ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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はい、そして部隊は冥界に……。


第六章 35

 

 

 まあ、それはともかくとして日常はやってくるもの。

 

 俺達は、冥界にやってきていた。

 

 本来冥界って、悪魔と堕天使以外はそう簡単には来れない場所なはずなんだけどな。これも和平による賜物ってやつか……。

 

 そして着いた村はアウロス。

 

 そして、アウロス学園という冥界でも珍しい大規模学園が建設されている村でもある。

 

「……現役を引退したら、こういうところで暮らすというのもありかしら」

 

 ぽつりと姐さんは呟いた。

 

 確かに。俺ら人間だから現役でいられる時期にも限度があるからな。そのあとはのんびり過ごすってのもいいかもしれねえ。

 

 のんびり農村生活かぁ。それはそれでいいかも。

 

「いやいやお姉様。お姉様まだ若いっすからね?」

 

「いいえ、ペト。そろそろお肌の曲がり角なのよ私も」

 

 姐さん。気にしてたのか。確かに二十代中盤だからな。

 

「長寿にそこまで興味はないけど、不老には興味があるわね」

 

「確かに。若い肉体じゃねえと無理できねえしなぁ」

 

「ふふん。ペトは堕天使なんでいつまでも若い肉体のまま何スよねぇ。羨ましいっすかぁ?」

 

 凄まじくイラっと来たので、今晩俺と姐さんはペトをいじめ倒すことをアイコンタクトで示し合わせた。

 

 まあそれはともかく。

 

 ……姐さんが締め出されて、俺達はアウロス学園の外で待機する事となった。

 

 理由は極めて単純。親御さんからのクレームだ。

 

 曰く、「いや、ちょっとポルノ映画を実践した人はちょっと……」

 

 反論できねえ。

 

 言われてみりゃそうだよ。グレモリーVSバアルにヴィクターが乱入した一件、完璧に強制的なポルノ映画の上映だっつの。子供の情操教育に悪いにもほどがあるっつの。

 

 そりゃ親御さんも渋い顔するって。姐さんビッチだし、子供の教育には悪いわな。

 

「まあ、とりあえず八割がた自業自得だから反論できないわね。……あと二割はリムヴァンにぶつけるわ」

 

「九割ぐらいリムヴァンにぶつけていいと思うッスよ?」

 

 ぷるぷるとジョッキを震わせる姐さんの肩に、ペトが手を置いた。

 

 うん。でもお前もビッチだから子供情操教育に悪いからな?

 

 まあ、俺もノリノリでエロいことしてるから悪いんだろうが、それにしたってこの二人よかマシだ。

 

 ……マシだから彼女欲しい。

 

 まあ、そんなこんなでアウロス学園をしり目に俺達はだべっているわけだ。

 

 今頃イッセー達は特別講師の名目で、体験入学しに来た子供達と絡んでるんだろうな。特にイッセーとかお嬢とか大人気だろ。

 

 ま、実際駒王学園と同等規模なのはかなりでかい部類だろうな。悪魔と人間の人口比的にな。

 

 まあ、勉強したい奴に勉強教えてくれるところがちゃんとあるのは良いこった。そこに関しちゃ俺は一家言あるぜ、マジで。

 

 冥界はその辺遅れてるからな。貴族主義と実力主義がまさに悪魔合体してっから、下級に教育を受けさせたがらない連中が多いってのが問題だ。しかも上級も魔力関係がダメだと実力主義の観点でいづらいってのが始末に負えねえ。

 

 そういう人達を中心に、生徒だけでも三百人ほど集まってるらしいな、親御さんを含めると五百人を超えるとか。

 

 まあ、これだけの規模になったのはヴィクターが原因だから、素直に喜べねえのがあれだな。

 

「……事実上はレーティングゲームの学園というより軍学校に近い形になってるのが、欠点といえば欠点よね」

 

「だな。上役の殆どは戦力育成を考慮してるからな」

 

 俺は姐さんと一緒に少しぼやく。

 

