ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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イグドラフォースの底力により大苦戦を強いられるイッセーたち。

果たしてどうやって切り抜けるのか!!


第六章 28

 

 俺はエルメンヒルデを庇ってヒルトを睨む。

 

 あのヴァーリですら、通常の禁手じゃリセスさんの援護があってようやく互角の実力者。それも、神滅具を使ってない状態でだ。

 

 間違いなく強敵だ。それも、今のばててる俺達じゃ危険すぎる。

 

 ヒロイやギャスパーはどうなった? まさか、やられてねえよなぁ。

 

「ヒロイとギャスパーをどうした!?」

 

「……見失ったわ」

 

 あ、ちょっと言いづらそう。

 

 っていうかコレ、プロテクターの下の顔は真っ赤になってそうだな。

 

 いかんいかん。洋服崩壊も乳語翻訳も通用しない実力者とか、ある意味ヤバイ

 

 でも、それでも……!

 

「ここで、逃げるわけにはいかねえよな」

 

「そう。なら死んでもらうわ」

 

 ヒルトは魔剣を構え、更に闇を刃にして切りかかる。

 

 これは両手じゃ厳しいな。ドライグ、あのドラゴン出せるか!?

 

『いいだろう、闇の方はそれでどうにかして見せる。奴もまだ慣れてないようだし、何とかできるはずだ』

 

 なら、後は魔剣だけだな!!

 

 俺は両手を握り締めて、魔剣と拳をぶつけ合う。

 

 その猛攻はかなり続くが、やっぱり強い!!

 

 っていうかこっちの攻撃がほとんど効いちゃいねえ! 薄くヒルトの全身を覆っている幕に触れたとたん、強制的に停止させられる。

 

 動かせないわけじゃねえ。だけど、どうしても勢いが一気に殺されるからダメージにならない。引っ張り戻すのも一苦労だ。

 

 これが、ギャスパーの持っている時空を支配する邪眼王の禁手の力かよ。

 

 あのゲオルクが事前準備をする必要に迫られるわけだ。いきなりこれが発動してたら、あいつ一方的に蹂躙されてたんじゃないか?

 

 そして、その攻撃は俺の鎧を削っていく。

 

 魔剣を振るうと同時に放たれる氷を、時間差で叩き付けるようにしてきたからだ。

 

 傷つけられた鎧はすぐに修復されるけど、消耗するものがないわけじゃない。このままだと、こっちがガス欠になる!!

 

「……正義の味方も大変ね」

 

 ヒルトはこっちに対して、同情するかのような言葉を放ってきた。

 

 余裕かよ! 才能も実力も装備も強力な奴は言う事が違うな!!

 

 っていうか、なんか半目で見られてるような視線を感じる。

 

 今、そんなレベルの一方的な戦いじゃないよなぁ?

 

「……この状況下で味方を庇うとか、足を引っ張る奴がいると大変ね。まだこっちはウォーミングアップよ?」

 

 その言葉に、俺は衝撃を受けた。

 

 ヒルトがまだ本気を出してない事じゃない。俺がエルメンヒルデを庇っている事を指摘されたからだ。

 

 あ、そういえば自然に庇ってたな。特に意識してなかったから忘れてた。

 

 エルメンヒルデもその言葉にようやく気付いたのか、何か驚いている感じがする。

 

「な、なにをしているのですか赤龍帝! わたしにかまわず動きでかく乱すればいいでしょう!?」

 

 いやいや、何言ってんだよ。

 

「んなこと、できるわけねえだろうが!!」

 

 そりゃ確かに、かなりむかつく事とか言われたりしたぜ?

 

 だけどあれはエルメンヒルデにも一理ある。上役同士の話し合いに、中級悪魔程度がとやかく言ってくる事の方がおかしいんだ。

 

 アザゼル先生やオーディンの爺さんが意見を求めたりするんで忘れてたけど、普通それはない。あの人達が友好的過ぎるだけだ。

 

 ま、それでもあの言い方は他にないのかよとか言いたかったけど、それはそれ。

 

 だって―

 

「故郷が襲われてショックうけてる女の子を、見捨てるわけにもいかねえだろ!!」

 

 そうだ。エルメンヒルデは確かに傲慢でムカつく奴だ。

 

 でも、今彼女はマジでショックを受けてるんだ。

 

 俺だって、俺がいない間に駒王町が滅ぼされてたとか言われたら、ショックで落ち込む。色々ときついはずだ。

 

 そんな思いをしてる女の子1人庇えなくて―

 

「おっぱいドラゴンの看板、背負ってんだよこっちはなぁ!!」

 

 ―子供のヒーローなんてやれないんだよ!!

