ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
ツェペシェ領で、クーデターが勃発。そして新政権の長はヴァレリー・ツェペシュという情報が、俺達にもたらされた。
明らかにやばい事態で、お嬢達も軟禁状態。
吸血鬼という種族だけで解決する事に拘っていたツェペシュの追い出された王族達は未だカーミラに仕方なく頭を下げている程度だが、俺達がそこまで指をくわえて見ている必要はない。
と、言うことでオカルト研究部がお嬢達のところに合流する事となった。
付き合いの長い俺達も当然一緒に行動。追加で実戦経験の確保も考慮して、シトリーのところの新入り二名も参加する事となった。
大学部のルー・ガルーことルガールさんと、ハーデスから離反した死神の筆頭であるオルクスの娘であるベンニーアだ。
で、俺たちは荷づくりを終えて準備をしている。
「……さて、それじゃあ私達別動班が何をするかを確認するわよ」
と、最年長にして実戦経験豊富ということでリーダーになった姐さんが、イリナを除いた非グレモリー眷属組は、別同伴として動く事になっている。
「すまんな。俺は吸血鬼には嫌われているので、城内に直接迎えられるのは避けるべきなんだ」
「気にする事はないわ。どちらにしても、敵地に潜入するんだから別動隊を用意するのはおかしな事じゃないわよ」
ルガールさんをフォローした姐さんは、すぐに地図を広げた。
そこには、詳細が分からないのでぼんやりとした表記になっているツェペシェ領を中心とした、周囲の地図が広げられる。
「基本的に私達の任務は簡単。……いざという時の為に展開している、悪魔祓いを中心とした大規模部隊が非常時に突入する為のルートの確保よ」
そう。アザゼル先生は既にこの戦いがヴィクターとの大きな戦闘になる事を予期している。
ニエ・シャガイヒの復活の事もあり、アザゼル先生は聖杯がヴィクターの手にある事は想定していた。
そこに聖杯の持ち主であるヴァレリー・ツェペシェの登場と、彼女を旗頭としたクーデター。繋がっていると考えるのはおかしなこっちゃねえ。
まあ、リムヴァンは同種の神滅具を複数所持している事も多いから、まったく別件って可能性もあるんだがな。
それはそれとしてアザゼル先生から「非
現在、通常装備の悪魔祓いを中心として編成中。ヴィクターと吸血鬼のヘイト稼いでる連中のダブルコンボでの強襲作戦でもある為、かなり士気も高いらしい。
『色々アザゼル元総督殿もお考えがあるんでしょうぜ。クソ親父からも嫌な情報を聞いてますんで不安ですぜ』
「具体的に何っすか? てかどんな情報源っすか?」
ベンニーアの言葉に反応したペトが、嫌そうな表情を浮かべる。
……死神連中は結局繋がってんのか?
『安心してくだせぇ。どさくさに紛れてクソ親父が自分の賛同者をスパイとしてヴィクター側に潜り込ませてるだけでさぁ。ま、ハーデス様も似たような事をしてると思いやすがね』
マジか。あのジジイやり手だな。
で、具体的な問題点とは?
『なんでも、リムヴァンにはLという相棒がいて、そいつが今回のクーデターに全面的に協力してるとかいう話でさぁ』
……L、か。
噂には聞いた事がある。リムヴァン直属の交渉担当で、ことクーデターを勃発させる事において右に出る者はいないって話だ。
相手の不満を煽り立てて火事を起こす事が大得意らしい。そこにリムヴァンの提供する神器という餌があるからそりゃすげえだろ。ヴィクターに所属するってだけでも餌になるだろうしな。
そしてこの業界、実力者が他の方面でも優れてるだなんてことは珍しくもなんともねえ。
イッセーですら芸能界ではおっぱいドラゴンという大人気ヒーローやってるからな。戦闘能力と芸能方面の二方面で凄腕だ。
おそらくLってのも強いと判断するべきだ。英雄派の幹部クラスは想定しておいた方がいいんだろうねぇ。ああ、やだやだ。
「まあそれはいいわ。まずやる事は。潜入後にツェペシュの正確な地理を知る事。できる限り正確な地図が欲しいわね」
「霧に包まれてるから、ペトの目はあまり役に立たなそうっす」
「……俺は鼻が利くが、それだけでは無理があるだろうしな」
と、建設的な会話を進めながら、俺はこれから行く事になるツェペシェ領について思いをはせていた。
男尊主義のツェペシュで、女性でありハーフであるヴァレリー・ツェペシュがトップとなっている。
傀儡にするにしたって他に適任が良そうなもんだ。それほどまでに聖杯ってのは重要なのか? それとも、女尊主義のカーミラの取り込みすら狙っている?
とにもかくにも、俺が持つ吸血鬼のイメージや教会で教わった吸血鬼の文化とはかけ離れた展開だ。
これ、かなりやばい奴が関わっているとしか思えねえぞ……?
イッセーSide
くそ! 何て展開だ!
ヒロイ達が別行動している間、俺達はリアスと合流した。
とりあえずクーデターを起こした連中は、今のところリアスに何かしようってわけじゃないみたいで良かった。まあ、後で絶対何かするんだろうけどさ。
そして、そっからが腹が立つ!!
