ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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ヴィクター経済連合の事前準備編。

原作では調子ぶっこいたチンピラ魔法使いだけでしたが、本作では一味違いますよ?


第六章 10

 

 Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 山間部のヴィクターは、正直言って油断していた。

 

「山ごと吹っ飛ばされたら、さすがに俺たちもヤベえよなぁ」

 

 口ではそう言うが、然しそんな事は起こるわけがないと高をくくっている魔法使いが、そうのんきな事を言う。

 

 それに同意するかのように、他の魔法使いも同意の視線を向けていた。

 

 周りの者達の大半も同意見のようだ。彼らには緊張感がなく余裕だけがあった。

 

「こんなところの山をぶっ壊したら、あそこの街の連中の心象が最悪だからな。下手したら追い出されるぜ?」

 

「悪魔を許すなーって排斥運動だもんな」

 

 余裕の根幹は、この距離にあった。

 

 山の中なので人は住んでいないが、しかしかなり都市部に近い位置取り。それが精神的な枷になる。

 

 ここを大規模出力で勢いよく吹きとばせば、その時点で日本国民の心象は最悪だ。

 

 彼らは異形の存在を受け入れ始めているが、それはまだ微々たるもの。その上位陣の破壊力をよく理解していない。

 

 ゆえに、天変地異を思わせる地形破壊攻撃をすれば、その恐怖心が排斥運動に繋がる。

 

 自分達が分散して撤退用の大規模術式を展開しているそこは、まさにそういう立地を意図的に選んでいた。

 

 だから、こんなところでいきなり大火力を叩き込まれるわけがない。

 

 そう確信する者達を、蔑んだ表情で見ている者達もいた。

 

「……あいつ等、戦場ってのが分かってねえな」

 

「同感だ。あんな馬鹿どもに、我ら英雄(エインヘリヤル)が協力しなくちゃいけないとはな」

 

 唾でも吐きたい衝動にかられながら、彼等リヒーティーカーツェーンは警戒を怠らなかった。

 

 あいつらは油断している。戦場とは、そういう事があってもおかしくないのだ。

 

 最悪の場合、この地の神々が直接動く可能性もある。

 

 日本の神々が積極的に動いたという事実があれば、国民の感情を抑える事もできるからだ。少なくとも悪魔の排斥運動には繋がらないし、異形に対する恐怖ではなく神々に対する畏怖の感情にすり替える事もできる。

 

 それほどまでに、彼らは神々を脅威として認識していた。

 

 そして、それでも止まらない。止められない。

 

 それほどまでに、彼らのアースガルズに対する怒りは根強かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 また、同じような油断をしているのは何処も一緒だった。

 

 廃工場の周りを取り囲む戦車や装甲車を見ながら、のんきに酒をあおっている魔法使いまでいる。

 

「うっひょー! 自衛隊の連中もよくやるぜ。あんな兵器がなんになるってんだ」

 

「流石に戦車砲程度にやられる結界なんて展開してねえっつーの! 無駄な装備ご苦労様ー」

 

 などという挑発行為すらする彼らを前に、リヒーティーカーツェーンと同様に蔑みの視線を向けている者もいる。

 

 彼らも魔法使いといえば魔法使いだが、然しローブはつけていなかった。

 

 一見すると町中でならどこかにいそうな目立たないファッションに身を包んだ、これまた比較的地味な容貌の者達が集まっていた。

 

「なあ、この作戦参加はやっぱりまずかったんじゃないか?」

 

「確かにな。あいつ等、自衛隊が九尾の狐や北欧の悪神との戦いでも成果を上げたって事を気にもしていない」

 

 そう口々に言う彼らは、先に逃げる事も算段に入れ始める。

 

 それをたしなめる声が飛んできたのは、まさにその直後だ。

 

「だめ……です。それでは、発言力を上げれない……です」

 

 そういうのは、可憐な少女。

 

