ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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ざっと200kbほど書き溜めちまったぜ。我ながら速筆だな。






それはともかく、題名に関してはニエのパターンを想定していただければいいかと。

それは、誰かを想う以上に誰かを恨む、ごく普通の人間の怨念。


第五章 39 普通の怨念

 

 

 よっし間に合った!!

 

 俺達は舞い降りた捧腹を見下ろすと、お互いに視線をまっすぐに捧腹にぶつける。

 

「捧腹、上からの依頼だ。あんたを殺してでも止める」

 

「悪いが、そこから先には進ませられない。それだけは何が何でも阻止させてもらう」

 

「ふむ、まるでこの先に何か大切なものがあるかのような物言いだ」

 

 ……ヴァーリ。うかつだぞ。

 

 捧腹の奴、もう何かに気が付いてやがる。

 

 流石は外法研究の第一人者。頭の回転は速いに決まってるか。

 

「安心するがいい。余波で被害を出す事こそあれ、むやみやたらと怨恨を振りまく気はない」

 

「信用できんな。都心の真ん中でソウメンスクナを展開した貴様では説得力がない」

 

 ヴァーリは捧腹の言葉を切って捨てる。

 

 いや、確かにそうなんだが、自分が歯応えのある相手と戦いたいからってイッセーの両親殺そうとしたお前が言うかよ。

 

 俺は少し半目になるが、気を取り直して捧腹を警戒する。

 

 そして、報復もヴァーリの言葉を鼻で笑った。

 

「そんなところで会議していたそちらにも問題がある。私は無意味な犠牲は嫌いだが、それに拘り過ぎて目的を見失う事もしない」

 

 そうかい。まあ、ある種の正論だわな。

 

 だが、それでも―

 

「アンタの狙いの施設は市街地のど真ん中だ。そんなところでフェンリスヴォルフを暴れさせたりなんて、できるわけがねえだろうが」

 

 俺は聖槍を突き付けるとともに警告する。

 

 これを無視するなら、殺す気でいくしかない。

 

 そして、こんな言葉で止まるなら、ロキと手を組んでまで和平を妨害するわけがない。

 

「そうか。なら止めてみるがいい」

 

 その言葉と共に、捧腹は懐から一振りの短剣を取り出した。

 

 たしか、匕首ってやつか? なんでこんなところに―

 

 そう思った瞬間、その匕首が光り輝いた。

 

 閃光弾の代わりか? いや、それにしては光が強くない。

 

 一瞬だがいぶかしんだ俺達だが、その時間で十分だった。

 

 気づけば、そこには狼を模した鎧を身に纏った捧腹の姿があった。

 

「そちらの堕天使総督の龍の鎧を参考にさせてもらった。やはり復讐は自分の手で果たしてこそだと思わないかね?」

 

 その言葉と共に、神速で捧腹は迫り、十束剣を振り回す。

 

 俺とヴァーリはそれをかわすが、それにしてもかなり速いな。

 

 正真正銘神速と言ってもいいスピードだ。単純な戦闘能力なら、鎧を纏ったヴァーリよりも上なんじゃねえか?

 

 だが―

 

「その程度か? フェンリスヴォルフというのも大したことはないな」

 

 ヴァーリは、残念そうな、それでいてほっとした声色でそう言った。

 

 確かにな。全盛期のフェンリルはヴァーリですら覇龍必須の代物だった。

 

 だが、フェンリスヴォルフを使用したあの鎧は、精々が通常時の鎧のヴァーリクラス。明らかに性能が低い。

 

 ヴァーリ一人なら日本製の聖剣である十束剣もあって苦戦しただろう。だが、生憎ここには俺がいる。二対一なんだよ、これは。

 

 はっきりいやぁ、この状況は俺達が有利だ。これなら槍王の型も極覇龍も使わずに勝つ事ができるだろうしな。

 

 なのに、報復は余裕の表情を崩さない。

 

「ふむ、ならこれでどうだろうか?」

 

 その言葉と共に、報復は球体の小さな宝石みたいなものを取り出すと、それを地面に投げつける。

 

 ……ドーインジャーの結晶体か? いや、形状が少し違うな。

 

 なんだ、いったい?

