ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
俺たちの戦いは、割と膠着状態に入っていた。
敵の邪龍の波状攻撃が未だに止まない。そろそろ焦れたのか、今迄後方で待機していた邪龍達まで突っ込んできやがった。
『……皆さん、緊急事態です』
更に間の悪い事に、会長から苦渋に満ちた通信が届く。
おいおい。これ、もしかすると―
『魔法使いの中に内通者がいました。現在、そちらの取り押さえに時間が掛かって、転移魔法の開発に時間が掛かっています。……防衛戦闘に関してはもう少し時間が掛かる事を覚悟してください』
マジか! マジで裏切り者いやがったのか!!
くそ! これで脱出までの時間が更に掛かるじゃねえか! どうすんだオイ!!
「とにかくいったん戦線を下げるわよ!! こうなったら籠城戦でしのぐしかないわ!!」
『了解です。幸い、有志による避難の漏れの確認も終了しました。……できる限り戦線を下げましょう』
畜生が! 姐さん達の言うことも分かるけど、これって流石にまずくねえか!?
『とりあえず邪龍グレンデルの完全封印にも成功したとのことです。おそらく、これでうかつな邪龍の投入は不可能になるでしょう。……これで攻勢が少しでも低下してくれればいいのですが……』
グレンデルの野郎はこれで戦線離脱ってわけか。そりゃ朗報。
つっても、この調子だとそれ以外の連中だって投入してきそうだな。
さぁて、どうやってしのいだもんかねぇ。
んなこと考えながら、少しずつ戦線を下げていく。
そしてアウロス学園まで後退した時には、サイラオーグさんまで合流してくれていた。
心強い援軍だが、なんツーかボロボロだな。大丈夫か?
「あんた大丈夫かよ?」
「なに、これでも治療は受けている。問題はない」
ならいいんだが、半端に戦闘能力が低下していた所為で大ピンチとか勘弁してくれよな!!
とにかく攻撃を凌いでいると、邪龍達を巻き込んで紫炎の十字架が放たれる。
とっさに聖槍の出力を最大にして防ぐが、にしても威力がでかいな。
少し火傷したぞ、熱いじゃねえか。
「ヴァルプルガ!!」
「おほほほほ! リゼヴィムおじさまから頼まれて様子を見に来ましたのよぉん」
イッセーの怒声を受け流しながら、ヴァルプルガはつまらなさそうな視線を向ける。
その視線は、アウロス学園に向けられていた。
「この様子だと、内通者の方は失敗したみたいですねん」
「そうですね。多少揉めましたが取り押さえには成功しました」
くいっと眼鏡を上げながら、ソーナ会長が冷笑をヴァルプルガにぶつける。
ああ、その辺に関しちゃ既に対応してる。俺の思わぬ思い付きがドンピシャだったぜ。危なかったな、オイ。
一応暴れてる連中も何人かいたが、術式が完成する前だったので、取り押さえには成功してる。
「新規開発の転移魔法を逆手に取り、アグレアスを転移させるのが真の目的だそうですね」
あ、事情聴取も成功してるのか。手が早いぜ会長。
で、アグレアスも目的の一つとか言ってたが、本命は実はそっちだってことか。なるほど、あの放送は挑発も兼ねたブラフだったってわけか。
にしても、いくらなんでも手回しが良すぎるだろ。
アグレアスに関しちゃ、商業関係のトラブルが懸念されたので防護結界の新調ってのが遅れてたらしい。つっても、それを的確につくってのはあれだろ、オイ。タイミングが良すぎる。
誰か冥界の重鎮クラスが関わってなけりゃぁ、ここまで全部のタイミングが揃ってる機会をつけるわけがねえ。っていうか、そいつが手回ししてそういうタイミングを作ったって方がまだ納得できる。
「アグレアスに何があるのですか? おそらく、トライヘキサの封印解除に使える何かだと思いますが……」
「答えは簡単です。そして、それ以上にあなた方に大打撃を与えられるものですよ」
その言葉と共に、赤の混じった白い鎧が舞い降りた。
……白龍皇の鎧の偽物も開発されてるってわけか。そしてこの声、確かカテレアとか言ったっけか?
腰に巻かれてるんのはイグドライバーか。ってことはイグドラゴッホと同じシステムで作られた偽物ってわけかよ。色々考えてくれてんじゃねえか。
「カテレア……ぁっ!」
「これはこれは、手を抜いて負けた男の遠吠えは醜いですね」
歯ぎしりするヴァーリに冷笑を向けながら、カテレアは肩をすくめる。
「あらあら、しゃべってよろしいのですのぉ?」
「問題ないでしょう。リムヴァン様からも「しゃべっていいYO!」と仰られてましたし」
り、リムヴァン様?
……負けたショックで色々とタガが外れたか? ショックで身の程知ったって感じかねぇ?
