ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
細かい説明をしますと、前回の世界線移動は十年弱ほど前。トライヘキサを開放して暴れたのは良いですが、グレートレッドとオーフィスの最強タッグ結成を招いたため逃亡したタイミングになります。
因みに、その時は吸血鬼に接触していろいろと行動していました。その過程においてヴラディ家と接触し、時空を支配する邪眼王を発見。……その後それを使っていた時にその世界のアザゼルとぶつかって、命名されたというわけです。
なので、そもそもイッセーはまだ十代にもなっていない時期。当然赤龍帝の籠手にも覚醒していません。
そこに映った映像は、破壊の嵐だった。
どこかの中世を思わせる町が、ドーインジャーとドラゴンによる侵略を受けている。
狙われてるのは豪華な屋敷やお城が中心で、一般人が住んでそうな場所には流れ弾ぐらいしか当たってないのが救いだ。それも、防護障壁を展開しているドーインジャーによってある程度は防がれてる。
っていうかなんだよあのドラゴン! あんなの見たことねえぞ!?
その光景を見て、リゼヴィムは頬を少し赤く染めながら興奮してテンションを上げていた。
「うっひょー! 思った以上に面白いですなぁこれは!」
「うんうん。これはダイナミックで大迫力」
リゼヴィムに同意するリムヴァンは、俺達を振り返るとにやりと笑った。
「……質問だけど、クーデターを起したツェペシュは、具体的に聖杯をどう使ったかな?」
どう使ったか?
そりゃ、自分達を強化することに使ったんじゃねえか。
吸血鬼の肉体が持つ、日光やニンニク、十字架などの欠点。それを聖杯の強化能力を使って補ったんだ。
これで家畜を好きにできるとか、マジでむかつく事ばかり言ってやがったな。
……待てよ? クーデターに参加した連中は、そういう吸血鬼の弱点を疎んでたんだよな?
ってことは、同じように吸血鬼の特性を嫌ってる人達って、カーミラにもいるんじゃ……っ!?
「まさか、あそこはカーミラの街かよ!!」
「ぴんぽーん! 今代の赤龍帝は物が考えられるんだねー。僕はご褒美に飴を上げたい!!」
リゼヴィムがマジで飴を出すけど、俺はそれをドラゴンショットで吹っ飛ばす。
マジでいらねえ! 誰がてめえから物を貰うかよ!!
っていうかつまり、カーミラの方にも内通者がいたって事か。それがあいつらを手引きしたと。
そりゃそうだ。吸血鬼の悪魔を超える弱点の多さは、確かに嫌に思う人たちも多いだろう。克服できるなら克服したいと思ってる人はたくさんいるに決まってる。
ツェペシュの奴らもそういう連中が中心だった。それは、カーミラにもいたって事か。
なんてこった。俺達は、まんまとヴィクターに踊らされてたってのかよ!!
「実は僕らとしてはツェペシュは囮でカーミラが本命でね。ツェペシュの方はマリウス君が研究したがって時期を待ってられなかったから、カーミラ側のクーデターを応援する事にしたんだよ」
リムヴァンは種明かしをする中、破壊は続けられて城に大量のドーインジャーが突入する。
しかも、イグドラフォースの連中が何人かいた。あいつらもこのクーデターに参加してるのかよ。
これはマジでまずい。カーミラの武闘派は、たぶんツェペシュのクーデターを鎮圧する為にかなりの数が動員されてるはずだ。カーミラ自体は手薄になってるだろう。
これ、制圧されるのも時間の問題じゃねえか!!
「リゼヴィム! あのドラゴンは、まさか聖杯で作ったのか!?」
「もちのろん! うちの邪龍軍団のデータをもとに創った量産型邪龍さ!」
アザゼル先生の言葉に、リゼヴィムが肯定する。
おいおい。更にここで敵の新兵器まで登場かよ。しかも聖杯を悪用した特別性ってか。
ここにきて、ヴィクターの連中も戦力を強化してきやがった。いや、もしかすると今まで手を抜いていただけなのかもしれない。
俺達は、思っていた以上にやばい連中を敵に回してるぞ……っ!
