ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
A地点でそれに気づいたのは、リヒーティーカーツェーンの構成員だった。
「……敵襲だ、結界展開!!」
即座に動き、そして魔法使いが結界を展開。更にその魔法使いに戦士達が覆いかぶさり、楯となる。
「は?」
「いやいや。魔力も魔法も反応してねえし」
そして、魔法使い達はそれを信じられないといった感じで真剣な反応をしなかった。
……それが、命運を分けた。
―ヒュゥウウウウウウウ……
風を切る音に気付き、魔法使い達がのんきに顔を上げた直後―
「馬鹿野郎が!」
リヒーティーカーツェーンの戦士達の怒声と同時に、爆発が魔法使い達を吹き飛ばした。
更に連続する音に魔法使い達が防壁を張るが、然し薄い。
人工神器技術の流用によって急増された、火力を大幅に向上させた榴弾は、遠慮なく調子に乗っていた下位の魔法使い達を蹂躙する。
そして、その爆撃を成し遂げたのは、当然の如く自衛隊。
迅速に展開した自衛隊による、世界で「何で精鋭を一極集中させとるんじゃ(意訳)」「いや、たまたま当番の一般部隊だけど?(こちらも意訳)」という会話をさせたという、実戦経験が少ないくせして練度の高い技術と精度の高い兵器による精密間接照準砲撃。
米軍が甚大な被害を発生させるほどの猛吹雪の中、情報が届いてないとはいえ雪合戦するほどの余裕を見せる猛者すらいる陸上自衛隊を舐めていいはずがない。
その精密な砲撃が、狙い通りにピンポイントで敵陣営を直撃。即座に重厚な防御を行ったリヒーティーカーツェーン以外の人員を壊滅させる。
『全弾有効打っす! あとは掃討戦に映るので、下がってくださいッス!』
「了解した。観測データの提供、感謝する」
観測データを相手の勘違いから送ってくれたペト・レスィーヴに感謝して、陸自特科部隊は、撤収を開始した。
その情報が速攻で行き届き、それに即座にB地点の者達は対応する。
いや、それは対応ではない。ただ慌てて行動を開始しただけともいえる、判断が速いだけの愚行だった。
「し、質量でカバーだ! ゴーレムを作り出せ!!」
魔法使い達が慌てて周囲の地面を隆起させて岩人形を作り出す。
その質量はまさに圧倒的。更に魔法で強化もされているので、頑丈さも折り紙付きだ。
それを盾にして作戦終了までの防衛線に移れば、自分達なら大丈夫だろう。
……その安心は、一瞬で崩れ去った。
『……ビンゴぉ!!』
活躍の場が出てきた! やったぜ出番だ!!
そんな感情を言外に乗せて、防人一型部隊が、民家の陰に伏せていた状態から飛び上がって廃工場へと飛び込んだ。
それに対してゴーレムは腕を振り上げるが、然し遅い。
人間の反応速度で人間を遥かに超える移動速度を叩き出す防人一型に、そのような鈍重な攻撃は通用しない。
巨体ゆえに動きそのものが遅くなることを恐れた開発担当は、キョジンキラーよりも小型化させる方向で言った。
人間の反応速度と稼働速度を再現できる上で量産性を考慮したサイズに収める事で、非常に高い性能を発揮するようにしたのが防人一型。加えて、その範囲内でこういった市街地などの入り組んだ地形での戦闘に特化していると言ってもいい調整すら行われている。
そのサイズは更に人間サイズの敵との戦闘も考慮した結果ではある。だが、同時に大型の魔獣などとの戦闘も考慮している。その辺りのバランスを考慮している。
だが、最も最大限に効果を発揮するのは、やはり同等サイズの敵との殴り合いだ。
焦りに焦って作られたゴーレムは、まさにその同等サイズの敵だった。防人一型にとっては、慣れない相手だがもっともやりやすい相手ともいえる。
そして防人一型同士による模擬戦など、訓練なら当然行っている。
敵のゴーレムは、できたその場から破壊されていった。
「くそ! 作れ作れ!!」
「魔法力さえあればいくらでも作れるんだ! 数で押せ!!」
頭に血を上らせ、恐怖に心を凍らせ、冷静な判断ができない魔法使い達。
その間に、普通科の者達が廃工場に潜入している事に、彼らは全く気付かない。
それに気づいていたのは、ただ一組織だけだった。
そして、X地点にも敵が襲撃する。
それに対応するのは、戦闘訓練も実戦経験も豊富なコノート組合の構成員。
