ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
でもって、俺達は適当に休憩したり残敵関係の確認をしたりしていた。
こういう時こそ英雄は油断しない。しっかり調べて敵がいるかどうかを確認しねえとな。
もし一人残って最後に台無しにしようとしてたらことだ。リゼヴィムってのはそういう仕込みが大好きそうだからな。
そんなわけでアウロス学園を見回っていると、匙と出くわした。
俺は、ちょっと気まずい気分になる。
「よ、よぉ」
「何だよ一体。俺とお前の仲だろ?」
まあ親しい関係なのは認める。
認めるんだが―
「イッセーを目指すのは、辞めるのか?」
俺は、それを聞きたかった。
禁手に目覚めるその時、匙は確かにこう言った。
兵藤じゃないんだから兵藤を目指しても意味はない。
……ちょっとモヤッとしちまったよ。
「じゃあ聞くけどさ、お前はリセスさんになろうとしてるのか?」
反対に聞かれたが、これに関しては即答できる。
「あんまり外れてねえな」
ああ、姐さんは俺の
だからだろうな、匙の禁手に至る心の動きに納得ができねえのは。
憧れた人のようになるというのは、立派な原動力だって断言できる。
俺はあの輝きに魅了された。ああなりたいと心から願った。だからこそ、俺はシシーリアを照らせたんだと断言できる。
だからだろうな。なんというか、匙には裏切られた気分だ。
「目指せばいいだろ、進めばいいだろ。進んでる目標を追い抜くのは大変だけどよ、だからこそ進みがいってのがあるんじゃねえのか?」
「ま、そういう意見もあるんだろうな」
匙はそういうが、表情からくる返答は間違いなくNOだ。
「だけどよ、俺が目指した兵藤は、自分の目標にがむしゃらだからこその兵藤だぜ?」
「俺はそういう観点で英雄語られるのが嫌いなんだよ」
がむしゃらに頑張った結果、たまたま人に認められたものが英雄。かつてストラーダ猊下はそうおっしゃられた。
俺はそれが認められなかった。目標を目指して進み方をちゃんと考えながら進んでいるのに、そんな当たり前のことを否定されるのが嫌だった。
今なら胸を張って断言できる。俺の進んできた道は、決して間違いじゃねえ。
「目標見据えてきちんとそこに行く方法考えて、そして一歩ずつ足を踏みしめてりゃそれに近づけるのは当然だろ? 俺は、それすら否定されるのがマジで嫌いなんだよ」
ああ、だからあの人のことは好きになれない。
医者に救われた人が医者を目指す事は間違ってない。警察官に救われたものが警察官を目指すのも珍しくない。スポーツ選手に魅せられたものが、スポーツ選手になろうとするなんてむしろありふれてる。
なのに、憧れたのが英雄だったら「それは違う」なんて納得できるわけがねえ。
そういう意味じゃあ、兵藤目指して頑張ってた匙のことは応援してたんだけどよ。
「ま、気にすんな。……俺が勝手に失望してるだけだからよ」
つっても絶対何か言ってきそうだな。
そう思った俺の視界に、的確な人物が映った。
よし。
「……そういや匙。これで生徒会長からポイント上がったんじゃねえか?」
「え、そうか?」
「あったりまえだろ。守りたくて守りたくてたまらないアウロス学園を守るために禁手にまで至ったんだぜ? 好感度一気に急上昇だろ」
俺は持ち上げて持ち上げる。
いや、これ完全にヒロインと主人公の覚醒シーンだからな。
「このタイミングを逃すべきじゃねえ。告白しろ、告白」
「……待て。確かにこのタイミングはフィクションだと定番だけどよ? だからってそれは―」
「馬鹿野郎!!」
俺は大声を上げて一喝する。
「そんな事で惚れた相手をものにできるか!! どうせなら当たって砕ける覚悟でぶつかってこい!!」
「砕けること前提に言うんじゃねえ! 俺はソーナ会長とできちゃった婚するんだ!!」
よしのっかった―
―あれ?
「……あの、カッシウスくん」
眉間に指をあてた副会長が、ため息をついていた。
「会長がついさっきまでいた此処でそんなことを言うのはどうかと。あとサジは貴族の次期当主相手に何を考えているのですか」
しまった! 匙をのせている間にいつの間にか移動されてた!!
