良さには呆れるべきか……」
三者三様に感想を漏らしながら、しかし霧に包まれて消えていく。
ここで逃がしちまうのか。できれば倒したいところだったんだが、流石にそう簡単にはいかないって事かねぇ。敵さんも強力なこって。
そんな中、血反吐を吐いた曹操は、壮絶な笑みを浮かべると俺達に視線を向ける。
「恐れ入ったよ、兵藤一誠、ヴァーリ・ルシファー、サイラオーグ・バアル、リセス・イドアル、そしてヒロイ・カッシウス」
……ヒロイ・カッシウスと曹操は俺を呼んだ。
名前で呼ばれた事なんて、そうはねえ。基本的には紛い物扱いだった。
そして、今この場であえて俺の名前を言うって事は、そう言う事なんだろう。
やべえ。ちょっと嬉しい。
それに腹が立って俺が眉をしかめていると、曹操は無理やり立ち上がって槍を掲げると、声を張り上げる。
「認めよう! 君達は俺が全身全霊をかけて倒すに値する敵だ。次に会う時まで俺もより覇光を精進させると約束しよう」
その言葉と共に、今度こそ力尽きたのか曹操は膝をつく。
それでも、曹操は力強い視線を、俺達に向け続けていた。
「それまで誰にも殺されるなよ! 君達を倒すのは、この俺だ!」
その言葉と共に、曹操は霧に包まれて消えていった。
アザゼルSide
その情報が入ってきたのは、俺達がどうしようもないので帰ろうとしたその時だった。
「……リムヴァンにハーデス。残念なお知らせがあるが聞きたいか?」
「なんだい? なんか凄い面白い展開な予感がしてきたぜぃ!」
すっごく聞きたそうな顔をしたリムヴァンに、俺はにやりと笑って告げてやる。
「イッセーの奴、生きてたってよ。グレートレッドから体作って、曹操の奴もヒロイ達と一緒にぶちのめしたらしいぜ?」
その言葉に、死神達やヴィクター経済連合の連中が目を見張る。
「……嘘だろ!? サマエルの毒を喰らったんじゃねえのかよ!?」
「ありえん……。何をどうすれば生き残ることができるのだ……」
「…………これは、流石に脅威度を修正する必要がありますね」
驚く連中の真ん中で、ハーデスに至っては持ってた杖を取り落としやがった。
『……………化け物めっ!』
その目には、明らかに嫌悪と畏怖の感情が浮かんでやがる。
ま、流石に気持ちは分かるな。
普通死んでなきゃおかしい。そんぐらい確実にぶっ殺せるような代物を投入して、あっさり復活されてりゃそりゃ悍ましいとか思うだろ。
しかもグレートレッドにどうやって会ったんだよ。どんな幸運だってんだ、主人公補正か。もうアイツ、巡り合わせの運がリアス並みに化物だな。
「ブッハッ! え、まじ? これ流石に想定外だよ。面白っ!」
リムヴァンの奴は面白がってるだけか。あの野郎、まだ余裕があるってのか?
チッ! こいつのおののく表情を見たくて教えてやったのに、効いてねえとか残念だな。
だがまあ、結局オーフィスもこっちが回収できたしな。結果的に言えば、半分こされた敵の片方がこっちに来たって意味じゃあ、こっちにとっても都合がいい。その辺で我慢するか。
そう思ったその時だった。
リムヴァンが、にやりと笑った。
「ああ、ちょうど僕達からも君達にとって都合の悪い話を手にする事ができたよ」
………なんだと?
このタイミングで、リムヴァンの野郎は何をしてやがる?
「聞かせてもらってもいいだろうか?」
「もっちろん」
サーゼクスにそう答えると、リムヴァンは指を鳴らして映像を俺達に見えるように投入する。
そこには―
『……仕事は終わったわ。ルシファー眷属は取り逃がしたけど、とりあえず一体は回収できたわよ』
『有給取らせてもらいますからね。俺としてもこれはきつかった』
『俺は楽しめたがな! ハッハァ、ワクワクが止まらなかったぜ!!』
そこには、デイア以外のイグドラフォースが映っていた。
だが、問題はそこじゃねえ。
問題は、奴らの後ろで拘束されているデカブツだ。
あれは、
「おいおい。そんなもん回収してどうする気だ?」
「決まってるじゃないか? 解析して、
ヴィーザルの問いに、あっさりとそう答えるリムヴァンの平然さがビビる。
チッ! こいつら、ここでそこまで動くってか!!
「やってくれるな。最終的には連合に所属している魔獣創造使い全員の禁手として使用できるように調整するのが望みか」
「正解さ! 流石にあんな大軍は負担がでかすぎるけど、一人一体用意できるだけでも、戦術的にも戦略的にも動きやすいだろん?」
アポロンにそう告げるリムヴァンの言葉に、俺達はこいつらを未だに舐めていたと痛感する。
この野郎。シャルバの暴走をただ傍観するどころか、それを利用して戦力拡大の下準備すらしてやがったのか!
「……ま、今日のところは見逃すさ。ハーデス爺さんには色々とお説教しなけりゃいけないしね。ぼくも忙しいんだ」
そう言い放つリムヴァンに迂闊に手が出せないんで、俺達は歯を食いしばる。
ハーデスを叩き潰す為の戦力はきちんと用意したが、ヴィクターとまで連携を取られたら流石に無理だ。見逃すしかねえ。
これから奴らは、サマエルを戦略的に運用してくるだろう。ドラゴンであるイッセー達は、今後動きづらくなるやばい事態だ。
本当に、本当にやってくれるよ、リムヴァン……っ!
俺達が恨めし気に睨み付けると、リムヴァンはをそれを気持ちよさそうに受け止める。
そして、両手を広げて楽しそうにワクワクを隠さなかった。
「さあ、君達もオーフィスの力を借りて強くなりなさいな。……僕達だって、指をくわえて待ってるわけじゃないんだからね?」
ああ、覚えとくよこの野郎。
ここで俺たちを見逃したこと、一生後悔させてやるからな……!
Side Out
サイラオーグの場合はシンプルな筋力強化。どこまでもよって殴ることに特化した強化ですが、問題なのはその出力。
当然シャレにならない攻撃力であり、はっきりいて覇獣に匹敵します。ついでに重ね掛けできる予定です。そうなった場合はもうどうなることやら。
そして、ペト、遅れながらも到着。
しっかり大活躍をしました。ホントに狙撃に関しちゃ有能やでこの子は
そんな中、ちゃっかり戦果を獲得したヴィクター経済連合。
超獣鬼という魔獣創造の究極ともいえるサンプルは、ヴィクターにとって値千金です。ジークフリートという一線級の戦力こそ失いましたが、なんだかんだで利益をもぎ取ってきます。
まだまだこの戦い、激化していくのでお楽しみください。