ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
で、まかされた俺たちはいま、外に出ていた。
とりあえずジュースを買って飲むことにして、金持っている俺が買いに行くことに。
で、戻ってきてみれば―
「さあ、走らなければデュランダルの錆になるぞヴァンパイア!!」
「ギャーくん、ニンニク食べてスタミナ付けよう?」
「いやぁああああ!! ニンニクきらいぃいいい! 浄化されちゃぅうううう!!!」
ゼノヴィアと小猫ちゃんに追いかけまわされるギャスパーの姿が!!
「いや、何やってんだよお前ら」
どう考えてもPTSD発症してる連中に荒療治とか駄目に決まってんだろ!
俺はとっさに聖槍を出すと、二人とギャスパーの間に割って入る。
「こういうのはこっちの寛容と忍耐が大切なんだよ!! そんなぶち殺す気満々の装備で追いかけましたら悪化するだろうが、馬鹿ども!!」
「何を言うか。健全な精神は健全な肉体に宿るというではないか」
「……それは誤用です」
小猫ちゃんや。わかってるならなぜ追い掛け回す。
「ひぃいいいい!? ヒロイ先輩、助けてくださいぃいいい!! 聖剣いやぁ、浄化いやぁぁぁあああああ!!!」
「ほらもうさらにひどくなりかけてるだろうが!! おい、イッセーもアーシアも何か言ってやれ!!」
俺は増援を求めて二人に視線を向けるが。
「お、男だと? あんな可愛いのに、ついているだと?」
「匙さん? なにがついているのかわかりませんが、元気を出してください」
匙までもが現れて、心底落ち込んでた。
いや、まあこのレベルのかわいい子が実は男だとか俺もちょっとショックだけどよぉ。
にしても、これどうすんだ? どうにかして止めねえと……。
「おーおー。悪魔どもと聖槍使いがあつまって何してんだ?」
と、そこに着流しを着たオッサンが現れた。
悪魔の存在を知ってるってことは、異形関係者か?
しかし、相手が悪魔なら俺たちに一言連絡があってもいいはずだし……。
俺がそんなことを考えたとき、イッセーが目を見開いて神器を展開して大声を張り上げた。
「……アザゼル!!」
「へ? アザゼル? アザゼルって……堕天使総督!?」
イッセーの声に少し遅れて、匙がパニックになりかけながら神器を展開する。
おいおいおいおい。なんでこんなところに堕天使総督が現れんだよ!!
俺たちは全員で得物を展開したり身構えたりする。
そんな全力警戒態勢にもかかわらず、アザゼルの奴はものすごく平然としてあくびまでしやがった。
こ、この野郎ものすごい余裕じゃねえか。俺たち相手なら束になってかかってきても平気だって言いたいのか?
「落ち着けよ餓鬼ども。こんなところで弱い者いじめするつもりはねえって」
「ふざけるな。堕天使総督が悪魔側の陣地に無断で侵入など、看過できるか!」
ゼノヴィアが今にもデュランダルで切りかからんとしているんだけど、アザゼルの奴はかなり余裕の表情を見せていた。
っていうか、これもうあきれてる感じなんだけど。
「コカビエルにてこずってたお前らごときが俺を倒せるわけねえだろ? そんなことする暇があるなら、こびてた方がまだ効果的じゃねえか?」
「ハッ! なめたこと言ってんじゃねえぞオッサン」
俺はそれに鼻で笑う。
このオッサン、自分の勝ち目が圧倒的に高いからってなめてんじゃねえか?
「最低でもルシファー様に連絡させる時間ぐらい稼いでやるよ。堕天使と悪魔で冥界の覇権を決める戦争を再開させるか、ああ?」
こいつがコカビエルの言う通りに戦争をする気がねえなら、さすがにこれでとどまってくれるはずだが……。
「……わーったよ。これ以上お前らに近づかねえから、とりあえず俺の話を聞け」
よし、譲歩は引き出せた。
俺は全員から一歩前に出て、アザゼルをにらんだ。
「アンタにしろ白龍皇にしろ、
本当に何考えてんだこいつらは。
コカビエルが戦争を起こす気がないとこき下ろしていたうえ、そのコカビエルを止めるために戦力迄派遣してきたのがこいつらだ。なら戦争を起こす気がないというのは本当だと思う。
それなのに、会談前でピリピリしているこの時期にこのいい加減な行動。ふざけてるとしか言いようがねえ。
「噂の聖魔剣を見に来たんだよ。俺が神器の研究してのはコカビエルから聞いてんだろ? 前代未聞の聖と魔の融合の実例を観たいと思うのはそんなに変か?」
「会談の時に提案しろよ……」
あ、この男はあれだ。
基本的に自分のペースで動いて、相手を振り回すタイプだ。トラブルメーカーだ。
本気で頭痛くなってくるんだが。
「木場ならいないさ!! 木場に手を出すってんなら、容赦しねえ!!」
イッセーもイッセーで見事にボルテージ上げてるし。
あの、ここ一応結界もはってない学校だからね?
