ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

181 / 324
現実はあまりにも残酷である。

襲撃してきたヴィクターとその行動により―


第六章 8 残酷な現実

 あれ、明らかに魔法使いだ。それも敵意すら向けてやがる―

 

「―全員下がれ!!」

 

 俺は即座に聖槍を出すと、生徒たちとそいつらの間に割って入る。

 

 すでに俺が悪魔祓いで三大勢力の関係者なのは知られてんだ。修学旅行でゼノヴィア達にばらされたからな!!

 

 大金もらってんだから、こういう時に負担こうむるのは当たり前の役目だしよ!!

 

 つっても、ここで奴らを殺すのはさすがに避けたい。堅気がすぐ近くにいやがるからな。

 

 それにまだヴィクターと決まりきってるわけじゃねえ。一応警告しとくか。

 

「てめえら何もんだ!! アポなしで異形関係者がこんなところにきて、文句の一つももらわねえとは思ってねえだろうな!?」

 

「知れたこと。俺たちゃぁヴィクター経済連合だ」

 

「悪いけど上の命令でね。ここをちょっと襲撃させてもらうぜぇ」

 

 チィッ! こいつら、俺をターゲットにしてきやがった。

 

 かわそうと思えば当然躱せる。だが、ここでかわすと後ろの生徒たちに当たる。

 

 割と数が多い。迎撃しきれるか―

 

「さぁて、それじゃあ試させてもらうぜ聖槍使い!!」

 

 そういうが早いか、奴らは氷の槍を生み出すとそれを放ってくる。

 

 ……これなら確実に捌ける。俺の技量ならいける。

 

 ……だが―

 

「っ!」

 

 俺は、その攻撃をあえて一発肩に受けた。

 

 割と勢い良く突き刺さり、貫通する。

 

 動脈も傷つけたのか、血しぶきが舞って、近くにいた生徒についた。

 

 ああ、悪いな。相当ビビらせるだろうが―

 

「う、うわぁああああああ!?」

 

「きゃぁあああ!?」

 

「ぎゃぁあああああ!?」

 

 悲鳴を上げてわれ先に逃げ出す生徒たち。

 

 すぐにその騒ぎを聞きつけたのか、悲鳴が連発する。

 

「ハッ! 思ったより大したことねえなぁ聖槍さんよぉ?」

 

「あの曹操を倒したって聞いたんだが、この程度かよ」

 

 魔法使いたちは、ジャブのつもりでぶっパした攻撃が通用したことで調子に乗る。

 

 俺のことを、この数なら確実に勝てると判断しやがった。

 

 そしてそのまま嘲笑は続き―

 

「そんなんでどうやっていままで生き残って―」

 

「こうやってだよ」

 

 その首を、遠慮なく俺は跳ね飛ばした。

 

 跳ね飛ばしたのは処刑用の剣を参考にした魔剣。雑魚相手に聖槍はもったいねえしな。それにこっちの方が首を切り落とす分には簡単だ。

 

「……え?」

 

「とりあえず、見せしめだ」

 

 俺は唖然とする連中にそういうと、魔剣の切っ先を突き付ける。

 

 生徒たちが逃げてくれたってことは、生徒たちに配慮する必要もねえってことだぞ?

 

 つまり、目の前で人が死ぬトラウマを負うやつはもういねえ。

 

「死にたくねえなら今すぐ失せろ。どうせほかの連中も動いてるだろうから、てめえらなんぞに時間かけたくねえんだよ」

 

 ああ、こんな露骨にこんな少人数で、こんな雑魚だけで仕掛けるわけがねえ。

 

 大方陽動もしくは鉄砲玉だろう。俺ならドーインジャーも動員するね。

 

 そういうわけで俺はさっさとケリをつけたかったんだが―

 

「舐めんな! やれ!!」

 

 その言葉と共に後ろから殺気を感じる。

 

 チッ! 伏兵か!!