「……おい、ヒロイ」
あ、いつの間にか匙が鎧を身に纏っている。
これ、まずくね?
話を逸らすことには成功したけど、それ以上に命の危険がめちゃくちゃじゃねえか?
「覚悟はいいか、ヒロイ?」
「戦略的撤退!!」
そ、そらせたから成功ってことでお願いします!!
Other Side
その頃リセスは、地下で内通していた魔法使い達を拘束していた。
「大丈夫かしら? 割と揉めてたみたいだけど……」
「問題ありません。そちらに比べれば戦いも激しくはありませんでしたから」
魔法で拘束をかけているゲンドゥルはそう言うが、しかし相手はご老体だ。気を使うしかない。
敵は敵で有数の魔法使いだ。おそらく量産型の邪龍よりは強敵だっただろう。想定外の事態だったこともあり、対処は苦労したはずだ。
しかしまあ、確かにこちらの方が激戦だと言われればそうだろう。
なにせ、偽物とは言え二天龍が並び立つという非常事態だ。その上後期生産という特性を利用して発展させ、一部の性能ではオリジナルを凌ぐという真似までやってのけた。
こちらもこちらで指をくわえているわけではない。少なくとも、相当の努力をしてきたという自負はある。
だが、それを超えるほどに敵の発展が凄まじい。
数々の平行世界を渡り歩いてきたリムヴァン・フェニックス。その経験が生む神器の発展速度は、こちらの成長速度に比肩する。
若手でも規格外の成長速度を発揮する自分達と同等。それは、大半の者達にとって追い抜かれていると言ってもいい。
そこまで考えれば、かなりの危険だということだろう。
一定の速度を見込む事ができない努力よりも、到達すれば金と資材次第でいくらでも用意することができる技術力の方が優れている面が多いのは、人類の発展が証明している。
それを神の奇跡にまで転用したのが、今のヴィクター経済連合だ。ドーインジャーがそのいい例だろう。
その上で量産型邪龍まであるのでは、量においてはこちらが圧倒的に不利である。なによりいくらでも生産できるというのが脅威だ。おそらく生産設備も数多く用意されている頃だろう。
質では流石に話は変わる。神々や魔王クラスを速攻で用意できるほど、向こうも規格外ではない。イグドラゴッホとイグドラグウィバーも、使い手が魔王末裔や最上級クラスだからこそのあの戦闘能力だ。
だが、それもトライヘキサの封印が解除されれば大きく変わるだろう。
できれば阻止したいところだ。それ以外の対策も、ユーグリットが口を滑らせた事でロスヴァイセの協力があればどうにかなるかもしれない。
だが、それでも限度がある。
「……あなたのお孫さん、これから忙しくなりそうね」
ついそんなことを言ってしまう。
実際そうだ。若手眷属悪魔としての悪魔稼業。D×Dとしての前線戦闘。駒王学園教師としての業務もある。とどめにトライヘキサの封印技術の研究まですることになるのだ。
悪魔は多芸を求めすぎているような気がしてならない。アイドルを目指していた時も、ここまで忙しい展開になったことはない自分としては、呆れるべきか関心するべきか。
だが、ゲンドゥルは涼しい顔だった。
「まあ、ヴァルキリーをやめてまで72柱の眷属悪魔になったのです。ロセにはそれぐらいしてもらいませんと、格好がつきません」
「手厳しいことで」
中々スパルタなようだ。ちょっとロスヴァイセに同情する。
だがしかし、その表情は涼しげなようでいて慈愛に満ちている。それだけ孫を信頼しているという証だろう。
「……お孫さんのことは任せて頂戴。私もヒロイもイッセーもいる。だから、まあ、下手なところよりは安全だわ」
「前線の真っただ中が下手な後方より安全というのも、おかしな話ですけどね」
思わず苦笑してしまった。
だが、実際問題安全だろう。
なにせ神滅具持ちが近くに三人もいる家に住んでいるのだ。それも、上位神滅具と二天龍という上位陣営。間違いなく下手な神の身元よりも安全である。
それに今後は警戒網も強化されるだろう。なにせロスヴァイセは、ヴィクター経済連合のカウンターになりうるのだ。これを利用しない手はない。
むろん、それがブラフ等の可能性は決してないとは言えない。
