ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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デイウォーカー編のボス登場です。

ついに、奴らの隠し玉が出てきますよ……


第六章 27

 

 完全に頭に血が上っていたヴァーリは、その攻撃を察知することができなかった。

 

 氷の槍に貫かれ、そのままヴァーリは近くにあった建物の壁に貼り付けにされる。

 

「ヴァーリ!?」

 

 イッセーが慌てて駆け寄ろうとするが、それより先に振るわれる攻撃があった。

 

 今度はシャレにならねえ威力の衝撃が叩き込まれて、イッセーが弾き飛ばされる。

 

 そして、俺はその攻撃が飛んできた方向を見て―

 

「次は貴方ね」

 

 ―邪眼と目が合った。

 

 そして次の瞬間、俺は一瞬停止しかけた。

 

 聖槍が光り輝いて、停止の力を一瞬で弾き飛ばす。

 

『邪魔だよ』

 

 ギャスパーが闇の獣を送り込むが、然しその闇の獣も新たなる攻撃で切り裂かれる。

 

 それは、闇の刃だった。

 

 それをなすのは、狼の姿を模すプロテクターで全身を包み込んだ、一人の女。

 

 イグドラスコルの装着者。ヒルト・ヘジンだった。

 

「悪いわね。覚醒した時空を支配する邪眼王(アイオーン・バロール)のデータを回収させてもらうわ。ついでに裏切り者の始末もできたらいいわね」

 

 んのアマ。このややこしい時にさらに出てきやがるか!!

 

『……平行世界の僕から奪った(それ)を使うのか。なるほど、神滅具に匹敵する性能だとは自負してるよ』

 

 ギャスパーはそう言うが、然し苛立っているのがよくわかる。

 

『ヴァレリーだけでなく僕自身まで利用するとか、気に食わないね!!』

 

 その言葉と共に、闇の領域が収束する。

 

 結界装置ですら弱体化できないほどの密度で闇が周囲を覆い、そして邪眼が大量に展開された。

 

 同時に闇が一斉に獣を吐き出す。それもかなりやばそうなのだらけときたもんだ。

 

 これ、一瞬で勝負がついたんじゃねえか?

 

 そう思った瞬間、闇が魔獣を切り裂いた。

 

 ……な、一蹴だと!?

 

 おいおいちょっと待て。後天的な移植者は先天的な移植者より弱いはずだぞ。

 

 俺だって、聖槍の加護以外は曹操に全部追い抜かれてる。姐さんはデュリオに勝ち越してるけど、それにしたって相性と神器の数でごり押ししてるだけだ。

 

 奴だって後天的な移植者のはず。オリジナルのギャスパーを同じ神滅具で圧倒できるわけがねえ!

 

 俺だって限定特化の禁手に目覚めてようやくなんだぞ!? こ、これが完成系の移植者のポテンシャルだってのか!?

 

「悪いわね。私の|時空支配の邪眼すら屠りし戦士《フォービドゥン・バロール・ザ・ブリューナク・ウォーリア》は、あなたの禁手と相性がいいみたい」

 

 まさか完全に無効化できるとは思わなかったと、ヒルトの言葉は言っているようなものだ。

 

『……なるほど。禁手の出力を自分の周囲を停止させることに特化してるというわけだね』

 

 ギャスパーも冷静になったのか、すぐにそう解析する。

 

 えっと、つまり―

 

「ギャスパーみたいな広範囲展開はできねえが、その分密度が濃いからギャスパーだと貫けねえってわけか」

 

『そういうことだよ。本体が殴り掛かれば話は別だろうけど……』

 

 そういって直接殴り掛かるギャスパーに、ヒルトも動く。

 

 魔剣を盾にしながら、マントのように纏った槍を棘にして、ギャスパーの闇の拳を迎え撃つ。

 

 そしてぶつかり合った攻撃は、わずかにだがヒルトが競り勝った。

 

『―通常神器としては闇の制御の方が特化か。対軍よりも対人を意識した防具兼サブウェポンとして使ってるようだね』

 

「一応、剣士としての自覚はあるしね!」

 

 ギャスパーにそう答えて、ヒルトは魔剣を振るった。

 

 氷と衝撃、二つの効果がギャスパーを弾き飛ばし、そして追撃の斬撃が闇を切り裂く。

 

