ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
警察に連行されたレヴィアたんは置いといて、俺達は旧校舎に戻ってきていた。
なんでも俺がレヴィアたんに説教している間に、お嬢の最後の眷属であるその僧侶の封印を解くことが決定したとかなんとか。
っていうか封印? 穏やかな話じゃねえな。
「そういや、ライザーとのレーティングゲームの時にはもういたのに、参加してなかったな」
そんなことをイッセーが言うが、そうなのか?
「うん。部長は彼を助けて眷属にしたんだけど、上が部長では扱えないとして、封印を命じていたんだ」
「一応夜は封印が解けるのですが、彼自身の意志でこの部屋に残っているのですわ」
木場と朱乃さんの説明を聞きながら、俺達はその封印された部屋の前に立つ。
なんか、犯罪現場にある感じの黄色いテープで封されてるんだけど。
もっとこう、オカルトというかファンタジー的なのなかったの?
「しっかしそんな封印されてんのが、なんでまたこの時期に?」
おっかしいだろ。今、この街は三大勢力のトップが集まる予定の危険地帯だぜ?
誰もカレも町中で大暴れしたりはしないだろうけどよ、そんな時に封印する必要があるほどの制御不能な奴を開放するってどうよ?
「ある意味あなたとイッセーのおかげでもあるわね」
「へ?」
お嬢の言葉に俺はきょとんとした。
なんで俺が。しかもイッセーと。
「……フェニックスとの一戦と、コカビエルとの戦いが原因です」
コカビエルの時以外にもなんかあったのか?
「何があったんだ?」
「ああ、イッセーくんがフェニックス家の三男坊であるライザー氏相手に、赤龍帝の籠手を疑似的に禁手にして撃破したんだよ」
「さらにコカビエルを相手に真っ向から戦いを成立させたヒロイくんがおりますので、この二人がいればあの子も抑えられると判断したのでしょう」
「イッセー先輩に関しては、リアス部長が禁手に至らせる要因だと上は判断してます」
「……ようは、今の私なら扱いきれると思われたってことでしょうね」
ふむふむ、古参グレモリー眷属の方々、ご説明ありがとうござーい。
っていうかまさか、俺はその封印僧侶の監視役もさせられるのか?
まあ、月一千万円も貰ってんだから仕事はしますが……。
「で? 神滅具よりも危険視されるその僧侶って、いったい何者なんですかい?」
「そうね。まずは見てもらった方が早いでしょうね」
お嬢はちょっと困った表情を浮かべると、とりあえずテープを剥がして部屋の中に入った。
数秒後。
「いやぁああああああああああああ!?」
絹を裂くような悲鳴が響き渡った。
「部長!?」
悲鳴に反応して、イッセーが慌てて部屋に飛び込む。
いや、流石にそんな大事には……ならないよな?
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。あの子は基本的に他者に悪意を向けたりしないから、危害は加えないし」
「そうですわ。なにせ、悪魔の仕事においていうならば、リアスの眷属で一番の出世頭ですもの」
マジか。こんなところに封印されてんのに?
「……引きこもりの割には働き者なんです」
小猫ちゃんや。なんか微妙に辛辣じゃね?
「ちなみに、引きこもってんのにどうやって悪魔の仕事を?」
「ああ、ネットを利用した契約も悪魔はやってるんだよ。直接顔を合わせたくない人とかがいてね」
マジか。悪魔の世界もIT化が進んでんだなぁ。
などと語り合いながら、俺は部屋の中を覗く。
「う、うわぁああああ! また増えたぁ!?」
と、涙目で震えてるのは金髪の可愛い女の子。
そして、なぜかイッセーは崩れ落ちていた。
「お、おいイッセー!? お前ならむしろ歓喜するところじゃねえの!?」
「そ、そんな……ついてるだなんて!?」
イッセーはそう言って呆然としている。
へ? どういうこと?
「ああ、あの子は女装趣味があるのですわ」
そうなんすか朱乃さん。
………女装趣味?