 

 俺達が警戒していると、その結晶体は強くオーラを放って、人間サイズの人型に変化する。

 

 まるで龍を模したその姿は、イグドラヨルムにどことなく似ていた。

 

「失敗作の量産型ミドガルズオルムを利用したものだ。むしろ私としては、彼らによって復讐をなすべきだと考えていてね」

 

 その言葉と共に、報復は人型ドラゴンと共に攻撃を開始する。

 

 放たれる攻撃を裁いたり躱したりする俺とヴァーリだが、その体にはかすり傷が少しずつ増えていく。

 

「言い忘れていたが、複数体掛け合わせているので量産型ミドガルズオルムより強力だ。そう簡単に倒せるとは思わないことだな」

 

「なるほど、少しは楽しませてくれる!!」

 

 ヴァーリがオーラを放って強引に吹き飛ばそうとするが、人型ドラゴンはそれを耐えきって、体勢を立て直す。

 

 チッ。こいつら、思ったより強いな。

 

「彼らの復讐の邪魔をしないでくれ。彼らにはその権利があるとは思わないかね?」

 

 捧腹の言いたいことはわかる。

 

 アースガルズの過剰反応が原因で起きた小競り合いで、捧腹が育てていたも同然の子供たちは殺された。

 

 それに対する恨みがあるのはわかる。落とし前をつけるべき案件なのも分かる。

 

 だが、それにしたって限度はあるはずだろう。

 

 あれは不幸な行き違いだって話だ。全部が全部アースガルズが悪いってわけでもないだろう。

 

 それも、和平が行われたことで正式に謝罪や賠償を行うことだってできるはずだろ。

 

「……なんでだ。なんで血が流れる復讐にこだわる!! オーディン神の性格なら、謝罪と賠償を引き出すことだって不可能じゃねえはずだ!!」

 

 少なくても、同じような罪のない子供を増やすような真似はしていいわけがねえ。

 

 その言葉に対して、報復は―

 

「……何か、勘違いをしているな」

 

 ―ため息をついて、あきれ果てた。

 

 なんだと? 何が勘違いだっていうんだ。

 

 きれいごと言ってるのはわかってる。俺だって姐さんを理不尽に殺されたら、どうなるかなんてわからねえ。

 

 だがよ、それでもここまでする必要が―

 

『―痛い』

 

 声が、聞こえた。

 

 どこからともなく、声が聞こえた。

 

 俺は、その声を聴いた瞬間寒気を感じた。

 

 空気が冷えているとかそういうことじゃねえ。単純に感覚的に寒気を感じた。

 

 そしてこれを、俺はよく覚えている。

 

 これは、亡霊だ。

 

 亡霊が、声を放っている。

 

『―熱いよ、おじちゃん』

 

『―痛いよ、おじちゃん』

 

『―辛いよ、いやだよ』

 

『―なんで、こんな事されるの?』

 

『何も悪いことしてないのに。おじちゃんに言われたとおりにいい子でいたのに』

 

 次々と放たれるその言葉は、怨嗟の声だ。

 

 理不尽によって死に至った者たちの、その末期の苦しみだ。

 

『―許さない』

 

『―もう怒った』

 

『―ぶってやる』

 

『―叩いてやる』

 

 そして、その声はただ報復を望んでいる。

 

 純粋なまでの子供の怒り。

 

 無垢なる子供が叫ぶ、嘘偽りのない怨嗟の叫び。

 

 その声を背に、捧腹は俺たちを嘲笑う。

 

「反魂法を研究する私が、あの子たちの声を聴こうとしなかったとでも? ……聞いたから、ここに至るまで前をすすむことができたのだろうが!!」

 