「頼むからアンタも余計な挑発しないでくれ! ホントにぶっ刺すぞ」
「へいへいわかったよ。帰りゃいいんだろったく」
アザゼルはため息をつくと踵を返そうとする。
んの野郎。マジで聖魔剣みたいってだけでこんなとこまで来やがったのかよ。
状況ホントにわかってんのか、あぁ?
もうさっさと帰れと思ってんだけど、しかしアザゼルは足を止めたらギャスパーの方を見た。
「ひぃっ!?」
ビビるギャスパーの目は赤く光るが、アザゼルは全く止まらない。
さすがは三大勢力重鎮クラスってか? 確かに言うだけのことはあるってわけだな、オイ。
「ふむふむ、なるほど」
アザゼルはしげしげとギャスパーを眺めていたが、やがて納得したのかうなづいた。
そんでもって、心底ため息をついた。
「ったく。殺すつもりはねえが制御する手段もねえってか? 悪魔の連中は神器ってのがどんだけすごくてどんだけヤバイかよくわかってねえのかよ」
そうあきれると、アザゼルは匙を指さした。
「そこの転生悪魔」
「へ? お、俺?」
匙がビビりながら答えると、アザゼルは指の方向を匙の神器に向ける。
「そいつは
え?
「お、俺の神器ってそんなことできんのかよ!?」
「んなことも知らねえのかよ。ホントに悪魔の連中は神器の研究が遅れてんな」
あきれ果てた表情を浮かべると、アザゼルはなんか見えない黒板をたたくみたいなしぐさをする。
「いいか? その神器は
そういうと、アザゼルは今度こそ振り返る。
「ま、ヴァーリがこないだは迷惑かけたな。そこだけは謝っとくぜ」
「え、あ、どうも……じゃなくてあんたのほうは!?」
思わずうなづいたイッセーが我に返ってツッコミを入れるが、アザエルの奴は完璧にいたずらっ子の笑顔を向け敵やがった。
「そいつは俺の趣味だから謝らねーよ」
「そう、アザゼルがそんなことを」
会議が終わって戻ってきたお嬢が、ギャスパーをなでながらそうつぶやいた。
「わざわざこちらの神器の問題点を解決する方法を教えるなんて、どういうつもりかしら?」
「普通に考えれば、その程度なら問題ないという余裕の表れでしょう。堕天使は神器研究の第一人者ですから、そういう傲慢や油断をしてもおかしくありませんわ」
お嬢の疑問に朱乃さんはそう答えるが、この人ちょっと堕天使に当たりきつすぎね?
「しかし素直に試すのもどうでしょうか? もしかしたら、こちらにダメージを与えるための誤情報の可能性もあります」
「あ、悪い木場。俺達もう試した」
木場の懸念に関してはイッセーの言う通り大丈夫だった。
いや、いざという時のために聖槍を出して警戒してたんだが、あっさりと事態は解決して拍子抜けだったぜ。
「肩透かしでした」
「もしかしたら、アザゼルさんはいい人なのかもしれないです」
小猫ちゃんは力が抜けてるし、アーシアに至ってはアザゼルを信用し始めている。
まあ、戦争関係に関してはコカビエルの言う通りその気はないんだろうが……。
「だからってこっちの情報不足をあえて補うなんて、何考えてんだ、あいつ?」
「まったくだ。しかも見てくれよヒロイ」
俺の独り言に反応したイッセーがそう言って携帯を見せる。
そこには一通のメールがあった。
―追伸。一番手っ取り早いのは赤龍帝の血を飲ませることだ。
……至れり尽くせりってこのことかねぇ?
ま、実際に試してみたら暴発もだいぶましになった。
少なくとも発動までのハードルは大きく上がったのか、暴発する回数は大幅に低下。範囲もまた小さくなった。
「……目に見える変化が出てきたのはいいことだわ。そこまで急ぐ必要もないし、まずは食事にしましょう」
そういって、お嬢は自分で作ったと思しきサンドイッチをふるまってくれる。
び、美少女の手作りサンドイッチ。初めて食べる。
「た、食べるのがもったいねえ!! 冷凍庫に入れて一年ぐらい保存を……」
「「しっかりしろ、ヒロイ」」
一瞬トチ狂いかけるが、イッセーと匙が俺を正気に戻してくれた。
持つべきものは友達だな。心強いぜ!!
