ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
「死ぬかと思ったな、イッセー」
「生きてるのが奇跡だよな、ヒロイ」
俺とイッセーは生きて駒王学園の門を潜れたことを、内心で喜び合った。
マジで死ぬかと思った! あっぶねえ!!
「おいイッセーにヒロイ。昨日はどうしたんだよ」
「まったくだ。ゼノヴィアも来なかったし、リセスさんも苦笑いして何も説明してくれなかったんだぞ?」
松田と元浜がそう聞いてくるが、しかし表情はにやけている。
くそ、ぶち殺してぇ。
「昨日はお楽しみだったようだなぁ。ああ?」
「そりゃもう! 俺達はもう覗きは卒業するぜ!!」
俺の怒りすら込めた言葉に、松田の野郎はサムズアップまで返してきやがった。
その調子だと、姐さんとまで致しやがったな、こいつら!!
「イッセー。スマンがエロビデオはこれからは家で交換しよう。学校にまで持ち込む気にはもうなれんのだ」
「お前達も早く追いついてこい。この果てしなく続く漢坂をよ」
「「マジで殺していいか、コラ」」
馬鹿二人がすっげえドヤ顔してくるのマジむかつく。
「やあ、皆」
と、そこでゼノヴィアが教室に入ってきた。
「おお、ゼノヴィア。昨日はどうしたんだよ」
「そうだぜ? 俺達待ってたんだが」
「いや、あの後部長に見つかってしまってね。よくわからないんだがあの部屋に行ってはいけないときつく厳命されてしまった」
「俺もだよ。うぅ、部長はそういうの潔癖なのかなぁ」
ゼノヴィアもイッセーも眷属悪魔だからな。主の厳命は断れないか。
まあ、俺は監督されているだけだから必ず行くがな!! 命かけるぜ!!
「しかしイッセーやヒロイとの子作りは諦めん。練習用の避妊具とやらも用意したし、隙あらば実行するので覚悟だけはしておいてくれ」
「ゼノヴィア。そういうのここでいうのやめてくんない? 視線が痛い」
イッセーさんや。エロビデオ堂々と教室で交換してる時点で十分アウトですぜ?
そんなことを思っていると、今度はアーシアが俺の方に近づいてくる。
「ヒロイさん。聞きましたよ」
「ん?」
「イッセーさんたちをや、や、や……あんな部屋に誘ったのはヒロイさんだったんですね!」
と、アーシアは顔を真っ赤にして詰め寄ってきた。
顔が真っ赤なのは怒ってるのかヤ〇部屋といえないほどの恥ずかしさからなのか。
「イッセーさんをそんなところに連れて行かないで下さい! ひ、卑猥です!」
「え~。いいじゃん歳頃の男なんてそんなもんだしさ~」
それにこいつらはそういうことさせないと犯罪に走りそうだし。
俺も童貞卒業したいし。その気持ちはイッセーも強いはずだ。
ああ、憧れの英雄で大人の階段上るとか、マジ最高の一夜だったろうに……此畜生!!
「まさかマジで行くとは思わなかったわ。この藍華の目をもってしても以下略って感じ?」
と、そこでクラスメイトの桐生まで割って入った。
この女。性犯罪者予備軍のイッセー達と堂々とつるめる剛の者だったりする。
「うっせぇ。高校生の利用者もゴロゴロいたっつーの」
「ふ~ん。でも、話を聞く限りじゃ言い出しっぺのあんたは卒業できなかったみたいね」
悪かったな!
「まあ、あんたのあれの長さからすれば、初心者なりにそこそこ評価されると思うわよ」
「なんでわかんだよ!!」
な、なんだこの女! まさか神器を持っているというのか!?
え、ええい! 気を取り直せ!!
今日は公開授業。それも英語だ。
腐っても俺はヨーロッパ出身。英語は一応勉強している。
興味本位で習得した世界でも有数の難易度を誇る日本語もだいぶいけるんだ。英語の方は完璧に近いといってもいい。
さあ、かかってくるがいい! 親御さんが来る人達を差し置いて、俺が好成績を決めてやるぜ!!
ふははははは! 勉強する羽目になるのが当たり前とかほざく連中には負けん!! 国語以外は!!
「それでは皆さん。今配った紙粘土で何か作ってください。そういう英語もあります」
「あるか!!」
俺は渾身のツッコミを叩き込んだ。
「いいえ! あります!! あるのです!!」
「あるわけねえだろアホ教師! こういう時こそ普通に授業しろよ! PTAが苦情出すぞ!!」
ホントだしそうで怖いんだけど!?
