ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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駒王学園生徒の人間性の高さに、ヴィクターの作戦は失敗。

だが、ヴィクターがタダでやられるはずもありません。

こっからが、本番です。



第六章 9

 

 

 とにかく、いきなり現れたヴィクターの連中はすぐに撤退していった。

 

 校内放送でレイヴェルの正体明かしやがって。こっから大変なことになったらどうする気だ、あいつら。

 

 いや、それが狙いか?

 

 民間レベルでの交流をゆっくりする方針で行っている三大勢力側の異形事情を引っ掻き回して、混乱させるのが狙いかねぇ。

 

 真正面からグレモリー眷属を倒すのは困難と見て、足場から崩そうって魂胆か。

 

 糞が! 作戦考えたのは何処の下衆野郎だ!!

 

 俺が舌打ちすると同時に、上空から影が差す。

 

 そして次の瞬間、轟音と共に自衛隊員がフル装備で着地した。

 

「……無事か、学生諸君!」

 

「敵、残存はドーインジャーだけです!!」

 

「第二小隊全分隊、散会して外周警戒! 第一小隊と第三小隊は分隊ごとに分かれて校内のドーインジャーを排除しろ!!」

 

 ドタバタと自衛隊員が動く中、何人かが俺らをカバーする。

 

「負傷者一名確認! 衛生班、急げ!!」

 

「あ、治癒能力者の知り合いいるんでいいです」

 

「止血が足りてない! 素人にしてはできてるが、少し止血点からずれてるから縛り直さないと……」

 

 あ、そういうこと。

 

「やっべ! 間違えた!?」

 

「いや、素人にしてはできてる方だ。こういうのはやっぱり何度も練習する必要があるからな。お前がやったのか? できるじゃねえか?」

 

 元浜をそうフォローしながら、自衛隊員は周囲を警戒する。

 

「校内にいる百鬼の次期当主と連絡取れました! 一年生は全員無事です! 三年の協力者と連携を取って安全を確保したと!」

 

「二年、三年、共に無事! 二年生はグレ……例の悪魔祓いが、三年生も用務員のリセス・イドアルがカバーに入ったそうです」

 

 よっしゃ! 安全確保!!

 

 二年はゼノヴィアとイリナが動いたのか。あいつらは正体ばらしてるから問題ねえな。

 

 三年生も姐さんが動いたみたいだな。どうやら何とかなったか。

 

「……なあ、ヒロイ」

 

 俺がほっとしてると、松田が俺の肩に手を置いた。

 

 態々利き手じゃない方の手を使って、俺の傷口に触れないようにしてくれるのがありがたいぜ。

 

 そして、その顔はかなり怒りに燃えていた。

 

「ヴィクターの連中、許せねえよな」

 

「ああ、まったくだ」

 

 うんうんと元浜も頷いている。

 

 こいつら……っ。

 

「レイヴェルちゃんを狙って暴れるなんて、なんて奴だ」

 

「同感だな。あんな可愛い子に危害を加えた上、一年生の子達まで巻き込むとかふてえ野郎達だ」

 

 松田も元浜も、心からヴィクター経済連合に怒っている。

 

 レイヴェルに対しては欠片も怒っていない。結果的に巻き込まれたとも思っていない。

 

 ったく。イッセーも俺も、いいダチを持ったぜ。

 

「……いい友達だな」

 

 そう、自衛官が微笑ましいものを見る視線を向けながら告げた。

 

 それに、イッセーは力強く頷いた。

 

「……はいっ! 最高の悪友です!!」

 

 そこは親友でいいだろ。

 

 ま、覗き魔なのは難点だが、すっげえ良い奴だよな。その辺に関しちゃ、俺は認めてるぜ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで自衛隊員が駒王学園を警護し、順次避難活動が行われてるなか、俺達は集合すると即座に追撃の準備に取り掛かっていた。

 

「現在、反ヴィクターの各国の町で同様の活動が起きている」

 

 中継役として派遣された自衛隊員が、タブレットを確認しながらそう告げる。

 

「……フェニックスの血筋だけじゃない。人間世界で住んでいる悪魔を、一般市民が直接視認できる形で襲撃している。民間人の犠牲者は負傷者どまりだが、悪魔側では殺されている者もいるようだ」

 

「なるほど。目的は理解が不十分な事を利用した人間と異形達との軋轢の発生ですか」

 

 会長が冷静に、だけどマジギレなのが分かるオーラを放ちながら納得してた。

 

