ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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すこしずつだけど確実にお気に入りが増えているけど、少しずつだが確実に評価は落ちているという嘆き。

……お気に入りにしてくれたみんなー! おらに高評価を分けてくれー!!


第六章 29

 そして戦いは終わり、朝になった。

 

 結構ボロボロになったツェペシュの城下町だが、まあ人的被害はあまりないのが不幸中の幸いだ。

 

 ヴィクターも、民間人の被害を積極的に出したいわけじゃないようで安心した。ま、今の時代の人間たちがそれを見たらブーイング間違いなしだから当然か。

 

 つっても被害はでかく、普段なら張れる霧も出せないと来たもんだ。大半の吸血鬼はシェルターで夜まで眠りにつく感じだ。

 

 そして、リゼヴィム・リヴァン・ルシファーか。

 

 詳しい話を聞いたけど、マジで飛んでもねえな。

 

 そういえばリムヴァンは「天敵もごり押しできる」とか言ってたような気がするが、そもそもごり押しする必要もなかったと。

 

 俺は、もう一度ツェペシュの街を見る。

 

 元からクーデター陣営と戦闘が行われていた場所はかなり被害がでかい。その辺をピンポイントで狙ったみたいで、甚大な被害が出ていた。

 

 ……一部ではコントロールの甘かった邪龍が民間人を襲ってたみたいだが、お嬢達がそっちを中心に動いたから、何とか民間人の被害は最小限だ。

 

 それにしても、今回はかなりやばい敵が出てきやがったな。

 

 今までだって楽に勝てた戦いの方が少ねえが、俺達もだいぶ成長したから同じようにはいかない。

 

 だが、相手もそれに合わせるかのように更に強大になってきやがった。

 

 神器無効化能力という、俺らにとってメタともいえる能力を持つ、超越者リゼヴィム・リヴァン・ルシファー。

 

 デッドコピーでありながら、イッセーを追い詰めるほどの戦闘能力を発揮した偽赤龍帝、ユーグリッド・ルキフグス。

 

 ギャスパーと同じ神滅具クラスの神器を運用し、そのうえで相性差によって化物レベルと化したギャスパーを上回ったヒルト・ヘジン。

 

 そして、平行世界からの来訪者、リムヴァン・フェニックス。

 

 平行世界から来訪して来たから、死んだはずなのに堂々と姿を現してリムヴァンの名前を名乗っていたのか。なるほど、納得だ。

 

 神滅具を複数個持っているのも、平行世界で奪ってきたからか。合点がいった。

 

 何てバケモンだ。っていうか、それを可能とする神滅具のポテンシャルも恐ろしい。

 

 まさに世界の異分子、イレギュラー。その影響を受けた俺達も含めて、まさに異分子の集まりだ。ロンギヌス・イレギュラーズとでも呼べばいいのかねぇ。

 

 とにもかくにも、今回は非常事態だ。マジでどうにかしねえとな。

 

 ……ヴァレリーだって重要だ。なにせ、意識不明だしな。

 

 当面死ぬ事はないだろうが、意識を回復させるには聖杯を回収しないといけないらしい。

 

 っていうか三つでワンセットの亜種ってすげえな。ジークフリートも亜種の神器だったが、神滅具で亜種ってのがまたすげえ。

 

 なんか、今世の神滅具保有者はイレギュラーが多すぎだろ。

 

 覇を克服したり禁手を昇華させたイッセー。

 

 覇の暴走を乗り越え、昇華させたヴァーリ。

 

 覇輝を無理やり制御し、覇光へと派生させた曹操。

 

 そして、三個で一セットの亜種神滅具を宿したヴァレリー。

 

 ギャスパーという新しい神滅具の使い手も含めれば、とにもかくにもイレギュラーだらけだ。

 

 ……コレ、この戦争はもっと荒れるんじゃねえか?

 

 リムヴァンの奴のフットワークの軽さだと他にもまだ見ぬ凄い神器を持ってそうだ。そうなったら後が怖い。

 

 ……さて、俺らも修行するしかねえわけだな。

 

 業魔人、完成しないかなぁ。

 

 俺がそんなことをぼんやりと思った時だ。

 

「ヒロイ! ちょうど良かったわ」

 

 と、姐さんの声がして、俺は振り返り―

 

「持ち運ぶの手伝ってくれない? キョジンキラーだとシェルターの中に入れないのすっかり忘れてたのよ」

 

 ―なんか、大量の鍋を茹でていた。

 

 え、なにこれ。

 

 覗き込むと、そこには大量のレトルトカレーが煮込まれていた。

 

 下を見ると、そこには燃え盛る家の残骸が放り込まれていた。

 

 ……壊れてたからって燃料にしやがったよこの人。

 

「姐さん、それ何?」

 

