ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
「……ってなわけで、俺はここ最近は平和な日常だな」
『そうですか。この駄馬の毎日もあまり変わり映えはしないですね』
と、俺はシシーリアと電話をしながら日常についてだべってる。
最近、シシーリアから近況報告を受けることが増えた。平均して数日に一度は電話を受ける。
内容は他愛もない会話。まあ、イッセー達としてる馬鹿話とかと大して変わりはねえな。
だけどまあ、女の子としてるってのが重要だ。ここ、マジで重要。
だって考えてもみろよ。シシーリアみたいな可愛い女の子と数日単位で会話するなんて普通ねえ。どう考えても、勝ち組の行動だろ。
何だこの遠距離恋愛。この世にそんなものが存在するって、俺は実感してるぜ。
いや、シシーリアは俺と結婚する気はねえって言ってんだけどな? それでもな? 恋愛感情的なものが欠片ぐらいはあるんだよ。すげえだろ。
…………なんでそこで恋愛に発展しねえんだ、俺の人生!!
くそ! 姐さんにしろペトにしろシシーリアにしろそうだ! 俺の女がらみの関係は、肉体関係を結ぶことはあっても恋愛関係にゃぁ発展しねえ!
イッセーが糞うらやましい! いや、あいつは恋愛関係にはいくらでも発展できるが、童貞卒業は未だになしえてねえからどっこいどっこい何だろうけどよ。
「シシーリア。俺、恋人募集中です」
「そうですか。いい人ができるといいですね」
スルーされたよ! 悲しい!
ま、まあそれはそれとして……。
『そちらは魔法使いとの契約の時期ですか。この駄娘はディオドラの件があるので、まだまだかかりそうです』
ああ~。っていうか今のシシーリアって、主がいない下級悪魔だからな。
そう言う意味じゃあ、出世の余地が今のところねえわけか。こりゃいろいろと大変だな。
「いっそのこと別の勢力に鞍替えするか? アザゼルに紹介するぜ?」
『気遣い無用です。これぐらいの窮地を乗り越えなければ、この愚図が彼女たちの居場所を作ることなどできませんから』
ははっ。なかなか強気なこって。
まあ、無理だとシシーリアが思った時は、その時に手を差し伸べればいいか。
……いや、俺とシシーリアじゃ寿命の差がかなりあるな。下手したら俺が死んでから折れるかもしれねえ。
前もってアザゼルに頼み込んどくべきか? まあ、シシーリアはなんだかんだで強くなってるし、大丈夫だとは思うけどよ。
『それでそちらは大丈夫で? アジュカ様の話だと、そちらの国の軍隊が近くに基地を作ってるとか』
「自衛隊な? いろいろとややこしいんだよ、この国はな」
ホントややこしい。俺もいまだによくわからん。下手すりゃ、この国の連中だってよくわかってねえんじゃねえか?
ま、それはともかく。
「……順調か?」
『ぼちぼちです。何とかテスターとして一定の成果を上げていますが、それだけだと出世できませんから』
苦笑が返ってくる。
まあ、ジークフリートとやり合った時の活躍は、反則技を使ったみたいだしな。
それでもアジュカ様のところで訓練を積んで、だいぶ強くなったらしいから大したもんだ。
もしかしたら、俺が死ぬ前に上級悪魔に昇格するかもしれねえな。そうなりゃ、あの子たちの居場所もできるだろ。
恩をあだで返されるかもしれねえ。もしかしたら、最初から入ろうともせずにはぐれになるかもしれねえ。
だが、居場所があるってだけでもだいぶ違うだろ。俺はなんとなくしかわからねえけど、それでもなんとなくはわかる。
やり直せるってわかるだけでも、だいぶ違うだろうからな。更生するにしてもメリットがねえとやるにやれねえってもんだ。人ってのは弱いからな。
ああ。シシーリアは立派な奴だ。元聖女なだけある。
「頑張れよ、シシーリア。ちょっとぐらいなら出資してやるからよ」
『はいっ! その言葉だけでもこの愚図に価値があると思ってしまうぐらい充分ですっ!』
ああ、それだけでも俺も気が楽になったよ。
そんなこんなで俺の人間関係………? もいろいろあったけど、それはともかくとして俺は普通に学園生活も送ってるわけだ。
基本的にゃあオカ研とかクラス限定だけどよ、それでも学生としての付き合いってのがあるにはあるんだよ。
いや、日常ってのもいいもんだなって俺は思うぜ?