 そう一喝すると、さらにその声は響き渡る。

 

『―邪魔しないで』

 

『―お前、あいつ等の友達なのか』

 

『―お前が叱らないから……っ!』

 

 殺意のオーラを全力で垂れ流しながら、人型ドラゴンは俺たちをにらみつける。

 

 俺は、一瞬だが確実に気圧された。

 

『『『『『『『『『『―許さないっ!!』』』』』』』』』』

 

 そして、放たれた攻撃が俺たちを飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その攻撃をもろに喰らってしまったのは、ヴァーリとしても失態だった。

 

 喰らえば危険だということはこれまでの経験則から理解できた。そして回避そのものは、そこまで言うほど難しくない。オーラを出して防御する程度のことなら、ほぼ確実にできただろう。

 

 だが、明確に反応が遅れてしまったのは、簡単だ。

 

 ほんの一瞬、ほんの一瞬思ってしまったのだ。

 

 もし自分が、神の子を見張るもの(グリゴリ)に拾われなかったら。そのまま浮浪児のままだったら。そして、そのまま死んでしまったら。

 

 自分もまた、あの者達と同じようになっていたのではないだろうか、と。

 

 仮定の話でしかない。だが、可能性は十分にある。

 

 当時の現悪魔政府にとって、旧魔王の末裔とは目の上のタンコブだ。こと大王派にとってしてみれば排除したい存在である。しかも、それが神滅具を保有している。

 

 そんなものは危険以外の何物でもない。四大魔王はともかく、大王派は確実に処分に動くだろう。

 

 天界からしてもそうだ。神が作り上げた神器の、その究極が悪魔に使われている。それも、魔王の末裔というとんでもない存在にだ。

 

 これまた排除の対象だろう。セラフはともかく、教会の者達が和平前に知れば殺しに来るのは隔日だ。

 

 ……そんな自分がもし本当にそうなったら。父親と祖父から逃げ出した自分が、それでも何も掴む事なく死んでしまったら。

 

 ……あそこにいるのは、自分だったかもしれない。

 

 それが、隙を作り吹き飛ばされた。単純な理由だ。

 

 まったくもって情けない。史上最強の白龍皇が、この程度のIFに足を引っ張られるなどと。

 

『……動けるな、ヴァーリ』

 

「ああ、大丈夫だアルビオン」

 

 相棒に応え、ヴァーリは立ち上がる。

 

 既にヒロイ・カッシウスは復帰して戦闘を再開している。思った以上に頑丈な男だと感心する。

 

 しかし流石に一対多数では苦戦しているようだ。流石の聖槍使いといえど、あのレベルの敵が複数仕掛けてくれば苦戦するのだろう。大技を放つ隙も無い。

 

 だから、すぐにでも援護に行かなければならないだろう。

 

 そう思って前に出ようとして―

 

『―ヴァーリ』

 

 アルビオンが、声をかける。

 

 この状況で、無意味なことを言う手合いとは思えない。それ位には付き合いは深いし長い相手だ。

 

 だから、其の声に耳を傾ける。

 

『一度後ろを振り向くといい』

 

 その言葉に従って、後ろを振り向く。

 

 そこには、森と山が広がっている。

 

 そして、見えないがその先にはあの町がある。

 

 そして、その町にはあの女性がいる。その子供達がいる。その父親にして夫がいる。

 

『もし捧腹との戦闘が長引いて、町への接近を許せばどうなるか、考えろ』

 

 言われたとおりに考える。

 

 その光景を、想像する。

 

『どう思った?』

 

「決まっている。……絶対に認められない」

 

 ああ、そうだ。

 

 あの時自分を愛してくれた、大事な女性。

 

 いつも自分のことを守れなかったことを悔やみ、そして涙すら流していたこともある大切な女性。

 

 だが、今彼女は夫と子供を持ち、幸せな毎日を送っている。

 

 彼女が、自分の不手際で新たに悲しみを得る事など、断じて認められない。

 

