ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
そして攻撃が開始される中、俺と姐さんは……暇だった。
こっちに敵が来ない。グレモリーとシトリーの実戦経験豊富な若手のエリートたちによって、邪龍たちはほとんど全部撃破されていた。
ペトの狙撃の射程範囲内で戦っていることもでかい。なにせ、ペトは人間サイズの相手ならあてるだけなら10km先でもできっからな。邪龍はもっとでかいから、動きを押さえられてるのなら20km先からでもあてれるって寸法だ。しかも、オーフィスの協力によって最上級クラスにまでスペックが上昇している。
それをわかってるから、攻撃力の低い連中は足止めに徹してペトの狙撃に頼っている。他のメンツだと上級クラスにぎりぎり行く程度の奴らもいるが、ペトは最上級クラスの火力を叩き込める。それによって、敵を返り討ちにすることができるというわけだ。
さらにヴァーリとラシアのコンビが前衛を務めていることもでかい。
史上最強の白龍皇と名高いヴァーリに、その監視役としてサマエルの毒を流用した龍殺しを保有するラシア。
……邪龍たちにとっちゃ悪夢というほかねえ。龍殺しの使い手の武器がサマエルで強化とか、ちょっと同情するぜ。
とにかく稀代の狙撃手とシャレにならない龍殺しが同じ戦場に出てきてるからか、俺たち二人というある意味最終防衛ラインは、今のところ動く必要がねえ。
敵主力に対するカウンターが目的だから、積極的に雑魚の迎撃に行くわけにもいかねえ。どこに出てきても対応できるように、あえて後方で待機してるわけだからな。
……つっても、あんだけ気合入れておいてやることねえってのもあれだな。
「敵主力に来いって思うのもあれだしな。英雄目指す身としちゃ立つ瀬がねえ」
「我慢しなさい。自分の出所を見極めるのも英雄を目指すのには必要よ」
ぴしゃりと姐さんに叱られてしまった。
それにしても、あいつ等なんでわざわざこんな派手な真似しやがったんだ?
歴代の中でも有数の使い手であるゲオルグがいる。いくつも保有しているだろうリムヴァンもいる。必要なら、それ以外に移植するって手もある。
にもかかわらず、わざわざ聖杯とイグドラゴッホを使ってまでこんな大規模な時間干渉結界を張るとかどういうこった。コストが割に合わなくねえか?
何度も何度も俺たちを異空間に連れ去った絶霧を集中投入すれば、やろうと思えばもっと楽に誘拐もできただろう。
なんか嫌な予感がするな。俺たち、例のごとく何か見落としてるんじゃねえか?
つっても何を見落としてる? 使える魔法は念入りに再確認したらしいし、それが封じられたり突発的に使えなくなる可能性も低い。そして組み合わせれば新しい転移魔法を生み出せる可能性も十分にある。
「だけど、これはまだまだ内通者がいるということね」
姐さんも懸念を感じてたのか、ぽつりとつぶやいた。
内通者……まあ確かに。
一回ヴィクターに寝返ったこともあるから、ラシアの信用は薄いはずだ。少なくとも、上からは緊急時にヴァーリもろとも吹きとばす術式を仕込まれてる。
そのラシアが耳にできるほど、今回の情報は筒抜けだった。それほどまでに情報統制が取れてねえってことだ。
敵の切り札を使用可能にしないための処置を行うっつー話し合いだってのに、それがあっさりばれてるってのがかなりあれだ。
まず間違いなく、悪魔側にも内通者はいるはずだろうな。
なんたって、ヴィクターは暗殺や誘拐はもちろん、トライヘキサの研究をしていた奴らの買収までやって―
「……なあ、姐さん」
「何かしら?」
俺は、嫌な予感を覚えた。
……買収された奴が、即座に全員ヴィクターに亡命するってわけでもねえんじゃねえか?
トライヘキサ対策が急務なんだから、こっちもトライヘキサの研究をしている連中は保護を考慮するはずだ。
それを逆手にとってスパイにするとか、あるんじゃね?
「……今回の魔法使いの連中、全員が全員信用できるのか?」
「……ソーナ聞こえる? 今すぐ職員に魔法使いのチェックを行せてておいて。できれば監視もお願い」
姐さんは一瞬で俺の言いたいことに気づいたのか、すぐに会長に通信をつなげる。
そして次の瞬間―
『―全員気を付けてください。敵邪龍幹部クラス及び聖十字架使い。そしてリヒーティーカーツェーンが参戦してきました』
―チッ! こっちが気づいたことに気づかれたか!? いきなり戦力がごっそり投入されやがった!!
