ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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そして事態は急展開。


第六章 52 清算の時いま来たれり

 そして天界で、俺達は厳戒態勢だった。

 

 ……あのリゼヴィムとリムヴァンの2人組が、よりにもよってこれだけの所業をしでかしたんだ。

 

 どうやら、ニエとプリスの役目は俺の足止めだったらしい。その間に八重垣正臣とかいう復活した悪魔祓いに、邪龍ヤマタノオロチを宿した日本の聖剣天叢雲剣を持たせるという、なんつーか盛りすぎな設定。そんな奴をイリナの親父さんにぶつけやがった。

 

 逆に言うと、それ位盛らねえと今の護衛であるイッセー達をかいくぐれねえってこったな。俺らも評価されてるもんだ。

 

 で、毒を喰らって動けねえイリナの親父さんの代わりに事情を説明したのは、なんと初代バアル。

 

 ゼクラム・バアル。バアルの血を引いているお嬢の曽爺ちゃん。正真正銘ゴエティアだったかゲーティアだったかに書かれている、72柱のバアルそのもの。

 

 で、そのバアルの爺さんが説明したことによると、この駒王町の前任者であるクレーリア・ベリアルがその八重垣ってのとできたのが事の発端。

 

 ……まあ、当時の世情で純血悪魔と悪魔祓いのガチ恋愛とかロミオをジュリエットも真っ青だな。ああ、ガチで殺しに行ってもおかしくねえさ。

 

 で、それが原因で当然八重垣は憎悪。マジギレして当時の教会やバアルの関係者に襲撃ぶちかましていたと。

 

 そんでもって最後の1人らしいイリナの親父さんを襲撃したは良いが、増援が出てきたことで一端離脱。毒の治療と安全確保のため、イリナの親父さんはここ天界に移送されたわけだが―

 

「多分だが、その辺も想定したセカンドプランはあるんだろうな」

 

「なるほど、それで俺達を呼んだというわけか」

 

「あの、本気で忙しいんだけど」

 

 ヴァーリとラシアが、頭に輪っかを付けた状態でそう呟いた。

 

 ああ、たぶんだが、リゼヴィムもリムヴァンも仕留め損ねて天界に匿うってのは想定内のはずだ。

 

 たぶんだが、一度ぐらいは天界に侵入してくると思ってんだよ俺は。

 

 あんだけ聖書の教えに喧嘩売ったんだ。聖書の教えの本拠地な天界(ここ)を襲撃するぐらい普通にやるだろ。しかも今回はテーマ的にタイミングがいい。俺はろくに会ったことねえが、リゼヴィムのジジイはそういうのをきちんと考えるタイプのはずだ。

 

 たぶんだが、天界に攻め込む準備ができたからこそ、このタイミングで仕掛けたんじゃねえかと思ってな。

 

「ま、外れたにしてもあの糞ジジイが態々用意した野郎だ。とっ捕まえるのはいい意趣返しだろ」

 

「確かにそうね。私としても天界を見ることができるのは栄誉だけれども……」

 

 俺にそう返事しながら、ラシアは天界を見渡してからヴァーリに視線を向けて―

 

「三下の魔王末裔(笑)にやられてるようで、相性最悪のリリンに勝てるの?」

 

「……安心しろ、対策はきちんと考えている」

 

 ラシアの奴、当たり前だがヴァーリに当たりがきついな。

 

「ぶっちゃけ、早く倒してもらって監視役から外れたいんだけど。……いつか後ろから刺してしまいそうだわ」

 

 ホントに遠慮がねえ。

 

 いやいや。確かにこいつが会談の内容中継したのが事の発端だけどよ? 若気の至りでヴィクターにまで走ったあんたの浅慮ってやつもあれじゃね?

 

「言われてるわねーヴァーリ。これからは美候とアーサーも常時付けとかないと、殺されるんじゃにゃい?」

 

「黒歌さん。あまり茶化すのも駄目ですよ?」

 

 黒歌のからかいにルフェイがたしなめの声を出す。

 

 まあ、ヴァーリもヴァーリで若気の至りだし、俺は気にしないとこう。

 

 殺し合いするなら、俺がいないとこでやってくれ。俺は本気でそう思うぜ。

 

 ……それに、たぶんだけどちょっとの間はそんな余裕もねえだろうしな。

 

 発破も掛けたし、そろそろニエも決着つけるだろ。いい加減、姐さんとの因縁も清算する時だ。

 

 ちょうどいいタイミングで今は恨みつらみ関係。清算するにはいい機会だろ。

 

 ……姐さんも、本格的にトライヘキサと戦う前にニエとの決着をつけておきたいところだろうしな。

 

 姐さん。頼むから、後悔するような決着だけはつけるんじゃねえぞ。

 

 俺は、別の場所で息抜きをしている姐さんに思いをはせ―

 

 まさにその時、轟音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おそらく、そろそろ来るだろうとは踏んでいた。

 

 あのリゼヴィム・リヴァン・ルシファーとリムヴァン・フェニックスがタッグを組んでいるのだ。何かしらのことはできるだろう。

 

 神出鬼没の絶霧の使い手すらいるのだ。どこにだって潜入できてもおかしくない。

 

 だから、態々第六天まで待機していたのだ。あいつらは必ず誰かを送り込んでくると。

 

 そして、霧と共に彼が現れた。

 

「……八重垣さん。ここは僕が引き受けるから、先に進むといい」

 

「そうだね。君の獲物を奪うつもりはないよ」

 

「そうね。先に行くといいわ」

 

 八重垣をあえて見送り、リセスはニエと対峙する。

 

 ここに来て、覚悟はだいぶ決まった。

 