 あ、ああ。なるほど。

 

 悪魔だけをターゲットにして、あくまで偶発的に巻き込まれた形にすることで、ヘイトの矛先を悪魔にすり替えてるのか。

 

 下衆の所業だな。ヴィクターの連中、やはり性格は悪い部類だって事か。

 

 今までもネガキャンはやってたし、俺ら三大勢力側もやってたが、今回は流石にむかついたぜ。

 

「それで、結界については?」

 

「そちらは現在調査中ですが、今のところ反応してないようです。……無理やり破られたところや、一部が書き換えられた痕跡も見つかりません」

 

 苦い表情を浮かべる会長だが、そこまでか?

 

 敵に優れた術者がいるのなら、突破できる可能性は考慮してしかるべきだが……。

 

「現段階で一番可能性が大きいのは、裏切り者の可能性です」

 

 ………マジですか。

 

 いや、そりゃスパイの一人や二人どこにだって潜り込んでるだろ。

 

 駒王町は三大勢力側でも相当の規模になってるからな。スタッフも相当数いるから、スパイの一人ぐらいいてもおかしくないとは思うんだけどよ。

 

「それも、おそらく私達重鎮レベルのスタッフに裏切り者がいる可能性があります。そうでもなければこうも簡単に侵入されて気づかれないなど考えられません」

 

 ………いや、ないだろ。

 

「お言葉っすけど会長。ここにいる連中、そんな腹芸できるような奴らだと思いますか?」

 

 馬鹿正直が基本の俺らにそんなことできるか? 言っちゃなんだが不可能だろ。

 

 つっても洗脳されてたら定期健診でばれるだろうし、じゃあどうやってだ?

 

「しいて言うなら、オーラの似通っている近親者に腕の良い者がいる可能性ですね。超一流の術者が私達の近親者なら、時間を駆ければ手引き程度はできると思いますが……」

 

 そんな心当たり、あるわけがねえ。

 

「私、一応両親の顔とか知らないけど、それ絡みかしら?」

 

「あ、それを言ったら俺もそうだな」

 

 と思ったらあったよ。近親者の存在を知られないのが姐さんと俺の2人も。

 

 だが、会長は流石にそれはないと首を振る。

 

「そんな天文学的なことは流石にないでしょう。それなら、(シトリー)リアス(グレモリー)絡みで裏切り者がいたと考える方がまだ納得できます」

 

 う~ん。だったら一体どこから?

 

「なあ。それは気になるけど、それ以上にやる事があるんじゃないですか?」

 

 と、イッセーが声を出す。

 

 その表情は、かなりのマジギレモードだった。

 

 自分達が大切にしている平和な日常を、後輩を狙った行動で台無しにされた。

 

 ……相当むかついて当然だ。俺だって少し切れてるぜ。

 

「あいつらはただじゃ返さない。逃げられる前に一発殴らないと気がすみません!」

 

「同感ですぜ。……今回は戦争としてもかなりのグレーゾーンだ。落とし前はつけときたい」

 

 イッセーと俺の言葉に、会長も頷いた

 

「同感です。そして、その招待状を彼らは用意してくれました」

 

 そういうと同時、駒王町周辺が書かれた地図に、赤い丸がいくつも書かれる。

 

 山間部の廃棄された別荘。廃工場。そして、冥界に行く時に使った駅。

 

「この三か所で敵の反応が確認された。現在は第二中隊がそれぞれ分散して周辺の安全確保を行っている」

 

 自衛官の説明を聞いて、俺達は納得した。

 

 ……つまり、俺達は三手に分かれて行動するって事か。

 

「なら、神滅具組は分散した方がいいな。俺と姐さんとイッセーはそれぞれ別の地点を狙うべきだ」

 

「そうですね。戦力の一極集中は状況によっては悪手です。この場合は均一にするべきでしょう」

 

 そういって、ソーナ会長はにやりと笑う。

 

 俺はその凄みのある笑みに、怒りすら忘れて一瞬寒気を感じた。

 

 ああ、この人やっぱり悪魔だよ。

 

「私達の駒王学園に魔の手を伸ばした罪、彼らの苦痛と血で贖ってもらいましょうか」

 

 こりゃ、あいつら終わったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この時俺は、ヴィクター経済連合を何度も追い返してきた実績から、奴らを舐めてかかっていた。

 

 ……ヴィクターは、数々の勢力が集まって出来た組織だという事を、すっかり忘れちまってた。

 


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