『その感情を忘れるな。……そういう手合いは、強い』

 

「ああ、よく知っているよ」

 

 宿命のライバルである、赤龍帝の兵藤一誠を思い出す。

 

 彼もまた、大切なものを守る為に力を引き出す事ができる存在だった。そしてその拳は確かに強烈だった。

 

 元々のスペックでも、年季でも、技量でも自分が上だ。文字通り自分は兵藤一誠の上位互換だった。

 

 それでも、あの一撃はとてもよく効いた。

 

 隙を見せてしまった事は認める。作戦に見事にはまってしまった事も認める。そして龍殺しの力もあった。

 

 だが、あの拳の重さはそれだけでは断じてない。

 

『捧腹は失ったがゆえに前に進めた者だ。重荷がないからより早く進めるのは当然だ。歴代の白龍皇にも、そういう手合いは数多くいた』

 

 なるほど真理だ。

 

 足を引っ張るものがなければ、それだけ有利に立ち回れる。子供でも理解できるごく単純な理屈だ。

 

 ……だが、兵藤一誠はそうではない。

 

『兵藤一誠は失ってはならないものがあるゆえに強いものだ。そういう者達は皆例外なく敬意を払うべき者達だ』

 

 そう。そう言う強さも存在するのだ。

 

 守るべきものがあるからこそ、それを失いたくないと思うからこそ、強くなろうとして実際に強くなる。

 

 思えば、自分を倒した匙元士郎もそういう手合いなのだろう。なんだかんだで兵藤一誠と似通っている男だとふと思った。

 

『お前はどうする、ヴァーリ?』

 

 その問いかけに、ヴァーリは答える。

 

「俺は、兵藤一誠のようには成れない」

 

 それは当然だ。そもそも性質が違う。

 

 自分の仲間と兵藤一誠の仲間を見れば簡単に分かる。

 

 正道を往く者達とはぐれ者。類は友を呼ぶと兵藤一誠の国では言うらしいが、まさにその通りだ。

 

 無辜の民を、万人を守る正義の味方。そんなものにはあまり興味がないし、性分でもない。自分には不可能だろう。

 

 だが、そんな自分にも、守りたいものぐらいはある。

 

『……それを忘れるな、ヴァーリ。そもそもお前は、()()達を害そうとする者達を倒す為の力を求めて、覇に手を染めたのだろう?』

 

 過去の話を掘り返されて、ヴァーリは少しむっとなった。

 

「毒龍皇と呼ばれることを何より嫌うお前が言うか」

 

『……先に振ったのは私だが、それは言うなと言っただろうに』

 

「お互い様だ」

 

 何ともなしに、どちらともなく苦笑が浮かぶ。

 

 そして、すぐにそれは好戦的な笑みに変わった。

 

「まあいい。フェンリルを下した、魔王の末裔たるこの俺が、デッドコピー如きを手にした鬼風情に好きにされるわけにはいかないな」

 

『今はそれでいいさ。お前はそれでも充分強くなれる』

 

「……だべってないでそろそろ援護しろや、お前らぁ!!」

 

 いい加減一人で対応する羽目になっている事に、ヒロイ・カッシウスがキレて文句を言ってきた。

 

 このまま三つ巴になだれ込むと、後ろの町に危害が及ぶだろう。そろそろ行かねば。

 

「では、すぐにでも終わらせるとするか」

 

『ああ。神喰狼の模倣といえど、最強の白龍皇を敵に回してただで済むわけがないと思い知らせてやれ』

 

 その言葉を背に、ヴァーリは再び戦闘を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out




よく、「死者が望むのは遺した者の幸せだけ」という言葉があります。

でも、それを言うのは、基本的に人から立派といわれるような人物だけです。











はたして、普通に人を憎めるし嫉妬できるただの人間が、それだけを想えるものなのだろうか。

ニエとあの子たちは、そういう思想を基に作られています。
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