速やかにガスマスクを装着し、催涙弾を展開して隙を作ろうとする。
―っそして、暴風がそれを一瞬で散らした。
「―こんな単純な策、対策なんていくらでも思いつきます」
さらりと風を生み出して無力化したロスヴァイセの後ろから、十数人の悪魔達が現れる。
そして、そのうちの2人が一歩前に出た。
その姿を見て、傭兵達は警戒心を跳ね上げる。
そこにいるのは天龍と龍王。グレモリーとシトリーの最強戦力。伝説に名を轟かす強大なドラゴン。
赤龍帝、ドライグ。その宿主を、兵藤一誠。
そして、ドラゴンには逆鱗という概念がある。
触れれば下位の龍ですら上位の存在を滅ぼしかねないほどの、一種の起爆スイッチ。触れることが自殺行為だと言われるほどの、龍が各勢力から恐れられ、最強の存在だと言われる一つの要因。
それを、彼らは盛大に踏みつけた事を実感する。
それほどまでに、彼らは怒りに燃えていた。
「やるぜ、兵藤」
「もちろんだ、匙」
そして、その暴威が巻き起こるのを確認して、コノート組合は瞬時に判断を下した。
即座に状況を楽しんでいる愚か者達を囮に撤退戦に移行。戦力を温存しながら離脱を開始する。
そそる戦いは楽しみだが、意味もなく自殺する気はない。正直人格的にも尊敬できない馬鹿どもは囮にした方が価値がある。
そう冷徹に判断すると。コノート組合はこっそり後退を開始した。
「別荘地、表にいた戦力の七割を殲滅に成功! これより普通科部隊及び、堕天使スタッフを投入します!!」
「廃工場、防人科部隊による陽動成功。こちらも普通化及び教会、天使スタッフを中心として投入してます!!」
「駅構内にグレモリー眷属とシトリー眷属の潜入成功! 現在、敵部隊と交戦中です!」
作戦内容が逐次報告されているのは、駒王学園ではない。
ここは駒王町の範囲内にある山間部に設立された、自衛隊の駐屯地。
普通科一個大隊や、最新鋭の防人科一個大隊を保有する、対異形及び異能者に特化している防衛施設。
これまで幾度となく亡命の目標地とされ、政治的にも重要な人物が何人もいるこの駒王学園を警護する為に設立された、特例的に仮設された自衛隊の駐屯地。
たかが仮設と侮るなかれ。第二次大戦で仮設した橋を今でも使っている国があるほど、仮設という言葉を何か勘違いしている日本の建築技術をふんだんに使用した施設化に異形の技術が加わり、シスコンの魔王が「人間の技術との併用による建築技術の発展」という名目の下、あくまでポケットマネーを使う事で納得させて行われた施設は、今後の駐屯地の改設のテストケースとしても運用されているほど。
その、自衛隊の新たなる砦、駒王駐屯地。
その指令室で、オブサーバーとして推薦されたソーナ・シトリーは不敵な表情を浮かべていた。
「ふむ。思った以上に冷静だな。こちらは少々できすぎなのが気になっているのだが」
駐屯地の指令の言葉に、ソーナは静かに首を振る。
「当然の結果です。おそらく、これは8月に冥界を襲撃した時と似た目的の元行っているのでしょう」
そう、ソーナは既にこの作戦のある思惑を感じ取っていた。
「旧魔王派の大幅な失墜及び、英雄派の曹操が結果的に敗北したことによる一時的な発言力の低下。これで調子に乗ったり制御が効かなくなっている小物の勢力を間引くことも目的の一つでしょう。……もっとも、今回は実力者のテストも兼ねているのでしょうが」
裏の思惑迄読み切ったソーナは、ゆえにこそ冷静に考える。
ならば次は何があるか。
決まっている。ここからが本番で、おそらく腕の立つ相手が出てくるはずだ。
だが、ソーナは心配していなかった。
「私達の眷属も、リアス達の眷属も、下手な古参の上級悪魔よりも危険な死線を潜ってきました。……そう簡単には後れを取りません」
「自慢の部下のようだ。まあ、私もこれほどの精鋭を部下にできて鼻が高いが」
お互いに、優秀な配下を持っている事を認識しながら、二人は作戦指揮所で作戦の推移を見極める。
「我々自衛隊を舐めてかかった報い、きちんと受けさせねばな」
「もちろんです。こちらも、私達にうかつに喧嘩を売った事を、しっかり後悔させるつもりですから」
冷静に、然し残酷に。
ソーナ・シトリーは、指揮官としてこの戦闘を冷静に把握していった。
Side Out
初戦は圧倒的優勢。しかし所詮出てきたのはただのチンピラ魔法使い。
次からが、本番です。