で、アグレアスに何が?
「現状、アグレアスの中枢部にある遺跡から算出される結晶体を材料に使わなければ、悪魔の駒を生成することはできません」
……マジか。それ、取られてたら大変だったんじゃねえか?
転生悪魔も転生天使も使えなくなるってのは、流石に大打撃確定だろ、そりゃ。
「リムヴァン様はかつての世界線で悪魔の駒の中でも最上級の一品を大量投入してトライヘキサの封印を解除したので、転生悪魔及び天使の追加生産を妨害することもかねて奪うのが目的だったのですが……」
そう言葉を切ってから、カテレアはため息をついた。
「これは貴方方を殺してから、アグレアスごと破壊する方が有効なようですね」
そして、冷たい視線を鋭く突きさすようにこちらに向ける。
上等だ、だったらこっちも全力で立ち向かってやるよ。
「……させんぞ。そんなことは断じてさせん」
静かに戦意を滾らせながら、サイラオーグさんもカテレアに鋭い視線をぶつける。
「冥界の未来を陰らせなどしない。それが目的だというのなら、ここで滅びるがいい……っ」
「良いでしょう。我らが理想郷設立の為、ここで滅びなさい、バアルの無能」
そのまま戦意までぶつけ、そして一触即発。
一瞬でサイラオーグさんは間合いを詰め殴り掛かり、それをカテレアは片手で受け止める。
そして常人なら両手が消えたと錯覚するほどの速度で、攻防が繰り広げられる。
オイオイオイオイ。カテレアの奴、いくらイグドラシステムを使ってるからってパワーアップしすぎだろ。
サイラオーグさんは獅子の鎧纏ってんだぞ? その状態で互角って化物か。
蛇使ってた頃より強くなってねえか? あのアマ、一体何を習得しやがったんだ?
血のにじむ修練なんて柄じゃねえと思ったんだが、何があったらあんなに変わりやがる?
「なるほど。どうやら魔王の末裔というのは伊達ではないらしい」
「当然です。才無きあなたをそこまで高める方法を、私達才あるものが使えば、こうなるのは必然のこと」
感心するサイラオーグさんに自負を浮かべながら、攻撃の隙をついてカテレアが獅子の鎧を蹴り飛ばした。
そしてその一瞬の時間で、カテレアは百を超える魔力砲撃をぶっ放す。
あ、これマズ―
「……俺を舐めるなよ、カテレアぁああああ!!!」
その瞬間、怒号と共にヴァーリが時空間ごと砲撃を半減化。
一気に弱体化した砲撃を拳で吹き飛ばしながら、サイラオーグさんはふむと頷いた。
「どうやら、今のままでは押し切られるな。……ならば!!」
チッ! この御仁にそこまで言わせるほどのスペックがあるってか。
おいおいこの兄ちゃんは魔王クラスだってやり合える化け物だぞ。それが押し切られるってやばくねえか? ヴァーリ込みで言った可能性だってあるじゃねえか。
そんなもん、打開するにゃぁ―
「……兵藤一誠! 力を借りるぞ!!」
―やっぱ、奥の手を使うほかねえわなぁ!!
「もちろんです!! ヒロイ、リセスさんも!!」
「それしかないわね!!」
ああ、姐さんの言う通りだし、イッセーが促す通りだ。
このままだと押し切られるなら、こっちも切り札をきるしかねえ!!
ついに名前の決定した、イッセーの譲渡の新たな形。
その名も―
「行くぜ! 赤龍帝の信頼の譲渡《ウェルシュ・リライアント・トランスファー!!》」
この力で、一気に俺達はお前らをぶちのめしてやる!!
「「「我が英雄とは―」」」
詠唱を始めると同時、カテレアが目を細めるのがよく分かった。
「それを出されると、流石にこちらも―」
それだけこっちの力を理解して息を吐き―
「―奥の手を切るほかありませんね」
―銃の引き金のような、赤いアイテムを取り出してイグドライバーに接続させる。
なんだ? どう考えても何かしらの切り札なのは間違いねえな。
チッ! んなもん黙ってさせると思うな!!
「開幕速攻!!
俺は超速攻で推進力を発揮し、一気にカテレアに迫る。
そして躊躇なく聖槍を叩き込み―
「甘いですよ?」
目の前で発生された魔力障壁で、聖槍が受け止められる。
しまった。槍王の型にするべきか―
「イグドライブ、フルドライブ」
その瞬間、爆発的な力が俺を弾き飛ばした。
兵器の重要なステータスは拡張性。イグドラシステムは兵器として開発されたので、当然そのあたりも考慮されています。
さあ、ヒロイたちはこの魔改造カテレアを倒すことができるか!!
後譲渡の名称はオンタイセウさんの案を採用しました。
どうもこれが一番しっくり来たもので