 そこから一瞬、頬を浅く裂かれたギャスパー本来の顔が見えた。

 

『今度から接近戦の練習もしないといけないかな……?』

 

「その前に生け捕りして奪ってあげるわ!!」

 

 そのままヒルトがごり押しで攻めようとしている。

 

 なるほど。確かにこの戦い、ヒルトの方が上だな。

 

 神滅具使いとしての相性でヒルトが凌ぐし、そのうえ魔剣とイグドラシステム。総合力でも上乗せされている。

 

 性能だよりかと思ったらその時点でアウト。その剣腕は木場やゼノヴィアにも匹敵するから、性能に振り回されるようなミスは犯さねえ。

 

 このままいけばマジでギャスパーは生け捕りなんだが―

 

「ところがどっこい。俺がいるんだよ!」

 

 さっきから俺を忘れて白熱してるんじゃねえ!!

 

 聖槍で魔剣を受け止め、さらに魔剣を大量に生み出してもう片方も止める。

 

 ったく。ちょっと観戦ムードに入っただけで俺のこと忘れるな。

 

 はりつけにされてるヴァーリは戦闘不能だが、イッセーだっているんだぜ?

 

 ほら、触れちまった。

 

「これで終わりだ! 洋服崩壊(ドレス・ブレイク)!!」

 

 よし、これで―

 

「―なめるなぁ!!」

 

 気合一線で防がれただと!?

 

 あ、イッセーがユーグリッドに負けそうになった時よりショックを受けてる。

 

 お前本当に煩悩強すぎだぞ。この状況下でよく裸見たくなったな。

 

「馬鹿な!? ゲオルクの結界装置すら破壊した俺の洋服崩壊(ドレス・ブレイク)が!?」

 

「私の停止結界は、煩悩ごと停止させるのよ!!」

 

 思わぬ展開! 相手が女だからイッセーいれば有利だと思ったら、対策万全だよ!!

 

「だったら乳語翻訳(パイリンガル)……こっちも駄目だぁ!!」

 

 ショックのあまり、イッセーはそのまま崩れ落ちた。

 

 あのすいません。ここでそれはやめてくれねぇか?

 

『ごめん先輩! こっちもそろそろ……体力が……』

 

 えええええ!? ギャスパー、お前もかぁああああ!?

 

「よくわからないけど、だったらこのまま押し通る!!」

 

 そして一瞬のスキをついて、ヒルトは魔剣に闇を纏わせて切りかかった。

 

 あ、やべ―

 

 そして、そのまま俺たちは巻き込まれて吹っ飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イッセーSide

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うぉおおおお!?

 

 くそ、今日はいろんな意味でショックが多すぎる。

 

 ヴァレリーから聖杯が抜き取られるショッキングな光景から、ぶちぎれたギャスパーにマリウスたちが食い殺されるグロテスクな光景。

 

 そのあとリムヴァンとリゼヴィムの衝撃発言連発。リムヴァンの正体も驚きだけど、トライヘキサにもビビったぜ。あとあいつら手加減してたとか嘘だろオイ。

 

 そしてカーミラが襲撃されている光景を見せつけられ、しかもこっちも邪龍軍団の本格攻勢。

 

 その上ユーグリッドだよ。偽物の赤龍帝で圧倒されるとか、心折れるかと思った。

 

 とどめにこれだよ!! 相手は女なのに、俺が全く役に立ってねえ!!

 

 対女戦で俺を無敵に近いレベルに押し上げる二つの要素、すなわち乳語翻訳と洋服崩壊。この二つの切り札を、狙い撃ったわけでもないのに見事に防がれた。

 

 あれが平行世界のギャスパーから抜き取った神器の禁手かよ。町ごと包み込むギャスパーみたいな豪快さはないけど、逆に鎧として収束してるから、本来の使い手であるギャスパーでも攻撃が通用しない。

 

 くそ、ショックのあまり完全に意識が飛んでた。おかげでかなり吹っ飛ばされて―

 

「……うぅ」

 

 って、誰かの上に乗っかっちまってる!?

 

 これ、勢い余って俺がダメージ与えてたりしてねえよな!?

