ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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各地で激戦が繰り広げられているころ、リセスとニエの最期の戦いも、また激しくなっていた。


第六章 54

 

 Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 リセスは真正面からニエに迫らない。

 

 天候操作の応用で大量の竜巻を形成しながら、リセスは即座に龍天の賢者(ドラゴンスカイ・ハキーム)を展開すると、素早くキョジンキラーを何体も呼び出して数の圧殺を試みる。

 

 もとより性能なら向こうが上。技量ならこちらが上という戦いだ。なら、それ以外のすべてをもってして戦うぐらいでなければ意味がない。

 

 このために、大量のキョジンキラーを用意した。そして決着をつけるために、様々な装備を用意した。

 

 ニエ・シャガイヒの戦闘スタイルは、二つの特性に偏っている。

 

 禁手によるスペックを重視した近接戦闘。こちらは技量も鍛えているが、本質的には怪物としての力が本領だ。

 

 通常状態による数による圧殺。こちらについてはポテンシャルが高いのか、意外とドーインジャーの素質が高い。更に独自魔獣を生成するなど、厄介な部類だ。

 

 どちらにしても強大だが、しかしどちらにしても本来ならこちらは有利に戦える。

 

 なぜなら、リセス・イドアルは広域殲滅に優れた神滅具を保有する、クロスレンジの鬼だからだ。

 

 カタログスペックならこちらが下回るが、しかし技量なら経験の差があり此方が有利。二年間の努力と五年間の実戦で鍛え上げられた戦闘技量は圧倒的。そして何より、飢えて餓えて求め続けて進んできた狂気的な英雄(強者)デアルことを求める渇望が、圧倒的な差を作り出している。

 

 本来なら、真正面から戦闘すればこちらが負けることはないのだ。魔獣創造と煌天雷獄は煌天雷獄の方が格上だし、戦士としての力量も経験もこちらが圧倒的に上なのだから。

 

 ゆえに、それを最大限に利用すれば敗ける道理などない。

 

 半端な敗北は赦されない。それは、ペトとヒロイの英雄(自慢)として落第点だ。

 

 だが、この戦いに余計な邪魔を入れさせたくもない。それは、ニエやプリスに対して不誠実だからだ。

 

 ゆえに、余計な茶々を入れさせずに、一対一でこの戦いに決着をつける。

 

 今なら死ねる。まっすぐに、ニエに殺されることもできる。

 

 だが、それをただ漫然と受け入れれば、きっとペトとヒロイは悲しむだろう。それはできない。

 

 死ぬのなら、全力で、真正面からだ。

 

 故に全力で挑む。ゆえに渾身で挑む。故に決死の覚悟で生をつかもうと足搔く。

 

 そうでなければ、リセス・イドアルは英雄(自慢)でいられないのだから。

 

「敗けてやらないわよ、ニエ!!」

 

「それでいいよ、リセス!!」

 

 そしてニエ・シャガイヒもそれにこたえる。

 

 全力でリセスに挑み、そして殺す。

 

 そうでなければ不完全燃焼だろう。肩透かしに終わってしまう気がする。

 

 だからこれは望むところだ。全力で英雄(愚行)に走ろうとする彼女を殺してこそ、自分の怨念は一掃される。

 

 立派なことばかり言って弱者(自分)が追いかけることのできない道を進んで、それを贖罪などと考える。そんな奴になど敗けてられない。

 

 そしてそれが無意味だと痛感すれば、今度は思い出(自分達)以外の誰かを心の支えにして、結局は英雄であろうとする彼女を倒したい。

 

 何処までもニエ・シャガイヒは英雄をはたから見ることしかできない普通の人間だ。

 

 どこまでもリセス・イドアルは幻想を自分に組み込むために努力を続ける、英雄を目指すものだ。

 

 ゆえにこの激突はごく当然。当たり前の戦いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それを悲しげに見つめるプリスのとなりに、ペト・レスィーヴは並び立った。

 

 警戒心を一瞬だけだが見せるプリスだが、ペトはそんな彼女に一瞥もくれない。

 

 ただまっすぐに、敬愛するリセスの決着を見ようとし、そこから視線をそらしたプリスに冷たい感情だけを向ける。

 

「目をそらしちゃダメっすよ」

 

 その視線の先、リセスはドーインジャーを蹴散らしていた。

 

 圧倒的な数の暴力で手数の限界を超えようとするニエの戦術は間違っていないだろう。

 

 だが、煌天雷獄の本領は広域殲滅。気象兵器である煌天雷獄を相手に、物量殲滅は愚策に近い。

 

 それらもきちんとこっそり鍛えていたリセスは、竜巻を大量生産してドーインジャーを吹きとばす。

 