俺の場合、超底辺生活から救い上げられて、結構短期間で悪魔祓いの育成施設だからな。その手の経験が結構少ない。
そういうわけで、結構楽しんでるぜ、学生生活。今まで体験できてねぇことも楽しめるな。いや、一般市民ってのも楽しいもんだな。
これで文句付けるんだから、日本の連中ってのは自分がいかに恵まれてるかわかってねえな。一度底辺ってもんを真剣に味わってみたらいいんじゃねえか?
先進国ってのはすげえもんだぜ。いや、イギリスも先進国だったけどよ。日本は治安の面でその上を行きやがる。
すげえぜ日本。このトラブル頻発のご時世でも、それ以外の時は割と安全だからな。
治安大国ニッポン万歳。俺、家族持ったら日本に住まわせよう。
「ってわけで待ったありで」
「却下だ」
匙にすげなく却下されて、俺はボードゲームで敗北が確定した。
糞が! これで一勝三敗!! むしろ一勝で来たことが奇跡じゃね? 勝ちを拾えたことがあり得ないレベルで苦戦してねえ?
くそ! 匙の野郎がここまでの実力者だとは思ってなかったぜ! 恐るべし、シトリーの邪龍!
だが、匙の表情は暗かった。
それはもう暗かった。文字どおり落ち込んでた。
「……なあ、ヒロイ」
「なんだよ」
すごい憎悪に満ちた声で、匙はつぶやいた。
怖い。純粋に怖い。
何がコイツをここまで追い込んでいる。何がどうすればああなった。
シトリー眷属で唯一、あの英雄派の幹部とまともに渡り合った実力者。龍王の力を順調に使えるようになっている、シトリーの懐刀。っていうか切り札。
そんな出世街道を進むことが約束されているであろうこいつが、いったいどうしてそこまで落ち込む。
「兵藤の奴、リアス先輩と付き合ってるんだってな」
「ああ。イグドラフォースとやり合った後に、告白したそうだぞ?」
ああ、それは知ってる。
っていうかお前知らんかったんかい。ここの悪魔がらみは全員知ってるもんだと思ってたんだけどよ。
「……前にも言ったけどよ、俺は会長とできちゃった結婚をすることが夢なんだ」
「聞いてる聞いてる」
「だけど、俺名前で呼ぶことすらできてねえんだよ。眷属全員で映画に行ったことがある程度なんだよ」
暗い。それはもう暗い。
憎悪というかなんというか、とにかく邪悪な感情が煮詰まってる気がしてならねえ。
すいません。邪龍が邪悪な感情出さないでくれやせんか?
「なんでだ! 龍王と天龍にはそこまでの差があるってのか!!」
「俺に言うな!?」
おい、邪炎出てるぞ。あと胸倉掴むな熱いんだよ。
熱い! アチチチチ! マジで熱い、肌が焼ける!!
「だったら告白するなり何なりとしろよ!! 当たって砕けろ!! イッセーは当たったぞ!!」
「ざけんな! 兵藤はほら、むしろリアス先輩からラブコールされまくりじゃねえか!」
「アイツ自覚なかったんだよ!!」
そのせいでこじれにこじれたんだよ。お前何も聞いてねえのか!!
誰も相談の一つもしてねえのか。しろよ相談! 親身になって考えてくれるだろ、そりゃよ!!
「アイツは悪魔になった経緯で女性恐怖症だったんだよ! そのせいで今まで鈍感すぎたから気づいてなかったんだ!」
「…………嘘だろ?」
気持ちはわかる。悪魔になってからも覗きしてたらしいしな。
だがほんとなんだ。レイナーレとやらの幻覚を見せられた時のマジ恐怖の顔を見たことがあるから、そこについて嘘は感じねえ。
マジであの時はいろいろと大変だったからな。もし嘘だったら、俺は奴をぶっ殺してる自信があるね。
「オカ研緊急会議とかあったんだがな。会長から何も聞いてねえのか?」
「初耳だよ。っていうか、女性恐怖症? ……あれで?」
言うな匙。俺も時々首をひねる。
どんだけアイツは女好きなんだよ。煩悩強すぎだろ。
まあ、とにかくそういうわけで、今まで付き合ってなかったことの方が問題ある展開なんだから勘弁してやれ。
「そう言うこった。ほれ、さっさと次の勝負に行くぜ?」
「上等、さらに連勝してやる」
この野郎。そろそろ俺もコツつかんできたんだからな。せめてもう一勝はもぎ取ってやる。
「……そういやよ、こっちは聞いてるか?」
「あんだよ?」
何かシトリー側で用事でもあんのか?
「いや、吸血鬼の連中との会談の時期が決まったんだよ。そろそろだぞ?」
「マジか!!」
日常回もそろそろ終了。こっから大変なことんなってくるぜ!!