 クラスで二番目に可愛いといったレベルの少女は、強い意志をもってして逃げる算段を整えていた同士をたしなめる。

 

「教会にとどめを刺すには、ヴィクターの協力が必要……です」

 

「そ、そうだな。だけど、それなら時間が経てばいつかは―」

 

 そう言いかける同僚を、少女は視線で黙らせる。

 

 それでは駄目だと、強い意志を込めて言外に告げる。

 

「この戦争は長い……です。私達の代で恨みを晴らさなくては、子供達が可哀想……です」

 

 ファミリアは、教会を滅ぼす事を目的としてヴィクター経済連合に所属する事を選んだ組織だ。

 

 それはある意味で最初に叶ったが、しかしまだまだ教会に対する恨みは根強い。

 

 そして、それで構成員の子供の人格が歪むような事は、避けたいと心から願っていた。

 

 ゆえに、できる限り早い段階でまず教会を潰してもらう必要がある。

 

 異形達との戦いは、寿命の長さもあって何十年どころか百年を超えても続くかもしれない。少なくとも、子ども達が大人になる頃まで消し切られる事はないだろう。

 

 だから、せめて教会に対する恨みと憎しみだけは、自分達の代で晴らしてやりたい。

 

「子ども達は、宝……です。だから、彼らには健やかに生活してもらいたい……です」

 

 そう言って儚げな笑みを浮かべる少女に、二人の及び腰だったファミリアの魔法使いは頭を下げる。

 

「ああ。俺達が悪かった」

 

「言われた通り、敵の戦闘能力をきちんと調べないとな。例のクソドラゴンのテストが終わるまでは持ち堪えねえと」

 

「そのとおり……です」

 

 満足げな表情を浮かべ、少女は周囲を包囲する自衛隊を見据える。

 

「来るなら来い……です」

 

 その表情に、負けるかもしれないという不安はあっても、勝ち目がないという絶望は、ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、本命が待機している駅の地下では、臨戦態勢が整っていた。

 

「……赤龍帝はこちらに来るのか?」

 

「来ない時は転移させるだけだ。もっとも、B地点はともかくA地点は避けたいがな」

 

 そう会議を行うコノート組合の意見に、一人の男が舌打ちした。

 

 青銅器の装身具に身を包んだ、肌色の濃い男。

 

 彼はこの国があまり好きではなかった。

 

「ふん! 教会の糞共と手を組んだ連中の施設か。できればウォーミングアップにぶち壊したいところだぜ」

 

 だが、それをすれば術式にほころびが生じて余計な被害が出るかもしれない。

 

 教会の連中が何人も死んでくれれば嬉しいし、できれば苦しんで死んでくれるとなおいい。それに協力している者も、酷い目に合えばいい。彼は心からそう思っていた。

 

 だが、理由になってない理不尽な暴力はできれば避けたい。暴力は必要以上に振るうべきではないのだから。その怒りこそが自分をここに連れてきたのだから。

 

 だから、彼は苛立ちを深呼吸で沈めながら、静かに敵が来るのを待つ。

 

「やはりこのX地点が一番有力だからな。戦力はここに特に集中するだろう。ソーナ・シトリーを指揮官に、兵藤一誠を切り札とする構図が最有力だ」

 

 その言葉には否はない。

 

 ここは悪魔の施設だ。能力のある老害という迷惑極まりない者達が蔓延っている悪魔の政府に今回の失態を弁明するには、悪魔の手で解決する必要があるだろう。

 

 この駒王町にいる悪魔で最も待遇が上のソーナ・シトリーと、悪魔達のヒーローである兵藤一誠が出てくるのは、当然の事ともいえる。

 

「とは言え、ソーナ・シトリーは本部に陣取って総合指揮に専念するかもしれません。そう言う大局的な作戦指揮もできる御仁でしょうしね」

 

 と、そこに意見を言う者がいた。

 

 その者の顔を確認して、コノート組合のメンバーが居住まいを正す。

 