なんで英語の授業で芸術やらなきゃいけないんだよ!! 普通に英語してよ!!
俺、仕事がら色んな国行ってるから言語系は大得意なんだよ!! だからお願いリスニングでいこう?
「た、確かに! これ英語の授業かって言われると……」
「そうだよ! 普通これって、真面目な授業の合間に息抜き感覚でやる感じだろ! おかしいって!」
俺の渾身の文句に、何人かの生徒が同意する。
「言われてみればそうよねぇ」
「ここ進学校よね。……大丈夫なのかしら」
親御さんも疑問符を浮かべてくれたぜ!
よっしゃぁ! この調子で俺は文句を続けるぞ!!
まずは増援の確保だ。意外と常識人なイッセーなら、このノリなら援護射撃ぐらい入れてくれるはず―
「イッセー! お前も何とか言って……」
そして振り返った俺の視線の中、おっぱいが映った。
ああ、勘違いすんな。なにも生乳がいきなり出てきたわけじゃねえ。
正確には、精巧な生乳の模型が誕生していた。
「ひょ、兵藤君……!」
「え? ……おお!!」
教師に言われて初めて、イッセーは自分が凄い事やったのに気付いたらしい。
すげえ。お嬢の裸体が完全再現されてるよ。
いや、俺は水着迄しか見たことねえけど。それでもだいたいこんな感じだよな。
「な、なななななな! なんでだイッセー!」
松田が驚愕の表情を浮かべるが仕方がねえだろこれ。
だってすっげえリアルな裸婦像なんだもん。
「うそでしょ? なんで兵藤がこんなことできるの!?」
「あ、相変わらず厭らしい。厭らしいけどすごい!!」
「あ、ありえん! これはまさしくリアス先輩の体形!!」
女子達が瞠目する中、元浜が眼鏡を切らんとさせて断言したことで、さらにどよめきは激しくなる。
「素晴らしい! 素晴らしいですよ兵藤君! 私はまた生徒の可能性を発掘しました!!」
「確かに素晴らしいわ。こんな完全再現ができるぐらい見てるってことね」
教師と桐生が感心するが、これもう授業じゃなくね?
ああもう。仮にもここは進学校だろ。もっと為になる授業しろよ。
俺がツッコミを入れようとしたその時。
「五千円出す! くれ!!」
財布を取り出した男性との声が、授業を完全に崩壊させた。
「させるかぁ! 俺は六千円出す!」
「まて、俺のこの作品と交換してくれ!!」
松田と元浜も速攻で動く。
「いいえ! お姉さまのなら私は一万円出すわ!!」
「リアス先輩の裸はぁはぁ……。一万二千円出すから譲ってくれないかしら?」
女子まで動いた!?
「なるほど、授業参観とは、学校で行われるオークションのことだったんだね」
「いえ、これはたぶん例外だと思います……」
アーシア。ゼノヴィアのマジボケの対処は任せた。
ここは、俺も動かないといけない。
この事態、もはや黙ってみているわけにはいかん!!
「……二十万!!」
俺が貰う!!
「いや、やるわけねえだろ! 俺の部長だからねぇえええええええ!!!」
イッセーのけちんぼ!!
「よくできてるわね」
お嬢はそう言いながら、イッセーが手に持っている紙粘土細工をしげしげと眺める。
勝手に裸婦像を作られたというのにこの態度。この人意外と痴女い?
「しっかしよくできてると断言するとは、イッセーに裸見せただけのことはありますね」
「一緒に住んでるのだから、お風呂ぐらい入るでしょ? それに私は裸じゃないと眠れないもの」
すんませんツッコミどころ多すぎんですけど。
「あらあら。これは私の分も作ってほしいですわ。もしよろしければ脱ぎますわよ」
「マジですか!?」
「ええ、おさわりありで」
っていつの間にかすごい商談が朱乃さんとイッセーの間で発生!?
「お、俺も見ていいですか!?」
「駄目ですわ」
すんませんでした。
調子に乗ってましたからこんなところでビリビリ出さないでください。
「それでイッセーくん。お返事は?」
「駄目に決まっているでしょう」
「駄目に決まってます」
なぜイッセーではなくお嬢とアーシアが言う。
いや、わかってるけどね?
あんたらイッセーにホの字なんだな。くっそぉうらやましい。
しかしイッセーの奴はそれに気づいてないっぽいな。気づいてたら童貞卒業はそっちでするだろ、うん。
「あれ? 皆さんお揃いでどうしたんですか?」
と、そこに木場がやってきた。
俺は片手をあげて挨拶する。
「おお、木場。どうしたんだ?」
「いや、実は気になる話を聞いてね」
気になる話?
