ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
……嘘は言ってませんよ?
そして、事態は動き始めた。
合流作戦などをスムーズにする為に別行動していたベンニーアとルガールさんが、カーミラ派の吸血鬼であるエルメンヒルデとかいう奴と接触。
そして、その情報が伝えられた。
「……ヴァレリー・ツェペシュから聖杯を引き抜くだと?」
そんなことをすれば、ヴァレリーはほぼ確実に死ぬだろう。それが神器の摘出というものだ。
リムヴァンはほぼノーリスクでそれができるらしいが、おそらく吸血鬼側は独断で動こうとしている。
っていうか、ヴァレリーが死んでも別にいいとか思ってるんだろうよ。純血貴族の吸血鬼が、ハーフをまともな命として扱うとも思えねえ。
チッ! こっちもすぐにでも突入できるが、間に合うか?
『こちらはグレモリー眷属と合流する。カーミラ派はすぐにでも侵攻を開始するそうだ』
「分かったわ。なら、こっちもそのタイミングで仕掛けた方がよさそうね」
ルガールさんと姐さんはそう示し合わせる。
まあ、イッセー達がこんな事を知ったら、すぐにでも動くに決まってる。
俺らもさっさと動かねえとな。
「部隊指令! ツェペシュ派で動きがあったわ。カーミラが仕掛けるのとタイミングを合わせて、仕掛けるわよ」
「了解した。……吸血鬼どもめ、奴らに聖杯を好きにさせるものか!!」
部隊指揮官はかなり気合が入っている。
入ってんのはいいんだが……。
「ヒロイ。これ、自分達で監視しないとまずいんじゃないっすか?」
ペトも不安なのか、殺気立っている侵攻部隊を見て、不安げな表情を浮かべる。
確かに、目的はあくまでクーデターを起こした暫定政権の無力化のはずなんだが、吸血鬼に対する本格的な討伐にすり替わっている気がする。
民間人に被害を出すつもりはない。そりゃ、こんな大規模な強襲を仕掛ければ被害は多少は出るが、それでもむやみやたらに大きくするつもりは欠片もない。少なくとも、俺達は。
だが、悪魔祓いを中心としている侵攻部隊は、吸血鬼という種族そのものをターゲットにしている節がある。
「たとえ主はおらずとも、主の教えは残っている」
「異端の極みたる吸血鬼どもめ。裁きの時だ」
明らかに作戦を間違えてる気がするんだが。
民間人は狙わねえからな? 狙うのはあくまで、クーデターを起こした暫定政権とその走狗だからな?
これ、一応釘を刺しておいた方がいいんじゃ―
「―悪いけど、そうはさせない」
その言葉が、俺の思考を一瞬止める。
振り返れば、そこには三度目になるあの野郎の姿があった。
姐さんも目を見開き、歯を食いしばる。
「ニエ……っ」
「久しぶりだね、リセス。いや、大して経ってないか」
ニエ・シャガイヒ!
イッセーからツェペシュ領にいるのは聞いてたが、ここで来るか!!
ええい、こっちの行動が読まれてる事も分かったうえで仕掛ける気だったが、やっぱり先手を打ってきやがったか!!
「何をしに来たの?」
「避難が終わるまでの時間稼ぎさ。だから、それまで何もしないなら手を出さなくていいとも言われてる」
……なるほどな。
暫定政権はヴィクターと半ば同盟状態だ。そして、ヴィクターは一応民間人には積極的に被害をくわえないようにしている。
だから、ツェペシュ領の一般人に被害が出ないように動いているってわけか。
「吸血鬼風情の為に命を懸けるか、この異端者め!!」
「いいだろう。人を殺すのは気が引けるが、貴様も亡き主に変わって裁いてくれる!!」
血の気の多い悪魔祓いが、俺達が制止しようとするよりも早く飛び出した。
そのまま光力の弾丸を打ちまくりながら、光の剣を展開する。
―そして、それはニエに当たる前に弾き飛ばされた。
「……コンキスタドールの末裔が。正義ぶってんじゃねえ」
ぎろりと睨みを利かせる、南米の原住民が来てそうな格好をした男達が、ニエを庇う様に俺達に立ちふさがる。
イッセーの言っていたアステカの連中か。そりゃ一人だけで送り込むわけがねえよなぁ!!
更に、後ろで悲鳴が上がった。
振り返れば、そこには魔法による砲撃が叩き込まれている。
「……教会の狂信者共。先祖の恨み、ここで清算する!!」
「妄信の徒は赦さない!!」
今度はファミリアか!?
待て。ってことは―
「ヒャッハー!! 戦闘だぁああ!!」
「貰った金の分は仕事はするぜぇえええええ!!!」
更にコノート
「瞬殺一撃、チーズストレート!!」
その声と共に、チーズが悪魔祓い達を粉砕しながら俺に襲い掛かってきた。
即座に魔剣の群れで防ぐが、八割ぐらい砕け散る。
なんツー破壊力をチーズに持たせてるんだよ。悪魔祓い達の死で勢いが削がれてなけりゃ、俺も喰らってたぞ。
「我がチーズを防ぐか! だが、それでこそ三大勢力の精鋭だな!!」
確か、メーヴ・コノートだったな。ここで来るとは面倒極まりねえ!!