そして次の日の夜、俺が周辺のパトロールを行って旧校舎に戻ると、泣き声が聞こえてきた。
なんだと思いながら校舎内を歩くと、そこでお嬢に遭遇する。
「お嬢、どうしたんですかい?」
「ええ、ちょっと失敗してしまったわ」
なんでも、ギャスパーをイッセーの仕事に同伴させたらしい。
小猫ちゃんの常連だったので人格面は大丈夫だと判断したんだけど、男の娘萌えだったらしく興奮して迫ってギャスパーが暴走したらしい。
で、戻ってきたらこのありさま……と。
「あの、これはお嬢だけじゃなくて上役の人たちにも言いたいことなんすけどね?」
前から思ってんだけど、まずやるべきことはこれじゃない気がする。
だって相当のトラウマ刻まれてんだろ。まず間違いなくPTSDもんだろ?
そんなのだったら、いっそのこと精神病院に入院させて投薬も考慮に入れた治療をするべきだ。少なくとも人間の世界なら医者の判断でそうするだろう。
「冥界の医者もビビッて接触してないんですか? これ、本当に専門家の治療が必要な手合いですぜ?」
「……そうね。確かにそうかもしれないわ。……今度、悪魔関係の事情を知っている医者をあたってみるわ」
お嬢はあっさりと理解を示すが、その分どんどん落ち込んでる。
「やっぱり私は未熟だわ。可愛い眷属の心の傷にもまともな対処ができないなんて……」
「いや、それは違うでしょう」
俺はそれを否定する。
だって、これはむしろ上役の問題だ。
「お嬢はまだ高校生ですぜ? だったらまだまだ成長途上で未熟なのが当然。専門家だってうかつには手が出せないPTSDを封印して放置するような命令を下した上役の方が問題です」
まったくだ。PTSDを自然回復に任せるとか、何考えてんだ?
しかもお嬢の実力が上がったと判断したら、全部丸投げ。それも心の傷に関しては全く持って考慮してないと来たもんだ。
はっきり言って、バカだろう。
「……そうね。貴族の悪魔たちの多くは、眷属を家族ではなく駒として認識しているものも多いから」
「自力で治せねえなら捨てることもありってか……」
やべぇな。俺、後ろ盾にする勢力間違えたかもしれねえ。
いや、お嬢と魔王様はそういう方向では割とまともっぽいし、ちょっと答えだすのは早すぎたかな。
俺がそんなことを考えていると、お嬢は疲れた表情を浮かべながらも無理に笑顔を見せる。
「とりあえず、私は朱乃たちと一緒に会談のための準備があるから行ってくるわ。……イッセーがギャスパーは任せてくれっていうし、ここは任せてみようと思うの」
「うっす! 俺もサポートできるところはサポートしてみるんで、お嬢はお嬢のやるべきことをやってください」
俺はそういうと、お嬢の肩をたたいた。
「ま、愚痴ぐらいは雇われている分少しは付き合うんで、少しは肩の力抜いてくだせぇ」
「ええ、お願いね」
そう言って俺たちは別れる。
しっかしまあ、冷静に考えれば本当酷い話だ。
酷い心の傷を負っている奴をいきなり封印しろとかもう鬼だ。いや悪魔か。
腹を割って会話した悪魔はお嬢が初めてなんで勘違いしてたけど、悪魔の中にも外道はけっこういるってことか。
そんな中でルシファー様は、大丈夫なのかねぇ。
俺は、そんなことを思いながら空を見上げる。
何ていうか、きれいなはずなのに胸騒ぎがしちまって、俺は頭を抱えたくなった。
「ヒロイ!! 木場がグレモリー眷属男子フォーメーションに協力してくれないんだ! お前が代わりに協力してくれ」
「それは女子に迷惑が掛からないフォーメーションか?」
「………」
「沈黙は否定とみなす死ねやぁ!!!」
夜食作って持ってきてやったら、イッセーがあほなこと言ってきたので思いっきり〆てやった。
良くリアスは眷属の精神的問題を何年もたってるのに治せてないから無能っていう人いるけど、これどう考えても無能なのは上だと思います。
ことギャスパーに関しては、まず間違いなく精神病人に入れるなり投薬を前提とした治療をするべき事案で、それを子供であるリアスに教えることが役目だろうに封印しろとかいう意味不明な行動をしてる。
このあたり、どうしようもないなら役立たずの駒もから駒を好感してもらえばいいだろうとか考えてるんじゃないでしょうか? 実に老害。