ま、まさかお前もお嬢の裸婦像に興味が?
聖魔剣と赤龍帝が裸婦像を奪い合う光景を幻視したが、どうやら違うっぽい。
「なんでも、体育館で魔法少女が撮影会を開いてるとか」
………は?
「い、嫌な予感が……」
あれ? お嬢、心当たりでも?
「やっぱり……」
お嬢が額に手を当てて頭痛を堪える中、実際に魔法少女が撮影会していた。
うっわぁ。すっげ人だかり。
つーかオイ。なんでこんなにフラッシュたかれてるんだよ。其のカメラは父兄として子弟を写す為のものじゃねえのかよ?
なんてツッコミを心の中で入れる中、その魔法少女はすっげえいい表情で写真撮影に応じていた。
「ぶ、ぶりっ子ポーズでお願いします!」
「こっち! こっちに笑顔を向けてくれ!!」
「はーい♪」
完全に写真撮影会になってるな、オイ。
っていうかコレ、保護者以外にも人集まってねえか?
このままだと収拾つかねえな。しゃあねえ動くか。
俺は深呼吸して気合を入れると、勢いよく地面を踏み込む。
悪魔祓いとして人間離れしていると断言できる身体能力で起きたそれが、体育館を揺らし轟音を放つ。
いわゆる震脚ってやつだ。インパクトあるから気分転換に習得してたが、こんなところで役に立つとはこのヒロイさまも思わなかったぜ!
「……すいませーん。今日は公開授業でPTAも注目してるんで、そういうゲリラコスプレイベントはご遠慮願いまーっす」
ニコニコ笑顔で、しかし声にはドスを効かせる。
この脅威度満点の警告に、大半の連中は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
さて、それじゃああとは元凶の魔女っ子だな。
「そこのアンタ? 誰の生徒の妹さんか知らないけど、服装は場所と状況を考えてくんない?」
「えー? だってだって、これが私の正装なんだもん☆」
………このアマ。
「1、1、0。……あ、警察ですか? 駒王学園の者なんですけど、悪質なコスプレイヤーが公開授業に乱入して写真撮影会をしてるんでとっ捕まえてください」
「ちょ!? 魔法少女レヴィアタンに警察とか対応が酷過ぎるのよん!?」
うるせえ。俺達は今学生やってんだ。迷惑な人がいたら専門家に通報が基本だっつーの!
さて、これでさっさと退散してくれればめっけもんなんだけど―
「ヒロイ君ではないですか? 何か起きましたか?」
と、そこに生徒会長が現れた。
あれ? よく見ればサーゼクス様にさらにお嬢含めてよく似たダンディなおっさんも……。
「よう、ヒロイ。今魔王様とリアス先輩のお父上様に学園のご案内してるところなんだが……あれ? 会長どうしました?」
匙が挨拶しながら、しかし会長が硬直してるのを見てきょとんとする。
「あ、ソーナちゃん!」
さらに魔女っ子が固まってる生徒会長に抱き着いた。
「「「あれ? 似てね?」」」
俺、イッセー、匙はその時になって気が付いた。
会長と魔女っ子。そっくりなんだけど……。
「セラフォルーじゃないか、君も来ていたのか」
「あ、サーゼクスちゃん! 貴方だって妹の晴れ舞台を見に来てるじゃない」
おい、ちょっと待て。
魔王サーゼクス・ルシファーにタメグチ可能な、会長のそっくりさん?
しかも妹の晴れ舞台を見に来たぁ?
そ、其れってまさか―
「お嬢!? あ、あの魔女っ子ってまさか―」
「……ええ。信じたくないでしょうけど、あのお方がソーナの姉君である魔王レヴィアタンさまよ」
「「「えええええええええええ!?」」」
俺とイッセーと匙は、同時に絶叫をあげた。
いやいやいやいやちょっとまてぃ!!
何で魔王が魔法少女コスプレ!? しかも正装ぅううううう!?
え、なに? 俺ってもしかしてこんなのと戦う可能性があったの?
悪夢じゃん!? ある意味!!
想像の斜め上をスピン入れて突っ走ってるんですけど!!
こんなのとシリアスに殺し合いしてたのかよ天界は! マジ哀れ!!
イメージ戦略が色々間違ってねえか、オイ!!