「本当は吸血鬼達を改造するつもりだったんだけど、リムヴァン君がダメっていうから、その辺の野生動物とか家畜とかをベースに創らせていただきました。おじさん、ちょっと残念」
「悪いねL。ほら、それやると今度はうちの一般人がデモとか起こしそうだし、国家側の人達がヴィクターを離反しかねないからさ」
なんてふざけた会話だよ。
くそ、リムヴァンもやっぱり邪悪な奴だ。こいつ、ヴィクター経済連合を作ってなければ吸血鬼たちを邪龍に改造してる可能性があるじゃねえか!!
俺達がこのふざけた悪夢に怒りを燃やしてると、リゼヴィムはそれを残念そうに見てくる。
「……ほんとに正義の味方だよ。根っこからの善人が揃ってやがる。うんざりだねぇ」
吐き気すら催してるかのように、リゼヴィムはそう吐き捨てる。
ふざけんな! こんなの見せられて気分が良くなるような奴、ろくでなし以外の何物でもねえ。
俺たちが敵意をより強くすると、リゼヴィムはリゼヴィムで不快げな表情をより強く浮かべる。
「俺たちは悪魔だぜ? 「悪」徳な「魔」性であるべきだ。それこそ世界を大混乱に包み込むぐらいの悲劇を望むぐらいじゃなきゃダメだと思うけどねぇ」
そうかい。そんなにそういうのが大好きなのかよ。
悪いが、俺は悪魔だけど自分の楽しみの為に大惨事を引き起こす趣味はねえ!!
ヤッパリここでこいつは倒しておかないとまずい。くそ、でもどうする?
俺がその方法がないか考えていると―
「……なんだ?」
ゼノヴィアが唐突に上に視線を向ける。
一瞬送れて、大きな振動が響き渡った。
地震か? でも、ヨーロッパじゃ珍しいって聞いたけど。
そう思ったけどやっぱり違う。
瞬間的に大きな振動が、しかも何度も連続して発生する。
なんだよこのタイミングで。
「ああ、因みにそういう改造をした生物は、このツェペシュにもばらまいてるよ」
……オイ、リムヴァン。今なんて言った?
カーミラの街を蹂躙している邪龍が、こっちにも大量に出て来てるだって!?
そんなの……最悪じゃねえか!!
俺達が顔を青ざめていると、リゼヴィムがパチンと指を鳴らした。
「んじゃぁ、見るなら生がいいよね♪」
そう言い放ち、奴は転移用の魔方陣を展開する。
そして、俺達は転移の光に包まれた。
Side Out
クソッ! 今度は何だよ!!
ニエ達との戦闘ではぐれた俺は、とんでもない光景を目にする羽目になった。
いきなり明らかに邪悪そうなドラゴンがそこかしこから現れると、俺達に襲い掛かってきやがった。
躱すと流れ弾でツェペシュの街に被害が出る。何とか防御してしのぐしかねえ。
つってもこいつら、下手な中級悪魔なら返り討ちにできるレベルだぞ!!
「何処から湧いて出てきやがった!!」
とりあえず一匹を魔剣で串刺しにするけど、かなり大量に出てきてやがる。
建物を駆けあがって確認しただけでも、軽く百は越えてる。
しかもそいつらは、俺達強襲部隊やクーデター鎮圧の為に来た吸血鬼達に襲い掛かっていた。
積極的に一般人に攻撃を仕掛けてこないのは助かるが、こりゃまずいな。
やるしかねえか。……これも英雄の務めってやつだ!!
「堅気の奴らまで巻き込ませるわけにはいかねえな。かかってこいや蜥蜴ども!!」
全力で叩き潰すしかねえ!!