「姐さん、俺たちは何処に向かう!?」
「そうね。ここはイッセーやヴァーリにも動いてもらって―」
俺たちがどこ行くか一瞬躊躇したその瞬間―
「―とったぞ、神滅具使い!!」
莫大な魔のオーラが、俺たちにたたきつけられた。
Other Side
一方そのころ、ヴァーリは目の前に現れた姿に、警戒心を強くしていた。
単純な戦闘能力なら恐るるに足らずといいたいところだが、然しだからこそ気になる。
今更彼女が、オーフィスの蛇もなしに自分と相対するとは思えなかったからだ。
「……何の用だ、カテレア」
カテレア・レヴィアタン。旧魔王派幹部の最期の生き残り。正当たるレヴィアタンの孫に値する人物。
紆余曲折あるも今や旧魔王派の指導者で唯一の生き残りであり、数少ない正当たるレヴィアタンの末裔である。
とは言え、今の自分に対する戦力としてあてがうにはどう考えてもおかしい人材だ。
蛇をもってしても、アザゼルに撃破された彼女が、瞬間的にならば主神クラスにすら相対できるようになった自分と二対一で戦うなど愚の骨頂だ。
「知れたことです。リムヴァン様のため、今のあなたに我々の技術がどこまで通用するか試しに来ました」
その言葉に、ヴァーリは違和感を覚える。
カテレアは比較的リムヴァンに対して穏健派だったが、然し旧魔王末裔としての間違ったプライドゆえに内心で下に見ていた節がある。
加えて言えば、確かクルゼレイとできていたはずだ。今のカテレアの言葉には、思慕の情が浮かんでいる。
何かがおかしい。ヴァーリは違和感が強くなっていくのを感じている。
「……どうでもいいけど、ここで敵将の首を取ればそっちも自由に行動しやすくなるんじゃないの?」
周囲の邪龍をジェルジオで屠りながら、ラシアがそう促した。
彼女はカテレアと面識がないので違和感に気づかないのだろう。それはそれとして、ヴァーリの好戦的な性分に反して動きを見せないのに違和感は覚えているようだ。
そして実際のところ、今のカテレアは今迄よりも楽しめそうだった。
「相当体を苛め抜いたようだね。……すでに蛇を使っていた状態にだいぶ近づいているんじゃないかい?」
「ええ、蜥蜴抜きのあなたとなら互角に渡り合えると自負しております」
痛烈な嫌味を返してくるが、しかしそれだけのことはある。
動きに隙が全く見えない。オーラの質と量も今までとは段違いだ。
数か月ほど見ない間に劇的に変化している。これは間違いなく楽しめる。
そう思ったその時、しかしカテレアは肩をすくめる。
「とは言え、その翼まで使われれば私ではあなたに勝てないでしょう」
その肩透かしな発言に、しかしヴァーリはだからこそ楽しめると確信していた。
確かにそうだ。歴代最強の白龍皇である自分相手に、今の状態のカテレアでは勝ち目がない。移植した神器によってしぶとさなら上だろうが、しかしそれだけだ。
その状況下でわざわざ自ら出てくるということは、それ相応の戦力を用意しているということだ。
間違いなく、楽しめる。勝てると判断するだけの切り札を持っている。
リゼヴィムの仕掛けてきたことでイラついている気分を払拭するにはちょうどいいと思い―
「なので、私も白龍皇で対抗させてもらいます」
-その言葉と共に出された装備に、ヴァーリは一気に不快な感情を覚えた。
腰に装着されるイグドライバーと、手に持ったジェルカートリッジ。
そして、そのジェルカートリッジには白い西洋の龍のイラストが刻印されていた。
「……イグドライブ」
不敵な笑みを浮かべながら、カテレアがジェルに包まれる。
そしてその瞬間全てを察したヴァーリは、不快感を隠さずに攻撃を放つ。
その一撃は文字通り全力。白龍皇の鎧の出力も含めれば、無防備な状態で喰らえばカテレアとて一撃で戦闘不能にできるだろう。
だが、そうはならない。
『Divide!』
その音声と共に、放たれた攻撃が
そして、そこに映るのは一部が赤く染まった白い龍の鎧。
微細な違いはあれど、間違いなく白龍皇の鎧だった。
「……俺は、兵藤一誠と違って肉体が崩壊したりしてないはずだが?」
「貴方は半分人間でしょう? 知ってますか、人間は一日に何十本も毛髪が落ちるんですよ?」
兜越しに嘲笑を浮かべながら、カテレアは光り輝く光翼を展開する。
「イグドラシリーズが一柱、イグドラグウィバー。……さあ、相手をしてもらいますよ、ヴァーリ」
その瞬間、ヴァーリの殺意を込めた一撃を、カテレアは半減して防ぎ切って見せた。
Side Out
カテレア、ついに復活。
そして偽白龍皇まで登場。いや、一度やってみたかった。