「聞いてください小父様! ソーたんったら、今日の授業参観のこと黙ってたんですよ? レヴィアたんはショックで天界に攻め込みそうになっちゃいました」
「……この人魔王として大丈夫なんですか?」
「安心して。あれはあくまで話のタネのはずよ。仮にも外交担当がそんなことは……しないといいわね」
自信ねえのかよお嬢!!
外交担当!? いや、アイドル戦略とか聞いたことあるけど、トップがやるの!?
「あれ? そういえばリアスちゃん、その子達は?」
「……イッセー、そろそろご挨拶をなさい」
「え、あ、はい! リアス・グレモリー様の兵士をさせていただいている、兵藤一誠です!!」
「貴方が赤龍帝ちゃんだったの。初めまして♪ 私は魔王のセラフォルー・レヴィアタンです♪ 気軽にレヴィアたんって呼んでね?」
どこの世の中にたんづけをねだる魔王がいる!?
おい、冥界大丈夫か!? 他に適任はいなかったのかよ!!
「あの、お姉さま。それはともかくここは学び舎です。ましてや私はここの生徒会長を任されている以上、お姉さまといえどこのような行動と格好は容認できるものではないです……」
あ、生徒会長が話を戻した。
うん、そうですな! 姉なら姉として色々と責任がありますよね!?
しかしセラフォルーさまは心底不満そうだった。
「酷いわソーナちゃん! お姉ちゃん本気で悲しいのよん!? お姉ちゃんが魔法少女に憧れているって、ソーナちゃんも知ってるじゃない!!」
「いやちょっと待てコラァ」
俺はつい我慢できずにツッコミを入れてしまった。
だがしかし、これに関しては納得いかん。
「……誰? 今私はソーナちゃんと話してるのよん?」
「セラフォルー。彼がコカビエル相手に渡り合った聖槍使いのヒロイ・カッシウスくんだ」
「説明ありがとうございますサーゼクスさま。……で、レヴィアたん?」
俺は真剣な表情で、レヴィアたんに詰め寄ると―
「こぉおおおのバカチンがぁああああ!!!」
渾身のチョップを叩き込む!!
「きゃん!? な、なにするの!?」
「何するの!? じゃない!!ふざけんな、こらぁ!!」
俺は今、マジギレしている。
魔法少女……だと?
「魔法少女は知っている。あれは俺にとって英雄の亜種パターン。故に多少は知っているとも」
「知っているならなんで!?」
「だからこそだ!!」
ふざけるな、ふざけるなよ!?
「魔法少女とは困っている人を助ける少女の英雄!! あんたは当然困っている人達を助け、少女の心に輝きを灯さなければいけないだろう!! それが輝きである英雄の役目だろう!!」
それなのに、其れなのに!!
「その英雄が、常識とTPOもわきまえずに実の妹の心を照らすのではなく曇らせて、何が魔法少女だ、笑わせるな!!」
「………ががーん!!」
俺の心からの言葉に、レヴィアたんはショックを受けた。
そして、そのまま崩れ落ちる。
「そ、そんな……! 皆の魔法少女であるレヴィアたんが、自分の妹の心をまず真っ先に曇らせていた……?」
「そんな様で魔法少女など笑わせる。三流どころかまがい物にすぎねえな」
俺は心底蔑んだ。
そのざまで何が魔法少女だ。呆れ果てる。
「まずはTPOをわきまえて、変身していいタイミングを計るところから出直すんだな」
「う、うう! 反論できない!!」
レヴィアたんはショックで涙をぽろぽろこぼしながら、しかし俺の言葉に反論だけはしない。
ふむ、これならまだ見所はあるか。
こういうのは飴と鞭っていうし、そろそろ飴をやらないとな。
「まあ安心しな。英雄だって挫折して立ち直ったやつもいる。過ちを犯して再起した奴だっている」
「れ、レヴィアたんは魔法少女としてやり直せるの……?」
ふ、何言ってやがんだ。
「それが
「う、うん……うんっ!!」
ふっ。どうやら話の分かる女でよかったぜ。
俺も、魔法少女という英雄の名にどろを濡らせなくってよかったぜ。
泣きじゃくるレヴィアたんの背中をぽんぽんとたたきながら、俺は英雄の迷走を阻止したことに安心し―
「あ、すいません。駒王町警察署の者です」
「あれが通報にあった魔法少女だな! こら、こんな場所でコスプレなんて何考えてるんだ!!」
あ、そういえば通報してた。
輝きと書いて英雄と読み、また逆もしかりな男、ヒロイ・カッシウス。
子どもたちのヒーローもまた、彼にとっては英雄なのです。