 

 俺はそれに振り向こうとして―

 

「オイコラぁ!!」

 

 それより先に、誰かが体当たりする音が響いた。

 

 そして踏みつける音と悲鳴が聞こえて、やがて静かになる。

 

 ……なんだ?

 

「人のダチに何しやがる!! っていうかてめえら誰だよ!?」

 

「ま、松田。そいつら多分ヴィクターだから、ちょっと落ち着いて―」

 

「とにかく縛るぞ! イッセー、ベルト貸せ!!」

 

 あ、あの馬鹿ども逃げてなかったのか!!

 

 っていうか、魔法使いの只のベルトで縛っても意味がないんだが?

 

 と思ったら、俺の傷口にハンカチが押し当てられてそのままベルトで圧迫される。

 

「無事かヒロイ!! とりあえず止血しねえと……」

 

 って俺かい!!

 

 お前らすげえな。根性あるわ。

 

「……俺のダチはすげえだろ? お前らなんか目じゃねえんだよ」

 

 ってんなこと言ってる場合じゃねえ!!

 

 いくらなんでも結界スルーなんて大事しでかしておいて、こんなちんけな小物だけ投入とかするわけがねえし―

 

 そう思った次の瞬間、

 

 大きな爆発が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヴィクター経済連合の行動は、迅速だった。

 

 一部の馬鹿を囮にし、その隙に速やかに別方向から潜入。同時に結晶体にしたドーインジャーもばらまいて、かく乱を行う。

 

 一般生徒がたくさんいるこの学園を丸ごと吹き飛ばす戦法はとれない。それを想定したうえでの作戦だが、これが功を奏していた。

 

 自分達ヴィクター経済連合の目的は、レイヴェル・フェニックスの遺伝子データの確保。

 

 フェニックスの涙を大量生産するべく、純血のフェニックスの遺伝子が必要だったのだ。

 

 そして同時に、ある存在と赤龍帝をぶつけさせること。指揮官の目的からすると、こちらの方が本命だといえる。

 

 その戦力はさすがに町中で使うと余計な被害をうむため、挑発をしておびき出す必要があるのだ。

 

 さらにそのついでに、戦力のふるい分けを第二弾で行うらしい。

 

 実際、チンピラに毛が生えたような魔法使いなど後々無能な働き者にしかならない。今更自分たちがあのヒロイ・カッシウスや兵藤一誠に通用すると思っているあたり、度し難い。

 

 そして、ついでのついでともいえる第三の目的は―

 

「聞こえるか、駒王学園の諸君」

 

 放送室を占拠した兵士たちは、校内に一斉放送を行う。

 

 その声をパニック状態の生徒たちが聞けるかどうかはわからないが、一応やったというだけでも十分な言い訳にはなるのだ。

 

「我々の目的は君たちの虐殺ではない。この駒王学園高等部一年に在籍している、上級悪魔72柱、フェニックス家長女のレイヴェル・フェニックスの遺伝子データの収拾である」

 

 速やかに、この学園の内部に悪魔がいることを告げながら、彼らはさらに冷徹に告げる。

 

「その邪魔をしない限り、こちら側から積極的な攻撃は行わない。するにしてもできる限り低殺傷兵器を使用することを誓おう。……命が助かりたいのなら、レイヴェル・フェニックスを引き渡すこともお勧めする」

 

 ……これは、グレモリー眷属の足元を崩すことすら考慮した作戦だ。

 

 駒王学園に在籍している三大勢力の者たちは、その多くが正体を隠している。

 

 教会の悪魔祓いだったヒロイ・カッシウス達三人は京都での安全確保のためにあえて正体を明かしているが、しかしそれはごく一部に過ぎない。

 

 それ以外にも、この学園には異形関係者がその来歴を隠して何人も在籍している。

 

 それをぶちまければどうなるか。

 

 これまで通りの日常生活を送るのは困難だろう。少なくとも、数多くのトラブルが生まれることは想像に難しくない。

 

