ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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ついに決着、リセスVSニエ。


かなり短めですが、ここは単独で置くべきだと判断したのであえて短めに切らせていただきました。


第六章 57 言わなかった言葉。言ってほしかった言葉

 

 Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神滅具とは、オンリーワンの異能である。

 

 そしてそれ一つ一つが、極めれば神にすら届く力を持った絶大な力を持った異能だ。

 

 それを複数持つなどということはあり得ない。それは、文字通り神ですら不可能な領域だろう。

 

 だが、それはなされた。

 

 平行世界より神器を簒奪し続けた超越者リムヴァン・フェニックスにより、その奇跡は成し遂げられる。

 

 凡人でありながら、多重神滅具移植者となった男、ニエ・シャガイヒ。

 

 その執念が、ついにリセス・イドアルを叩き伏せる。

 

 ダイドーインジャーの数は半分にまで減った。追加生産を行ったうえでこの数まで減らされたという時点で、リセス・イドアルという女傑の圧倒的な強さが知らしめられる。

 

 だが、圧倒的な数の暴力ほど恐ろしいものはない。この質で対応できる数には限度があり、広域殲滅能力を突破できるものが数で押せば、圧倒的な物量が勝利を掴むのも当然の事。

 

 ましてや、魔獣ゆえに指示を出せば自律動作する事ができるダイドーインジャーと、逐一自分で操作するキョジンキラーでは、制御する使用者の負担も大きく差が出る。

 

 リセスの能力では一桁しかダイドーインジャーを動かせない。ニエの技量でもダイドーインジャーは百体以上制御できる。

 

 単純に言ってこの差は致命的だった。言葉にすれば、たったそれだけ。

 

 ゆえに、そのリセスは地面に倒れ伏し、そして動けなくなっていた。

 

 あばらは何本も砕け、四肢もズタボロ。体中傷だらけで、無事なところを探す方が困難なほどに負傷している。

 

 そしてニエもまた、立つのがやっとなほどにボロボロになっていた。

 

 息も絶え絶えで、自己修復能力を魔獣化によって得ているとはいえ、死んでもおかしくないほどの重傷を負っている。

 

 だが、それでも決定的な勝機を得た。そして傷は時間をかければ治癒できる。

 

 近くで見ているはずのペトは、その光景に顔を青ざめながらも手を出さない。まっすぐに目をそらさずに見つめているだけだ。

 

 それがよく分からないが、然しそれなら好都合だ。

 

 ニエの中に歓喜が浮かぶ。

 

 自分の絶望を生み出し、更にはそれすら踏みにじったリセスを倒せたということに、間違いなく歓喜の表情を浮かべていた。

 

 もはやそれは甘美な美酒とでも形容するべきものだ。それほどまでに、ニエはこの状況を喜んでいた。

 

「……それじゃあ、さよならだよ、リセス」

 

 ニエは油断なく、右腕からブレードを生やして攻撃態勢をとる。

 

 静かに構え、そしてリセスの一挙手一投足すら見逃さない。

 

 リセスの浅い呼吸まで聞こえてくる。

 

 しかも幸いなことに、リセスは意識が朦朧となっているらしい。既に目は虚ろで、焦点が合っていない。

 

 尚更チャンスだ。この好機を逃すわけにはいかないだろう。

 

 ゆえにその思考は一瞬で決まり、ニエは一気に全身を振り絞り―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ごめ、ん……なさ…い」

 

 

 

 

 

 

 

 その時、動揺で攻撃を外した。

 

 その言葉が、銃弾のようにニエの胸に突き刺さる。

 

「……っ」

 

 瞬間、何もかもが溶けた。

 

 大量の水に砂糖の一粒を落としたかのように、一瞬で何もかもが溶け去り消えていく。

 

 思えば、その言葉を直接投げかけられたことは一度もなかった気がする。

 

 少なくとも、リセスに直接、あの時の事で言われた事はない。プリスにも、あの時の事で言われた事はなかったはずだ。

 