 同時に遠隔操作されたキョジンキラーが、大質量兵器で文字通りドーインジャーを薙ぎ払う。

 

 この闘い、経験と執念と神器の差で、リセスが有利だった。

 

 かつての動揺を消せなかった戦いとは違う。かつての周囲の被害を考慮していた戦いとも違う。

 

 正真正銘何の遠慮もない激突が、リセスの全力を引き出していた。

 

 やるべきことはただ一つ。

 

 全身全霊。全力全開。死力を尽くしてニエ・シャガイヒとぶつかるのみ。

 

 そうでなければ誰も納得してくれない。なにより自分が納得できない。

 

 そう、そしてできることなら―

 

「私を殺してみなさい、ニエ!!」

 

「―死にたがり、っていうんすかねぇ」

 

 その言葉を受け止めながら、ペトはそういうとしゃがみこむ。

 

 堕天の魔弾も構えない。完全に彼女は戦闘態勢を解除していた。

 

 それに動揺しながら、プリスはそんなペトの肩をゆする。

 

「い、いいの!? このままだと、リセスちゃんが死ぬかも―」

 

「お姉様は、今度こそ覚悟を決めたッス」

 

 そんなプリスの言葉を、ペトは切って捨てる。

 

 その目はまっすぐリセスとニエの戦いに向けられていた。

 

 一挙手一投足すら見逃さない。それだけの意思を込めて、真剣にこの戦いを見据えている。

 

「お姉様は逃げてない。少なくとも、真正面から向き合おうとして今この戦いに臨んでいるッス。……ペトはそれを汚す気にはなれないっすね」

 

 そう。リセス・イドアルは勝つぐらいの気持ちで此処にいる。

 

 どこかで負けて死ぬことを望んでいることまでは否定しない。しかし、そこに逃げることだけはしたくない。

 

 正真正銘全力で、リセスはニエの前に立ちはだかっていた。

 

「……っ」

 

 その言葉と態度に、プリスもまた前を向いて二人の戦いを見つめる。

 

 ある意味で、一番罪深いのはプリスだ。

 

 リセスのように、逃避からとは言え全力で贖罪をしようという腹積もりはなかった。そして、ニエよりもあの現場で被害者だったものはいない。

 

 半端に被害者で、加害者のくせに贖罪行為をろくに取ってない。

 

 ニエは、黙って奴隷であることを受け入れたからとリセスよりは態度が柔らかかった。だが、それはどうなのだろう。

 

 グラシャラボラス家の中ではかなり実力のある部類なのがゼファードルだ。あれだけ素行が悪いのにもかかわらず、次期当主の代理に選ばれるだけのことはある。相当の生活水準であり、そしてそれに引っ張られる形で自分も相応の待遇だった。

 

 ……そんな生活が、本当に罪を償っているといえるのか?

 

 自分は一番卑怯だ。結局場に流されて、こうして殺し合いを現場の兵士として参加しているだけ。

 

 そんな自分に、真正面から決着をつけようとする二人を止める資格は、ない。

 

 それを突き付けられ、プリスは力なくへたり込んだ。

 

 そして、それでも視線を逸らしたりだけはしない。

 

 自分は未届け人としてここまで連れてこられたのだ。

 

 だから、それが贖罪になると考えるほかないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ニエ・シャガイヒは追い込まれていたといってもいい。

 

 リセス・イドアルは執念で強くなり続けてきた。それは見当違いの贖罪でしかないが、しかし結果として高い戦闘能力を得てきている。

 

 そこしか道はないと思ったがゆえに邁進だ。体を壊さない程度に、然し地獄すら乗り越えられるように。その圧倒的な努力と実戦と経験を乗り越えるのは生半可なことではない。

 

 すでにドーインジャーを数百単位で展開しているが、それらすべてはキョジンキラーを使うまでもなく、天候操作で生まれる竜巻で吹き飛ばされる。

 

 すでに戦場は雷鳴が響き続け、打ち上げられたドーインジャーはその雷撃で消し炭になっていく。

 

 能力的に相性が悪い。雑魚をいくら生み出そうと、大火力による広域殲滅の前には不利だ。

 

 加えてキョジンキラーによる集中攻撃も厄介だ。巨大ゆえに大火力で攻撃でき、その一撃は確かに厄介。

 

 そして、その攻撃を叩き込ませるためにリセスは支援攻撃を叩き込んでくる。

 

 そこに遠慮はない。むしろ期待がある。

 

 超えてこい。そして自分を殺して見せろ。そんな期待が見え隠れする。

 

「……ああ、超えてやるさ」

 

 ゆえに、全力で自身の魔獣化を推し進める。

 

 おのれの肉体そのものを魔獣へと変成させる、魔獣変成。これこそが、一般人からいきなり戦場にかかわることになった自分を戦わせる根幹だ。

 

