ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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罪は罰を

悪には裁きを、

理不尽な行いには、それに見合った報いを。

それが、普通の人が普通に思う当たり前の因果応報。








そして、普通の人は自分が善の側だと無条件に思いたがる生き物。

そして、正義という大義名分があれば、何だってできる残虐性が人の中にはある。









このエクストラマッチな番外戦は、そういうことを指摘するのも込めてました。

あれです。何事もやりすぎはよくないし、正義を名乗るのなら自分が本当に正義か問い続けなければいけないということです。


第五章 42

 

 リセス・イドアルは激戦をしている自覚があった。

 

 最上級死神の中でも屈指の武闘派であるタナトス。そして、それに率いられる精鋭の上級死神。

 

 激戦は激しく、お互いにボロボロになりながらも誰一人として死者が出ていない状況。単純にいえば膠着状態だった。

 

 そしてその膠着状態を崩すのは、自分達ではない。

 

『……ふむ、そうか。ご苦労だった』

 

 どこからか通信を聞きつけ、タナトスは軽く肩を落とす。

 

 そして、構えていた鎌をかき消した。

 

『捧腹が討たれた。撤収するぞ』

 

『『『『『『『『『『ハッ!』』』』』』』』』』

 

「逃げる気!?」

 

 リセスは追撃するかどうか躊躇する。

 

 最上級死神の中でも、更にその上位に位置するのがタナトスだ。勝算のあるこの状況下で、倒しに行かないのは将来的にまずい。

 

 だが、今のリセスでは文字通り死力を尽くしても届くかどうか分からない相手でもある。

 

 ニエとの決着をつける前に、命を投げ捨てるような真似をするのは躊躇を生む。

 

 そして、その躊躇が相手の逃亡準備を完了させてしまった。

 

『我々も確固たる地位を得る前に戦力を失うわけにはいかないのでな。煌天雷獄(ゼニス・テンペスト)禁手(バランス・ブレイカー)で物理的破壊力最強の亜種を生み出した貴殿には興味があるが、これ以上の戦闘は我々も望まんよ』

 

 そう言いながら、タナトス達は転移の光に包まれる。

 

 ここからの追撃はリスクが大きすぎる。下手をすれば、敵陣営のど真ん中で孤立するなどという可能性すらあった。

 

 追撃は不可能。これが、転移を多用できる異形の戦いの現実だった。

 

『縁があればまた相まみえよう。私も、貴殿とは心置きなく戦いたいのでな』

 

 などと戦闘狂のような言葉を残して、タナトス達は転移していく。

 

 どうやら既に他の死神達も撤退をしているらしい。戦闘の音が止んでいた。

 

「とりあえず、捧腹の方はヴァーリか聖槍使いが片付けたのかねぃ」

 

「みたいっすね。やっぱヒロイ達は凄いっす」

 

 戦闘で疲れた体を伸ばしながら、美候とペトがそう感想を漏らす中、リセスは息を吐くとスポーツドリンクを取り出す。

 

 激戦でかなり汗をかいた。水分補給は必須だろう。

 

「あなた達も飲みなさい。共闘の報酬に奢ってあげるわ」

 

「ずいぶん安上がりね。もうちょっと金を注ぎ込みなさいよ」

 

 黒歌に文句を言われるが、しかしそれはそれとして飲んではいる。

 

 色々と言いたい事はあるが、とりあえず戦闘は終了した。

 

 捧腹そのものは無力化できたようだ。フェンリスヴォルフもあの様子ではヒロイ達が確保したのだろう。

 

 本来の目的は達成できた。むしろ、自分達が派遣されている間に解決できたのは期間的な意味で好都合だ。

 

 これで、冥界は魔獣騒動の傷跡を癒す事に集中できる。余計な人員を派遣しないで済んだのは、間違いなく僥倖だ。

 

「……では、我々はお暇するとしましょうか」

 

「そうですね、お兄さま」

 

 とアーサーが空間を切り裂き、ルフェイがそれを魔法で支援する。

 

「もう帰るの?」

 

「ええまあ。我々はお尋ね者ですから、長居するのもあれでしょう」

 

「それもそうだにゃん。あんた達みたいなやつらばかりじゃないでしょうし、一応奢ってくれた恩もあるから、迷惑かけるのもあれね」

 

 アーサーに同意した黒歌が更に術で補強し、そして空間を広げる。

 

 そしてがやがやとその裂け目に入っていって、離脱を開始した。

 

 本来な追撃するべきなのだろうが、リセスのペトも追撃はしない。

 

 ……なんというか、腐れ縁と化してしまった所為で積極的に潰しに行く気が失せてしまった。

 

 まあ、またテロ活動をするというのならその時は責任を取ろう。だが、そうでないなら当面自分達は放置しておこう。そんな気になった。

 

「あれ? ヴァーリはほっといていいっすか?」

 

「ヴァーリなら大丈夫だろうよ。放っておいても自力で戻ってくるぜ、あいつなら」

 

 ペトのそう答えながら、美候も裂け目に入る。

 

 そして慎重にペトを警戒しながら、黒歌も裂け目に入る……前にリセスに視線を向けた。

 

「じゃあねリセス。昼ご飯のお礼はこれでチャラよ」

 

「はいはい。貴女も悪さをするんじゃないわよ、黒歌」

 

 そう挨拶を交わし、それを最後に裂け目は閉じる。

 

 ……なんというか、今日は疲れた。

 

 多分、すぐには帰れないだろう。

 

