ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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そんなわけで、現在食事中のヒロイたち。

そして、ヴァーリの過去がまた紐解かれます。


第五章 37

 

 そんなこんなでピッツァが届き、更に俺達はスパゲッティを注文する。

 

 とりあえずはこんなもんでいいだろ。

 

 さて、飯にするか。

 

 ヴァーリチームも飯時に問題を起こすつもりのないのか、普通に飯を食っている。

 

 睨み合っているペトとルフェイも、飯はきちんと食べている。お行儀悪いから睨み合うの止めなさい。

 

 で、この状況下で食ってないのは……。

 

「………」

 

 ヴァーリだけが、ぼんやりとスパゲッティをつつきながらボケっとしていた。

 

「おいおい。お前麺類好きだろ? なにぼさっとしてんだよ? あのおばさんに惚れでもしたかぁ?」

 

 美候がからかうが、ヴァーリは返事をしなかった。

 

 おい、コレ、重傷だろ。

 

 なんだこれ。今までのヴァーリとは全然違うっつーか、別もんだな、オイ。

 

「……まさか、本当に年上趣味か?」

 

 俺は恐る恐る聞くが、しかしヴァーリは首を振った。

 

 だ、だったら一体何なんだ!?

 

「……母だ」

 

 ぽつりと、ヴァーリはそう言った。

 

 母?

 

 おかあさん? マミー? マーマ?

 

 そうか。母親か。

 

 …………。

 

「「「「は?」」」」

 

 俺とペト、美候と黒歌の声がハモった。

 

 その視線を浴びて我に返ったのか、ヴァーリは少し表情を暗くしながら、はっきりと言った。

 

「あの顔は忘れない。彼女は、俺の母親だ」

 

「……そうだったんですか、ヴァーリ様!?」

 

 ルフェイが思わずフォークを取り落とすぐらい驚いた。

 

 当然だろ。こんなヨーロッパの片田舎で、ヴァーリのお袋が出てくるとか誰も考えねえよ。

 

 おいおいおいおい。なんで妾とか愛人程度の待遇だろうたぁいえ、旧魔王血族の奴の女がこんなところにいるんだよ!?

 

「待ってください。その割には、彼女はヴァーリを見ても無反応だった気がしますが」

 

 あ、そういやそうだ。いいとこ気づくなアーサー。

 

 そうだよな。生き別れの息子と再会したなら、もうちょっとこう……なんかリアクションがなくね?

 

「おそらく記憶を消されているのだろう。旧魔王が戯れにとは言え子供を産ませた女だ。あまりしゃべられては困る情報も知ってしまっただろうしな」

 

 な、なるほど。殺されてねえだけ恩情ってやつか。

 

 いや、たまげたなぁ。

 

 そういや、ヴァーリは親父からは虐待されてたんだよな。そんな事を聞いた事がある。

 

 確かお袋さんが作ってくれたパスタだけが唯一の楽しみとかいう生活だとか言ってたな。

 

 ……あれ? これ冷静に考えるとマザコンこじらせてもおかしくなくね?

 

 俺はそんな事を思ったが、口には出さない。

 

「なあヴァーリ。黒歌やルフェイなら、その記憶取り戻せるんじゃねえかぃ?」

 

 美候がそんなこと言うが、ナイス発言だ。

 

 そうだ。最上級悪魔クラスの術者な黒歌なら、そういった方面でも腕はいいかもしれねえな。ルフェイも凄腕だし何とかなる可能性はある。

 

 最悪、うちのお人好しなトップ人に頭下げてもらえば何とかなるだろ。流石に小物だらけの旧魔王派の記憶制御何てどうとでもできるはずだ。やりようはある。

 

グリゴリ()に連絡するッス。そう言う事情ならアザゼル監督もシェムハザ総督も動くと思うッスよ!」

 

「ペト、やるわね。……良かったじゃないヴァーリ」

 

 ペトもナイスタイミング。俺と同じ判断したな。

 

 姐さんもそれにほっとして笑みを浮かべる。

 

 だが、ヴァーリは首を振った。

 

「いや、それはしなくていい……止めてくれ」

 

 へ?

 

 俺達はぽかんとするが、ヴァーリは視線をさっきの交差点に向ける。

 

「お前達も見ただろう? あの子供達を」

 

 ああ、あの子供達か。

 

 確かにヴァーリのお袋さんが母親っぽかったな。

 

 って待て。それってつまり、ヴァーリのお袋さんは旦那がいるって事にならねえか?