 ……発案者であるLの性格の悪さが透けて見えるが、了承をだす上層部の性格も十分悪い。

 

 だが、普通に戦っても勝てない強敵を倒すのに、精神的な揺さぶりをかけるのは常套手段。自分達も普通にやっている。

 

 なら、ここで自分たちがそれをなすことに何の問題があるのだろうか。

 

 そういう結論に達したコノート組合の傭兵は、速やかにライアットガンを構えると、放送室を捨てて飛び出していく。

 

 ドーインジャーの警護をうけながら、おびえる生徒たちをしり目に、一年の教室がある区画へと入り―

 

「―待っていましたわ」

 

 そこに、レイヴェル・フェニックスが堂々と立っていた。

 

「意外だな。逃げなかったか」

 

「……悪行を行っているあなた方が悪いとはいえ、わたくしに巻き込まれる形でクラスの友達を傷つけるわけにはいきませんわ」

 

 毅然として答えるレイヴェルに、一部の者たちは敬意すら覚える。

 

 流石は貴族の跡取りということか。旧魔王派の大半の連中に、爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。

 

「まあいい。こっちも堅気の大量虐殺何て、将来に響くんでな。ついてこい」

 

「わかっていますわ。その代わり―」

 

「無論だ。……手出しをしないのなら安全は保障する。―各員、レイヴェル・フェニックスの確保に成功。サンプルを採取次第撤退するので、戦闘行動を停止しろ」

 

 現地指揮官が即座に指示を出し、騒がしさが一段階ほど静まっていく。

 

 そして、採血用の注射器をメンバーの一人が取り出したとき―

 

「ま、待てこの野郎!!」

 

 その額に、消しゴムがたたきつけられた。

 

「れ、レイヴェルさんに手を出すな!!」

 

 震えながら、しかし真向から睨みつけて、少女が一人抵抗した。

 

 それに狼狽するのは何よりもレイヴェルである。

 

 確かに彼女たちには手を出さないようにとは言ってないが、それはむしろ当たり前だ。

 

 武装した勢力相手に、恐怖を押し殺して友を守ろうとする精神は立派だ。だが、それは愚行でしかない。

 

 目の前にいるのは、生身で戦車の一両や二両はたやすく破壊できるだけの戦闘能力を持つ規格外の戦闘要員だ。

 

 それも、この狭い状況で本気を出されでもしたら、自分がかばったとしても―

 

「駄目ですわ!?」

 

 思わず声を上げるが、然し相手の反応の方が早い。

 

「何気にすごいことしてるが、抵抗するやつには容赦すんなって言われてっからな。当身ぐらいは我慢してもらうぜ」

 

 そして滑り込むように傭兵の一人が動き―

 

「―根性見せたじゃないか」

 

 そこに割って入った一人の影が、その拳を受け止めた。

 

 そして次の瞬間、常人は愚か、上級悪魔のレイヴェルですら見切れないほどの速さで反撃の拳が飛ぶ。

 

「っ!?」

 

 それをとっさに回避した傭兵は、即座にナイフを取り出しながら相手を睨む。

 

「何者だ!? この学園の悪魔に、お前みたいなやつはいないはずだが―」

 

「そりゃ人間だからな。でも、こういえばわかるだろ?」

 

 その拳を放った少年は、不敵な表情を浮かべると胸を張った。

 

「俺が今代の()()だ」

 

 その言葉に、全員が目を見張る。

 

「……百鬼のものか!」

 

「五大宗家の……っ!」

 

「百鬼勾陳黄龍か!」

 

 とっさに条件反射でナイフが飛んでくるが、百鬼はそれをあっさりと指でつかみ取ると、そのまま投げ捨てる。

 

「ま、うかつに暴れるわけにはいかなかったんだけどな。……五大宗家が、一般人が根性見せたのに動かないわけにはいかないだろ? 俺も当主なんでな」

 

