ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
さて、ヴィクター側から出てきた戦力は、いったい誰なのか。
即座に転移して戦場の近くにくれば、既にもう激戦だった。
ヴァルキリーと死神の激闘が繰り広げられ、現地の悪魔祓いがドーインジャーと切り結ぶ。
おいおい。小競り合いってレベルじゃねえだろ。これは本格的な戦争じゃねえか。
くそ! いくら秘匿する必要がなくなったからって、ここまで派手に動くか!!
「あれ? 捧腹は何処っすか?」
ちょっと据わった眼で、ペトが捧腹の居場所を探している。
ああ、狙ったわけじゃないたぁ言え、ソウメンスクナを差し向けられたもんな。割と腹立ってるのは当然か。
さて、それで捧腹の奴は何処だ?
とりあえず襲い掛かってくる死神達をボコりながら、俺達は捧腹の姿を探す。
ついでに、現地のテロ勢力っぽい連中も容赦なくボコっておく。万が一協力者だとあれなので、半殺し程度にしておいた。
で、どこだ?
「いかに雑兵とは言え、物のついでで仕留めるとは。強くなっていますね」
「闘いがいがありそうだぜぃ。あとでちょっとやりあってくれねえかねい」
後ろでアーサーと美候が妙なこと言ってきやがるが、それはスルーだ。
終わったらどうしようとか 、今はあえて考えねえようにしとかねえとな。
だが、肝心の捧腹の姿がどこにも見当たらねえ。
くそ、あいつ逃げやがったか? フェンリスヴォルフまで持って行かれると、流石にまずいんだけどよ。
仕方ねえ、美候と黒歌に探させるか。あいつ等なら前にやり合った事もあるし気で探知できるだろうよ。
そう思ったその時、俺は真上から殺気を感じた。
……新手か!
「誰!?」
代表して姐さんが問い質す先、そこにいたのは普通の死神よりも豪華な鎌を構えた、髑髏の面をした死神がいた。
何もんだ、こいつ! 下手すりゃプルートより格上だぞ!!
『顔を合わせるのは初めてだな。私は最上級死神のタナトスという』
タナトス!? って言うと、確か死神の中でもバリッバリの武闘派じゃねえか!!
ハーデスの側についた九割強の死神の代表格だってのは知ってるが、まさかここで来るか。大物すぎるだろ。
「ほう? プルートの仇討ち……というわけでもなさそうだな」
『無論だ。そもそも、ここに白龍皇まで来るとは思わなかった』
挑発的なヴァーリに、余裕をもってタナトスは応じる。
おいおいマジかよ。いくらフェンリスヴォルフがあるからって、最上級死神を現地指揮官に投入するか、オイ。
俺らが呆れていると、タナトスから苦笑の気配が伝わってくる。
『我々のヴィクター経済連合での序列は最下位からの始まりなのでな。悪魔や堕天使の派閥より上に行く為、積極的に仕事を引き受ける他ないのだよ』
なるほどな。
シャルバに曹操の動向を伝えた上で、オーフィスの毒まで提供したのはヴィクターでも相当お冠ってわけか。
そりゃ最下位からスタートにもなるわ。ハーデスの奴、いい気味だ。
それで序列を上げる為に涙ぐましい努力を積んでるってか? ご苦労さんなこって。
「自業自得よ。生まれて間もない子供に老人の恨みつらみを叩きつけたんだから、大義もへったくれもないわね」
『中々小うるさい娘だ。だが、敵ならそれぐらいがちょうどいい』
姐さんの皮肉を軽く受け流しながら、タナトスは鎌を構えた。
心なしか、その表情は楽しそうだ。
『プルートを屠った白龍皇の新たな覇。その頂点との戦いは、死んだとは言えプルートも堪能したことだろう。……私にも味合わせてもらえるかな?』
しかもバトルジャンキーの気があるな。っていうか、プルート羨ましがるか、普通。
瞬殺されたんだから、プライド崩れまくりでむしろ無念がありまくりだと思うんだけどよ。いや、全力を叩き込んだ上での敗北ならまあ納得も行くか?
まあとにかく、今のところ俺らにとって迷惑な事に変わりはねえ。
冥府は序列ではヴィクターで最下位だろうけど、その戦力はヴィクターでもかなり上位だろう。間違いなく警戒度の高い勢力だろうよ。
そんなところの有力幹部がこんなところにのこのこ出てきた。しかも、こっちには強い奴と戦いたがっているヴァーリチームが揃ってる。
このチャンス、逃せねえ。ここで敵将の首を討ち取って、ヴィクター相手に精神的に有利に立ってやる。
俺達がそう決意したその時、まさにそのタイミングで通信が繋がった。
『……緊急連絡! 捧腹の移動を確認!!』
捧腹!? 見つかったのか!
