ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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第六章 21

 

 Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 酔って火照った体が覚めるのを待ってから、ニエはツェペシュ城に戻った。

 

 どうもこの城の雰囲気は好きになれない。

 

 高潔すぎるというか俗っぽさがないというか。とにかく一般人には馴染めない空気が続いている。

 

 プリスを連れて外に出たのもそれが理由だ。ここに長くいるのはどうも好きになれない。

 

 プリスは特に気にしていないようだ。気になって聞いてみたが、どうも慣れてるらしい。

 

 そういえば、ゼファードルは分家出身とは言え元72柱の貴族で、本家の代理とは言え跡取りになった男だ。あれでそういう貴族としての豪奢な環境に慣れているのだろう。

 

 その眷属を7年ほど勤めているのだから、当然といえば当然の対応だった。

 

 貴族との応対など礼儀作法が必要な時でも、プリスにフォローされたことを思い出して、ニエは苦笑する。

 

「戻ったよ」

 

 そう言って部屋に入ると、そこには椅子に座ったまま眠っているプリスがいた。

 

 そしてボケっとしていたリリスが、ニエに気づいて声をかける。

 

「ニエ。おかえり」

 

「ただいま。リゼヴィムさんは?」

 

 一応リリスはリゼヴィムの護衛だ。本来なら一緒にいる必要がある。

 

 だが、最近リゼヴィムは姿を見せない。常にマリウス達の吸血鬼と会話していたり、通信でヴィクターの元老院と通信している。

 

 今回もそうなのだろう。リリスは首を横に振った。

 

「まだ帰ってない。プリス、眠っちゃった」

 

「そうだね。疲れてただろうしそっとしておいてあげようか」

 

 そう言うと、とりあえず近くにある毛布をプリスにかける。

 

 ……だいぶ昔。ニエにとってはちょっと前の時は、これが逆だった。

 

 マネージャーとして支える為に勉強をしている間に眠ってしまった自分に、プリスやリセスは毛布を掛けてくれたものだ。

 

 それが、今やプリスを支配下に置いてリセスを殺そうとする日々。

 

 だが、そうでもしなければ耐えられない。

 

 待遇はともかく、事実上の奴隷として使役される事を選んだプリスはまあいい。

 

 だが、リセスは赦せない。

 

 立派な決意に立派な覚悟。根幹にあるのが逃げだったとはいえ、リセスの行動は高潔だったのだろう。

 

 だが、綺麗すぎるところに魚は住めない。

 

 ニエ・シャガイヒという神滅具を移植できるだけの普通の少年に、その気高い行動は耐えられない。

 

 それに比べれば、やけを起こして奴隷となったまま生きようとしたプリスには理解が及ぶし同情すらできる。

 

 彼女はこれからはニエの奴隷として生きようとしているのだ。そうして使っている限り、ニエの心は少しは晴れる。

 

 そう、晴れるはずだ。

 

「……ニエ、ニエ」

 

「ん? なんだいリリス」

 

 ニエはかがみこむと、服の裾を引いてきたリリスに視線を合わせる。

 

 できれば、この子を戦わせるのは嫌だと思う。

 

 長い年月を生きてきたオーフィスはともかく、この子は生まれたての子供だ。

 

 そんな子供を戦わせるのは、ちょっと嫌だった。

 

 だからだろう。リゼヴィムと一緒にいない時は、自分が面倒を見ている時が多い。

 

「絵本、読んで」

 

「ああ。じゃあ、何を読もうか」

 

 ……絵本を読み聞かせるのは慣れている。

 

 イドアル孤児院でプリスとリセスと遊ぶ時は、小さな子供達が関わる時も多かった。

 

 だから、そういう事をして年少者の面倒を見た事も一度や二度じゃない。

 

 膝の上にリリスを乗せて、ニエは絵本を聞かせて語る。

 

 そうすると、いつもは黙って聞いてくれるのがリリスだ。

 

 だが、その時は違った。

 

 なぜか、リリスはニエの方を向いて首を傾げていた。

 

「……どうしたんだい? もしかして僕、のどを痛めてたかな?」

 

 霧が立ち込める中だから、保湿ぐらいはされているとは思っていた。しかし湿度の低くなる冬に入っているルーマニアだから、何かしらの影響があったかもしれない。

 

 そう思って聞いてみて―

 

「―ニエ、泣いてる?」

 

 ―その言葉に、ニエは返答することができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

 

 

 

「こういう空を見てると、昔のことを思い出すわねぇ」

 

 そう、懐かしさと寂しさを込めて、姐さんはつぶやいた。

 

 既に侵攻部隊を突入させる為の準備は完了。

 

 兵士の詰め所とかも確認できた。結界の中でも突破し易いところも把握できた。ツェペシュの城までのルートも把握できた。

 

 だから、俺達は今待機中ともいえる。

 

 そんな中の言葉に、俺達はなんとなく興味を持った。

 

『エッチなお姉さん。それは、あっしらに聞かせてかまわない内容なんですかい?』

 

「あ、問題ないわ。英雄を目指して特訓してた頃の話だもの」

 

 そうベンニーアに答えると、姐さんは手に持っていたコーヒーを飲みながら、語り出す。

 

「あの頃はとにかく特訓と金稼ぎの売春ばかりしてたわね」

 

「既に問題だらけだぜ姐さん」

 

 売春って言葉が既にアウトですぜ姐さん。

 

 だが姐さんはスルーしやがった。

 

「とにかく手っ取り早くお金を稼いで、空いた時間は特訓三昧。あの時は煌天雷獄の能力を至近距離でしか展開できなかったから、格闘技の本を買って独学で調べてたのよ」

 

 なるほど。姐さんが近接戦闘主体なのはそういうことだったのか。

 

 煌天雷獄って中距離戦闘や広範囲殲滅に真価を発揮する神滅具なのに、なんでそんな方向性なのか疑問だったんだ。

 

 そして姐さん。売春うんぬんはどうよ?

 

 俺はそんな疑問の視線を向けるが、姐さんは気づこうとしない。

 

「……諦めた方がいい」

 

 ルガールさん。あんた年長者なんだから代わりに言ってくれや。

 

「それで、お姉様? 何を思い出すんですか?」

 

 ペトも話を進める方向に行きやがった。ツッコミ入れる気が欠片もねえ。

 

 ベンニーアが何歳なのかは知らねえけど、俺らより年下っぽいんだけど? 売春なんて知識、与えない方がいいんじゃねえか?

 

 俺は自分から言うべきか思ったが、しかし姐さんの話は進む。

 

「あの頃は自分の気持ちが反映されてたのか、思い出す天気はいつも曇り空ばかりなのよ。本当は、晴れてる時の方が多かったはずなんだけどね」

 

 そう言いながら、姐さんは空を見上げる。

 

「……今のニエも、そんな風に思ってるのかしらね」

 

 ……その表情は、ちょっと可哀想で見てられなかった。

 




ちょっとしたリセス達三人の幕間的な話でした。









因みに裏話ですが、この三人で一番戦闘「技量」が高いのは実はプリスだったり。

リセスは執念で戦闘技術を会得していますが、もともとの戦士としてのポテンシャルは低いです。サーヴァント化するにしても戦闘系のスキルは現状会得していません。ニエは戦闘経験も戦闘訓練も足りてないうえに、根が普通なので過酷すぎる特訓をすると心が折れる可能性があるのでリムヴァンもハードトレーニングは積ませてないです。

そういう意味では純血上級悪魔という努力を軽視する環境で、神滅具使いであるヒロイを一人で足止め出来たプリスが一番センスがあるというのは、こうしてみると納得できることではないでしょうか?
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