「確かにな。そう言うところは気に入ったぜ」

 

 傭兵の一人がそうほめながら、然し新しくナイフを構える。

 

 ここまでなってしまった以上、もはや戦闘は激化するしかないのだから。

 

「だが黙ってた方がよかったんじゃねえか? ここで俺らがバトったら、それこそ被害が―」

 

「―そうはいきませんわ」

 

 その声と共に、廊下の壁を突き破ってゴリラが出てきた。

 

 あと、鎧も出てきた。

 

「ゴリラ!?」

 

「なんでここに!?」

 

 生徒たちが驚くが、しかし異形たちの戦いになれている傭兵たちはすぐに状況を把握した。

 

 あれは、断じてただのゴリラではない。

 

「……雪女だと!?」

 

「おいおい、まだここは雪降ってねえぜ雪女!!」

 

 そういいながら反撃に転ずる傭兵たちより早く、その言葉に生徒たちが一斉に叫んだ。

 

『『『『『雪女ぁああああ!?』』』』』

 

「ゴリラじゃねえか!?」

 

 渾身のツッコミを入れる生徒がいたが、レイヴェルは何を言っているのかわからず首を傾げた。

 

「いえ、あれが古来よりの雪女ですわよ?」

 

「嘘だといってレイヴェルちゃん!?」

 

「あり得ねえだろ!! 日本にゴリラ何て動物園ぐらいだろ!?」

 

「雪ゴリラじゃねえか!!」

 

 反論がいくつも飛ぶが、傭兵もまた首を横に振った。

 

「まさに冷たい現実だが、マジだよ」

 

「ああ。雪女は15歳を超えるとああなるんだ」

 

 百鬼までそういって、さらに絶望が加速する。

 

「嘘だろ!? 俺、神々とかいるなら素敵な雪女がいるかもって夢見てたのに!?」

 

「ゆ、夢が壊れる……っ」

 

「死にたく、なった」

 

 次々に状況を分投げて、絶望の表情を浮かべる生徒たち。因みに大半が性欲溢れる男だったりするのはご愛敬。

 

 そして雪女(残酷な事実)が盾になったことで、傭兵たちはレイヴェルの奪取も困難になる。

 

 それを察して、隊長格の傭兵は即座に通信機をつなげた。

 

「……作戦失敗。現状戦力でこれ以上の作戦続行は困難。残念だがプランBに移行する」

 

『まじかよ!? 久しぶりに暴れられると思ったのに!!』

 

『そうだよ。高ランクの連中とやらせてくれよ!!』

 

 反論が飛んでくるが、隊長は眉間にしわを寄せると大声を飛ばす。

 

「すでに自衛隊の駒王駐屯地も動いている!! これ以上は無理だ!! 死にたいなら勝手にしろ、こちらは撤退を開始する!!」

 

 その言葉と共に、同行していた魔法使いが即座に転移魔方陣を展開する。

 

「待ちなさい! ここまで好き勝手に動いておいて、このままで済むと―」

 

「安心しろ。一端中継点を介して出ないと、こちらも即座に撤退できない」

 

 レイヴェルの睨みをまっすぐに受け止めながら、隊長核は不敵に笑う。

 

「探して追撃するといい。迎撃の準備は整えておくさ」

 

 その言葉と共に、男たちは転移していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 Side Out

 




―雪女の真実があらわになり、異形の実在を知った男たちの期待を容赦なく粉砕していった。







……はい、そっちかいと石投げるのはやめてね~。








駒王学園はイッセーたちが退学になってないこともあって、かなりそういうのに緩いのではないかと思い、こんな展開になりました。日本政府が異形受け入れ政策をとっていたり、京都の一件で異形関係者が尽力したことも大きいですね。







しかしD×D世界の雪女は男のロマンを粉砕してくる最悪の存在ですな。これでウンディーネや人魚も出てくるんだから始末に負えない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。