 

「なら、ここは強引に押し切らせてもら―」

 

「―させると思うか?」

 

 そこに輝くのは聖なるオーラ。

 

 勢い余って俺をちょっと焼くほどの出力を上げた聖槍が、ヒルトの魔剣に防がれる。

 

 そのまま拮抗状態に持ち込みながら、ヒロイが血をだらだら流しながらヒルトと力比べに持ち込む。

 

「ただで帰すと思ったか! もうちょっとデータは取らせてもらうし、手柄なんてたてさせねえぜ!」

 

「チッ! アースガルズの友人共がうっとおしい!!」

 

 イグドラシステムの性能で無理やり片手で力比べを維持しながら、ヒルトは強引に俺を倒そうとする。

 

 だけどそれより早く、大量の魔剣が生成されて、コイルガンで襲い掛かった。

 

「くたばれ!」

 

「舐めるな!」

 

 それを闇のマントが剣山みたいな針の山となって防ぐけど、これで攻撃は弱まった。

 

 よし、このチャンスを―

 

『―いかん、相棒時間切れだ!!』

 

 ―つこうとしたその瞬間、ドライグの言葉と共に紅の鎧が解除される。

 

 こ、こんな時にぃいいいい!!

 

 しかも位置取りから言って、ヒロイに譲渡する余裕もない。

 

 あ、これやばい。押し切られる!?

 

「もらった!」

 

「うぉおおお!?」

 

 とっさに白刃取りで受け止めるけど、力押しで押し切られそうになってる。

 

 あれ? 俺、パワー馬鹿ですよ? 俺両手ですよ? 相手片手ですよ?

 

 どんだけの性能だよイグドラフォース! ホント、ヴィクター経済連合の技術力には嫌になるな!!

 

 くそ、このままだとヒロイが押し切る前にこっちが押し切られる!!

 

 折角なくなったと思った体も新しくできたのに、リアスとエッチな事をせずにこのまま死ぬのか!?

 

 そ、そんなの絶対にできるわけねえだろうが!!

 

 で、でもこのままだと強引に押し切られて―

 

「……赤龍帝」

 

 その時、余波でくだけた鎧から見える肌に、触れる唇があった。

 

 そこは氷で肌が切れてて、血が流れている。

 

 その血を―

 

「……借りは、返します」

 

 ―エルメンヒルデが、ぺろりと舐めた。

 

 そしてその瞬間、エルメンヒルデはものすごく体をぶるぶると震わせた。

 

「……なんて美味! ドラゴンの血が強力なのは知ってましたが、ここまでだとは!!」

 

 すいません! 今はソムリエみたいな事言わないでくれない!?

 

「ソムリエかお前は!」

 

「料理番組じゃないのよ!?」

 

 ヒロイとヒルトからもツッコミが飛んだ!

 

 だが、エルメンヒルデは全く聞いてない。

 

「このまろやかなのど越し! そして冴え渡るぐらい澄んだ味!! こんな美味な血を飲む事ができるだなんて、私は人生最大の不幸と幸福を一日で味わってるわ!!」

 

 そこ迄!? 俺の血って、そんな美味ですか!?

 

 ってことは吸血鬼のお姉さんを血で釣ってエロい事とかも狙えますか! チャンスですか!!

 

 び、美人な吸血鬼のお姉さんとエロい事ができるかもしれない。文字通りエサで釣れるという事か!! なんて甘美な響き!!

 

 う、上の口でも下の口でも食べられる!! なんと夢のようなフレーズなのか!!

 

 そう思ったその時、我に返ったエルメンヒルデは手を突き出していた。

 

 流石のヒルトも、これには対応しきれない。

 

「チッ! こうなったら頑丈差で無理やり―」

 

「ああ、言い忘れてましたが―」

 

 防御力でやり過ごそうとしたヒルトは、エルメンヒルデが放ったオーラの砲撃で吹っ飛ばされた。

 

 しかも、このオーラは俺のオーラとそっくりだ!

 

「血の力を使うということにおいて、私はカーミラの貴族でも上位に位置しますので」

 

 ……この子意外と凄かったぁあああああ!!!

 

 あ、ヒロイも巻き込まれて吹っ飛ばされてる。

 

「大丈夫かヒロイ!」

 

「心臓に聖槍突き込んでやろうか、このヴァンパイア!!」

 

 あ、とりあえず無事みたいだ。

 

 マジギレしてるけど無事ならなにより。まぁ、本当に心臓を貫いたりはしないだろう。

 

「あ、ごめんなさい。あまりの美味しさに周りが見えてませんでした」

 

「……マジで狙うか、吸血鬼を血で釣るエロエロ作戦!!」

 

「まとめて叩きのめされたくなかったら、すぐに戦闘準備を取りやがれ!! あとイッセーは譲渡!!」

 

 そうだった!!

 

 まだ一撃叩き込んだだけだ。ヒルトの奴はまだ動けるはず―

 

「―想定外の事態だからさようなら!!」

 

 ―と、思ったら逃げてた。

 

 流石はフェンリルの子供を使ったイグドラシステム、足も速いな。

 

 ……なんか最後が閉まらなかったけど、とりあえず、戦いは終わったみたいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 


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