「引きこもりが女装して、なんか意味あんの?」
俺はちょっと思考停止した。
「う、うぅ! 俺は、俺は一瞬で金髪ダブル僧侶ガールの夢を見たというのに!!」
「人の夢と書いて、儚い」
小猫ちゃん? 流石に今のイッセーにその追撃はやめたげて?
「あらあら。封印が解けたのですよ? もうお外に出てもいいのですよ?」
「い、いやですぅうう! 僕は一生ここにこもるんですぅうううう!! お外怖い、怖いのぉおおおお!!!」
おい、これもう重症だろ。
なんかのトラウマになってるとしか思えん。
「ゼノヴィア。PTSDになった悪魔祓いにもこんなのいなかったか?」
「ああ、外に出るのすら怖がるようなレベルはいなかったが、戦うことができなくなるほどトラウマが刻み込まれたのはまれにいたな」
俺とゼノヴィアは殺し合いに慣れていることもあり、そういうやつを見たこともある。
任務の中で死の恐怖に心が折れて、日常生活すら困難になったやつも少しはいるんだ。
だが、それにしてもこれはひどいだろ。精神科医のお世話になった方がよくないか?
「お願いだから外に出ましょう? もうあなたを閉じ込める必要なんてなくなったんだから」
「いやですうううう!! 僕は一生この部屋の中にいたいんですぅうううう!!! 箱入り息子ってことで勘弁してくださいぃいいいい!!!」
……お嬢に言われてもこれか。やっぱりかなり重症だ。
しっかしこれはどうしたもんかね。お嬢の性格からいって、封印なんて真似は嫌だったろうから好都合なんだろうけど相手がこれじゃな。
そんなこんなで眺めていると、イッセーがじれたのかその女装男子の腕を掴む。
「あのなあ。部長が外に出ようって言ってんだろ?」
「おいイッセー。この手のタイプに強引な真似は逆効果―」
俺がそう言おうとした瞬間だった。
「ひっ―」
女装男子の目が光り、そしてそのまま部屋の隅に駆け出そうとして。
「待て待て」
俺はとっさにそれを止める。
「ふぇええええええ!? なんで動けるんですかぁああああ!?」
「よくわかんねえけど、とりあえずこの部屋の中でぐらいは逃げ出すなや。俺は何もしねえからよ」
何を言ってんだ、オイ。
「―あれ?」
「今、一瞬意識が……」
「彼が何かしたようだね」
イッセーやアーシアやゼノヴィアがなんか戸惑っている。
視線を逸らすと、お嬢達は「またか」といわんばかりのため息をついていた。
ん? どゆこと?
首を傾げていると、お嬢はちょっと驚きに目を大きくして俺を見た。
「聖槍の使い手なだけあるわね。ギャスパーが止められないなんて上級悪魔でも上位の実力者ぐらいなんだけれど」
「あの、部長? 何があったんですか?」
イッセーが全くついて行けなくて、お嬢にどういうことか説明を求める。
お嬢は苦笑すると、女装男子に近づいて優しく抱きしめた。
「この子は、興奮すると視界にあるすべての物体の時間を一定時間停止してしまう神器を暴走させちゃうのよ」
あーなるほど。そういうこと。
教会でもたまに話を聞いたことあるぜ。
神器を制御できなくて生活に困ったり、酷いのになると命の危険すらある手合いってのがいるんだったな。
泣きじゃくる女装男子をなでながら、お嬢は苦笑を浮かべてそいつを抱きしめる。
「この子はハーフヴァンパイアのギャスパー・ヴラディ。
その時点で、俺は何となく想像がついた。
あ、こいつも金髪なだけあって、木場やアーシアに負けず劣らず面倒な来歴なんだなぁ。
「で、そのふぉ、ふぉーびん」
「
イッセーが名前をよく覚えられないけど、長いもんな、アレ。
「あの時は情報がわかってたからガスマスクと催涙ガス用意してもらって速攻でカタにはめたんだが、まさか俺に通用しなかったとは」
「貴方も実戦経験が豊富ねぇ」
お嬢に呆れられるけど、俺もまさか止まらないとは思わなかった。
「まあ、実際お兄様クラスともなればまったく停止できないのだけれど。この調子だと勝手に禁手に至って停止できるようになるのでは……とも言われているわ」
「マジっすか!? なんツーとんでもない神器だよ」
イッセーが驚くやら感心するやらの視線でギャスパーを見るけど、当のギャスパーは誇るでもなく段ボール箱にこもるばかり。
「み、みみみ見ないでくださいぃいいいい!!! 注目しないでぇえええええ!!!」
これが、そんなすっげえ神器ねえ?