 まだしこりはある。心残りもある。だから死んでやるわけにはいかない。

 

 だが、死ぬ気でやる覚悟は決まった。

 

 どうせこうなるだろうと思っていた。だから、ここを死戦の決戦場と断言する。

 

「決着をつけましょう、ニエ・シャガイヒ」

 

「決着をつけよう。リセス・イドアル」

 

 言葉はいらない。もう必要ない。

 

 眼を一瞬だけ伏せ、そして見開く。

 

「……ニエ君、リセスちゃん」

 

 そして間に立ったプリス・イドアルが、片手を上げる。

 

 彼女が一番躊躇いがある。彼女が一番悔いがある。彼女が一番つらいのかもしれない。

 

 だからこそ、開戦の号砲をあげるのは彼女以外にあり得ない。

 

 それこそがプリス・イドアルの贖罪だと、ニエ・シャガイヒの目が告げ、リセスもまた止められない。

 

 ゆえに、一筋の涙をプリスはこぼし―

 

「……始め!!」

 

 その振り下ろされた手とともに放たれた言葉と共に、最後の戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてその戦いの音を聞きながら、八重垣正臣は足を進める。

 

 方向性こそ違えど、憎悪に身を焦がす者として、八重垣はニエに多少の共感を抱いていた。

 

 だから、彼の憎悪を晴らす相手の邪魔はしない。だから、彼が護衛として自分についた。

 

 そして、リセス・イドアルがあそこにいたということは―

 

「やっぱり来ていたんだね」

 

 目の前に立つ栗毛の髪は、やはりトウジの面影を宿している。

 

 熾天使ミカエルのAにして、紫藤トウジの実の娘。紫藤イリナがそこに立っていた。

 

 そして、その手に持たれているのは聖剣だ。

 

 皮肉なものだ。聖剣使いの不祥事ともいえる自分達の因縁の清算を邪魔する者が、後天的とはいえ曰く付きの聖剣使いとなった彼の娘だとは。

 

 だが―

 

「まさかと思うけど、聖剣(それ)だけで勝てると思っているのかい?」

 

 転生天使というアドバンテージは、自分の経験の差で覆い隠せる。

 

 聖剣という新たな装備は、自分にも聖剣を持っている。

 

 そして、自分は邪龍の加護すら持っている。この差がある限り、一対一で負けることはあり得ない。

 

「ううん。そんなことはさせないわ。……私はミカエル様のAで、パパの娘だから」

 

「彼も贖罪の感情はありそうだけどね」

 

「それでもよ」

 

 静かに、イリナは聖剣を構える。

 

 それに呼応するようにこちらも聖剣を構えながら、八重垣はそのたわごとを最後まで聞こうと決めた。

 

 やろうと思えば、リセス・イドアルはもっと多くの手勢を用意できただろう。少なくとも、最愛の妹分であるペト・レスィーヴぐらいは待機させれたはずだ。

 

 だがその気配はない。ここは狙撃にはあまりに向いていないのだ。

 

 つまり、これはリセスの心意気だ。復讐心に取りつかれた自分に対する、ささやかな心配り。

 

 紫藤トウジを最も愛するもののみを障害として配置する試練こそが、リセス・イドアルのささやかな心遣いだ。

 

 それに対する礼儀として、八重垣はイリナの言葉を静かに受け止める。

 

「なによりもパパはずっと後悔してきたはず。だから、これ以上傷を抉る必要はない。私はそう思っているもの」

 

「なるほど、確かに立派だね。だけど―」

 

 その言葉を受け止めて、八重垣は戦意を高める。

 

 否、これはイリナに対する憎悪だろう。

 

 立派な意見だ、正しい意見だ。聖書の教えに生きるものとして、罪の清算は神か天使が行う者だろう。

 

 しかし―

 

「悪いけど、僕たちはそんなに立派じゃないんだよ? だからこそ、ニエ・シャガイヒはここまで戦えてこれたんだ」

 

 そう。そんなことができるほど、自分達は立派じゃない。

 

 だから、ニエはここまで戦えた。立派じゃないから、リセス・イドアルがどれだけ立派なことをして贖罪しようと許さない。それどころか、自分を勝手にそんな生贄にすることが苛立たしくてしょうがないから、戦意が燃える。

 

 リムヴァンの繊細な調整もあったことだろう。普通の彼が折れないような、絶妙な特訓を施した彼の調整があるからこそ、彼は短期間でろくな才能もないのに強大な化け物となることができた。

 

 だが、その根幹はニエの本質だ。

 

 普通であるがゆえに立派に耐えられない。そんな、どこにでもいる人間の弱さが、彼をあそこまで強くした。

 

 それを目にする君達が、立派な言葉で復讐者が止まると思っているのか。断罪ではなく復讐を望む者が、本当に止まると思っているのか。

 

 その思いを込めた言葉に、イリナは苦笑した。

 

「だよね。だから……」

 

 そして、イリナはまっすぐに聖剣オートクレールを構える。

 

「あとは、全力でぶつかるだけだよ」

 

 そして、戦闘が始まろうとし―

 

「―我が英雄とは、我と共にある比翼なり!!」

 

 その祝詞が、聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 




ついに勃発する、リセスとニエの決着。

そして今回は同時進行でいくつもの戦いが繰り広げられます。ちょっと流れ的にとっ散らかっているのはご了承ください。







ニエ・シャガイヒが求めているのは、報いかもしくは一つの真摯な言葉。

しかし、リセスはそれをすることこそを失礼と考え、決してこの一件に関してのみそれだけは封印している。

ゆえに、この戦いはリセスが正気でいる限り、どちらかの死を持ってしか決着することはあらず―
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