 

 俺がそれに思い当たると、ヴァーリが苦笑を浮かべる。

 

「そう言う事だ。……今更現れて、俺は貴方の前の夫の息子だなどと言えるものか。彼女を、これ以上俺の事情に付き合わさせるのは不本意だ」

 

 ヴァーリははっきりそう言うと、スパゲッティを食べ始める。

 

 確かに、そんな事いきなり言われても、正直戸惑うよな。

 

 しかもヴァーリはテロリストやってたんだ。お袋さんにとっても良い事じゃねえし、今の夫との間の関係にいざこざが生まれかねねえ。

 

 ……身から出た錆だとは思うけどな。それでもまあ、ちょっとは同情するぜ。

 

 そんな事を思いながら見る先、ヴァーリは、スパゲッティを食べるとうんうんと頷いていた。

 

「やはりスパゲッティはいい。……あの頃の、唯一の楽しみを思い出す」

 

 その言葉に、俺達は何も言えなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、なんとなくヴァーリチームは町中を探索していた。

 

 で、俺達は一応監視していた。

 

 まさかヴァーリも、あんなこと言わせるぐらい大事なお袋さんの住んでる町でいらん事はしないだろう。ここには強者は俺達しかいないんだから、万が一の時は俺達が「場所変えろ」とかいやすむだろうしな。

 

 つっても、現段階においてヴィクターからも追放されたヴァーリチームはテロリストみてえなもんだ。監視しないってわけにもいかねえだろ。

 

 だからって通報するのもあれだ。近年ヴィクターにいいようにやられて苛立ち気味の現政権側がこんなこと知ったら、場合によっちゃ血気盛んな奴が戦力送り込みかねねえ。そうなったら余計なトラブルを生みかねねえからな。

 

 ……最悪の場合、一部の連中がヴァーリのお袋さんを確保してヴァーリに対するカードにするかもしれねえ。

 

 だから、今はペトがアザゼル先生に緊急報告中だ。更にこっそり黒歌と美候が仙術でステルス駆けながらお袋さんの家を発見してこっそり様子を見ている。

 

 とりあえず、確実に穏健派のアザゼル先生達経由で護衛をつけてもらわねえとな。他の勢力が動く前に、突っぱねる言い訳を作らねえと。

 

「……ヴァーリ、結構気にしてるようね」

 

「そうですね。あんなヴァーリさま、初めて見ました」

 

 ぽつりと呟いた姐さんの言葉に、ルフェイが頷いた。

 

 だろうな。俺はちょっと似てる表情を見た事あるけど、あれは俺しか見てねえしな。

 

「ヒロイは知ってた?」

 

「概要ぐらいは前に奴から聞いた事がある。……嫌味言ったら地雷踏んだんでちっとばかし気が引けたな」

 

 姐さんにそう答えながら、俺はその時の事を思い出す。

 

 以前、俺はイッセーの両親を殺すと言った奴の事を、イッセーに嫉妬してるんじゃねえかと言った事がある。

 

 まあ、真っ当な親ってもんを知らねえ俺からすれば、覗きの常習犯なんつー真似やらかしながら、それでも良いところもきちんと見て愛情を注いでくれるあの両親がいる事は羨ましくも思う。

 

 まあ、そういう意味じゃあヴァーリも少しは羨ましいな。

 

 ……片親だけとはいえ、きちんと愛情注いでくれてるんだからよ。

 

 だけど、その片親もその事を完全に忘れて、別の子供に愛情を注いでいる。

 

 これ、ヴァーリからしたらどんな感じなんだろうな。

 

 ……変な事しないだろうな。いや、あいつの性格なら意味のない弱い者いじめとかはしねえだろうが、ことがことだから暴走するって事は考えられる事もあるよな。

 

 一応、念の為様子を見てみるか。

 

 そう思って念の為に一歩近づこうとして―

 

「―お姉様ぁあああああ!!!」

 

 ペトが、全力でこっちに走ってきた。

 

 みりゃ、黒歌と美候も走って来てる。

 

「どうしました? 今ヴァーリは繊細な心境でしょうし、少し静かにしてもらえると嬉しいのですが―」

 

「んなこと言ってる場合じゃないぜぃ!!」

 

 たしなめようとしたアーサーの言葉を遮って、美候が声を上げる。

 

 なんだなんだ? なんだよいったい。

 

 黒歌が姐さんの方に顔を向けて、離れたところを指さした。

 

 ん? あっちに何かあるのか……ってまさか!!

 

「どうやら、捧腹の奴見つかったみたいよ。それも現地のヴィクターと組んでない反和平派とつるんでたみたい」

 

「本当に? まだそんなのが残ってたのね」

 

「そうにゃん。で、更にヴィクターの連中もどこで嗅ぎつけたのかフェンリスヴォルフを奪おうと発見した連中とやり合ってるそうよ」

 

 姐さんとそう言葉を交わし合った黒歌は、即座に術式を展開すると、近くの池に手を触れる。

 

 そして、その水面がここじゃないどこかの景色を映し出した。

 

「そう言うわけで急ぐわよ。……どうやらヴィクターの連中、相当上位の死神を送りこんでるみたいだから」

 

 ……え、マジで?

 




ついに本格的戦闘がスタート。

さてさて、ヴィクターの戦力は誰が出てくるのやら。
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