俺達が対面したヴァレリーは、明らかに目がイっていた。
誰がどう見ても正気じゃない。俺達と会話している間も、悪魔の俺達ですらよく分からない言葉で、何もない方向で会話らしきものをしていた。
ギャスパーが泣きだすのも当然だ。初めて会った俺でも、ショックだぜ。
しかもマリウスって元凶もあれだ。
堂々と研究の邪魔だからクーデターを起こしたとかのたまいやがった。周りの貴族主義っぽさ満々の人達が、強気になれないぐらいの権力を既に持ってやがる。
聖杯の研究者を名乗るマリウス。アイツが吸血鬼側の真のトップなのは間違いない。ヴァレリーのことも、道具としか扱ってない目をしてた。
ゼノヴィアがデュランダルを構えて切りかかろうとするのも当然だ。俺だって殴り掛かりたかったよ。
だけど、強化された吸血鬼達が話にならないような奴が控えてやがった。
邪龍最強と言われて、下手すら天龍に匹敵するとまで言われるとんでもない邪龍だ。マリウスの言っていたことだし外見は人間だったけど、オーラがドラゴンだったし間違いない。
あれはヤバイ。極覇龍状態のヴァーリを超えるかもしれないプレッシャーだ。覇光状態の曹操に匹敵するやばさを感じた。間違いなく強敵だ。
あんなのがいたんじゃ、俺達もうかつに動けやしない。
どうする? ヴァレリーを助けるのは確定事項だけど、下手に動くとややこしい事になるのは馬鹿な俺でも分かる。
俺はアザゼル先生に何かないか聞こうとして―
「―おんやー? そこにいるのはアザゼルくんじゃないっすかー?」
なんかすっげぇ馴れ馴れしい声が消えて、俺は視線をそこに向ける。
そして、その恰好を見て驚いた。
あの格好、サーゼクス様の正装とほぼ同じだ! 色がちょっと銀色中心だけど、それ以外はクリソツ。
しかもなんだ? どっかで見たような気がするぞ? いや、誰かと似ているのか?
「やっぱり来てやがったか、リゼヴィム……っ」
アザゼル先生が敵意満々の顔になる。
こんなに敵意だけ浮かべてるアザゼル先生何てめったに見られない。
どんだけそいつのこと嫌いなんですか!? いったいどんなレベルの糞野郎何ですか!?
「アザゼル? 彼は一体……」
リアスもその格好に何かを感じながら、だけど誰か分からないって言った顔だ。
それを見て、アザゼル先生は心底嫌そうな表情を浮かべた。
口にするのも嫌なんですか? どんだけの糞野郎なんですか、あいつ。
「お前が知らないのも無理はない。だが、この名前は知っているだろう」
そうリアスに前置きしてから、アザゼル先生はその銀髪のオッサンを睨み付けた。
「久しぶりだな、リゼヴィム・リヴァン・ルシファー」
……る、ルシファー!?
俺達は皆一様に驚愕してる。
だってそうだろ!? ルシファーってのは、サーゼクス様の称号じゃねえか。
いや、待てよ。
そうだ。こいつ、ヴァーリに似てるんだ!! 見覚えがあるはずだよ、あいつの顔を忘れるわけねえもん。
そしてヴァーリは人間と初代ルシファーの孫との間にできたルシファーの末裔だ。
ってことはこのオッサンは……。
「―あんたがヴァーリの親父さんか!?」
そうとしか考えられなかったけど、そのリゼヴィムとかいうオッサンは、ちっちっちと指をふる。
「おしい! ヴァーリっちの親父はもっとビビリだ。俺は更にその上、ヴァーリの爺ちゃんだよ」
爺ちゃん!? にしちゃ若い外見だけど、冷静に考えたら悪魔は外見を自由に変えられるから若くするのは当たり前か。
俺達が驚いたままの顔でいると、アザゼル先生は更に表情が歪む。
「そしてこいつのコードネームはL。ヴィクター経済連合の最古参にして、リムヴァンの右腕だ」
……なんだって!?
ヴィクター経済連合の最古参!? それって、つまり、ヴィクターを作った男ってことか!?
俺達が目でそうなのかと問いかけると、リゼヴィムはふふんと胸を張った。
「その通り!
な、なにぃ!?
禍の団以外のヴィクター経済連合は、こいつが作っただとぉ!?
ってことは、こいつは世界を混乱の渦に叩き込んだ元凶の一人じゃねえか!
思わず殴り掛かりたくなるけど、そうもいかない。
だって、そんな奴がこんなところにいるって事は―
「既にツェペシュのクーデター組との交渉は進んでるって事か。ここで手を出したら俺らが袋だな……っ」
「うんうん。アザゼル先生もそこの彼らも理解が速くて助かるぜ。ここで俺様ちゃんに手を出すと、マリウス君も速攻で増援を送ってくるから、今はやらない方がいいと思うぜ? それに……」
そう言いながら一歩下がるリゼヴィムの陰に、一人の少女がいた。
……オーフィスそっくりの女の子。しかも、纏ってるオーラも結構近い。
まさかこの子は―
「オーフィスから英雄派が分捕った力を使って作った俺達のウロボロスだ。名前は俺のお袋からとってリリスって名付けさせてもらったぜ」
リリスを抱き寄せながら、リゼヴィムは悪意がもろに見える表情を浮かべる。
俺達がオーフィスと仲良しなのを知っているから、あえてそうしてやがるな。
ああ、こいつはクソ野郎の類だってよく分かる。アザゼル先生が睨み付けるわけだぜ。
「ま、このままだと君達は暴発しそうだから今日はもう帰るよ。……それと、良い事を教えてあげよう」
振り返ってそのまま廊下を歩きながら、リゼヴィムの奴は流し目でこっちに視線を向けた。
「このままいきゃぁ現ツェペシェ派はヴィクターにつく。本格的に駐留部隊が来るまでに、侵攻準備を整えた方がいいぜ、三大勢力の諸君!!」
そうかよ。俺達がここに侵攻する準備をしてる事も想定内ってか。
なめやがって。覚えてやがれ。
……ヴァレリーは、必ず助け出してやるからな!!
ついにリゼヴィム登場。しかも初期からがっつりかかわってました。
こっから少しの間、イッセー支店での話が続きます。