ま、それはともかくこのショタDI〇はすっげえ才能らしい。
なんでも吸血鬼に大派閥の一つ、ツェペシュ派でも有力な貴族であるヴラディ家の出身。さらにデイライトウォーカーという日光でも平気な種族というレアキャラ。
魔法使いとも関係していたらしく、魔法にも造詣が深いところは僧侶っぽい特徴。
とどめに人間である妾との間に生まれたことから、そんな強力な神器をゲット。
だが、そうもいかねえんだよな。
「確か吸血鬼って、悪魔が目じゃねえぐらいの純血主義で血統主義でしたよね?」
「ええ。故にハーフであるギャスパーは元から扱いが悪かったのよ」
お嬢がそう言ってギャスパーにいたわりの視線を向ける。
そんでもって神器が制御できないのがさらに状況悪化ってわけだ。
ま、意識も止められてるんだから何してくるかわからねえもんな。ふつうビビル。
そして、そんな差別を生みやすい環境で怖がられる要因が生まれるとなりゃぁー、当然迫害されるわけだ。
なにせ、悪魔の上役も問題視するようなレベルだ。吸血鬼だって警戒するだろう。たぶん家の連中も止められたことがあるんじゃねえか?
で、そのギャスパーがすごいのはお嬢達も良く分かっている。
悪魔の駒の中にたまに混じっている、駒価値の上限がなんか高い代物。なんでも開発者が「それも一興」とかでそのままにしてるバグだとか。
レーティングゲームという競技においてそりゃどうよ? せめてどの上級悪魔にも一つぐらいくれてやれよと思うんだが。
ま、そんなもんが必要なだけあって才能はめちゃ高い。
高すぎるのが問題ってわけだ。
このままいけば自然に禁手に至るといわれるぐらいスペック激高。しかもそれを制御できないぐらい引き出しちまう。
そんなわけで、家を追放されてからもギャスパーに安住の地はできず、挙句の果てにヴァンパイアハンターに狩られて死にかけていたところをお嬢に拾われたと。
だっけどこれは流石にまずいよなぁ……。
「そういや吸血鬼は血が必須でしたよね? その辺大丈夫なんですかい、お嬢」
「ハーフだから輸血用パックを定期的にとればそれで十分よ。ただ、この子血を吸うことも嫌いみたいで」
吸血衝動とか、ねえの?
視線を段ボール箱INヴァンパイアに向ければ、そこから悲鳴が響き渡る。
「生臭くて嫌ですぅううう! レバーも嫌いぃいいいい!!!」
「吸血鬼失格にもほどがあるだろ」
「ヘタレヴァンパイア」
俺の呆れ果てた声に小猫ちゃんもシンクロした。
ちょっと属性がレアすぎやしませんか、この後輩。
「とりあえず、私と朱乃は会談の下準備の為に一度出るわ。祐斗もお兄様が聖魔剣で知りたいことがあるということで連れて行くから、イッセー達はギャスパーのことを見ていて頂戴」
「わかりました部長! 誠心誠意頑張ります!!」
イッセーが元気よく頷くが、これ、どうすんの?
ギャスパー、初登場。
しっかし、これが一年足らずであれだけ根性ある奴に成長するんだから、男子三日会わざれば刮目してみよとかよく言ったもんですよねぇ。
イッセーと同じく神器を禁手に至らせてないながらもギャスパーの停止を無視した広いですが、これに関しては種があります。
まあ、何事も得手不得手というものはあるということです。