 

「ご、ゴメン! 大丈夫……って!?」

 

 そこにいたのはエルメンヒルデだ。

 

 あ、こいつならちょっと痛い目見させても気にならない……わけがない。美少女が痛がってるのはやっぱりちょっと思うところがある。

 

 それに一応和平を受ける気もあるみたいだったしな。嫌いだけど味方って感じだから、ヴィクターの連中みたいにセクハラ技をするのも気が引ける。

 

 っていうか大丈夫か? 上級の吸血鬼だから結構頑丈だと思うけど、それでも線が細い。たぶん上級の吸血鬼の中じゃ打たれ弱い方じゃないだろうか?

 

 見れば、震えてうつむいたままだ。これ、結構痛かったんじゃないだろうか。

 

 俺の鎧はめちゃくちゃ頑丈だし、しかも勢いよく吹っ飛ばされてたからな。結構体格も良くなってるし、質量弾として考えたらすごい威力かもしれない。

 

 くそ、アーシアを呼んでくるか?

 

「おい、しっかりしろ!!」

 

 俺はとりあえずその肩をつかむ。

 

 後でなんか言われそうだけど、とりあえず無事を確認しないといけないし……。

 

 そして俺は顔を覗き込んで―

 

「そんな……裏切り者がいて……祖国が……? 私は、私は……」

 

 ―その茫然自失とした顔に、俺は目を疑った。

 

 純血の吸血鬼であることに自負を持っていた姿はどこにも見当たらない。そこにいたのは、ショックに崩れ落ちるただの女の子だ。

 

 そうだ。ヴィクターはマリウスたちを囮にして、カーミラのほうを攻め落とそうとしていたんだ。

 

 カーミラの戦闘要員もその多くがツェペシュの奪還に裂かれてたはずだ。戦力的にはかなり手薄だろう。

 

 そこを、聖杯で弱点をなくした裏切り者が手引きしたヴィクターの連中に襲われたら……!

 

 しかもこの調子じゃ、カーミラに裏切り者が出たことまで知ってるっぽい。

 

 俺は、ちょっと見てられなくなった。

 

「……エルメンヒルデ! エルメンヒルデ・カルンスタイン!!」

 

 俺は強引に揺り動かして、エルメンヒルデの意識をこっちに向けさせる。

 

 かなり強引に振ったのが功を奏したのか、エルメンヒルデの目に光が戻る。

 

「せ、赤龍帝……!」

 

「事情は知ってる! だけどヘタレるな!!」

 

 そうだ。大変なことになってるのはわかってる。

 

 相当ショックを受けてるんだろう。本当ならそっとしておかなきゃならない。

 

 嫌な奴だけど、本心から国と盟主を想っていた。そして仲間たちも信頼していた。

 

 それが裏切られたんだ。できればそっとしておかなきゃいけない。

 

 だけど、今はそんな場合じゃないんだ。

 

「しっかりしろ!! あんたは貴族で純血の吸血鬼なんだろ!?」

 

 だったらやることをきちんとやらなきゃならない。

 

「あんたがヘタレてたら、他の吸血鬼たちが動けないだろうが! しっかりしろ!!」

 

「せ、赤龍帝……」

 

 エルメンヒルデは、それでも戦意が出てこない。

 

 むぅ。昔のライザーみたいな感じのエリートっぽさがあるし、さすがにすぐには復活しないか?

 

 これでライザーみたいなスケベ根性があれば、その辺を突っついてどうにかできるかもしれないんだけど……

 

 そう思ったその時―

 

「―勢いよく吹きとばしすぎたわね。とりあえず、一人見つけたわ」

 

 ……げ、ヒルト!?

 

 くそ、このバテてる状態で一対一かよ!! 状況が、最悪だ……!

 




イグドラフォースの隠し玉とは、神滅具でした。

しかもデイウォーカー編ボス担当になったヒルトの神滅具は時空を支配する邪眼王! その上効果範囲を狭めたことで、オリジナルの使い手であるギャスパーですら停止不可能な化け物になりました。加えて停止能力の応用でイッセーの乳技すら無効化。まあ、イッセーにはあれがあるのですが。


そしていきなりエルメンヒルデとフラグ設立準備。イレギュラーズは基本短編を出さないし、エルメンヒルデとのフラグはヒロイたちがかかわりづらいのでここでフラグを立てることにしました。
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