なにせユーグリットがロスヴァイセを狙ったのは、まったく別の理由によるものだ。能力の高さはあったのだろうが、それがトライヘキサの封印そのものと関与しているかは分からない。
だが、それでもブラフでない可能性もきちんとある。なら試してみる価値もある。
それに―
「イッセーは特に信用していいわよ。気合と根性と煩悩で、たいていの限界は突破して見せるもの。しかも一生懸命努力するから敵にしてみれば始末の悪いタイプね」
色々な意味で敵に回したくは無いタイプである。
なにせ歴代二天龍という時点で脅威度が高いのは明白。更に歴代の中では非才だが、それゆえに努力を惜しまない為基礎がしっかりとできている。とどめに強すぎる煩悩からくる色欲ブーストで、異常現象をちょくちょく巻き起こす。
ポテンシャルが高く、土台がしっかりとしており、とどめに何をしてくるか分からない。
本当に敵に回したくない。競い合う相手としてはともかく、敵対する相手としては非常にやりにくいタイプだ。自分はヴァーリのような戦闘狂とは違う。
「まあ、今回の件でロスヴァイセとイッセーの間にフラグは立ったでしょう。あの子はそういうの凄いから、恋愛問題も突破できるはずよ」
「……やっぱり、彼氏ができたというのは口から出まかせでしたか」
「あ、言ったら駄目な奴だったわねコレ」
そういえばそういうことになっていたのを忘れていた。
「そんな事だろうとは思ってました。孫は勢いで行動する事が多いもので」
「その辺グレモリー眷属よねぇ」
大体あの面子は勢い重視な者が多い。
テンションに任せて高い出力を発揮するタイプだ。念密なかつ緻密な行動はどちらかといえば苦手なタイプだ。
リアスの巡り逢いの気質は本当に優れている。自分と相性の近いタイプと、見事に巡り合っているのだから。
「まあ、あの様子なら孫は大丈夫でしょう。少しは肩の荷が下りました」
「その辺りは安心していいわ。あの子達は、私と違ってちょっとやそっとで歪むような子達じゃないから」
そこまで言ってから、リセスはふと天井を見上げる。
その向こう側を見透かすようにしながら、リセスはふっと苦笑する。
……今まで、本当に色々な事があった。
だが、それらすべてが自分の体と、それ以上に心を強くしてくれた。
今ならはっきりといえる。過程はともかく、現状は確かにペトとヒロイの
今ならば、前向きに倒れることができるだろう。
「……ニエ。今度会う時は、決着をつけましょう」
決意は決まった。
決着の時は、近い。
「がぁっでっむー! あれさえあれば三日で封印解除で来たのになぁ~」
「申し訳ありません、手回しが悪かったようです」
「ん? あ~気にしないで気にしないで。なくても数か月の辛抱だしね。今回は僕らがなめてかかってただけだよ」
「真の魔王様も残念がっていました。72柱の末裔としては恥ずべきことです」
「……うん、そういうの良いから」
「と、言いますと?」
「そう言う演技はしなくていいって話だよん。君が僕らを使って何かをなしたいと思っているから、あえて毒の入った杯を煽ってるのは分かってるよ。一応僕も、魑魅魍魎跋扈する政治の世界を生きているわけじゃないからね」
「……なるほど。どうやら舐めてかかれないようだ」
「そうそう。それでいいんだよ。……で、何が望みだい、ディハウザー・ベリアルくん?」
「……リアス・グレモリーが管理をしていた駒王町。あそこの前任である私の親族の死の真相を知りたいのです」
「……OK。失敗したとはいえ、お膳立てを整えてくれた礼はしないとね。まあ、出来ればあたりを付けて欲しいんだけどさ」
「それについては二つに分かれています」
「なんだい?」
「一人は、当時の駒王町で同時期に処断された悪魔祓いの八重垣正臣。もう一つは、ある有名なゴシップ記事です」
「というと……王の駒」
「はい。もっとも、あるかどうかも分からない眉唾物の―」
「いや、それは現実に存在する。うん、クレーリア・ベリアルは間違いなく現政権の老害達に暗殺されたんだろうね」
次の話から、ファニーエンジェル編に突入します。
……リセスの因縁、ついに終焉の時迫るとだけ覚えておいてください。