「見れば分かるでしょう。炊き出しよ」

 

 ああ、なるほど。

 

 いや、そうじゃない。

 

異界の倉(スぺイス・カーゴ)に大量に詰め込んでたのよ。アザゼルが「何かあった時の炊き出し用」って言って持ってきてたの」

 

 ああ、なるほど。

 

 今度は疑問が氷解した。

 

 どっからそんなに持ってきたんだと思ってたんだよ。そうか、あれがあったな。

 

「まあ、一般人に罪はないもの。何か食べるってそれだけでもストレスが解消するものでしょ?」

 

「で、作ったはいいが鍋を運ぶ人手を忘れてたと」

 

 そういうことなら別にいいぜ。

 

 俺だって英雄だ。そういうのに理解はある。

 

 あと木場を呼ぼう。アイツの聖剣創造の禁手なら、人材の手間が浮く。

 

 そんでもって鍋を運びながら、姐さんは微笑を浮かべていた。

 

「……こういうことにも、使えるのよね」

 

 そういう姐さんは、手に持った鍋の中身を見て笑う。

 

 そこにあるのは、大量の飯だ。

 

 それが振る舞われると、吸血鬼の人達はどう思うだろうか。

 

 少なくとも、美味い飯を食えば少しはスッキリする奴もいるだろう。着のみ着のまま飛び出して、飯を食ってない奴もいるだろう。

 

 そういう人に、これはきっと癒しになる。

 

「この神器、正直あまり役に立たないって思ってたけれど、こういう使い方もあったね」

 

 そういう姐さんは、少し寂しげな表情をする。

 

「そういう方向でも、私は人を救えるのよね」

 

 ………。

 

「環境の所為でいろんなものが足りてなくて、それを持ち込むのが大変でも、私が一人いればたくさん運べる。そういう方向で、人を救う事もできたのよね」

 

 姐さんは、今心のどこで何を思っているんだろうか。

 

 迷走していた事に対する後悔だろうか。安易に神器を移植した事に対する痛感だろうか。

 

 姐さんが選んだ道は、敵を滅ぼして減らす道だ。

 

 姐さんが今言っているのは、人々の腹を満たして減らさせない道だ。

 

 そのどっちが重要かは分からない。

 

「……まあ、その道を選んでたらヒロイもペトも救えなかったけれどね」

 

 その答えを出す前に、姐さんはそう断じた。

 

「ごめんなさい。ちょっと気の迷いだったわ。……あなたの自慢(英雄)でいるって決めたのに、あなたにこんなことを言ったらいけなかったわね」

 

「いや、気にしてねえよ」

 

 確かに姐さんの言う通りだ。

 

 姐さんがそう言う道に進んでいたら、俺はきっと吸血鬼に殺されてた。

 

 姐さんが戦う事を選ばなかったら、ペトは今でも塞ぎ込んでいた。

 

 その道を選ばなかったらこそ、姐さんが救えた命もある。

 

 まあ、それは後にしておいて―

 

「冷めたら不味いし、急ごうぜ、姐さん」

 

「ええ。まずは炊き出しを頑張らないとね」

 

―英雄は英雄らしく、人々を救う為に頑張りますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イッセーSide

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は、修繕活動を手伝いながら周りを見てイラついてた。

 

 何にイラついてるかって、当然リゼヴィム達にだ。

 

 今頃リゼヴィム達はカーミラの方で祝勝会でも開いてるんだろうな。カーミラの方は完全に占領されて、転生天使達が急行した時には手が出せなかったらしい。

 

 それぞれの(エース)が動いたけど、返り討ちにあったって話だ。それぐらい強敵だった。

 

 ヒルトだけでも俺やヒロイが苦戦するほどの猛者だ。そんなのが三人も居れば、戦力の殆どを出していたカーミラが占領されるのは当たり前だ。裏切り者ばかり残ってたら尚更だ。

 

 ヴィクター経済連合。あいつら、本気でシャレにならない……!

 

 俺がそう思って手を握り締めたとき、視界にエルメンヒルデが映る。

 

「あ、赤龍帝……」

 

 まだかなり沈んでるけど、それでも行動ができる程度には動けるらしい。

 

 無事なエージェントにある程度の指示を出せる程度には回復していた。

 

「カーミラ領は、完全にヴィクターの手に堕ちました。……裏切り者の多くは男達だそうです」

 

 ……男達、か。

 

 ツェペシュは男性の真祖を尊び、カーミラは女性の真祖を尊んでいた。それが基本で、当たり前の価値観。

 

 だから、その領内で逆の立場に就く事はできなかったんだろう。例え能力があっても、性別が尊んでいる側じゃなければあくまでサポート。

 

 それに反感を抱いている人は多かったんだろう。そこをリゼヴィムやリムヴァンがつついたと。

 

 皮肉なもんだぜ。ツェペシュの領主は仮初とは言え女性であるヴァレリーが祭り上げられた。そしてそれを囮に、ヴィクターはカーミラで男性主体の政権を打ち立てたんだから。

 

「カーミラの女性は大丈夫なのか?」

 

「それは大丈夫でしょう。クーデターを起こした側にも、女の吸血鬼は割といたそうです」

 

 え?