 いや、実際レーティングゲームの教育もきちんと行われてんだぜ? 他の学部もしっかりと用意されてる。

 

 学園設立に関してだけは政治的配慮を邪推されて揉めに揉めたらしいが、中間管理職アガレス家が間に入ってそれも解決。そっからは資金関係も旧家筆頭のバアル家まで積極的に出してる。

 

 教師陣も政治的な争いでつまはじきにされてる連中中心とはいえ、バアルの連中は貴族の学園に在籍していた奴を送り込むほどだ。中には教育関係の育成を行う為、人間の学校の教育学部に留学する奴を用意するほど、教える側の育成も進んでいる。

 

 その結果、このアウロス学園は文字通り学費無料。現バアル家当主や初代バアルが積極的に金を出して、卒業した場合、兵士志望のものは積極的に登用すると公言されてるほどだ。

 

 ……ただし、一定以上の戦闘訓練や作戦行動などの軍事教育を学ばせる事と引き換えにこの規模で設立で来たもんだが。

 

 それほどまでに、旧家はヴィクターを恐れている。厳密には、リゼヴィムを恐れている。

 

 初代ルシファーの実の子供にして、後天的含めて四人しかいない悪魔最強の超越者の一角。それが、リゼヴィム・リヴァン・ルシファー。

 

 そのリゼヴィムが本格的にヴィクターを支持した事もあって、現政権はかなり焦ってるらしい。

 

 裏切り者が出てくる可能性がでかいとのことだ。それぐらい、初代ルシファーの子供ってのはでかい。ひ孫のヴァーリは人間とのハーフだが、リゼヴィムの奴は純血だからな。その辺の血統的なあれがでかいんだろ。

 

 だからこそ、ひ孫のヴァーリを何もさせずに倒したシトリーの設立する学校に期待が集まっている。

 

 ぶっちゃけ現バアル当主はこう考えているわけだ。

 

 古き良き血統を守る為の有能な捨て駒を育成したい。……その為なら、鬱陶しいシトリーの娘のたわごともある程度は我慢しなくてはいけないだろう。

 

 ったく。胸糞悪い話だぜ。

 

 老害が権力持つと始末に負えねえ。下手にたてつくとややこしいことになるからなぁ。めんどくせぇ。

 

「まあまあ。それでも一応レーティングゲームの学部も設立できたのは良い事じゃないっすか」

 

 俺らのイラつきに気づいたのか、ペトは注文を追加しながらそうなだめてくる。

 

 つってもよぉ。これ、体のいい捨て駒育成計画だろ?

 

「戦闘能力が高いものが眷属悪魔に選ばれやすいのは事実なんっすし。結果的に今まで以上に下級悪魔が上に行きやすくなってるのは事実なんっすから」

 

 まあ、確かにそうなんだが……。

 

「と言っても、上が登用しなければ意味がないし……」

 

「それは心配ないだろう」

 

 姐さんが不安を口に仕掛けた時、それを遮る声があった。

 

 そこには、灰色の髪をしたイケメン男性。

 

 ………どっかで見たような気が……あ、思い出した。

 

「確か、ディハウザーさんでしたっけ?」

 

「ああ。アグレアスのレーティングゲームでは直接顔を合わせる機会はなかったね」

 

 超大物が出てきやがった。

 

 レーティングゲームトップ中のトップ。戦闘能力は魔王クラスといわれ、更にはその中でも勝率が頭一つ飛び抜けている規格外。ついたあだ名が皇帝(エンペラー)

 

 ベリアル家のディハウザー・ベリアル。超大物だ。

 

「おお! レ―ティンゲームのトップも注目っすか!! それほどまでにこの学園にはご関心がおありっすか?」

 

「ペト。なんでインタビュアー風なんだよ」

 

 スプーンをマイク代わりに突き付けるな。失礼だろ。

 

 しっかしそれにしても意外だな。

 

 何足の草鞋を履くのが基本の悪魔業界。レーティングゲームのトップともなりゃ忙しいだろう。

 

 それが何でこんなところに? 人格的には魔王派よりっぽかったけど、それにしたって時間裂けるのか?