俺は速攻で、こいつらを叩き潰す為に駆け出した。
Other Side
そして、その非常事態をリセス・イドアルもまた確認していた。
「何よ、この龍は!!」
後ろから襲い掛かってきた邪龍を、リセスは裏拳で叩き落す。
戦闘能力は中級悪魔を苦戦させるレベルだろう。確かに強いが、最上級クラスとすら優勢に立ち回れる自分には敵わない。
しかし、かなりしぶといようだ。骨を砕くつもりで殴ったのだが、裏拳程度では行動不能にはならないらしい。
「リゼヴィムさんにリムヴァンさん、動いたのか」
ニエはニエで、苦苦しい表情を浮かべて遠くに視線を向ける。
確か、あの方向にはカーミラの領地があったはずだ。何故そこを向くのか分からない。
だが、ろくなことになってないのは明白だった。
「カーミラの方は手薄なはず。……まさか、二正面作戦!?」
規模が吸血鬼より圧倒的に巨大なヴィクターだからこそ出来る作戦だ。
普通にやっても強引に押し切れるだろうに。わざわざこういう行動をとるあたり、いろいろと性根がねじ曲がっていると考えるべきか。好意的に見れば効率を重んじているとも言えるが、たぶん違うだろう。
そう思っていたら、何時の間にか邪龍が炎を吐き出した。
とっさに回避をして、そして一瞬で後悔する。
「―え?」
そこには、民間人と思われる吸血鬼がいた。
何が起きたかよくわからず、野次馬根性で外に出たのだろうか。それとも、どこかに逃げるために飛び出したのか。
どちらにしてもまずい。
明らかに一般人だ。吸血鬼だということを考慮しても、大して頑丈ではないだろう。戦闘技術を習得している動きでもないので、防御魔法も使えまい。
この一撃、喰らえば確実に彼は死ぬ。
「しまっ―」
うかつだった。戦闘している間に民間人が出てくるようなところまで来ていた事に気づかなかった。
かなり集中しなければニエとの相手はできないわけだが、しかしそれが仇となった。
とっさに飛び出すが、当然間に合うわけがない。攻撃の方がスピードは速い。
その一瞬で、悲劇が脳裏をよぎり―
「G型!!」
ニエの焦った声が響き、その声と共にドーインジャーが吸血鬼と邪龍の間に割って入る。
そしてドーインジャーは全ての腕を炎に向けると、防壁を生み出した。
中級クラスでも防ぐのに苦労するレベルの攻撃を、そのドーインジャーは受け止める。
そして、同時に生体ミサイルが放たれて邪龍を撃ち落とした。
「大丈夫かい!?」
「無事!?」
ニエとリセスが同時に無事を確認し、その吸血鬼は腰を抜かしながらもがくがくと頷く。
どうやら怪我一つないらしい。さすがは禁手に至った魔獣創造で生成されたドーインジャーといったところか。それも防御特化型のようだ。
邪龍が動かなくなった事を確認してから、ニエがほっと息をついた。
「……要人警護用のG型の生産も習得しておいてよかった。リセス、周囲には?」
「今のところはないわ。でも、この調子だとまだまだ増えるわよ?」
ニエがG型というドーインジャーを生み出しながら周囲を警戒し、リセスもまた、始原の人間の力で五感を強化して周囲を警戒する。
この事態がどこまでヴィクターの考えた物かは分からない。
だが、確実に民間人に被害が出るだろう。
この一般人は氷山の一角だ。既に被害は出ているだろう。しかもここからも増え続ける。
「……リセス。僕はこれからこの区域をドーインジャーで警護するよ」
ニエがそんなことを言って、リセスは目を見開いた。
思わぬ展開だ。
それは、民間人のことを配慮したことではない。ニエは普通に善良なので、自分で対処可能だとわかっているのならある程度はできるだろう。これが自分の命が危険極まりないなら恐怖にかられるかもしれないが、実力差がはっきりしている相手に躊躇するほどではない。
それは、
自分と戦っているこの状況下。それをあえて投げ捨てて、他の人のことに意識を向ける。
それに、何か感じる自分がいた。
「……どうするんだい? これ以上放っておくと、被害が増えるよ?」
「―ッ!」
その言葉にはっとなる。
仮にも英雄を目指すと公言している自分が、無辜の民の犠牲を無制限に許容するなど断じてしてはいけないことだ。少なくともヒロイとペトに胸を張れない。
決着はつけるべきだとは思う。だが、それは今ではなくてもいいはずだ。
「……礼を言うわ」
「いいから。急いで行ってくれ」
その言葉を背に受け、リセスは即座に移動を開始した。
Side Out
因みにG型は防御特化型。
障壁発生能力を保有し、味方の楯となることが目的の使用です。