 二人とも、自分の罪の重さを自覚していた。それが本来許されない事だと、自分でも分かっていた節がある。

 

 だからだろう。その言葉を彼女達がニエに言う事はなかった。言っても自己満足だと、内心で分かっていたのかもしれない。

 

「……ぁ……」

 

 ニエが声にもならない声を漏らすのと同時、リセスはぼんやりとした視線をニエに向ける。

 

 意識があるわけではない、朦朧とした意識で、まるで夢を見ている感覚だろう。

 

 だが、その目がニエを捉えた時、リセスは寂しげな表情を浮かべて、唇を動かす。

 

「……ごめんなさい、にえ」

 

 そう、今度こそしっかり聞こえる声でそう言った。

 

 夢を見ているような形なのだろう。ニエの姿を朦朧とする意識で捉えて、思わず口を突いて出てしまったのだろう。

 

 だからこそ、それはリセス・イドアルの本心からの言葉だった。

 

 本心から、リセスは自分の所業を後悔している。

 

 本心から、リセスはニエに贖罪意識を持っている。

 

 そして本心から、リセスはニエに罪の意識を抱いたまま生き続けてきた。

 

 だからこそ、朦朧としたその意識は正直に行動した。

 

 正気の時では決して言わなかっただろう。

 

 リセスは、自分がニエにしてきた事が謝って済む問題じゃないと痛感している。それはプリスも同様だ。

 

 そんな事をして謝って済まそうだなんて虫がいい話だと思っている。だからこそ、英雄になるという行動で清算しようとしたのだ。

 

 だが、それは結局はニエにとっては苦痛だった。

 

 ニエ・シャガイヒは立派な人間ではない。高潔な人間ではない。だから、そんな立派で高潔な行動をされても、受け入れられない。

 

 だが、謝罪は高潔でも立派でもなく当然の行動だ。

 

 悪い事をしたら、先ずは謝る。それは当然の行動で、ある意味普通の行動である。

 

 そして、だからこそ―

 

「―あぁ、そうか」

 

 ―すとんと、それはニエの心に届いた。

 

 そして素直に納得した。

 

 なんで、素直に罪を受け入れて底辺で生きる事をしたプリスを許しきれなかったのか。

 

 なぜ、方向性こそ迷走しながらも積極的に罪を償おうとしたリセスに怒りを覚えたのか。

 

 それがあっさりと分かった。分かってしまった。

 

「僕は……」

 

 分かったから、もう動かない。

 

 激痛を無視して動かすほどの気力を、ニエは振り絞る事が出来なかった。

 

 そう。なんてことはない。

 

 ニエはまず、当たり前の事をして欲しかっただけなのだ。それがないからこそ、それをすっ飛ばして行動しているからこそ、ニエはリセス達を許す事が出来なかった。

 

 そして今、それはなされた。

 

「……謝って欲しかった、だけだったのか」

 

 

 

 




リセスにしろ、プリスにしろ、自分がしてはならないことをしてしまったことを痛感しています。

それは文有って済むようなことではないとも思っています。だからこそ、行動で贖罪したのがリセスで、すべて諦めたのがプリスです。

ですがまあ、悪いことしたと痛感したのなら、まず謝るのが筋というものでもあります。

それをせずに、無関係な他人を助けることで贖罪しようとしたからこそ、ニエはニエでこじらせてしまったわけです。真摯な謝罪は割と人の胸に届くものです。懲りたのではなく心から悔やんでいるからこそ通用するわけで、それでも怒りが収まらないのもよくあることですが。

……幸か不幸か、散々ボコって貶してスッキリしたからこそ、ニエも憑き物が落ちちゃうぐらいの余裕ができたわけですが。






ちなみにリムヴァンは、リセスが正気なら絶対謝らないとわかっていたからこそニエを投入したわけでもあります。

まさかボコり方がちょうどよく意識をもうろうにしてしまったせいで、本音の謝罪が出てくるとはリムヴァンも想定外。心からガックリ。
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