 荒くれ者の多い彼らとは言え、明確に契約を交わした組織だ。

 

 重鎮に対する最低限の礼儀だけは、きちんとしている。

 

「とは言え、一番冥界にとって重要なこの施設は悪魔である兵藤一誠が向かうべきところでしょう。B地点は広域殲滅能力のあるリセス・イドアルでしょうし、A地点は比較的周辺被害を押さえられるヒロイ・カッシウスでしょうね。私ならそうします」

 

 因みに、A地点は住宅街が近くにある廃工場だ。逆にB地区が、比較的人里から離れている別荘である。

 

 この三か所に投入した戦力を分けたのは、ひとえに全滅を防ぐ為でもある。

 

 地方都市で大火力攻撃で広範囲殲滅を行うとは思えないが、しかし敵が馬鹿である可能性も考慮するのはそこ迄愚かな作戦立案方法ではない。

 

 相手の行動に必ず意味や手回しがあると考えない。ソーナ・シトリーもリアス・グレモリーもまだ子供なのだ。大人ですら時折しでかしかねない失敗を、彼女達が決してしないなどとは考えない。

 

 最悪の場合、あの辣腕の総理大臣がそれを決断して要請する事もありうる。そして余計な騒ぎを自分達が押させる事もありうる。

 

 あの総理大臣は、自衛隊が異形と戦える事は理解しているし、だからといって異形の大勢力と正面衝突できるとも思ってないはずだ。いざという時の冷徹な判断もできるだけの猛者だと想定している。

 

 そこ迄踏まえたうえでの作戦。失敗は許されない。

 

 許されないが……。

 

「まあ、ヒロイ・カッシウスでもリセス・イドアルでも彼のテストには十分です。この状況になった時点で、作戦はほぼ成功ですね」

 

 それは、彼らにとってもうできたようなものだ。

 

 あとは神滅具使いが誰か一人でもこのX地点に来ればそれで十分。彼の要望を応えるのも兼ねた実戦テストを適度にして、撤退すればいい。

 

 それがヴィクター経済連合重鎮部の結論であり、そして、最後に一つだけ野暮用があった。

 

「それでは、よろしいですか?」

 

 フードの男は、青銅を身に着けた男にそう問いかける。

 

 否。彼だけではなく、通信用の魔方陣も含めてA地点とB地点の者たちにも声をかけていた。

 

「これから我々は君達のテストを行います。今後のヴィクター経済連合の作戦の主要メンバー選抜テストです。実力をきちんと示して、捕まることなく生き延びてください。そうすれば、宰相もLも今後の作戦に徴用してくださいます」

 

 そう、これが最後の野暮用。

 

 今後の主要作戦を遂行する為の、精鋭戦闘員の選抜テスト。

 

 これから、ヴィクターは本格的な攻勢を仕掛ける為の準備期間に入る。

 

 その補佐も兼ねたかく乱作戦のため、重鎮達は各地方で成果を上げた組織や、実力者が集まっている組織に要請をかけたのだ。

 

 北欧ヨーロッパを中心に、新たに参加してから勇猛果敢に攻め立てる、リヒーティーカーツェーン。

 

 混乱する聖書の教えの勢力圏内を飛び回り、そのネットワークでゲリラ戦を展開して悪魔祓いを屠ってきた、ファミリア。

 

 そして、南米の教会をいくつも滅ぼし、大司教クラスの重鎮すら暗殺した、アステカ。

 

 それ以外にも各地方で一定以上の成果を上げてきた者達が、今この場に集まっていた。

 

 多くの者達がヴィクターでのし上がる為。

 

 そして一部の組織は復讐を果たす為。

 

 ここに、ヴィクター経済連合は新たな動きを見せようとしていた。

 




 応募した勢力の内、行けると思った勢力を出してみました。ただしリヒーティーカーツェーンは自分で考えました。

 魔法使い達はぶっちゃけどうとでもなりますが、こいつらは手ごわいですぜ?
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