っていうか、駒王町に仕掛けてきた派閥の連中が勢揃いって事は……。
「ふん。アースガルズの裏切り者を裁く前に、怨敵聖書の陣営をまたも相手にする事になるとはな」
出て来たよ。北欧神話からの離反者、リヒーティーカーツェーン!!
「我らが領域を土足で踏みにじった罪、その命で償うがいい!!」
「上等だ異端者共!! まとめて裁きを下してくれるわ!!」
ああもう! ややこしい事になってきやがった!!
イッセー。無事でいろよな!!
Other Side
リセスはこの混戦の中、ニエだけを狙って行動していた。
ドーインジャーを大量に生産して、数を増やされたらたまったものではない。ここで抑え込んでそんな余裕を生ませない事が最重要だ。戦局に響く大事な役目である。
それに、できる事ならニエの相手は自分がしたかった。
ニエがヴィクターの尖兵となったのは、元を質せば自分に責任がある。全面的に自分が悪いと言いたくなるぐらいには、リセスは責任を感じている。
だから、ニエを止めるのも自分の役目だ。絶対にとは状況が許さないだろうが、できる限りはそうしたい。
第一神滅具の禁手を使いこなす手合いなど、それこそ神滅具持ちでなければ務まらないだろう。そういう意味では当たり前だ。
「ニエ!!」
「やあ、リセス!!」
放つ拳を、ニエは受け流す。
受け止めるのでも食らうのでもなく受け流す。リセスの拳は、我流ではあるが非常に鍛え上げられたものだ。それをなすのは、簡単ではない。
すなわち、ニエも相当に鍛錬を積んできたということだ。
「鍛えたのね、ニエ」
「ああ、もちろんだよ」
攻撃をかわし合いながら、リセスはニエを想う。
蘇ってから神滅具を移植し、更にはそれを憎悪で即座に禁手へと至らせた。
ニエの自分に対する憎悪は強い。だからこそ、彼は普通の少年でありながらここまで強くなった。
かつてヴァーリは、イッセーの両親を殺そうとした。挑発目的ではあるのだろうが、本当にやっていた可能性もある。憎悪による覚醒を促そうという節があった。
それは的外れではなかった。それをニエが証明している。
リセス・イドアルの二年間の特訓と五年間の実戦は、彼女を高い領域に上げている。
それを僅か数か月で食い下がるほどにまで鍛え上げる。それがどれだけ大変なことか、七年間の積み重ねの負担を知っているから分かってしまう。
そして、それが少しだけ嬉しい。
「頑張ったのね、ニエ」
「そりゃ、君を殺せないからね」
そんなそっけない返事も構わない。
ニエ・シャガイヒは自分に憎悪を向けている。
それは最初から分かっていた。それでも思い知らされて心が折れそうになった。そして、今でも向き合うのは正直辛い。
だが、ニエはリセスを超える為に全力を尽くしている。
それほどまでに、リセスを思っている。
それが、少しだけ嬉しい。
何も思われないよりは、憎まれた方がましだという意見がある。
是非はさておき、どうやら自分もそうだったらしい。
それほどまでにニエにとって自分の比重が重いことに、ほんの少しだが感謝の気持ちが浮かぶ。
だから―
「本気で行くわよ、ニエ!!」
その全力に、リセスも全力で応えたい。
今更許されるわけもない。七年前の裏切りは、それだけのことだった、七年間の迷走は、それをどこまでも深くした。
それでもだ。だからこそだ。
ニエに対しては、誠実に向き合いたい。
「勝負よ、ニエ!!」
「死んでくれ、リセス!!」
オーラを纏った拳と、魔獣となった拳がぶつかり合い、衝撃波を放つ。
どうやら熱衝撃用に耐熱耐寒フィールドを生成する機能を盛り込んだようだ。低出力だったとはいえ、ディストピアアンドユートピアでも傷一つつかない。
自身を思い描いた通りの魔獣に編成させる、
それは、通常の自己強化型神器や禁手を圧倒する対応能力を生み出す。
なにせ不利になったら、状況をひっくり返せる魔獣に変成し直せばいいのだ。これは非常に有利に立ち回れるだろう。
だが、多様性ならこちらも捨てた物ではない。
あらゆる属性を支配し、天候を操るのが
なら、易々と負けてやる道理はない。
「ニエ、ここで決着をつけるわ!!」
「ああ。君の死でね!!」
拳と拳がぶつかり合い、周囲の地面を吹き飛ばすほどの衝撃がほとばしった。
Side Out
大量に敵勢力投入。ルーマニアは地獄だぜえええええ!!
因みに急成長しているニエですが、これはヴィクターの指導が的確なこともあります。あと魔獣変成がチートなこともあります。
あとすいません。バトル突入といいましたが次の話ではその裏で起こっているイッセー側の事情編ですのでいったん中断です。
予告しますと、ようやくリムヴァンによる大量の神滅具提供などの種が明かされます。……一部に関しては時系列の都合上ちょっと隠しますが。