それでどこだ? どこに居やがった?
『捧腹は進行方向を薙ぎ払いながら、最寄りのアースガルズの施設に向かって侵攻中! 予測ルート、出ます!!』
その言葉と共に、俺達の脳内に情報が転送される。
そして、俺達は寒気を感じた。
「……おい、あの町がルートの上にあるじゃねえか!?」
美候が大声を上げるのも無理はねえ。
捧腹の進行方向には、あの町がある。
しかも思った以上にあたりをぶち壊しながら捧腹は進んでる。このままだと相当に被害が出るぞ!?
『ふむ、位置取りからしてこちらは追撃困難か。なら可能な限り敵の精鋭を討ち取って功績を上げるべきだな』
しかもタナトスも切り替えが早い。
追撃が困難だと分かるったら、すぐに他の方法で成果を上げようとしてやがる。
「……くそっ」
歯を食いしばって、ヴァーリがそう漏らす。
……それと同時に、ヴァーリチームが動いた。
全員が、ヴァーリとタナトスの間に立ち塞がる。
「ヴァーリ様、行ってください」
「ルフェイ、お前達……」
ルフェイの言葉にヴァーリチームの全員が頷き、ヴァーリが呆気にとられる。
その肩を、姐さんがぽんと叩く。
「行ってきなさい。どっちにしても、母親を気にして戦えないならタナトス達を倒すのは無理でしょう」
「リセス、お前まで……」
ヴァーリが何かを言いかけるより早く、姐さんはタナトスに鋭い戦意の籠った視線を向ける。
そしてタナトスの周りにも、上級らしき強そうな死神が何体も現れていた。
こりゃ、敵に主力は俺達をターゲットに選んだって事か。
「相手が私じゃ不足かしら? これでも、
『面白い。戦意の削がれた白龍皇よりは、戦いがいのある相手だろう』
タナトスも乗り気になったところで、これで何の問題もねえな。
「ヒロイも行くっす。フェンリスヴォルフ込みの捧腹を被害なしで抑えるのは、ヴァーリだけでも難しいっすよ!!」
OK、ペト。そう言う事ならお言葉に甘えるぜ!!
「行くぜヴァーリ! 今は自分のお袋さんのことだけを考えろ!! 町全体のガードは俺がやる!!」
「……お前達、恩に着る!!」
その言葉と共に、ヴァーリは全力で飛ぶ。
俺もそれに魔剣に乗って追随して、戦線から急いで離れた。
待ってろよ捧腹。お前の恨みつらみの為に、堅気の連中を巻き込ませたりはしねえからよ!!
Other Side
捧腹は、全力で森林を飛んでいた。
目当ての物は手に入った。力にする方法も実行した。
ならば、次はそれを使って目的を果たす時だ。
もはや日本とアースガルズの和平は止められない。そして、ヴィクターは自分を取り込む気はないだろう。
技術が優れている自信はある。だが、ロキと行動を共にしていたという事実が、ヴィクターでは足を引っ張るはずだ。
ノイエラグナロクからの心象が悪い以上、自分の意見をヴィクターで反映させる事は困難だ。下手をすれば、暗殺される可能性すらある。
なら、自らの力で北欧の神々にあの子達の怨念を叩きつけるだけだ。
既にロキのパイプを利用して、協力者を手に入れる事には成功している。今回の戦闘で大半が失われたが、然し自分とフェンリスヴォルフの価値があれば、残りをとっかかりにして新たに集められるだろう。
ゆえに、先ずは一番近くにある北欧神話の施設を挨拶代わりに叩き潰す。
全力で低空を飛行している為、ソニックブームで多少の被害はある。しかしそれを気にする気にはない。
既に、長い怨念で自分は壊れているのだろう。
だが、それでいい。
もはや和平が止まらないのならば、あとは自分の想いのままにこの怨念を叩きつけるのみ。
その決意を込めて捧腹は空を舞い―
「―待てやこらぁ!!」
その言葉に振り返り、捧腹は舌打ちを返した。
よりにもよってここで、想定以上の強敵が出てきてしまった。
ヒロイ・カッシウスとヴァーリ・ルシファー。
三大勢力の手駒と、ヴィクターを追放された放浪者が、手を組んで追撃を仕掛けてくる。
このままでは追い付かれる。どうやら迎撃に映るしかないようだ。
捧腹はそれを覚悟すると、一旦地面へと降り立った。
Side Out
一からやり直すしかないので、地道に頑張っている冥府陣営。下っ端がやる仕事にすら幹部クラスを投入して、全力で頑張ってます。
そして、捧腹の相手はヒロイとヴァーリ。
ですが、捧腹も送還にはやられません!