 肉体そのものを変質化させ、そして最も有効な獣へと変化させることによって敵を殺す。おのれの手によって復讐をなしとげたいという、内心の本音が生み出した亜種禁手。

 

 今だ技量では追い付ける気がしない。否、圧倒的な開きを埋めれるとするならば、それはリセスが死んでから何年もたってのことだろう。

 

 それほどまでに、リセスの執念はすさまじい。見当違いの贖罪に道と救いを求め、そこに全霊を傾けてきたがゆえに圧倒的な習熟速度がそこにあった。そして、今や自らの光のためにそう足らんとする自立の心がそれを補っている。

 

 だからこそ、やるなら性能差による押切が基本だ。技術の習得は、あくまでその性能を引き出すための補助と割り切らなければ追いつくことはでいないだろう。技量でリセスを超えようと考えるのは愚策だ。

 

 そして、それではキョジンキラーの群れを打破することなどできない。個と質と深度の戦いではリセスを押し切るのには時間がかかり、そこにキョジンキラーが加われば、押し切られるのはこちらなのだから。

 

 そう、魔獣創造は煌天雷獄の下の神滅具だ。

 

 正攻法で打倒することは困難だ。そして、からめ手で勝とうにも自分のような凡人ではそれは不可能。文字通り年季が違う。

 

 そう、普通にやれば勝ち目はないのだ。精神的な動揺をつかない限り、リセスを殺すことは不可能に近い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―そう、普通ならば。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

禁手化(バランス・ブレイク)

 

 しかし、何事にも例外は存在する。

 

 いや、そもそも真っ先に考えるべきことだったのだ。

 

 リセス・イドアルは神滅具を含めて、複数の神器を保有している存在だ。

 

 そんな彼女のカウンターとして用意された自分が、たった一つの神滅具だけで戦うことになるなどありえない。

 

 そして、その瞬間大量の巨大なドーインジャーが瞬時に召喚される。

 

 大型ドーインジャー。ダイドーインジャー。

 

 文字通り大型化することによって、火力の増強などを図ったモデル。ドーインジャー版のガンシップといってもいい巨体の兵器だ。

 

 かつてもこれを創造してリセスを攻撃したことはあった。大型化することを受け入れたことで、それなりの性能を発揮することはできるのだ。

 

 最も、大型化したとはいえドーインジャー。性能には限界があり、その時は赤龍帝に撃破されてしまったが。

 

 しかし巨体であるが故に頑丈であり、数体がかりならリセスがコントロールしているキョジンキラーに対抗することもできる。

 

 むろん、大型化してしまったがゆえに量産性能は大幅に低下している。いかに魔獣創造そのものを使っているとはいえ、今のリセスと大量に展開されたキョジンキラーをどうにかすることなど不可能だろう。

 

 ……だが、そのバランスを破壊する禁じ手は存在する。

 

 そう、最初から考えれば誰でもわかることなのだ。

 

 なぜ、複数の神器を保有するリセス・イドアルを殺すためによみがえらせたニエ・シャガイヒが魔獣創造だけを持っているのか。

 

 煌天雷獄の格下の神滅具であり、相性が悪い部類である魔獣創造だけを与えられた理由は何なのか。

 

 その答えはただ一つ。彼は魔獣創造に特化した多重移植者だからに他ならない。

 

「喰らいつくす!! |大魔獣師団創造《アナイアレイション・クリーチャー・メーカー》ッ!!」

 

 一瞬にして、百を超えるダイドーインジャーが生成され、そして攻撃を開始する。

 

 この禁手は、瞬間的にしか使用できないし、再使用には相当のインターバルが必要不可欠。一発勝負に限りなく近い奥の手だ。

 

 だが、ダイドーインジャーなら竜巻に吹き飛ばされることもない。この数ならばキョジンキラーの集団を圧殺できる。

 

 流石に面食らったのか、リセスも目を丸くしてその光景を見据えていた。

 

 そして、その口元に苦笑が浮かぶ。

 

「……強く、なったわよね」

 

「ああ、全ては君に報いを与えるために!! そのために僕は二つ目の禁手を手に入れた!!」

 

 その渾身の想いと共に、ニエはリセスに襲い掛かった。

 

Side Out

 




 まさかの魔獣創造二つ盛り。まあ、冷静に考えれば「煌天雷獄より格下の魔獣創造を断った一つだけ盛った程度で、ほかにも二つも神器を持っているリセスを倒せるのか」とは思われていたことでしょう。

 最終決戦前にニエを強化することは当初から考えておりまして、いっそのこと変化球を投入してみようと思い、同種の神滅具二つ盛りという豪華仕様にしました。これならスペックでもリセスを超えれると思いませんか?
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