 

「いや、アグレアスで映画撮影があってね。そのついでに様子を見させてもらったんだよ」

 

 ……ほんとに忙しいこって。っていうか悪魔多芸求められすぎだろ。

 

 俺、転生悪魔にゃならねえようにしよう。英雄になることに忙しい身からすりゃ、余計な仕事を増やしたくねえし。

 

 ふと視線を姐さんに向けると、姐さんも同意見だったのか、ちょっと遠い目をしていた。

 

「耳が痛いわ。アイドル目指してた時は、学生生活をおろそかにしていたから」

 

「なに。年季の差というものだよ。これでも人間でいう老境をはるかに超えた年齢だからね」

 

 良い人だ。

 

 しかし姐さん。高校中退は伊達じゃねえが、大検とれる可能性はでかいんだから自信持てよ。

 

 アザゼルやロスヴァイセさんにしっかり教わって頑張ってるじゃねえか。この調子なら俺たちが現役の間に駒王学園大学部に進学するのも夢じゃねえよ。

 

「まあ、君達とは特に因縁深いヴィクターのおかげという側面もあるから素直に喜べないだろう。それだけのことがなければこの規模の「誰でも通える」学園の設立を旧家は認めないからね」

 

 なんだよなぁ。これだけのでかい規模になったのは、間違いなくヴィクターが色々と動いているからなんだよなぁ。

 

 そう思うと素直に喜べねえ。それに、ソーナ会長のガス抜きや使える捨て駒の育成が狙いでもあるだろうしなぁ。

 

 だけど、ディハウザーさんは苦笑を浮かべて学園を見る。

 

「それでも前例ができるのは良い事だ。一つでも前例があれば、それを盾に新しく作る事ができるのだからね」

 

 そう言いながらアウロス学園を見るディハウザーさんは、本心からなのが分かるぐらい嬉しそうな感情を浮かべていた。

 

「ああ。個人的には同じような学園ができることを願っているよ。そうすれば、私としても嬉しい事この上ない」

 

 ……へぇ。

 

 なんかこの人、本当に良い人みたいだな。

 

 流石は、悪魔としちゃ無能の極みのサイラオーグ・バアルの指導とかを手伝っただけのことはあるじゃねえか。あの人を指導したがる人って案外少なそうだからな。

 

 本当の意味で、レーティングゲームのプレイヤーを育成する万人を受け入れる学園が生まれることを望んでるのかもしれねえな。

 

「良いのかしら? もし凄腕が出れば、貴方の一位の座を脅かすかもしれないわよ?」

 

 姐さんがいたずらっけを出して皮肉るが、ディハウザーさんは毛ほどにも不満を浮かべねえ。

 

「それこそ望むところだ。私としても負ける可能性が高い試合の方が望ましい」

 

 そう言いながら、ディハウザーさんはアウロス学園にもう一度視線を向ける。

 

「……それに、クレーリアのいた街の後継者達が作り出した成果だ。良い結果を生んで欲しいと心から願うよ」

 

 ……ん? クレーリア?

 

 俺達が首を傾げてると、ディハウザーさんの視線は寂しげなもの浮かべながら俺達に向けられた。

 

「教会の戦力や天使に、堕天使や堕天使側の戦力。そのような者達と悪魔が友や恋人として手を取り合う。……十年足らず前には考えられない事だ。ああ、波乱万丈だが実に良い時代になった」

 

 その言葉には、複雑な感情が込められてんのは俺にでも分かった。




リセス、締め出されるの巻。

まあ、冷静に考えるとそりゃそうだって展開ではあると思います。

自分でやったわけじゃないけど、子供たちの目の前にポルノ映画の主演を連れてくるわけにもいかないでしょう……。




あと本格的にディハウザーがヒロイたちと絡む展開になりました。

ディハウザーはこの段階では表向きの理由しか知りません。ですが、だからこそD×Dの結成には感慨深いものがあると思いまして……。
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