 

 女性優遇のカーミラの領内で、女性がクーデターに参加?

 

 おかしくないか? 男性主体のクーデターなんだから、女性の抵抗は強そうなもんだけど……。

 

「彼女達は、男性に支配される事を望んでいたそうです。もっとも逃げ延びた者達の発言なので、詳しくは分かりませんが……」

 

 そういうエルメンヒルデの表情は暗い。明らかに、何かに追いつめられている感じだった。

 

「……下賤な出のものに余計なことを言いましたね。忘れてください」

 

「え、あ、別にいいさ」

 

 さらりと馬鹿にされた気がするけど、それはそれでいい。

 

 それよりも、心配なのはエルメンヒルデだ。

 

 持ち直してる風に見えるけど、めちゃくちゃ落ち込んでるのが分かる。

 

 最初に会った時の傲慢さがあまり見えない。結果的にツェペシュにお世話になるからか?

 

 ……ったく。こういうことするから、俺は時々馬鹿って言われるんだよなぁ。

 

 でも仕方がねえ。エルメンヒルデには助けられたしな。

 

「何か愚痴があるなら言えよ。助けてもらったんだし、それでお相子だ」

 

 本当ならギャスパーの様子を見たいけど、ちょっとぐらいなら聞いてもいいさ。それぐらいの時間ならあるだろ。

 

 俺がそんな感じで促すと、エルメンヒルデは―

 

「うぅ……」

 

 な、泣き出したぁあああああ!?

 

 え、どうして? 言い方間違えた!?

 

 くっそぅ! 俺はこういう時どうすればいいのか分からない。っていうかなんでなったのかも分からない。ついでに言うと女心もよく分からねえ!!

 

 しまった。うかつなこと言ったからなんかが決壊したのか。漏れ出たのか!!

 

 見れば、指示を受けて行動していたカーミラ派の吸血鬼がすごい視線を向けてる。

 

 ……すぐにでもなんとかしないと、俺、殺される!?

 

「え、エルメンヒルデ!? もしかして、友達が死んだりとか―」

 

「逆です……っ」

 

 逆?

 

 生きてるなら、泣き出す必要はないような気がするけど。

 

 いや、相当激戦だったらしいし、かなりほっとしたのか?

 

 いやいや。それなら落ち込む理由にはならねえだろうし―

 

「クーデターに、私の友や親族が何人も参加して……」

 

 っ!?

 

 そ、そうか。

 

 エルメンヒルデはカルンスタイン家とかいう吸血鬼の貴族だ。そこには男の吸血鬼もいただろう。

 

 彼らは、エルメンヒルデに察せない程度に不満を持っていたのか。

 

「な、中には……同性の友達もたくさん……っ」

 

 しかも同性の友達もかよ!!

 

 そういえば女性の吸血鬼でもクーデターに参加した奴がいるって言ってたけど、エルメンヒルデの友達にもいたのか。

 

 くそっ。こういうのは聞くだけでも堪えるな……。

 

「分かった。もういい」

 

 俺は、そっと胸を貸してやる。

 

 それはそれで文句を言われそうだけど、まあ俺が怒られて話がまとまるならそれでもいいか。

 

 そう思ったけど、エルメンヒルデはそのまま俺の胸元に顔を押し付けると、わんわん泣きだした。

 

 ……ヒロイが言っていた事を思い出すよ。

 

 この世界は、理不尽だらけ。

 

 ああ。俺がモテない事なんて全然理不尽じゃねえ。一般人にはおっぱいドラゴンとかわけ分かんねえだろうしな。

 

 でも、その理不尽のせいでどんどん歪んで、それを突っつく連中が出てくる。

 

「……上手く行っていたと思ったのに! みな、カーミラ様を支える事を誇りに思っていたと思ったのに……ぃ!」

 

 ……やっぱ、こういうのは見るのも聞くのも好きじゃねえ。

 

 なあ、リムヴァンにリゼヴィム。あんたらはこういう事を起こすのが楽しいのか? この涙を見て、ざまぁとかいえるのか?

 

 だったらいいぜ。俺も遠慮はしない。

 

 赤龍帝を怒らせて、ただで済むと思ってんじゃねえぞ……っ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 




英雄として一歩成長したリセス。悲劇を間接的に知って怒りに燃えるイッセー。

吸血鬼の里での戦いは終わり、そしてついにあのチームが結成します。
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