 ヴァーリの母親などというある意味壮絶な爆弾、放っておくわけにはいかない。

 

 ヴィクター経済連合は大義名分を持って動く上にこちらの勢力圏内だからともかく、悪魔側の古だぬきが下手な手出しを出しかねない。

 

 そうならないように、グリゴリが手配するであろう護衛が来るまではガードしなければ。

 

 そう考え、リセスは苦笑した。

 

「……何時の間にやら、身内一歩手前に戻ってるわね」

 

 一度はアザゼル直属という立場だった事もあり味方だった。その後、ヴァーリが裏切ったので敵と認識し直した。しかしなんだかんだで共闘しているうちに、いつの間にやら身内側になっている。

 

 敵味方の認識が曖昧な男を、敵味方で識別しようとすると苦労するということだろう。

 

 まったくもって厄介な事だ。あとで一発ぶん殴ってやりたくなる。

 

 そう思い、リセスはふと空を見上げた。

 

 ……満面の星空が、同情したのか感動ものの光景を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってな事があったんだよ」

 

「ほんっとに大変だな、お前も!」

 

 俺は帰りにハンバーガーショップによって、イッセーに愚痴をこぼした。

 

 いや、マジで大変だったぜ。

 

 本来なら繋ぎのはずで来たのに、マジで捧腹とサードマッチする事になったからな。

 

 しかもヴァーリの母親とかいうド級の爆弾。その護衛で結局数日田舎町で過ごすという事をする羽目になった。

 

 いや、それ自体は別に構わねえんだよ。むしろヴァーリのお袋さんは被害者だしな。英雄として、庇護するのは当然だろうよ。

 

 ただ、なんというかな……。

 

「英雄ってのは、本当に血なまぐさいもんだよ。因果なもんに焦がれちまったもんだ」

 

 ああ、今回はちょっと考えたぜ。

 

 ……捧腹は、決して自分の為に復讐なんてしてなかった。

 

 殺された者がそんな事を望んでいるか分からないっていう、定番の説得だってできやしねえ。

 

 だってその子達は望んでいたから。誰かが報いを与える事を、心から望んでいたんだからな。

 

 やっぱ正論ってのは実行するのが大変だよ。

 

 かの聖人が「右のほほをぶたれたら左のほほも差し出しなさい」とかいうわけだ。そう言うことが言えるすっげえ奴だからこそ、世界中の歴史に名を残してるんだってことだろうな。マジすげえぜ。

 

 そんなの貫いた槍を武器にしてる俺ってのも、ちょっとシャレにならねえ存在だよなぁ。

 

「ま、悪魔祓いの多くも復讐の為にそれを選んだ奴らが多いから、当然っちゃぁ当然か」

 

「なんか、それって悲しい事だよな」

 

 イッセーがハンバーガーを食べる手を止めて、そうぽつりと漏らす。

 

 ああ、悲しい事だよな。

 

 誰かを恨んで、それをぶつけることしか考えられねえ。生き方として、間違いなくあれだ。

 

 だけどな、イッセー。

 

「罪には罰を。悪には報いを。それは多くの()()()()が思う基本なんだ。それを忘れちゃいけねえぜ?」

 

 ああ。そう言う意味じゃあ捧腹は間違っちゃいない。

 

 落とし前をつけるのは当然のことだ。それを前提として、世の中は成り立ってる。

 

 それができなかったらこそ、捧腹はあそこまで行っちまった。それほどまでに裏の世の中は歪んでいた。

 

「……お前は変態ってとこ以外は立派だけどよ、立派になりすぎて周りを振り回しちゃいけねえよ。人は導いたり並び立ったりするもんで、振り回すもんじゃねえ」

 

 ああ、それはお前が覚えとかなきゃいけねえことだと思うぜ?

 

「ああ、そうだな。……なんかいい方法、思いつけるといいな」

 

 そうだなイッセー。お前はやっぱり天然物の英雄だよ。

 

 俺は、ふと空を見上げる。

 

 異形の魂は死ぬと消滅するらしい。死後の世界が基本人間のものなのはその辺が理由だ。

 

 だけど、もしかしたら……。

 

 その残滓ぐらい、あの子達と一緒にいるのかもしれねえな。

 




そんなこんなで第五章も終了です。

オーフィスを迎え入れると同時に、この作品で曹操がどんな「英雄」を目指すのかを書いたうえで、一部の消化不良を解消しました。









普通の定義については人それぞれですので批判的な意見もありましたが、価値観は千差万別ということで納得していただきたい。何分自分、ちょっと訳ありで普通からずれてるところがありますもので、客観的に書いたつもりですが皆様とのずれがあるかもしれないです。









そして次からは第六章。そのあとが最終章になります。

最終章はベリアル偏とルシファー編を使って、リムヴァンとの決着まで書くつもりです。で、第六章はここからそれまでの話を全部使っていこうかと思います。

なので、おそらくイレギュラーズで一番長い話になるはずです。なにせ今まではそんなにたくさんの巻を使ってませんからね。下手しなくても六章は100話を超えるでしょう。ちなみに今はデイウォーカー編でトライヘキサについてリゼヴィムとリムヴァンが話してるところを書いています。

この六章でリムヴァンの秘密についてもある程度開示されますので、お楽しみください!!

あと以前募集したオリジナル派閥も登場します。ウィザード編はその顔見世が中心ですね。あくまで怪人ポジションに近いのでちょい役ですが、雑魚にはしませんのでお楽しみにしてくださいな。
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